「…………」
静寂に包まれる暗所の中で一人、沈黙を守り続けるオウカ
ここ100時間は同じ場所で寝そべり続けているが、一向に警備の隙をつくことはできていない
(追加報酬を強請るくらいはするべきでありますな……)
数日掛けての危険な潜入任務、たった100万Cではちょっと割に合わないと思ってしまう
エージェントとして雇われている以上、依頼は達成するが、それにしても報酬が安すぎてはやる気が出ないというものだ。
(まぁ、そのためにも少しは価値のある情報を持ち帰りたいであります)
一流のスナイパーは1週間でも2週間でも同じ狙撃ポイントに潜み続け、その場で狙いを付け続けるとはいうが、オウカは元々高速近距離ガンナー、ブレードの間合いのために
狙撃手と比してはあまり我慢強いわけではない。
ヘイローから漏れる光が僅かに照らす暗闇の中、オウカは息を潜め続けて、そして、ようやく。
「おい麻雀やろうぜ麻雀!」
「だが警備……」「どうせ監視カメラあるだけでビビって誰も入ってこないって!」
「ですね、休憩室行きましょう」
「上にバレないと良いがな」
警備員の中でも特に質の悪い連中のシフトが重なり、夜中に連れ立って麻雀に向かっていった。
「電灯は付けっぱな、切ってると居なかったことになるから怒られちまう」
「お前、手慣れてるなぁ」
「まぁほらいいっていいって!それよりお前麻雀知ってんの?」
「この前麻雀動画が
「納得したわ、どエロい巨乳の教官のやつか」
「お前おっぱいしか見てなかったのかよ」
(バカ共が沸いている……シュン教官殿のおっぱいに感謝を捧げなければならないであります…)
シュンの色気にやられてどこかの回路が焼き切れているのだろうアホ共が部屋を出ていき、それと入れ替わるように天井板を外して裏から出るオウカ
忘れ物や何かですぐに戻って来る事がないことを確認して、迅速に仕事に取り掛かり、パネルの隅にあるケーブルジャックへと端末を接続、ウイルスプログラムを流入させる。
(ミレニアムで一時期いろんな形式が乱立してケーブルと機体の接続ができない問題が噴出した時に発明された、『どんなジャックにも接続できるコード』があってよかったであります)
制作コストが高いので結構高価だが、ユウカがセミナーで使っていた現物を融通してくれたものだ。
送信完了の通知とほぼ同時に、セキュリティソフトが『不審なソフトウェアが検知されました』というアイコンをポップアップさせる。
(なかなか優秀でございますな……)
だがもちろんセキュリティも使い手に拒否の意思がなければ意味がない、手元のタブレット端末の仮想キーボードを叩いてインストールを許可し、そのままウイルスを展開、カメラのシステムに介入して定点撮影されている現在の画像を表示するだけのそれに書き換える。
(これでカメラは無力、次はセンサー)
次々にセキュリティシステムを無力化し、オウカは全室フリー入室可能な状態になるとウイルスプログラムを利用して自分の端末に本来の監視カメラの情報を横流しするように設定する。
(これで誰がどこにいるかも把握できる)
端末を叩き終えてオウカは天井裏へと戻り、そのままエレベーターシャフトへと入り、登っていく
狙うは最上階、カイザーPMC理事のデスクだ
全ての機密情報は彼自身が管理しているのだから、彼のデスクにこそその情報が存在することに間違いはない。
「……」
まさに
今の時間は午前4時、PMC理事どころか秘書官も引き上げ、最低限の警備だけが残っている状態なので、最上階にはもちろん誰もいない。
「…………」
カイザーのデスクに接触し、起動させると同時にサーバーのUSBボートにユニフォームコードのジャックを挿入、ヴヴッという若干の機械音と共に変形してUSBの形になった先端が機内へと入り、そこに毒物じみたデータを送信し始める。
(これで機密情報にアクセスできればそれで任務は終わり、密約やそれに関する書類があればなおよし)
電子タバコの臭いの漂う空気に咽せながらも冷静にコンピューターにアクセスし、そのリンク先である巨大なデータバンクへと進入
権限の提示は理事のアクセスコードを使用する、これにより最上位権限を確保して堂々とデータを検索していく。
「……星精密機、アビドス……私の借金の履歴もあったか」
