「じゃあ、俺はもういくであります」
「お気をつけて〜」
ヴァルキューレモブに見送られてオウカは駐在所を離れ、再び駅のホームへ入る
今度こそ電車に乗り(もちろん違う車両だが)離れゆく駅を見送る
完全に駅が視界から消えた途端に頭を抱えるオウカ。
「流石にバチギレし過ぎたであります……」
なんだロシアンルーレットを弾満載のSMGでやるって、当てる気しかないだろう、口調が変わるほど激怒する理由にはヘルメット団は弱すぎるだろう
呟きながら揺られる時を過ごし、そしてようやく顔を上げたのは終着点であるゲヘナ線のアビドス砂漠周辺地域まで来た頃だった。
「高校に顔……出すべきでございますか……?」
カイザーコーポへ借金を抱えた学校、当然目をつけられているだろう、法外な利息を要求されているのだから資金源兼敵中枢として注意深く観察されているに違いない
そこにわざわざ顔を出して関係性をアピールする必要は、ない。
「やめておくか」
なぜかまだ動いている改札に切符を差し込み、無人の駅を抜けてテクテクサクサクと砂漠を歩いて進んでいく、アビドスに来るのはたった数回の経験だが、砂漠の砂の歩き方はすっかり身についていた。
「潜入任務、開始であります」
呼吸を整える、右目が神経反射を捉え機能を戦闘モードに切り替えて再起動する
軍刀は忍者刀仕様に柄と鍔を交換され、黒く染められたものを腰に回す、左腰の鞘と右腰の端末、袖口の
「お?」
ピコン、と揺れるピンクのアホ毛、大きなクッションに埋まった小さな身体、ゆるゆるした眠たげな声が何かを捉える。
「だれか来たかな〜?」
「……なんてね、誰もいないのはつらいよ〜」
寂れた砂まみれの校舎の一角、夕方の照りつける斜陽に身を擦り寄せて、声の主の小鳥遊ホシノは声を上げる。
忙しなく揺れるアホ毛とは対極的に、緩やかに、穏やかに、それはまるで眠りに落ちゆく赤子のように
だれも登校していない校舎で、ただ一人寝転びながら。
「おやすみ〜」
ぽふん、と顔をクッションに埋めて、しかし
眠りは遠く、終わりは近く、かつての希望儚く消えて、瞳は世界を見つめ続ける。
「つらいよ〜」
一方その頃、カイザーPMCでは理事が大声で秘書官オートマタを怒鳴りつけていた。
「ええいどうなっている!アビドスの連中、返済能力が急に跳ね上がったとでもいうのか!?」
「わかりません、ただ先月から定期集金の返済額が利息分を大きく上回っています」
「生徒が増えたわけでも、金回りが良くなったわけでもない、だというのに返済能力は上がった……ならば利率を上げるまでだ!返済能力が上がったというのならその分だけ搾り取らせてもらう」
アビドスの借金はカイザーが一方的に利率を設定できる、契約書に記されたその条文に基づき、カイザーはただでさえ常軌を逸した無茶苦茶な利率をさらに引き上げようとする
年間どれほどが妥当なのかはわからないが、返済能力がどれだけ高くなろうと一括返済できないなら無駄なことだ
活かさず殺さずと置いていた鶏が息を吹き返したなら、その分だけ首を締めればいいだけのこと。
「一括で返済しなかったのが失着だったな、アビドス高校ゥ!」
子供を食い物にする悪い大人にして子供じみた夢のため世界を振り回した身勝手な男、カイザー理事が嗤う
もはやアビドス高校はカイザーグループの餌でしかないのだと。
「おい!契約書をとってこい!」
「はっ、ただいま……」
秘書官型が姿を消し、部屋は暫し静寂に包まれる、砂漠の砂は熱くアビドスの大気を灼き、窓の外に陽炎を浮かべる
眼下の大地を揺るがすそれを眺めながらPMC理事はほくそ笑んでいた。
「あーもうオートマタ使いの荒いヤツめ……あんな輩は消えてなくなればいいのに
アビドスがどうだか知らないが、トリニティだのゲヘナだのの大規模学校の校区に行かなきゃマトモに商売もできないってのに、なんだってロクな価値もない砂漠の地上げなんてしなきゃならないんだ!」
荒く床を踏み鳴らしても低予算な床材は鈍い音を返すのみ、金の価値が何によって生まれるかを考えず、それを集めることばかりに執着する守銭奴どもに怒りを露わにしながら秘書官は歩き続ける
目指すは地下2階、金庫施設
価値ある契約書は本来、銀行の貸し金庫にでも預けておくのが正しいのだが、かつてカイザーPMC理事が直轄企業としてカイザーローンを掌握した際、全てを自分の手元に置くためにPMC本社へそれらを移したのだ。
「あぁ全く!子供達の首を絞めてなんていたら飢えるのは自分だともわからんのか……」
老いることのない機械の体を有するオートマタだからこそ、それを考えないのかもしれない
子供たちの世代が大人になる頃、自分たちは同じだけど歳をとって老人となり、やがては新人たちに席を譲り退役してどこぞに引っ込み、そして死ぬ
それは生物として当然の栄枯盛衰のサイクルであり、世界のあるべき姿である
しかし機械であるオートマタは部品を交換し、バグを補正してやれば何百年でも生き続けることができる
一代で会社を起こし、そしてキヴォトス屈指の複合企業体へと成長したその主人は機械であるが故に老いない
世代交代はない、唯一たる
「……まったく」
ピンポーン、簡素な音と共にエレベーターの扉に付けられた矢印ボタンが押されたことに反応して光る
このエレベーターも、正面玄関も、自分のデスクも、みなアビドスの経済圏から吸い上げ、奪い取った金で賄われた物だ
そう思うと吐き気がしてきた
「……」「……」
地上10階、社長室のあるフロアから金庫のある地下室へ移動するのには、約45メートル
エレベーターでも1分半はかかる距離だ
男はPMCという業種ゆえに広く作られているエレベーターの中で大きく息を吐く。
「こんな会社まっぴらだ……もうマジで誰か潰してくれんかな……」
「……なんてな……俺も秘書官やってるんだし、クズなのは変わりないや」
男は大きく息を吐く、諦念を露わにした彼の頭上、エレベーターの天板裏に潜んでいたオウカもまたそれには共感していた。
「よし、行くか」
廊下に出て、しばらく歩く
金庫は武器庫とは違い、盗難を避けるために敢えてアクセスが悪いように作られている
PMC理事の秘書としてマップは当然全て把握しているが、一般社員つまり兵士には地下階と7階以上のマップは公開されていなかったりもする
上級社員以外は立ち入ることさえ許されない厳重なセキュリティを一つ一つ解除していき
ついに
「コードはK15AB20……よし」
大扉を抜けて引き出しのそれぞれに付けられたキーボードに一連のコードを打ち込み、ロックが外れる音を聴く。
「こんな馬鹿馬鹿しい契約、書かされた何十年前の子達が可哀想だねぇ」
その何十年前のアビドスの生徒会長や生徒達が、今どこにいるのかも知らないが、と付け加えた男は
契約の当事者でも無ければ権利者でもない自分がそれをやっても新しい契約書が書かれ直すだけだ、いたずらに自分の立場を悪くしても仕方がない、と。
「………………」
心を殺した冷たい機械が、冷えた心から切り離された、冷たい手で契約書をファイルに入れる
各セキュリティを再び潜り、カイザーPMC理事の元まで戻るには、このあと10分を要した。
昨日の26発目も併せて初投稿しています
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)