百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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一発目

「ドーモ、スケバン=サン」

 

「ドーモ」「ドーモハジメマシテ」

 

 時は草木も眠るウシミツ=アワー、夜街のギラつくネオンの影から歩み出てアサルトライフルを握った量産型スケバンを誰何する人物に、0.0001秒の判断でオジギと同時にアイサツを返すスケバン達、その振る舞いはジッサイ奥ゆかしい。

 

「イヤーッ!」

「オバケーッ!」

 

「いやお化けでも幽霊でもニンジャでも無いでございますよー」

 

 慎ましやかな抗議は当然ながら恐慌を来した彼女達に伝わることはなく、暴れ狂う恐怖の感情に支配されたスケバン達は自らにとって最も簡単で、最も手っ取り早く、そして最も頼りになる方法でそれを退けようとする

すなわち手元の武器の乱射である。

 

「無警告での銃器使用と故意に建造物を破壊する行為は軽度とはいえ犯罪になるのであるからして、今のうちにやめておくべきでございますよ

俺は所属上規則違反を見逃すことができない身でありますゆえ」

 

 まずは被害を避ける為に手近なビルのコンクリート製の壁を背にして銃弾から身を隠し、いましがた犯罪者になった彼女達に投降を促す、もちろんパニックに陥っているスケバンには他人に制止されたからと銃の引き金を放す理性は残っておらず、またそれを期待してもいなかった。

 

「う、うるせぇー!規則規則ってお前もヴァルキューレの連中と同じゴミ共かっ!」

「黙って消えてろおばけーっ!」

 

「警告と制止は再三した上であります故、ご容赦を」

 

 腰を落として片手を左腰へと運ぶ、そこに巻かれた腰帯に吊られているホルスターならぬ鞘に収められた軍刀を握ると、それを鞘ごと帯から引き抜き、銃把から刀身が生えたような余りにもアンバランスなそれを握り変えて指を引き金に掛ける。

 

「連邦生徒会調停室直轄組織PRAPARAT所属、憂晴オウカ、これより連邦生徒会服務規約第七条『紛争等武力攻撃事態に関する規則』の第三項『所属生徒の生命・物品及び職務に対する侵害を受ける場合』の例外規則を適用し、実力を行使する」

 

 長々しいセリフをひとしきり言い切り、引き金にかけた指を引ききり、閃光が迸る

ことはなかった。

 

 金色の左目を一瞬強く見開き、引き金を引いても弾が出ないことに困惑する彼女、しかしその理由は──明快。

 

「そういえば弾を抜いておりましたな……」

 

 誤射暴発防止の為に彼女自身が弾を抜いていたからだ、はぁ……とため息をついた彼女は銃を左手に持ち替えながら空の弾倉を抜き右手でジャケットのボタンを外し、前を開いてその裏に忍ばされた予備弾倉を器用に右手で取り出して、左手に握った銃へと弾倉を押し込むと右手でコッキングして薬室へと弾丸を送り込む、自動拳銃はあくまで撃発後に自動で次弾を装填するだけで初段装填は手動なのだ。

 

 ビシバシとぶつかり続ける弾丸が彼女の背を支えるコンクリ壁を削っているが、流石に銃弾でコンクリートを即時に貫通はできないのか、削れる程度に収まっている

今ならまだ物損・人的被害なしの軽微な誤射事故で済ませられるだろう。

 

「そこまでにするがよろしい」

 

 弾を込め終えた銃、無銘:試製拳銃付軍刀を右手に握り直して発報、自分たちのそれとは異なる銃の発砲音に気づいたのか、一瞬だけ彼女らが怯むその隙に

コンクリ壁を飛び登り、4階建てのビルの屋上へ移動して不良達の頭上から飛び降り、右にいたSMG持ちの後頭部を狙撃すると同時に左のAR持ちに軍刀の鞘による殴打を加えて気絶させる。

 

「おやすみなさい、お二方」

 

 現在時刻は午前2時、日が暮れるどころかじきに日が昇るという頃になってようやく連邦生徒会としての仕事が片付き、やっと家に帰ろうという時にスケバンに絡まれてしまったのである

この2人は大した実力者というわけでも無かったからまだマシだったが、これで正規訓練を受けた軍事組織に所属する生徒や専門職の兵士のような高度な戦闘力を持った人物が相手であったらどうなっていたことか。

