百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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三発目

「今日入っている依頼ですが、まず9時ごろにトリニティ工業区で、正義実現委員会による不良摘発に対する督戦業務と、帰校後に報告書の作成

終わり次第、ヴァルキューレと一緒にD.U外郭部のパトロールに回ってください、本来なら交通室の管轄ですが、あちらも人材不足の上、不良学生との武力衝突もまた『調停』されるべき、とのモモカさんの論ですので、よろしいですか?」

 

「わかりました」

 

「あの、本当に気をつけてくださいね?いくらヘイローがあっても銃弾が当たったら怪我はしてしまいますから……」

「はい、気をつけます」

 

 9時前にトリニティに行くにはまず移動に備えて銃の手入れを済ませてから8:20の連邦線下り快速トリニティ行きに乗る必要がある

そのためにはまず連邦校舎前8:08発の西連線下りで1駅下り、8:14に到着する箱売橋駅から連邦線に乗り換えるべく2番ホームに行く必要がある

急がなければならない!

 

「公共交通機関って面倒でございますな……」

 

 取り敢えず銃の確認、弾丸の補充とメンテナンスを終えるには最低でも10分は欲しい、駅が校舎の目の前とはいえど時間がないため、少し走らないと間に合わないと判断した彼女は全速で銃の分解と清掃を終えて組み立て直し、動作の確認をしたらすぐに弾倉を抜いて走り出す。

 

「気をつけてくださいねー!」

「はい!」

 

 トリニティ線は駆け込み乗車厳禁、連邦生徒会の生徒であろうとマナーに反すれば舐められてしまう、一度蔑視されると類い稀なほど付け上がって攻撃的になるのがトリニティ生徒の特徴であるため、まず最初の段階である作法を間違うわけにはいかないのだ。

 

「公共交通機関に乗る・降りる時の作法、なんてマナー講師が教えるために作った適当な作法以外に無いとは思うのですが……」

 

 まぁ最低限バスの料金支払い時は事前に手元に出しておく、電車に乗る時も検札に備えてチケットは手元に置く、足や荷物が足元のラインからはみ出さないようにするくらいであろうか?

 

[つぎはー箱売橋ー]

 

「あぁ、もうでございますか」

 

 スマホを取り出すことさえなく、乗り換えの駅で一旦電車を降りると早歩きでホームを移動する

トリニティは伝統や歴史を重んじる性質であるためミレニアムやゲヘナのような合理的な街づくりはしていない、そのため移動にも時間がかかることが予測されるが、それはそれ、最悪10分ほど飛ばして走れば間に合うだろう。

 

「よし、ここであっている」

 

 電車に乗り込んだ彼女はそのまま30分ほど過ごしてトリニティ校区の端、工業地区の駅で降りることになる

トリニティの地下開発計画が歴史や政治を背景とした権威や金に屈して進んでいないというアレな都合上、比較的端側にしか電車が通っていないために工区が端側にあったのは幸いだった

そうでなければトリニティ校区内を突っ切って工区へ走る羽目になっていただろう。

 

「失礼する、当方は連邦生徒会調停室より派遣された、調停室直轄組織連邦軍部Praparat所属、憂晴オウカである、貴女方がトリニティ総合学園正義実現委員会の実働部隊に相違ないか?」

「はい、私は正義実現委員会の副委員長、羽川ハスミと申します」

 

「では貴女が実働部隊長ですか?」

「いいえ、正義実現委員会委員長、剣崎ツルギ……彼女がそれに該当する人物です」

 

 最も背の高い、かつ羽や胸の大きな黒髪の美女に話しかけると、少し離れた位置にいた猫背の刺々しい翼を垂らした蕩けた瞳孔と血に塗れた紅輪の女、ツルギが進み出てくる

今度の摘発でも彼女自身が出陣しているらしい、ハスミは後進育成に熱心ではあるようだが、最高戦力とはいえほとんどの場面で自ら最前列に立つ事を選ぶ彼女はどうなのだろうか?

 

「部隊長殿、調停室の命により連邦生徒会より出向しました、憂晴オウカであります

これより貴官の指揮下に入ります」

「わかった、やり方は同じだが奇襲作戦になる、見逃さんように後方待機しておけ」

 

 すでに何度か繰り返した形式的な会話ではあるが、毎度確認も込めてこれはしなくてはならない物だから仕方ない。

 

「督戦隊なんて嫌な仕事でございます」

「そう言うな、お前が戦果を数えてやらねば後の記録に差し障る」

 

 ゲヒャヒャヒャな奇声が返ってくる物だと思っていたが、以外にも冷静な声に思わず振り返ると、その瞬間

 

「時間だ、出撃()するぞ、隊列(なら)べ」

 

 奇襲作戦が開始された。

 

 

 静かに隊列を組んだ正義実現委員会の生徒達が不良達が潜むという古い工場へと突入していき。

 

「一斉摘発っす〜!」

 

 最前列の少し背の高い糸目なブルパップライフル持ちのすっすちゃんが陣頭指揮を取る形で2人の生徒を引き連れて突撃、そこから少し遅れてオウカの隣から飛び出していったツルギがいつも通りの奇声をあげてダイブしていく。

 

「……まぁ、そっちの方が似合っておりますな」

 

 冷静な答弁をする時の引き締まった怜悧な顔も、狂騒の熱気に蕩けた瞳も、どちらも彼女の魅力であり余人には持ち得ない美しさだ

そこで考えを打ち切ったオウカは左腰の装備帯から試製拳銃付軍刀を鞘ごと引き抜いて弾倉を差し込み、初弾を装填して準備完了

最後尾から督戦任務を開始する。

 

