転生一九三六~戦いたくない八人の若者たち~   作:紫 和春

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第49話 月日

 時は過ぎて、一九三六年十二月二日。

 日本の季節はすっかり冬になっている。そんな中、日本の軍政は色々と忙しいことになっていた。

 来る対米戦争及び第二次世界大戦に向けて、陸軍は新型中戦車の開発に力を入れ、海軍は戦時設計駆逐艦の建造、零戦となる予定の新型戦闘機の研究開発に熱が入っていた。

 そんな中、大本営立川戦略研究所ではこの数ヶ月の間に、二回の机上演習を実施した。一度目は南方へ進出しないことを前提とした演習。二度目は南方進出を主軸とした対米短期決戦。

 その結果、一度目の机上演習は従来通りの大敗。二度目は条件付きでの勝利となった。特に二度目の条件付き勝利は、関係者の間で話題となった。

 今回の条件付き勝利での条件は、ルーズベルト大統領が柔和となり、日本の提示した講話条約を締結するというものである。現実には非常に難しい条件ではあるものの、蜘蛛の糸の如く一つの希望として持ち上げられる結果となった。

 こうして、短期決戦型南方進出作戦を大本営に提案した立川研究所だが、全ての問題が解決したわけではない。

 それを伝えに来たのは、外務省ソ連対策室の三浦であった。

「またソ連で何かあったんですか?」

「あったというよりかは、現状の報告です。どうやら、ソ連国内でクーデターの機運が高まっているようです」

「暴動からクーデターですか……。今度はソ連革命でも起こすつもりなんでしょうか?」

「そのあたりは分かりません。ですが、構成国がソ連を離れるような動きも出ています。今ソ連が分断すれば、国体維持は困難になるでしょう」

「話題に事欠かない国ですね……」

「また、スターリン書記長はクーデターを恐れてか、粛清の対象と人数を大幅に拡大させました。いよいよ国一つ分の国民が犠牲になるほどの数です」

「こうなったら、ソ連は勝手に崩壊するんじゃないですかね……」

「そうだといいんですが……」

 キリの良いところで話が終わったとき、所長室の扉がノックされ、扉が開く。

「外交部の森田です……、って、お取り込み中でしたか?」

「いえ、ちょうど話が終わったところなんで」

「そうですか。では報告をさせてもらいます」

 そういって森田は、口頭で国際情勢について報告する。

「現在フランスとイタリアが和解及び国交正常化に向けての会合を開いているのは、すでにご存じだと思います。両国とも秘密にしなくなってきましたからね。そんなフランスとイタリアですが、最近イギリスもイタリアの動きを評価するようになってきました。それに反発しているドイツですが、今のところ目立った行動は取ってません。相変わらず交渉を止めるように電文を送り続けているようですが。一番分からないのがアメリカです。あくまで中立の立場を取っているものと推測されますが、海軍の動きが活発化しているあたり、イタリアの動きを警戒しているのだと思われます」

「ドイツが動こうとしないのは、ちょっと予想外ですね……。てっきり妨害工作でもするものだと思っていたのですが」

「ここで堂々と妨害工作をすれば、英仏から確実に反撃を食らうからでしょう。それよりもポーランド方面に軍を動かしているのが問題です」

「ポーランド方面……。というと東プロイセンですか」

「はい。おそらく、ポーランド回廊を奪取し、領土を取り戻すものと考えられます。一刻でも早く着手したいのか、徴兵と陸軍の配備をとんでもない早さで進めています」

「やはり鉄十字を掲げているような奴は駄目だな……。日本も早く、ドイツとの関係性を正さねばなりませんね」

「所長の言う正すが何なのかは触れませんよ」

 森田にツッコまれてしまう。

「しかし、やはりと言いますか、アメリカの動きが読めませんね。何考えてるのか、いつまで中立の立場にいるのか、一切不明ですからね。諜報員とか派遣しているんですか?」

 宍戸が森田に聞く。

「していますが、成果は芳しくありません。やはり技術力の差があるのでしょう」

「時間が経てば経つほど、我々のほうが不利になります。遅くても一九四一年十二月までには対米戦争開戦の有無を確かめなくてはなりませんね。まぁ、その頃にはドイツが何かしらの戦争をしているでしょうけど」

 宍戸の言葉に、三浦と森田が頷く。

(しかし、戦争になれば必ず国力が削られる……。なるべくなら戦いたくないのだがな……)

 宍戸の心情は複雑であった。

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