ここから新章入ります。
あと、ミレニアムの一部生徒について独自設定を追加してしまいました。すみません。
フウ「みれにあむ?」
ミレニアムサイエンススクール。
科学と数学の殿堂。あらゆる難題に対して真摯に向き合い続ける探究者たちの巣窟。
キヴォトスの外から来た小学生のフウからすれば、近未来的と行っても差し支えない、見慣れたようで見慣れない高層ビルが立ち並ぶ学区だ。
そんなミレニアム学区の街の中を走る電車内に、フウは目を輝かせ座っていた。
当然だ。21世紀に製造された青い猫型ロボ漫画のような世界が目の前にあるのだ。興奮するなというのは無理である。
洋服は、ピッタリタイツのようなモノではないが、それでも白を基調としたミレニアムの制服はスタイリッシュで、すごくカッコイイ。
「すごい!」
ずっと窓にへばりついて、もはや言語が「すごい」しか喋れなくなってしまったフウをほほえましそうに見る先生、そしてミレニアムサイエンススクールの生徒であるユウカ。
そうだ。フウが一人なわけがない。引率として先生とユウカがついてきている。
ミレニアムサイエンススクールに、フウは用事がある。
フウの、身を守るためのお話を、ミレニアムサイエンススクールにしに行くのだ。
*
その日の朝9時。
シャーレのオフィスで先生は頭を抱えていた。
呰上フウの件だ。
彼は、ここキヴォトスで生きるにはあまりにも脆い。
流れ弾一発でお陀仏である。
先生とて銃弾一発即お陀仏なことに変わりはないが、先生にはオーパーツによる無敵バリアが存在する。
しかし、フウにはそれが無い。
果たして、どうしたものかと考え______本日のシャーレの事務当番であるユウカに目が行った。
「なんですか? 先生」
急に先生から目を向けられたことに対して不思議そうに首を傾げるユウカ。彼女に対し、先生は質問した。
「ユウカのバリア、それって他の人でも使えたりする?」
「向かってくる攻撃の予測や計算が出来れば、ですけれど……一応は、他の人でも使えます」
そう、ユウカはバリアが使える。無敵というわけではないが、しかし耐久性能は抜群だ。
拳銃、手持ちのマシンガン程度であればやすやすと弾くユウカのバリアは、フウにとって今、必要なものだった。
「何故、そんな質問を……? 先生にはオーパーツによるバリアがあったような……」
「ああ、ユウカ違うよ。私が使うわけじゃないんだ。実は、私と同じヘイローのない子供がキヴォトスにいてね。今は、その子供を保護している子たちが防弾装備をこれでもかと、アルマジロみたいに括り付けてどうにか無事を確保しているんだ」
私がいるときは、オーパーツによるバリアを分けてあげているんだけれどね、とつぶやきながら、ユウカにフウの写真を見せる。
ユウカは、小さな子供が、ゲヘナ学園の子とふたりでピースしている写真を見て「なるほど」と納得する。
確かに、その子供の頭にはヘイローが無い。
「だから、ユウカ……というよりも、ミレニアムサイエンススクールに、ユウカが持っているものと同じバリア装置をひとつ、その子供に作ってあげられないかな、と思ってね」
先生はユウカに、呰上フウについてユウカに説明した。
ユウカはフウの境遇を聞き、今はゲヘナのカヨコという子に保護されている現状を聞いてほっとしたように息を吐くと、先生に向かって一言、悩むそぶりを見せながら言った。
「その、フウ君のことについてはよくわかりましたし、今は保護されていて、無事であるという事もよくわかりました。しかし、私のバリアはあくまでも私自身のマニュアル操作によって、強度が担保されています。とても子供が扱えるような代物じゃありません」
ユウカのバリアは、もちろんフルオートで防御できる機能もある。しかし、あくまでもそれは事前に予測したパターンを自分の肉体に合わせて打ち込んでいるだけで、本質的にはマニュアル操作だ。
「そっか」と、先生が呟く。確かにそれでは、フウのような子供には扱いが難しいかもしれない。
「ですが、方法ならばあります。何もバリアは、私、早瀬ユウカだけの特権じゃありません。他の学校の生徒だってバリアを使う生徒はいますし、ミレニアムサイエンススクールにも、私以外のバリア使いはいます。今回はその子の力を借りましょう」
そう言って、ユウカは先生に微笑んだ。
先生は、心底安心したといった表情で、ユウカに感謝する。
「そっか、ありがとう。それで、その子の名前は?」
「エンジニア部の豊見コトリさんです。彼女は、他の人にバリアを分け与えるガジェットを持っています」
聞けば、フルオートでどんな攻撃にも備えられるらしい。
耐久性能はユウカのものよりも低いそうだが、一度手に取れば発動し、その後は自立稼働するという点ではユウカのものよりも優れている。
今回は、その装置を元に、エンジニア部に依頼を出せばよいだろう。
「子供の命を守るためです。ミレニアムサイエンススクールの技術を存分に活用して、きっと素敵な装置を作ってくれると思いますよ」
私も、補正予算を出したりして協力します、とユウカは約束した。
*
場所は変わり、ゲヘナ学園学区郊外。
エメラルドグリーンの芝生が風に揺られている校庭を見渡せる、廃校舎の中に、先生はユウカと居た。
先ほど相談したバリアの件を、呰上フウに伝えに来たのだ。
「みれにあむ?」
フウが、クリっとした目を更にまんまるにしながら先生に対して言う。
「そう、ミレニアムサイエンススクール。そこで、フウ君のための防御装備を作ってもらうんだ」
「防御装備……もしかして、バリア!?」
「ああ、バリアだとも」
やったー!!
そんな声が、廃墟の校舎に響いた。
近未来チックな言葉にあこがれているような年頃の男の子に、バリアという文句はいい意味で殺し文句だったようだ。
「そんなにお客さんの前ではしゃがないの、フウ」
「うぅ、ごめんなさい。でも、バリアだよバリア!!」
カヨコがたしなめて、しゅん、と一瞬だけ勢いがしぼむも、その後にまた瞳をキラキラと輝かせながら、フウが言う。
その様子にカヨコは、
「はしゃぎすぎ。ミレニアム行き禁止にしちゃうよ?」
と、表面上は言いながらも、内心では……
(かわいい! かわいい! はしゃいでるの可愛すぎ!!)
あらぶっている。ダメお姉ちゃん極まれりだ。
「……あっ、ズルい! いじわる!」
「もう、先生のいう事ちゃんと聞いてね? さっきみたいにはしゃぎすぎはダメ。わかった?」
「はーい」
そして、その様子を見ていた先生とユウカは、
「……本当に、きょうだいみたいだ」
「ええ、本当に」
穏やかな表情で、ほほえましいその様子を見守っていた。
何はともあれ、フウが乗り気なこともあり、彼のミレニアム行きは決定。
先生に引率を任せて、カヨコはフウのことを見送り、フウは先生、ユウカと共にミレニアムサイエンススクール行きの電車に乗り込んだのだった。
*
そして、現在。
「ここどこぉ……」
白を基調とした内装が施されている学園内、フウは迷子になってしまっていた。
?「おや、あの子供は……ミレニアムサイエンススクールのことについて、説明と解説が必要な様子。直ぐに向かいましょう!」
次回
新たな姉候補、登場。