シャラララララーン、と耳元で鳴るスマートフォンのアラーム通知、午前7時00分を告げる音色は星の彩をイメージしたウィンドチャイムのような金属質な高音だ、夜空を満たす無数の星の瞬きなど太陽の煌めきの前では掻き消されて見えないはずなのに、なぜか彼女はこの音色を気に入って毎朝自分に
「おはよう…ございます……」
誰に聞かせることもない寝ぼけた声、朝日の差し込む窓は埃っぽく、空気に光が乱反射して瞬いている、もちろん時間に余裕はない
自宅から連邦生徒会校舎に登校するとなれば移動に20分ほどはかかる、10分で支度しても朝食の時間を考えればギリギリだ。
「よっ……と!」
完全に意識が覚醒したことでヘイローが回転しながら出現し、独特なサウンドエフェクトが響く『ぴこーん』とすこし間抜けな音だが、彼女はこの音を認識できないため、それを気に食わないと感じる事さえない
彼女のヘイローは紫色の橘の花弁を象った、いわゆる花冠型と呼ばれる百鬼夜行ネームドによくある類のものだ。
身を起こした彼女は4時間程度の睡眠では到底消えない疲労感と暖かな布団に心を溶かされそうになりながらもなんとか二度寝を拒否し、昨日の夜食に炊いた米の残り半分を電子レンジで再加熱しながら○ファールのポットでお湯を沸かし、調味料に醤油・マーガリン・生姜・粉末茶漬けパックを用意し、焦がし醤油風味のバターライスと鮭茶漬けをそれぞれ作る準備を完了、加熱が終わった解凍米をさらに半分にして茶漬けの方はそのまま茶碗へ入れ、粉末茶漬けとお湯を掛け入れて少し待つ
残りは鍋に投入して加熱しながらマーガリンと醤油を適量(どちらも大さじ3杯ほど)を混ぜて菜箸で掻き回すようにしながら焼き上げる
その間に巻き上がる熱気と芳香で意識をしっかり覚まし、茶漬けに湯が浸透して柔らかくなるのを見届けながら鍋に少しだけ水を入れて、ジュウジュウと湯気を上げるバターライスを冷ますフェイズに入った。
「いただきます」
茶漬け一椀といえども、いただきますとごちそうさまは欠かせない
スカルマンの骨を模したデザインの箸置きからシンプルな青い箸を右手に取り、茶漬けを掻き込む
あまり時間がないため、誰もが一度は夢見るような優雅な朝ではないにせよそれなりに気を休められる、そんないつもの朝だ。
「生卵が欲しいですな……」
彼女が愛用する卵は『トリニティの卵』などという羽のある彼女達を揶揄う悪ふざけのような名前のブランドだが、まろやかな口当たりに深いコクと甘みのある黄身がお菓子類や乳製品との相性が良いものだ
トリニティの名を使っているだけあって少々とはいえないほどに高価ではあるがお高いだけあってそれに釣り合うくらいには味と品質は良い。
ベーコンエッグや卵かけご飯にするにもフレンチトーストなどにするにもホットケーキなどの生地に使うにもよく合うので、彼女はそれを気に入っている、しかし今の彼女は仕事が忙しくあまり家に帰れていないため、生食品は冷蔵庫の中で傷ませてしまうことはわかりきっている、苦渋の決断だが諦めるしかなかった。
「チャーハンも卵があればより美味しく仕上げられるものを……」
茶漬け米を掻い込みきってごちそうさまを宣言し、箸と椀を流しに置いた彼女は一つ大きく息をついて、鍋からタッパーにバターライスを移して詰め込む
ある程度冷めてはいてもきっちり全体が冷めきってはいないので、このまま密封してしまうと、熱によってタッパー内部の容積が膨張した状態から、冷めて収縮した分気圧が下がることになり、結果的に空気圧で蓋が締め込まれる事になる
そうなるとなかなかフタが開かずに指先の爪が割れてしまうような事になる
そんな時にはこれ、ミレニアムの……ではなくその辺の100均で売っている一部だけフタが二重になっていて空気穴を開けられるようになっているタッパーである
汁気と逆さになる場合にさえ気をつければ米一つ通さない程度の直径の空気穴が空いていても使用上問題はなく、かつ流体の平均化作用を生かして内部を1気圧に保つことができるという素晴らしい製品だ。
「コストもさして高くなくかつ使用感良好、素晴らしい商品であります」
いつもながら科学者の発想や努力には感心させられるものだ。
「あっ鍋を洗ってしまわないと……!」
時間が差し迫って来ていることを思い出した彼女はすぐさま鍋を流しに移してタワシとスポンジに洗剤を2プッシュしてゴシゴシと洗い始める
程なくして乾燥ラックに上げられた鍋や皿はピカピカになっていた。
「割り箸よし、ドリンクよし、髪型よし、銃よし、靴……まぁよし!(本当はちょっと汚れちゃってるけど)制服……よし、準備完了、最終確認ヨシ!」
家を出る前に玄関の姿見で自分の姿と準備品を順次確認、最後は指差し確認で左手を背中に、胸に沿わせた右手をおへその前で90度曲げて前に出し、人差し指で鏡を指差す、最後は左太ももが地面に水平になるまで持ち上げて元気よく、ヨシ!と宣言する。
「行って来ます!」
走り出した彼女はそのまま5分ほど走り抜いて最寄りの駅へ辿りつくと定期券で改札ゲートを通り、慣れた動きで8番ホームへ歩く
そのままちょうどホームに来ていた西連線上りのサンクトゥムタワー行き7:40発に乗り込み、大きく一つ息を吐く
これで大きな事件や爆発騒ぎなどがなければ10分後には連邦生徒会校舎にたどり着く
そしてそのままウォークインで7:55分には
「まもなくドアが閉まります、ご注意ください、また危険ですので駆け込み乗車はおやめください」
ツシューッ、という空気の抜けるような音と共に扉が閉まる、何人かスケバンが扉にへばり付いているが、あれはギリギリになってホームに駆け込んできてむりやりに乗車を試みたのだろうか?
