「最後に紹介することになるのが……ここです」
ほかの部室とは違う棟、理科室、図書室やその他特殊教室などもある関係で普段は人がいない場所の、閑散としたその一角に掛けられた名は
革新や進歩を常に希求するミレニアムの校風に於いて敢えて
「ここは非・公認部活動、ヴェリタスの部室……正確には『部室と称して不当に占拠している部屋』です」
「あくまでその体裁なんだ…」
「はい、ヴェリタスの設立は2年前なのですが、セミナーによる正式な部活動設立認可を受けずに今に至っているので、部費も自分たちで賄っているようですし、活動実績も自前で他企業に売り込んだり、発表したりしていますし、この部屋も正式な部室ではありません」
「つまり……ヤバい人たち、という事でありますか?」
「随分言っているようだけれど、あなたが例の留学生かしら?」
その言葉と共に目の前に鎮座していた扉がプシュッという軽い空気音と共にスライドし、扉の向こう側の暗がりから紺色の髪のメガネの女性が顔を出した。
「チヒロさん?おはようございます」
「あ、おはようございます」
「挨拶はいいよ、見学に来たんでしょう?」
彼女の名前はどうやらチヒロというらしい、色といい名前といい生まれた事が消えない罪になりそうな人物だ。
「彩度が下がってきておりますな」
「なに?彩度?……別に部屋が暗くても色覚は落ちないよ
まぁいいや、さっさと済ませちゃおう
私達はヴェリタス、さっき紹介されてたみたいだけど、ホワイトハッカー集団よ、私は副部長の各務チヒロ、奥に居るのは
[だれがプリキュア声ですか誰が!このミレニアムの高嶺に咲く一輪の花にしてアルプスの白雪の如き超天才病弱美少女ハッカーを蔑称するなんて許しませんよ!]
適当なゲームアバターのような雑な紹介をチヒロが出したその時、部屋の奥にあったモニターが突然車椅子に座った白髪の女性を映し出し、ハリーポッターの吼えメールのように大音量での大騒ぎを始めるが、肺活量がないのだろう彼女は数分語り続けた後やがて静かになった。
「あー……あれが明星ヒマリ、ウチの部長、聞いた通り面倒でしょ?」
「……なるほど」
いくら顔と声が良かろうと興味もない自分語りオンリーで毎度10分潰すレベルの長話を頻繁にされるのは正直不愉快と言わざるを得ない、流石に毎日付き合っていられるものではないだろう。
「それでは」
この事態を予測していたのだろう、既に脱出していたノアと合流するために最速かつ最巧の動きで衣擦れ一つ鳴らさずに退却する、後ろでガミガミ行っているヒマリとやらは車椅子なだけあってやはり直接戦闘の心得はないのだろう、意識の隙を縫ってそっと抜け出すことに成功した。
「これをもちまして、学校施設・部活動紹介は完了となります、なにか質問事項などはありますか?」
「いいえ、大丈夫です」
「うふふっ、行けませんよ?就職面接ではこういう時、何も言わないより何か聞く方が有利です、何かを要求・質問されたときに何を返すか、が評価の基準点になりますから」
取り敢えず早く話を切りたかったオウカだが、ノアは柔らかな笑顔と声色のままダメ出ししてくる、何か尋ねろという事なのだろうか。
「そうですね……新素材開発部とかゲーム開発部とか、事あるごとに予算が予算がって言っていましたが、そこまで予算計画って厳しいものなのですか?」
「そうですね……部費は各部活の活動実績や参加人数、それに直近の活動の履歴などによっても変わってきますが、当然各部活動に分配されるそれもミレニアム全体の運営費の一部になってきます、収益は上げていても明らかに無駄な浪費をしていたり、利益にならない、または問題行動ばかり起こしたりする部活に分配する予算は削る方向に動いています」
やはり定石というか、期待に満たない部活動は切り捨てて役に立つ活動に金を絞る、という経営の常識に則った運営計画を立てているようだ、それにしてはモモイはブヒブヒと言っていたが、私用で使い込みでもしているのだろうか?
