カヨコ「拾って下さい……か」   作:千点数

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年内に完結を目指したが無理だった。
もう少しだけ続くんじゃ。


カヨコ「はい、ごろーん」

 ぶおおおおー、と、ドライヤーの音が響く室内。

 そこにはカヨコが、フウの風呂上がりの髪の毛をドライヤーで乾かしている姿がある。

 

 廃校舎の近くにあったミレニアム製の廃車のモーターとトタン板を組み合わせ、風力発電システムを構築した現在の便利屋は、電気代にもヒィヒィ言っていた時代とは異なり、半分くらい自給自足の今の方が生活が豊かだ。

 

 もちろん、ゲヘナの風紀委員に見つかれば折檻とプラスで拠点爆破され、現在の拠点の廃校舎を失うが、見つかるようなヘマをするような彼女らではない。

 

 無論この部屋も遮光カーテンと地味な色の吸音材を張り付けたカヨコ特性の部屋だ。爆音でヘヴィメタルな音楽を流したって、扉の側で耳を立てないと気づかれない。

 

「痒い所はない?」

「……ん……」

 

 故に、ドライヤーという文明の利器にあやかることができ、湯冷めする心配もない。

 カヨコに髪を梳かれながら乾かしてもらっているフウは、カヨコの手が良いのか気持ちよさげだ。

 

「そう、よかった」

「ん……」

 

 その顔は真っ赤である。

 

 風呂の中での出来事が、未だ忘れられず悶々としているのだ。

 なお、彼が顔を真っ赤にしている間に猫もカヨコによって丸洗いされている。

 今は、カヨコのベッドの上で香箱座りしている。無論、毛は乾かしてある。

 

「じゃあ、歯磨きして寝ようか」

「うん」

 

 カチリ。

 少し型落ちのドライヤーのスイッチを切る音と共に、カヨコは提案した。

 立ち上がると、フウに一言。

 

 歯ブラシ取ってくるね。

 

 そう言って離れたカヨコの気配がなくなり、フウはようやく一息ついた。

 

 暖かいやら、いい匂いするやら。

 心臓がドキドキ、顔があつあつ。

 全く落ち着かない。

 

 フウはベッドの上の猫を撫でて心を落ち着ける。

 撫でているうちに、カヨコが帰ってきた。

 

「フウ君。この緑色の歯ブラシを、今日から使ってね」

「うん、わかった」

 

 そう言いながら、フウはカヨコの手にある、緑色の歯ブラシに手を伸ばし……

 

「じゃあ、私の膝の上にごろーん、てして?」

「????」

 

 それから、カヨコの言う事に、疑問が浮かんだ。

 床に座って、膝をぽふぽふと軽く叩いて、自分の膝にフウを誘うカヨコ。

 その様子は、フウから見れば不思議だった。

 だって、歯ブラシを使うなんて、一人でできるのだから。

 フウは、赤ん坊の頃はわからないが、少なくとも幼稚園から覚えている限り、他人にそもそも歯ブラシをかけてもらった事はない。

 

「いや、一人で……」

「ううん、ごろーん、てして? 歯ブラシで喉とかついたら危ないから」

「そんなに子供じゃないけれど!?」

 

 歯ブラシの使い方くらいわかると憤慨するフウ。

 しかし、カヨコはそんな事気にしなかった。

 

「はい、ごろーん」

「うわっ」

 

 一瞬だ。

 一瞬で、フウはカヨコに床に優しく倒され、膝枕されていた。

 そして、そのまま上を向いた状態になる。

 

「じゃあ、お口を開けて?」

「……はぁい」

 

 諦めた。

 フウは、カヨコたちキヴォトスの人間が丈夫なこと、そして、デモンズロアのような、フウが気を失うほど反動が大きな銃を扱える事を知っている。

 

 勝てない。

 だから、カヨコに身を預けた。

 

「歯にさっきのお菓子の食べカスが着いてるね」

 

 しゃこしゃこ、と、小刻みに歯ブラシの音がする中、カヨコの声が聞こえる。

 何故か、頭がぼーっとしてくる。

 

