百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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二十発目

「よし……あとはネル先輩を待つ」

 

 潜入に成功した後、未だに戦闘を続けている彼女との合流を優先して、一旦廊下で待機するオウカ、もちろん気配は消している

レーザー光もオートマタもくる気配はない、一つ大きく息を吐いて

 

「……」

 

 静かに呼吸を止め、目を見開いた。

 

「便利屋69(シックスナイン)……!?」

 

68(シックスティエイト)よ!何度も間違えないでちょうだい!」

 

 深呼吸の最中、廊下の奥から姿を現したのは以前ゲヘナから離脱したと言われる独立傭兵組織、便利屋の社長、陸八魔(りくはちま)アル

どうやらここの秘密通路を守るために戦力を付けていたらしい、カスタム型のオートマタやレーザー防壁やらを突破されて無人防衛が不可能と思い知ったのだろう、有人式防衛に切り替えたようだ。

 

「それは申し訳ないでございますが、貴官の作戦目的とIDは?」

「ここの防衛よ、ここの社長から依頼されたの、謝礼もたんまりくれるって話よ」

 

 自信満々な彼女の率いる組織、便利屋68とは過去一度だけオウカとの接点がある

アビドスからミレニアムに向かう最中、ゲヘナ線鉄道を使った折り、その時に他メンバーを含めて便利屋との初邂逅を果たしていたのだ。

 

 尤も彼女らは別の依頼に掛かり切りだった上に結局爆発事故を起こして遅延を作ってしまった怨敵でもあるのだが。

 

「……残念ですが、それは嘘かと」

 

 ため息を一つ、スナイパーであるアル社長は近接攻撃の届く距離(レンジ)で、しかも狭く長い廊下というディスアドバンテージを背負わされている

逆にオウカは狙撃弾を打ち返す技巧と膂力を併せ持ち、格闘戦距離(クロスレンジ)への接近も容易い

そもそも相性が悪い相手にスナイパーにとって嫌な地形で、しかも防衛任務、成功率は限りなく低いだろう

おそらく、いやどう考えたって、この単純で可愛い社長をだまくらかして時間稼ぎに置いているのだ。

 

「騙されているとは思わなかったでありますか?」

「そんなことわからないわよ!それに敵の言葉に惑わされる私じゃないわ!」

 

 スナイパーライフル、ワインレッド・アドマイアーを正面に構えるアルちゃんだが、流石に近距離戦は苦手なのか、牽制程度に当てる気のない射撃と後退を繰り返している。

 

「C&Cコールサイン05、戦闘開始(エンゲージ)!」

 

 地下故かほとんど通らない無線にその一言だけを吹き込み終えると同時にインカムが吹き飛ばされる

流石は社長というべきか、彼女は10メートルもあれば勝てると言わんばかりの目でこちらを睨みつけながら銃を向けていた。

 

「依頼を始める!」

 

 いい声の宣言通りに正確な射撃、だが彼女の弾は受け流され、弾かれ逸らされて廊下をボコボコに抉っていくばかりだ

オウカが綺麗に刀身を滑らせて後方に弾を受け流しているのである。

 

「じきに先輩が来るであります、その前に投降するべきでありますよ」

 

「あら、何人来ても全員叩き返して、謝礼金で焼き肉に行くだけの事じゃない」

 

 SRの弾丸はデカく、早い、そのため弾丸を逸らすにも大きな力が必要となり、弾を受けるたびに刀身が軋む。

 

「潰れた空き缶より惨めな存在に成り果てなくないのであれば早く投降するでございます!」

「惨めな気分ならもういくらでも味わったわ!」

 

 マズルフラッシュと同時に軍刀を振り抜き、左腕狙いの一撃を跳ね返して、天井の電灯を破壊した

暗闇に差し込んでいた光が失われる、それと同時にオウカ自身も発砲して、さらに奥にあった幾つかの電灯を破壊、ガラスの割れる音とショートした回線の漏電する騒音、最後にどこかの物が連鎖的に落下してくる音、不愉快なラプソディが響く中で、廊下は闇に閉ざされた。

 

「なっ……!この程度で視界を奪ったつもり!?」

「……」

 