少し横道にそれたが、すぐに出てきた機密データを複写、コピー禁止化されたデータもミレニアムの誇る超天才病弱美少女ハッカー部長が15分で作ったソフトに抜かれていく様はいっそ美しいとすら思える。
(よし、データ奪取完了、あとは実物の書類を頂く)
カイザーのデスクを離れ、同じくバックドア処理を施したあとで屋根裏に戻り、本日二度目のエレベーターシャフトから資料室を目指す。
警備室で手に入れた完全なマップによると、資料室は3階南側にある、だがそこは物理鍵が掛かっているため、入るにはマスターキーか資料管理課が持っている部屋鍵を使わなくてはならない
戦士や暗殺者としての業はあれど、流石に鍵を偽造する
「……どうする」
3階にある部屋はトイレなど各階に存在する設備を除けばレクリエーションルーム、レストルーム、資料室の3つ、そのうち一つの
1階の事務室にある可能性がある鍵を入手してから3階に向かい、そこからスキャナー持ちを含む警備員たち4人のセンサーに掛からぬように静かに書類を漁り、機密書類を確保しなくてはならない。
(無理ゲー、でありますな、諦めるでありますよ)
(いやデータだけでは確実な証拠とは言えるかわからないであります、ここは無理をしてでも機密書類を確保するであります!)
(心がふたつある〜〜)
どちらにも筋のある二つの相反する思考に悩みながらオウカは決断を迫られる
無理をしてでも機密書類を漁るor潔く手持ちの成果だけを持って退却する
という究極の二択、オウカは……
(ここは金を稼ぐために無理を通すであります)
無理を通して道理を潰す選択を、する。
(そのために必要なのは、鍵の入手ルートと使用後の音の隠蔽、
「……」
1階の事務室までは普通に行けるが、事務室は流石に1階だけあって外につながるエントランスから丸見えになる正面入り口以外には入り口が存在しない
そして外にも警備員はいるため、普通にのこのこ入っていったら即バレると言わざるを得ない
天井裏についても1階の天井にはガス管や電気回線などが密集しているため、侵入することは難しい。
(7〜9階あたりで爆発事故でも起こせば目が向く…いや無理だ、手持ちには爆弾や着火装置はないし、流石に一階の外警備まではごまかせないか
仕方ない、
切り札の一つをここで投入することに決めるオウカは素早くエレベーターシャフトを降っていく
1階廊下に一度出てからクロークを被り、その機能を発揮すると周囲の光景がボヤけて見えるようになる
こちらからは『ボヤける』で済んでいるが、外側から見れば完全に隠蔽されているのだろう。
(…………鍵がここになければ諦めるであります)
事務室の扉をそっと開けて、体を滑り込ませる
わざわざ高級なカーペットが敷いてあるおかげで足音はほとんどしないため、警備型オートマタにも気づかれずに済んだようだ。
「……」
入り込んだ事務室の電灯は流石につけず、義眼の暗視機能で闇を見通す
ぼやけた視界の中で物を見極めるのは難しいので、クロークは脱いで手元に収める。
(いやこっちにも書類多すぎであります!)
隅の方で物理的な書類の山のようになっているそれは、やはりというかなんというか計画書や見積もり書などなどだが、とにかく数が多い。
(もしこの中に目的の書類があったら二度手間でありますな……)
そう考えながら入って左側にある鍵掛けを見て、その中から『資料室』と銘打たれたものを探す。
「……ないか」
念の為、ついでに二度手間をさけるため、取り敢えず事務室に置いてあった書類を漁りだすオウカであった。
前アンケートを踏まえて、先生は?
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必要である、原作にできる限り近づけるべし
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女先生って……いいよね
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便利屋版先生を代入する
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亡き者にしろ