「もう少し、あーん、とお口開けられる? 奥歯も磨くからね」

 

 あー、と口を開ける。

 フウは今、言いなりだ。

 顔を固定する為に頬に添えられたカヨコの手の温もりと、柔らかい膝の感触に包まれて、彼は今、半分夢にいるような気持ちだ。

 故に、カヨコの歯磨き行為に対して逆らう事はなかった。

 

(か、かわいい……)

 

 一方カヨコ側はと言えば。

 お姉ちゃんとして、弟の世話はやらねばと、風呂に入れ、歯を磨いてやる。そして今夜、寝かしつけようと思っていた。

 

 お姉ちゃんとして、しっかりせねばと気を引き締めているのだが……

 

(歯磨きされて、気持ち良さそう……目がとろんとしてる。弟かわいい……)

 

 姉バカになっている。もう手遅れだ。

 今は弟の前という事で、気を引き締めているが、彼が寝て、意識が夢の中になった瞬間に顔がデレデレになって、思うがままに抱きしめてしまいそうだ。

 

 そんな事を思いながらも、歯磨きは真剣にやる。

 カヨコは、フウの口の中を傷つけないように、慎重に歯を磨く。

 奥歯、歯の裏、前歯、歯の上、隙間。

 満遍なく磨く。

 しゃこしゃこ。磨く音だけが、部屋を支配する。

 

「はい。終わったから最後は洗面台でゆすぎにいこうね」

 

 そして。歯磨き終了した時。

 カヨコが、歯ブラシをフウの口から引っこ抜いた時には、フウは意識こそあるものの、何故だかぼーっとしているようだった。

 目に光はなく、カヨコの事しか写してない。

 

「……どうしたの? フウ君」

「おわ、り?」

「うん、歯磨きは終わったよ」

「あう」

 

 瞬間、顔を瞬時に真っ赤にしたフウが、カヨコの膝枕から飛び起きて、洗面台に向かう。

 

「やっぱり、やりすぎだったかな」

 

 流石に歯ブラシをかけてあげるのはやりすぎだったらしい。

 

「うぅ……」

 

 顔を真っ赤にしたフウ。

 誰かにされる歯磨きがあんなにも気持ち良いものとは思わなかった。

 噂に聞く歯医者への苦手意識が、別の意味でフウの中で高まる。

 

 グジュグジュ、と口を濯ぎ、カヨコのいる部屋に戻ってくる。

 そしてそのまま、ぼふ、とフウはベッドに顔を埋める。

 とにかく、今のだらしない、真っ赤な顔を見られたくなかった。

 特に、カヨコには。

 

 本日二度目の赤面だ。

 見られたくない。男のプライド的に。

 

「フウ君」

 

 カヨコの声だ。

 耳に優しく響いてくる、少し低めの声。

 

「一緒に、寝ようか」

「……ほぇ?」

 

 どうやらまだ、フウへの試練は続くらしい。




誰か、ミドリが慣れないお姉ちゃんをやるSS書いて。

いや、さ。
確かにモモイがお姉ちゃんなのは事実としてあるんだ。
勇者も勇者っぽく、年上の振る舞いの情緒を成長させるいい機会になるだろうし、ロッカーは逆に一部能力以外ダメダメな姉が姉バカで奮起するようなストーリーでいいと思うんだ。

ミドリはさ、妹って言う前提があるわけで。
その上で、自分より年下の子を拾っちゃって。
モモイが、自分が姉になるとか最初は言うんだけど、でも、ミドリが「私が、君にとっての一番の姉になる」って覚悟決めつつ全力で姉を遂行する話が読みたい。

あれだよ。
末っ子ちゃんの下にさらにきょうだいが出来て、今まで自分の兄姉に憧れて育ったからか元 末っ子ちゃんが舞い上がって下の子に姉(または兄)として構いまくるアレがまず根底にあって、そこから姉バカとして覚醒するのいいと思ってるんだ。僕は。

まぁ彼女、双子なんだケドね。
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