「ユウカ、俺たち結婚しよう」
「突然何言ってるの!?」
ぱっちりと目が覚めた直後、自分がふわふわのふとももに頭をのせている事を思い出したオウカの最初の一言がこれであった
ツッコミも実に正しい。
「会計であるユウカは無駄金がないようにキッチリ管理できる、俺は……まぁそこそこ実力はあるつもりだから稼ぎ口になる、維持管理はユウカに頼む、戦闘に掛かる諸費で使い方が荒い俺は管理が必要で、ユウカは家計を管理したい
完璧だとは思わないでありますか?」
「お!も!わ!な!い!
なんで私が管理したがりみたいになってるのよ!結婚だなんて……そんな……人生を左右するようなことは心に決めた人だけ……って何言わせてるのよ!」
顔を赤らめて横へ向いたユウカはすぐ下にいるオウカの目から逃れることはできず、照れ隠しに怒って誤魔化すことにしたようだ。
「ユウカとの結婚生活が見えてくるんだ……俺とユウカと、明るく元気でそそっかしくてどこにでも駆け回る長女と、姉に引っ張り回されて疲れた顔をしながら満更でもない次女と、繊細な引っ込み思案だけど突出した技能を持つ三女と、正義感は強くて暴走しがちだけど何してても可愛い四女……
ユウカの収入を超えるために努力し続けて有名企業の役員にまで上り詰めたのに上司の失態を押し付けられて失脚して免職されてショックで酒に溺れて
仕事に固執しすぎたあまりに家庭を疎かにしていた俺は酒クズと化して家に戻ってもかつて団欒の象徴だったはずのテーブルは冷え切っていて……ユウカに離婚を切り出されるんだ……うっうっ……」
「ちょっと、急に泣かないでよ!っていうかなんでそんな急に惨めな転落人生が思い浮かぶのよ
普通ならもっとこう幸せに……って違う!
そもそも結婚なんてしてないじゃない!」「そうだった、まだ結婚してなかったであります」
「『まだ』じゃないでしょ『まだ』じゃ」
「もうしてなかった?」
「それじゃあ離婚済みじゃない!」
ユウカに連続ツッコミをされながらボケ倒し、ふとももの触感を楽しみながら目覚めの一時を過ごしたオウカはようやく身を起こし、立ち上がると同時に最後の一言を残す。
「寝てる間ずっと膝枕しててくれたでありますか?ありがとう」
「……もう!」
単純にユウカが優しすぎるあまりに無理矢理に叩き起こすことができなかっただけなのだがオウカが眠っていだ約2時間ずっと膝を貸していたのは事実、この冷徹な算術使い、温かみがありすぎる。
その後潜入作戦のためにアビドスまで戻ってきたオウカだが、作戦開始前の準備期間はクロークや軍刀の新造・改修、他の仕事とIT関連の勉強
いろいろ時間を取られてしまい、ユウカの膝以外満足な休みも取れないままの出発になってしまった
仕方ないのでミレニアム校区内にいるうちは電車を使って体力を回復することにした。
「……」「……」「……」
ガラガラの車内、同乗者も碌にいない静かな場所、気が緩んでもおかしくはない
ただでさえ眠気と疲労も溜まっている
とはいえ仕事が待っている状況であるから油断はできない。
「あの、落としましたよ?」
「あっごめんなさい」
ロングシートの席列、車両中央近くに座っているオウカの左側に程近い席に腰掛けていた、白いリュックを抱えたセーラー服の薄金色の髪の少女
彼女はオウカ同様に意識を薄れさせていたようで、握っていた手から切符が落ちる
敢えて無視をするべきかとは思ったが、オウカも他人が困っているのを眺めて嘲笑い愉しむ特殊性壁保持者ではない
対面していた彼女の足元に落ちた切符を拾い、その少女の手に握らせる。
「あの、ありがとうございます」「いえ、礼を言われるほどの事はしていませんよ」
白いセーラーに紺のスカート、標準的な女子高生といったいでたちの彼女は礼儀正しくもお礼を言い、オウカはそれを受け流す
普通であればそれで終わる会話だが、彼女はなおも言葉を繋げる。
「それでも、私は嬉しかったです」
「……」
その一言、ただそれだけだ、わずかな違い、十五文字の差
だがそれを、それだけと片付けてはしまえなかった。
「それはよかったでございます」
笑顔になる彼女、吊られて表情を緩めるオウカ
ある意味特異でとても普通なその会話は、なんら意味を持つことなく、そこで終わった。
[まもなくー大前ー大前ー、お出口は、左側です
ミレニアムサブウェイ、ゲヘナ山岳鉄道、連邦線がお乗り換えです
ドアが開きまーす、ご注意くださーい]
「あっ、私降ります」
「ではさようなら」
少女は列車を降りていき、オウカは再び席に腰を下ろした
そしてまた、穏やかな時間が過ぎていく
