百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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十発目

「俺はもともと、百鬼夜行の出だったんです、1年次は百花繚乱という組織に所属していて、そこで警察みたいな仕事をしていました」

 

「では……」

 

 右目の義眼、人工水晶の赤い瞳の奥底の機械部品を見ていたのだろうウタハが姿勢を戻して椅子に戻る

どうやら盗品や強奪というわけではないことは理解してくれたのだろうか?

 

「あのとき、何者かによる事件が起こった事で、当然俺も駆り出されたんですが、その『何者か』が火を放ったのか、あるいは戦闘や避難中の事故なのかは不明ですが、周囲一面が焼けるほどの大火災が起き、その炎や無数の敵に対処するために駆け回って、敵を倒しながら避難誘導を続けていたら火事場に取り残されて、もともと赤かった目は火事の煙で焼かれて金色になってしまったし、右目は抉れた上に焼けて再生不可能になっていました

だからこの異色の瞳(オッドアイ)は後天的に変色したものなんです」

 

 椅子に座り込み考える姿勢をとっていたウタハがスパナを置き手袋を外して机に置いてあったコーヒーを手に取り、こちらへと向き直る。

 

「なるほど、それは元々かと思っていたが左目も変色したものだったのか、いや私としては先輩方が作った『眼』が本来の使用者以外の下にあるという事態が起こっていないという事がわかっただけで満足だよ……それよりも、君、何度リミッターを外した?」

 

「えっと……なんの事でございましょう」

「惚けても無駄だよ、人工瞳孔の奥にある集積回路が一部焼き切れ掛けている、これは過電圧が流れた証拠だ

それを使うたびに脳味噌が焼けるような激痛と、義眼の視力低下が起きているはずだ、何度それをやったんだい?」

 

「ゾーンを使ったのは2年次に上がって、戦闘職に戻ってから5度、といったところでしょうか」

 

「本来は隠された仕様であるCPUへの過負荷による強制的なオーバークロック、脳からの微電流を感知して自動的に視線を追従させる機能を利用して過剰な集中・興奮を起こす事で内部電圧を引き上げて無理やり時間間隔を狂わせたね?」

 

「あっ、もしかして時間が遅くなる感覚って脳じゃなくて義眼で使ってたでありますか?」

 

 義眼装着以前からゾーン状態は使えたが、時間が遅くなるような感覚の分は右目分の視界回復にともなう性能向上であると考えていたのだが、まさか義眼自体がリミッター解除の補助装置となっていたとは思っていなかったオウカ、自信満々に『脳のリミッターを外した』などと言いながら実際に外れていたのは義眼のリミッターだったなんて言われたら大恥である。

 

「知らずに起動していたか、あるいはそれも嘘か、まぁいい、兎にも角にもメンテナンスが必要だ、その目も随分と視力が落ちているだろう?最近はほとんど見えていないんじゃないか?」

「それは確かであります、結構前に視線追従がうまく動かなくなったので最近はずっと左目でものを見ておりますな」

 

「はぁ……すぐに修理をしてあげよう、断言するがもうまともに動くどころか完全破壊寸前の状態だ、整備マニュアルにも『壊れるからリミッターは外れるような運用をしないでください』と書いてあっただろう?」

 

 呆れたようなため息と共にコーヒーを飲み切り、再び手袋をとったウタハがオウカへと右掌を向ける。

 

「ほら、外したまえ」

「はい」

 

「製造当時の整備マニュアルもあるから二、三日あれば修理も終わるだろう、その頃に取りに来てくれ」

「わかりました」

 

 強い衝撃でも外れない・壊れないように外郭に超硬金属を使った銀色の義眼、表側は生身の目と同様に白目や血管を模した偽装がなされたそれを正規の手順で外してウタハへと手渡す、そして部屋を後にするという直前。

 

「こんなに義眼を酷使しているという事は、君の銃もよほどの状態だろう?ついでに直しておくから置いて行きたまえ」

 

 こちらに背を向けたままで、ウタハはオウカは向けて語りかけてきた。

 

「なに、心配する事はない、ミレニアムは治安が良いと各所で有名になるくらいでね、そうそう乱闘や銃撃騒ぎは起きない、それでも心配なら私の作品の……この子を貸し出そう」

 

「その子……作品のことを子供と呼ぶ質でありましたか、それで、この子の性能は」

「登山用自衛火器試作機、岳くんだ、弾は9パラのフルオートピストル、Bluetooth接続機能と自爆機能とこっちのリングとワイヤーで繋がっていて手首に引き戻してくれる、あとサイドレールにピックアタッチメントを取り付ければツルハシ代わりにもなるよ」

 

 彼女がこちらに手渡したのはピンク色をした拳銃、本来ならサイトを着けるのだろうサイドレールには鋭く湾曲した鶴嘴(ピックアックス)状の追加装備が取り付けられている。

 

「登山用装備ですか?」

「もともとはその想定だったよ、ただ山の中はBluetoothからインターネットに繋げる事ができないケースが多くてお蔵入りになってしまったものだ、試作だけして放置というのもエンジニア的に縁起が良くない、しばらくの間でも君が使ってくれればその子も喜ぶだろう」

 

 通信中継機器のような中大型機械を用いなければ、山の中ではネット回線接続はできないというのはまぁ当然だ、せっかくツルハシやらワイヤーやらシャベルやらナイフやらと多様な機能を搭載されている『(いわやま)くん』とやらも宝の持ち腐れになってしまうのもまた、自明の理である

 