 

「ともあれ、ヴァルキューレは24時間緊急対応なのが助かりますな」

 

 市民の生活に寄り添う警察組織であるヴァルキューレ警察学校は24時間365日通報を受け付けているので、夜中や明け方に急遽電話を掛けることになっても問題はない

まぁしかし心情的にはあまり迷惑をかけたくないので、明日に回したいとは思うのだが

下手に気を使って通報が遅れてしまい、逆に『この事件があったことを隠蔽しようとした』とでも見られれば連邦生徒会に所属する生徒としては立派な問題行為であり、仮にも調停室直轄組織であるプレパラートの存在意義を問われることになるし、そもそもヴァルキューレのお世話になるのはこちらになってしまう。

 

「何事も難儀であります」

 

 左腰に刀を納め、ヘイローの消えた2人の生徒を引き摺るようにしながら運ぶ、生徒はみな等しく羽毛や砂糖や素敵なもので出来ているため非常に軽いのだが、それでも体積が大きいと運ぶのには苦労する

結局ヴァルキューレの交番までたどり着くにはさらに20分ほど掛かってしまった。

 

「夜分遅くにお疲れ様です」

「いやいやそちらこそ、こんな夜更けにまで対応させてしまって申し訳ない事です

彼女達は夜中に細道を歩いていた俺に驚いてしまったようですが、発砲以外にはさしたることはしていないようであります故、大ごとには出来るだけ……」

「わかりました、こちらも事情聴取などありますので内々に済ませられるかは分かりませんが、明日にでも本人聞き取り含めて諸々検証させていただきますので、ご協力の程宜しくお願いします」

 

「承ります」

 

 形式的なやり取りを終えて、交番を後にした彼女はそこからさらに外郭地区の外側へ30分かけて歩き通してようやく自宅(1K築50年の安アパート)へと帰り付くと

扉を開けて内に転がり込み、そのままスカートのホックを外して脱ぎ捨てて、ジャケットを放り捨てるようにハンガーに掛けてノースリーブのYシャツとパンストで部屋内を彷徨く亡者と化した。

 

「くぅ〜〜疲れました……」

 

 膝をついて小さな冷蔵庫を開けると、下の段から出てきた豚バラ肉とベジタブルストッカーには玉ねぎとジャガイモがそれぞれ2つ、油はマーガリンで代用するとして、考え得るメニューを浮かべるなら。

 

「シチューかカレーか回鍋肉か豚丼か……いいや、炒めてしまおう」

 

 まずは無洗米を1合分炊飯器で自動炊きを掛ける、30分ほど掛かるのでその間にお風呂だ。

 

 パジャマとバスタオル3枚、クレンジングシートと誰に見せることもないようなシンプルな下着セット、ドライヤーと櫛はいつもの場所にセット済み、ガスの温水スイッチを入れてお湯を送り、シャワーの最初の冷水を排水口に直流ししてやり過ごしたら準備OK

髪先を湿らすように軽く水を通したらお気に入りの椿の香りがするシャンプーを1プッシュして片手に取り、塗り広げるように泡立て、額からつむじ、後毛へと手櫛をそっと通して射干玉の黒髪を濡羽に染めてゆく

当然ながらその間も寒いので胸元あたりにシャワーヘッドを載せて肘と脇で押さえ、全身にお湯を掛け流して保温しながら頭皮を優しくマッサージしつつ髪を梳かしていく。

 

「あったかいお湯は身体の味方、ソープの泡はお肌と髪の味方……面倒でも美容は後に役に立つです」

 

 『貯めていいのはお金と知識とあとは魅力とお湯と食料だけ』というのは彼女が頼りない金髪の先達から受け継いだ数少ない実用的な教えの一つである。

 

 ひとしきり髪をいたわった後、次は顔だ、メイクは動き回る仕事の都合上どうせ崩れるからとロクにしていない身だが、それでも高校生の乙女であるからして、よほど忙しい時以外には多少の手遊び程度には整えている。

メイク落としのクレンジングシートで目元や頬の辺りを押さえる、ただし擦らない、吸わせるのだ

じっくりとメイクを吸着させながら左手で背中にざっくりシャワーを掛ける、空気に触れていた部分がお湯を浴びることで一瞬急激に体温が下がったような寒気を感じるが、すぐにお湯の温度が背肌を通して身体に流れ込んでくる