「オラオラオラァッ!この列車はバシバシヘルメット団が乗っ取ったァッ!大人しくしやがれ!」
ことはなかった。
「全員金目のものとスマホ出しな!お前も!」
「……すぞ」
少女と入れ違いに入ってきた数人の客と、同様に入ってきたヘルメットセーラー服の連中
後者が銃を乱射するかのように見せびらかしながら乗客を威嚇し、金とスマホを要求する
この時、オウカはとても苛立っていた
善意と好意の連鎖とは、こうも儚い物なのかと
怒りと憎しみとは、こうも煮えたぎる物なのかとも思うほどに。
「人がせっかく気分よく寝ようとしてる時に……邪魔をするな」
「殺すぞ」
『ヘルメット団の鎮圧』する必要のない無駄な作業、工数を増やし手間をかけさせるだけのタイムロス、そんなことに
だがこれを、無視するわけには行かない、無視したくない
せっかく穏やかな気分でいられた人の気も知らずに騒がしく遮るというのなら、そちらの流儀に合わせてやってやろう。
「連邦生徒会調停室直轄組織連邦軍部Präparatよりアビドス高校廃校対策委員会兼ミレニアムサイエンススクール特務組織Cleaning&Clearing所属、憂晴オウカ
連邦生徒会活動規約第七条に基づき、実力を以って障害を排除する」
ハイランダーの生徒である車掌が車両を緊急停止させたのか、『ツシュー』と空気の抜ける音と共に静かになる列車内、そしてオウカはすぐさま拳を振り抜いて黒ヘルメットの持っていたハンドガンを強奪、安全装置の掛かったままだったそれで黒ヘルを叩き割り、発砲して顔面に4発撃ち込む。
「ぶっは!?お前なんなんだよ!」「アタシたちだって考えてんだぞー!」「いきなり列車内で発砲かよ!」「こいつイカれてやがる!」
「……!」
無言で近場にいた赤ヘルを蹴り付け、そいつのヘルメットと首の隙間に銃口を捩じ込んで発砲、どこか壊れたかも知らないが、キヴォトス基準では大した怪我ではないだだろう
しかし平衡感覚が飛んだのか、立ち上がれなくなって崩れ落ちる赤ヘルのおさげ少女を再び足蹴にして首根っこを引っ掴み、尋問する。
「吐け、ここには貴様等の他に何人いる」
「はぁ?」
「貴様等は何人でここにきた、貴様は数も数えられんのか、んん?」
割れたバイザーから顔面にもう一発撃ち込んでやると素直になったのか、必死に何事かを訴えてくるが、聞こえづらいのでもう一発撃ってやる。
「情報は正確、かつ迅速であるべきだ、わからんか?」
「ひ……ひぃっ……」
「どうやらものを知らんらしい、では次はお前だ……お前は運がいい、もしかしたらそろそろ弾切れかもしれんぞ?」
どしゃ、と怯えて話せない様子の赤ヘルおさげ少女を床に捨て、新しい黒ヘル茶髪に銃口を向ける。
「運を試してみようじゃないか、お前が勝つか、俺が勝つかのルーレットだ」
苛立ちながらトリガーを引き、果たして弾は出なかった、出す必要はなかった
銃弾が出ようが出まいが、次に取る行動は決めていたのだ、黒ヘルへ鳩尾への拳が突き刺さる
うめきながら座り込む少女のヘルメットをむしりとり、持っていた銃を投げ捨てて交換し、先程まで彼女自身が握っていたそれを突きつける
同じ構図だ、ただ一つ違う握った銃を除いては。
「もう一度やってみよう、弾が出るか、出ないか、運のいいお前にはわかるよな?」
引き金を吐く、弾が出る
SMGの軽快な発砲音と同時に彼女のヘルメットが粉砕される。
「少し出過ぎたか?……まぁなんにせよ都合がいい、貴様等は何人でここにきた?答えろ」
「じゅ……じゅうにんでふ……」
「もう一マガジンいっとくか?」
「ほんとあれふぅ!!」
どうやら本当らしいので信じてやる、これ以上騒いだところで不毛と判断したオウカは適当に切り上げて、ようやく駆け込んできたヴァルキューレの駐在さんにヘルメット団を押し付けて席に戻る。
「た…助けて……」
「ひぃ……ひぃぃ……っ!」
直接ぶちのめされた2人はヴァルキューレモブに縋り付いて必死に助けを乞い、残り2人も概ね同じように車両を出ようとしていた。
「あの、あなたも同行願えますか?」
「承るであります」
カイザーの下に潜入しにいくというのに、随分も無駄な手間をかけてしまった、とため息をつきながら仕方なくヴァルキューレモブに同行するオウカだった。
ただでさえ寝起きで気分が悪いのに一旦はほんわかしてからいつものキヴォトスに叩き落とされたせいでバチバチに機嫌が悪いです
口調が変わるレベルに
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)