「わかりました、俺の銃は試製拳銃付軍刀です、百鬼夜行の元・試験兵装で放置されていたもので『軍刀の柄に拳銃を仕込む事で遠近両方に対応する装備』だそうですが、今は刀身が折れてしまって銃弾自体は出ても銃内部も若干歪みが出て狙いが狂ってしまっているので、修理をお願いします」

 

 オウカがホルスターに掛けた刀身の折れた銃と、現場から回収された砕けてしまった刀身の破片をテーブルに置くと、興味ありげな光ある瞳を取り戻したウタハがこちらへと振り向いた。

 

「ほう?……それはなかなかの浪漫ある武装だね?仕様書とか、設計図とか、何か……最低でも破損以前の状態の写真とかはないかい?」

「残念ながら、その他の物はほとんど百鬼に置いてきたままになってしまいました」

 

「それは……残念だな、こちらでできる限り復元して見るが、フォルムがいくらか変わることになるかもしれない」

「大丈夫です、元の形に拘っている場合ではありませんから」

 

 しんみりした空気になっていたオウカの後ろから控えめな咳払いが聞こえる、すると諸々をテーブルに並べていたウタハはクスッと微笑してオウカへそろそろ出るように促した。

 

「我らが書記様がお待ちのようだ、行ってあげたまえ」

「その言い方だと北のほうの国家元首みたいでありますな……」

 

 『地上の航空機からベイルアウトで射出されていく国家元首』のイメージ図を首を振って否定しながらノアの待つ扉の方へと戻り、最後にチラリと視線をウタハの方へ向ける

彼女は義眼を何かの液体に浸してぬめりをとっているところだった。

 

「随分お話が盛り上がっていましたね?」

「お時間お掛けして申し訳ありません、ちょうど破損中だった銃の修理とメンテナンスを引き受けてくれるとの事だったので、お願いしていた次第であります」

 

「あら、銃が?」

「はい、代用として『(これ)』を貸していただきました」

 

 取り出した目立つピンク色の銃を見せてみると、それで納得してくれたのだろう、彼女は再び先導を始める。

 

「それじゃあ、行きましょうか、予定時間から6分40秒ほど遅れています」

「おっと、急がねばなりませんね」

 

 少しだけ早足で動く歩道を抜けて次の部活、新素材開発部の部室へ、さらに野球部やトレーニング部などを早足で抜けてゆき、最後の部活として紹介されたのが彼女達。

 

「ノア!?なんで急に?」

「えっ?」

 

 猫耳ヘッドフォンと猫尻尾のアクセサリーをお尻から生やしたジャンパーの少女達だ。

 

「ここがゲーム開発部の部室です、本当はもう一人居るのですが……姿がみえませんね」

「ユズはいないよ!」

 

 慌てて部室中央のソファから飛び起きて部室の隅にあったロッカーを庇うように背にするピンクの少女と、お姉ちゃんそれバレバレだよ……とつぶやく翠の少女、どうやら双子らしい。

 

「初めまして、ゲーム開発部の御二方、俺はアビドス高校から留学に来た2年の憂晴オウカ、よろしくお願いします」

「まさか本物のオレっ子?ゲーム以外でオレっ子属性なんて初めて見た!」

 

「話が……通じていない……?それに俺っ子属性って……」

「そうそう!一人称が俺な女の子の事をオレっ子っていうの!特にオウカの場合は感じの方の『俺』だね!」

 

 物怖じしない正確なのだろう、ピンクの方がハイテンションで語りかけてくる、一方ソファの方からはお姉ちゃん失礼だよ……と同じような呟きが聞こえてくる。

 

「それじゃあ私達も自己紹介だね、行くよミドリ!」

「えぇ〜……」

「ほら行くよ!私は才羽モモイ!ゲーム開発部のシナリオライターを担当してるよ」

「私は才羽ミドリです、主にイラストレーターを担当しています、お姉ちゃんが失礼でごめんなさい」

「大丈夫、ちゃんと謝れるならそれで良いよ」

 

 ぺこり、とソファから立ち上がった彼女が頭を下げてくるのを制して、それより、と疑問をぶつける。

 

「ネコミミと尻尾ってどこで売ってるの?可愛い」

「えぇっ?!……これどこで売ってたっけ?」「去年買った奴だけど、これ確か作ってたお店がもう潰れちゃったんじゃ……」

「そうでありますか……」

 

「あっ、そうだオウカ!私達ゲーム開発部にはもう一人メンバーがいてね」

 

 空気が一瞬落ち込んだその時、モモイがインターセプトして自分の背後にあるロッカーを指さした。

 

「部長のユズ、ずっと前にちょっと問題があって今は出てこれないけど、ゲーム開発部の部長なの!」

「そうでありますか……では、部長殿、顔を見せない非礼をお許しください、俺はミレニアムサイエンススクール留学二年生、憂晴オウカと申します」

 

 ロッカーに向かって頭を下げるオウカと、それに呼応するかのようにガタガタ揺れるロッカー、重度の人見知りか対人恐怖症かなにかだろうと予測したオウカはユズと呼ばれたロッカーを無理やり開けようとはせず、一言だけを置いて帰っていく。

 

「あっ、ノア!今度の部周回では予算増額案出せて!」

「だめですよモモイちゃん、お金の事はちゃーんと会計担当者に言わないと、ね?」

 

「なんというか……破滅的な光属性、ですな」

「そうですね……」

 

 ユウカの話にあった『問題』とはこの辺りのことなのか、と思考を巡らせるオウカであった。




初投稿です

ぶっちゃけ内容どうしよう

  • ストーリー重視(このまま)
  • はやく原作入れ(会長失踪)
  • 戦え……戦え…(戦闘重視)
  • 旅しろはよはよ(関係重視)
  • 消えてクレメンス(削除)
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