もちろんとても危険な状態なのだが、それは自己責任という事なのか無理やり発車していく列車、そして駅のホームの終端の金網に引っかかって置き去りにされていく不良生徒……哀れな事だが、彼女達は一応通学を試みている分マシな部類の不良なのかもしれない。
[この電車は西連線上り普通列車でーす]
毎日変わり映えがしない内容でも楽しそうな車内アナウンスが次の駅名を宣言する。
[次はー箱売橋ー箱売橋ーお出口はー右側でーす]
[地下鉄ミレニアムサブウェイー連邦線はーお乗り換えでーす]
[お降りのお客様はーお荷物等お忘れ物のなきようお気をつけください]
スマホをぽちぽちしながら時間を見計らい、今日のニュースや株価の推移などを流し見する
カイザーはまた少しスコアを伸ばしているようだ、どうせ悪どい高利貸しでもやって無理やり利益を吸い上げているのだろう
テンプル商会は少し信用を落としたようだが、これは連日の工場の爆発事故によるものだろうか。
[次はー連邦校舎前ー、連邦校舎前ー]
聞き慣れた声でのアナウンスが、彼女を画面から現実へと引き戻した
カバンを引き寄せて膝に置いた彼女は駅への到着に備えて視線をスマホから上げる。
[ドアがー開きまーすご注意くださーい]
連邦生徒会の生徒やその他付近の学校の生徒達が次々に降りていく流れに乗っていき、彼女も一緒に連邦校舎に流れ込む。
「おはようございます」
「おはようございます」
「あ、おはよー」
「おはよー」
「おはよう」
「あっ、おっ、おはようございますっ」
廊下の床や壁、時計や窓枠に至るまでほとんどの調度品が白色に統一された連邦生徒会の校舎を歩き回る、いつもの挨拶巡りでそれぞれモブ、モブ、交通室長、モブ、最後のが彼女の直接の上司に当たる調停室長である。
「いつも思うんですけど、先輩は金髪綺麗ですよね」
「えぇっ?そうでしょうか……その、ありがとうございます」
引っ込み思案な性格が強く、年下にも敬語を使う彼女と初めて話した時は年功序列の染みついた身としては困惑したものだが、今ではそういうものと割り切っている
『彼女に敬語を使われるのが奇妙であると思うなら、彼女に敬語を使われるのが当然になるほど偉い人物になれば良い』という不知火防衛室長からのアドバイスはオウカが己を見直し、より一層仕事に打ち込むきっかけになったので、不知火防衛室長には内心感謝している。
「先輩は手入れとかってどうやってるんですか?」
「その……私は、あまり細かく気をつけてはいないんですが……あっ、シャンプーはミレニアムの高級品を使っていますから、今度分けてあげますね」
「うっわめちゃくちゃ高そうですね……」
「すみません、単体での値段はちょっと覚えていません」
「ですよね」
実はでもなくめちゃくちゃ金持ちな岩櫃調停室長、この人はあまり細かく値段を計算したりはしない性質であるため、物の値段は覚えていないことが大半である、唯一気にしているのは好物のスイーツの値段とカロリーであろうか。
「今日もお仕事、お願いできますか?」
「もちろんです、さぁ、今日も仕事を始めましょう」
いつもと同じ言葉と共に、いつもと同じ仕事が始まる
初投稿です
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)