「具体的な部活名を上げるなら、エンジニア部などが請求してくる予算はとても大きな額になりますが、それ相応の活動実績や研究結果が出ているので認めますし、ゲーム開発部は数十万程度の請求額ですが、ここのところ何も成果が出ていないので削られていて、メイド部は仕事中に物を壊してしまうことが多いので、その分が差し引かれています」
「……どこも財布事情は厳しいでありますなぁ」
流石に9億借金しているアビドスほどではないのだろうが、と嘆息すると、ノアも流石に借金額がアレだったのか若干引いている様子だ。
「それで、今までの見学を終えてどこに所属したいかは決まりましたか?」
「俺は……やっぱり部活動所属よりも、普通に外部企業とかで仕事した方が儲かりそうだと思います」
「それは……厳しい道ですよ?正直に言えば企業というのは『人材』不足と言いながら、実質のところは『無給無休で働かせられる有能な奴隷』不足、のような最初から要求が破綻した状態ですし、社員としての人材育成・負担の分配を考えない即戦力だけを雇用してすぐ使い潰すローテでその場限りの延命を繰り返している企業ばかりですから、適当なところに採用試験を受けに行ったところで初年度の一般的な年収は250〜400万クレジット程度なので、おそらく意味が……」
ノアの言葉は嘘偽りも誤解もなく事実、会社とは常に安く有能でかつ足蹴にしても文句を言わない奴隷を欲しがっているのであり、縁故以外ではそもそも昇進などという可能性は存在しない、どこかの求人広告の謳い文句のように給料が上がることなどほとんどないのだ。
「エンジニア部や新素材開発部やトレーニング部やで月収700万稼げるでありますか?無理でしょう、そもそも出稼ぎに来たのであるなら働いて稼ぐのが俺がするべき事でありましょう?」
「うーん……そうなると難しいですね……700万?待ってください、そもそも一般的な融資の利息分は10年単位の返済期限に対して総額の1%〜2%で、2%でも貸付期限時の債務合計額が9億1800万前後のはず、粗く概算してあるとしても一人で月700万は返済を急ぎすぎでは?」
「いいえ、もうとっくに返済期限は過ぎていて月単位で集金していきますし、1ヶ月に概ね760万が利息分になるであります、
ノアは何故そんなところから借りたのか、と言わんげな表情と共に絶句するが、彼女自身もアビドスの砂漠化は長きに亘り万策を以って食い止めようとしてもなお止まらずに押し切られてしまったという話は知らないでもない事だ、当時はさらに有名な話だったのだろう
そんな回収できると思えないような場所に金を貸すような企業は、確実に回収するための『何か』を持った、つまり裏のある企業でしかありえない
そこまで思考が及んだのだろう、ただでさえ白い顔を青褪めさせる。
「ちょっと待ってください、アビドスの生徒数って、何人ですか?」
「在校生は5人と俺だけであります」
「無理です、だって月単位で760万なんて6人で稼げる額じゃありません、生徒数が100人単位ならまだ現実的かも知れませんが、一桁の人数でそんなことが」
「その不可能を可能にするために出稼ぎに来たでありますよ、稼げる場所を探して」
ノアはすぐにスマホから、おそらくユウカへ電話を掛けようとしたのだろうが、繋がらない
おそらく会議中で電話を切っているのだろう。
「なので、なるたけ割りの良い仕事を狙って行きたいでございます、少なくとも一千万くらい貰えると理想的でありますな」
「私は、今まで楽観的に考えすぎていたかも知れません、まさかそこまでアビドスの状況が悪いだなんて……でもオウカさん、これだけは約束して貰いたいのですが
内臓や学籍の違法売買、禁制品の密輸、違法薬物の製造や取引、これらには決して関わらないでください
違法行為による利益はそれ自体を没収された上でさらに罰金がかかるケースがほとんどです、ヴァルキューレも罰金で稼いでいるので犯罪者は金蔓にされてしまいますから」
「そりゃあわかってるでありますよ」
ついこの前まで自分が狩る側だったのだから、オウカもヴァルキューレの腐った狗っぷりはよく知っている。
「私はユウカちゃんに相談してコンサルタントをお願いしてみますが、そこまで膨大な借金となると流石に非現実的ですから、ユウカちゃんでもあまり期待はできません
セミナー側から個人エージェントとして
「あまり期待は出来ない、でありますか?仕事があるだけありがたいでありますよ、実力はまぁそれなりにあるつもりなので、戦闘系の依頼があればガシガシ回して欲しいであります
……えっとたしか、次は学力テストでしたか?」
「はい、全教科2年次学力調査テストと同じ内容の物です、実施場所は理科教室になります、予定通りならもう試験担当官の方もいらっしゃいます」
コツコツと規則的にハイヒールの歩く音を鳴らしながら、動揺を無理に落ち着かせようとするかのように深呼吸したノアは、そういった行動が大半無駄に終わる凡例とは裏腹に、すぐにいつもの雰囲気と語調を取り戻していた。
「じゃあ急ぎましょうか、確かすぐこの下でありますな、体験授業用の教室なんて滅多に使わないから覚えていたであります」
「うふふっ……正解です、それじゃあ急ぎましょうか」
なお、オウカは腐っても連邦生徒会役員であり、各校から選ばれたエリートであることを忘れてはならない
もちろん、試験結果もそれに恥じない程度の点数を叩き出していた。
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)