 

「んー……よし」

 

 クレンジングシートをとって握り込みながら右手で扉を開け、それをゴミ箱へ投げ込みつつ、太ももに挟んだシャワーヘッドは下向きに押さえ込んで飛散を飛ばさないようにする、フリーになる左手は同じく椿の香りがするボディーソープを手元に引き寄せていた。

 

 首の裏にかかる髪を纏めて掻き上げ、頸を露わにしてそこにタオルを乗せる、垢擦りは強く皮膚にこびりつく角質や汚れを擦り落とせる一方、硬いために繊維が擦れた際に肌に傷を残してしまうので、結果的に肌荒れやシミなどに繋がる事になる

そのため柔らかいタオルを使って優しく擦るほうが後々の肌年齢に良いのだという、肌の張りや乾燥が気になるような歳ではないが、タオル無双

〜歳とってからあの時云々と後悔してももう遅い〜

のだから先んじる事は大切であろう。

 

 首、肩、鎖骨、そして夏は特に谷間の蒸れる胸、いやおっぱいが柔らかなタオルに擦られて滑り良い泡に濡れた肌が小刻みに揺れる。

 

「んっ……んっ……ん、おっぱいが大きいと肩が凝る、だとか言われるですが、結局のところ下が見えないデメリットが大きいですな……」

 

 この胸に魅力がないとは言わないが、その存在のおかげで革靴の靴紐を結ぶことすら苦労するのだから一長一短の困りものだ。

 

 お腹を冷やさないようにシャワーを当てつつ身体全体を揉むように洗い切り、泡を流して浴槽に浸かる

紅茶色の湯船にはシュルトケスナーもずくが入っている……訳ではないが、トリニティ地区に行った際に目についたお風呂用紅茶という意味不明なアイテムを試してみたところハマって10袋分ほどまとめ買いしてしまったのを消化中である。

 

「ふぅ……」

 

 足先に今日つけてしまった傷はすでに瘡蓋になっていた、その傷跡の様子を眺めながらぼんやりと思索する彼女の脳裏には何もなく、ただ宇宙だけが広がっている

彼女が風呂場を離れるのは実に30分後の事であった。

 

 バスタオルを髪に巻いて水分を浸透させると同時に頭皮を養生し、蒸しタオルを目元に当てて目を保養する彼女はあまりの疲労から寝落ち仕掛けていたが、炊飯器の炊飯完了のビープ音で目を覚まし

浴槽に沈んでいた体を起こして胡乱な目で浴室の扉を開けるのにはさらに5分ほどを要し、そこから髪を乾かすのにさらに多少かかったことは明記されるべきであろう。

 

「あぁ〜泣きそう……」

 

 適当に玉ねぎを1/4程細かめに刻み、ジャガイモは1個を16分割して一口大に、まずはジャガイモを鍋に張った水に入れて煮たたせて灰汁を取り、少し固めくらいの頃合いに玉ねぎを入れて再び煮込む

水気が飛んできたら少し具材を別皿に取ってからマーガリンをヘラで少し掻き取って鍋に入れ、それが黄色く泡立って溶ける様を眺めながら豚肉を入れてかき混ぜる

肉に焦げ色がつき始めたら火を止めて平皿に移して完成、彼女の得意料理【適当なナニカ】だ。

 

 味噌汁はインスタントのそれを湯に溶いて刻みねぎと別皿に移した玉ねぎとジャガイモを入れてやる、豚肉抜きの豚汁じみた様相になったそれと大きめの茶碗に装う白米、そしてこちらもミレニアム由来の真空パック漬物の沢庵を小鉢に盛り込み、主食・主菜・副菜・汁物の一汁三菜の膳を配して、気に入りの小さな骨のようなデザインの箸置きにそっと漆塗り箸を置いたら完成だ。

 

「いただきます」




初投稿です

ぶっちゃけ内容どうしよう

  • ストーリー重視(このまま)
  • はやく原作入れ(会長失踪)
  • 戦え……戦え…(戦闘重視)
  • 旅しろはよはよ(関係重視)
  • 消えてクレメンス(削除)
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