 リボンを解いてメイド服のエプロンを脱ぎ、それをアルの頭上へ向けて放り投げる

即座に反応したアルが片手持ちした愛銃でエプロンを撃ち抜き、それが(デコイ)だと気づいた。

 

「!?」

 

 闇に迸るマズルフラッシュは視界を白く染め上げ潰し、エプロンだけが撃ち抜かれる

義眼の暗視機能によりその動きを手に取るように見ていたオウカは、その銃身が絶対に届かない場所、アル自身の背後から刃筋を立てた一撃で大上段から右袈裟斬りにする

ヘイローのないオートマタならオー/トマタになっているだろう攻撃だが、流石にア/ルにはなっていない。

 

「痛っ!!!」

 

「そこは死んどけよ人として」

 

 ぶしゃっと血を吹き出すことさえなく、ちょっとした打撲程度で済んでいる彼女の肉体強度の方が恐ろしいのだが、そんな事で悩んでいても仕方がない、ブレードを引き切りながらトリガーを引き、反動の衝撃を利用して寸頸(ワンインチパンチ)のようにさらに刀身を打ち込み、撫で斬りにする

ようやく刃が通ったのか、薄く血が滲む彼女の首から肩に悪態を吐いて、一旦離れる、

 

「埒が開かない!」

 

 居合の構えを取り、向こうが珍しい斬撃の痛みに慣れる前に獲ろうとするオウカ

だが流石に向こうもプロなだけあって、切り込みの入った腕くらいなら千切れかねない反動のあるSRを平然と継続使用してくる。

 

 着弾後に爆発する弾丸、しない弾丸、超高速リロードと通常リロードを織り交ぜてタイミングをずらしながら撃ち掛けて、背面跳びで廊下の奥へと撤退していくアル

しかし、その背後から一撃。

 

「ごめーん道迷っちゃってさ!」

「アスナ先輩!?」

 

 後頭部を直撃したその攻撃は全くの虚をついたものであり、攻撃に神秘を振っていたアルはそれを防ぐことができなかった

どたり、と倒れたアルを受け止めることもなくそのまま回り込んでアスナと合流するオウカ。

 

「道に迷ってどうして地下通路に来れるのか……」

「私にもわかんない!」

 

 満面の笑顔でいう言葉ではないが、兎にも角にも合流はできた、あとはネルと合流すれば全員の潜入が完了する

ソナー型のドローンはもう情報を掴んでいるかわからないが、対象の逃げる先くらいはわかるかもしれない。

 

「アスナ先輩、一旦ネル先輩と合流しましょう」

「え?多分もうリーダー先行ってるよ?」

 

「…………」

 

 一度呼吸を止めて、大きく吐き出す

喉の奥から怒りを乗せて。

 

「あのネルガキィィ!!」

「あははははっ!!」

 

 アスナを背に連れて無人の廊下を駆け抜ける、さっきまでアルがいたからか、あるいは破壊されたからなのか、無人セキュリティ機構はほとんど出てこない。

 

「舐められているわけでは……ないと思うのでございますが」

 


 

 一方、ネルはカリンとアカネと共に、正面に展開してきていた防衛戦略を潰し切り、残敵はドローンに任せて別口に突入していた。

 

「リーダー、オウカはどうする?さっき正面から入っていったようだけれど」

「あぁ?!置いてくに決まってんだろ!どうせ正面ゲートなんて一番硬いやつがいるに決まってんだから頭使え!」

 

 予想外にも会敵を避ける考えのネル、アカネとカリンもそれに驚きの表情を隠せない

しかしネルは不満か?とそれを聞き返して、なおも続ける。

 

「あいつの対物戦闘力はピカイチだ、並大抵の戦車くらいに負けはしねえ

だからアタシ達は先に行って合流を待つ、いいな?!」

「了解!」「はい」

 

 ネルが信じるというのなら、それは恐らく正しいのだろう

そう割り切った二人はメインシャフトに飛び込んで行ったオウカと姿の見えないアスナを信じて、秘匿エリアのダストシュートから地下通路に入る。

 

「ここは……」

「廃墟の無人工場に似ている」

 

 カリンのいう通り、廃墟:無人兵器工場のドローン製造ラインによく似た場所となっていたそこは

しかし濃密なヤクの蒸気が漂っている。

 

「臭え……ここがミードの製造ラインか!」

「現物を抑えられるなら、それに越したことはありませんね」

「しかし……抑えると言っても」

 

「適当に瓶でも持ってきゃいいだろ!その辺のドローンにでも渡せ!」

 

 違法製造された薬物の持ち出しに躊躇するカリンを一喝したネルが突如として表情を引き締め、正面に銃弾をばら撒く、火花を上げながらレールを外れて落ちるシャッター、そこから現れたのは。

 

「あれもドローン…?」

「無人兵器ですね」

 

 出てきたのは、チェーンソーを全体に巻いたUFOのようなフォルムを持ったそれ、人間だけを殺す機械こと『バグ』に酷似したものであった。

 

「なんてフォルムしてやがる……」

 

「美しいだろう?これもミレニアムの生徒に作らせたものだ」

「リーダー!上だ!」

 

 チェーンソーの回転と、何かの動力によって浮遊するUFOのその盤上、そこに乗っていた恰幅の良いオートマタ型のキヴォトス人、星精機の社長が嗤う

彼はそのままUFOの上から叫んだ。

 

「斬り殺せ、キラーソーサー!」

「へぇ……それがそいつの名前か」

 

 その直後、猛烈に突進してくるUFO、いやキラーソーサー、ブレードによる攻撃はコンクリートの壁すらも(えぐ)る威力、いかにネルの身体強度があっても喰らえばひき肉と化すだろうことは間違いない。

 

「退がれ!」

「無駄だぁっ!」

 

 ごりごりという音と共に、廊下の強化コンクリートを砕きながら速度を落とさず迫ってくるチェーンソー。

 

「尻尾巻いて逃げなかった理由はコレか!アタシ等なんかいつでも返り討ちにできる、そういう考えでいたのか?」

「まさかまさか、ヘイローをもつ生徒達をそうたやすく殺せるだなんて思ってはいないよ

ただ……蜂蜜酒(ミード)の生産工場を失った以上、そのくらいの補填にはなってもらうがね?」

 

 指を鳴らす社長の後ろ、ゾロゾロとよろめく足取りで何かが出てくる。

 

「まさか……そんな……!?」

 

 チェーンソーを逃れ、正面に『それ』を捉えたアカネが絶句する、それは『人』だった

『生徒』だった、いや『生徒だった物』と呼ぶべきだろうか。

 

「戦闘用調整した薬物強化(ドーピング)済みの強化兵士だ!お前たちにもそうなってもらう

……素体の性能が良いからな、お前達を使った兵士(ドール)なら、よく動いてくれるだろう」

 

「ふっざっけんな!!」

 

 狙いもまばらな銃弾が散発的に飛び交う、もちろんネルは躱すし、アカネにも当たらない

銃の反動に照準を逸らされるほどに力が入っていないのだろう、弾のほとんどがまともな軌道ではない。

 

「雑魚だな」

「酷い……こんなに……」

 

 彼女ら一人一人が元はどこに所属していたのか、なんという名前で、どんな趣味があって、髪飾りにどんな所以があって

どう生きてきたのかなんて、何一つわからない

ただ一つ明らかなのは、彼女達を救う手がないということだけ。

 

「戦う相手を間違えたのは……アタシだったみてぇだな……テメェは絶対ェゆるさねぇ……!」

 

「全員必ず、護送しよう」

「救助を要請します」

 

 三人が各々の銃をリロード、屍のようにこちらへと手や銃を向ける彼女達と、そしてその後ろでふんぞりかえって高みの見物を決め込んでいる外道に向けて、宣言する。

 

「ミレニアムサイエンススクール、Cleaning&Clearing、コールサイン00、覚えておきな」

 

「同じくコールサイン02」

「コールサイン03、優雅に、排除いたします」

 

「わわわっ?!なになにどういう状況?」

「……05、エンゲージであります」

 

 現場に04(ロストナンバー)を除いた全員が揃った。

 

「これより、掃除を始める!」

 

ぶっちゃけ内容どうしよう

  • ストーリー重視(このまま)
  • はやく原作入れ(会長失踪)
  • 戦え……戦え…(戦闘重視)
  • 旅しろはよはよ(関係重視)
  • 消えてクレメンス(削除)
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