 督戦隊とは本来ならば敵前逃亡を含む命令なき暴走など軍規に(もと)る行いをする愚か者を後ろから撃ったりする人員なのだが、こういった場合においては『やり過ぎ』を防止するために配置されるのがほとんどであり、彼女自身もそう認識している

そもそもキヴォトスの生徒達は皆頑丈であり、銃撃が死につながる事はほとんどなく、したがって敗走する人員を撃つようなことになるならそれは敵軍+自軍の両方を同時に相手取るのとほぼ同義であり、わざわざそれをするくらいなら最初から協力して敵と戦えばいいのである。

 

「いやする事無いでございますな」

 

 もちろんただ漫然と静観しているわけでは無い、督戦隊は偵察機のように戦果を記録する役割も負っているので各個人の撃破人数なども『見て』いるのだが、それだけに状況が圧倒的に正義実現委員会側に優利であることも見て取れるのだ。

 

 現在時刻は午前9時、各校の授業カリキュラムからしても1時限目に相当する時間であるからして生徒の往来の多い、つまり不良が活動しやすい登下校時という掻き入れ時を過ぎた後、油断を誘う絶妙な時間の、しかも彼女達の本拠地である廃工場に突如として奇襲を仕掛けた事で相手は激しく動揺しているのか、屯していた30人ほどの不良達は組織だった反撃を行っているようには見えず、突入直後の時点で銃を手にしていた10人ほども連携をとったり陣形を組んだりということもなく散発的な乱射がせいぜいと言ったところ

これで逆転される方がおかしいのだ。

 

「……あ……ん?」

 

 微かな声に浮かび上がる困惑の色、それもそのはず、数人の正実を引き倒した金髪ショートのSMG持ち不良がそのまま彼女にとって敵陣奥側、つまり後衛のハスミやオウカの側へ向けて連射しながら突撃してきたのである。

 

 いかに体重が羽毛やら砂糖やらで換算される生徒のそれとはいえ数人の人間を引き倒して引きずりながらでも突撃してくるとは常識はずれのフィジカルだ。

 

「まっず!?1人抜かれたっす!」

「問題ありません、こちらで対処します」

 

 先鋒に立っていたすっす少女からの連絡に後衛が応答すると同時に正実生徒を引きずりながら工場から飛び出してきた不良に弾が直撃する。

 

「さすがハスミは頼りになるでございますな」

 

 SMG持ちが正実の生徒ごと振り回した左腕でスナイパーライフルの弾を受けて肩が外れながらでも右手一般で乱射突撃を続ける様相さえ見せなければ。

 

 一方で吹き飛ばされた一般生徒は勢いを殺し切れずにころころと転がっていき、工場の壁に頭から突っ込んでしまったようで頭を抱えてフラフラしている、あれでは即時の戦線復帰は難しいだろう。

 

「前言撤回でございます」

 

 動かない腕をぶら下げながらでも攻撃を続ける勇猛は古代の英雄であれば高く評価されたのかもしれないが、現代ではそれは単なる無謀に過ぎない、撤退さえする余裕のない敗軍の兵の命を賭けた特攻でしかないのだ

激痛に頭のリミッターが外れているのだろう、単騎で突撃してきているのでハスミのSRの再装填は間に合わない、だが

 

「ここは俺が撃つほうが体裁が良いか」

 

 試製拳銃付軍刀(オウカのほう)は1弾倉につき7発という少数ではあっても、戦闘開始時から装填済みだ。

 

「テメェらふざけてんじゃねえぞ!せっかくのアジトに土足で踏み込んできやがって!」

「土足であろうがスリッパであろうが手前共のほうが不法侵入であることに変わりないであろう?」

 

 サブマシンガンは連射性能や集弾性など諸々の優れた性能を有する銃種、取り回しの悪い狙撃銃相手に距離を詰めた今、オートでも所詮数発しか撃つことができない自動拳銃に剣が生えたような珍妙な装備しか持たない直衛では対応できない

そう踏んだのだろう、狙いをつけずにばら撒いていた弾をハスミの前に出たオウカに集中させる不良。

 

「あーもう、俺はあまり耐久戦に向いていないでございますよー!」

 

 走って銃弾を回避しながら受け太刀の構えを取り、体幹を庇うようにかざす事で鞘を盾にして数発を防ぐ、このままでは流石に防弾仕様というわけではないので鞘が破壊されてしまうだろうが気にしない、わずかに時間を稼ぎさえすれば、それで良いのだから。

 

「ハスミさんお早く〜」「うるせぇぇぇっ!」

 

 SMGの弾が切れたのか、それとももはや引き金を引くことさえできないほどにダメージを受けたのかわからないが、不良はオウカに向かって銃を投げつけることで放棄し、片手を空けて殴り掛かってきた

飛来するSMGを空弾倉で殴りつけることで諸共に地面へ叩き落として銃身を踏み割り、使用不可能にしつつ

新弾倉へと交換、瞬く間に初弾装填して迫り来る拳に再び銃口を合わせて発砲する事で腕を弾き返すと

 

「撃ちます」

 

 怯んだ不良の首筋にハスミの至近距離からの狙撃が突き刺さり、ようやくSMG持ちは沈黙するのだった。

 

「……今ので最後、でありますか」

「そのようですね」

 

 見れば工場内はすでに静寂を取り戻していた、いやツルギが奇声を上げているようだが、それはそれとして銃撃の音はない

それはつまり、制圧の完了と戦闘の終了を意味していた。

 

「失策でありましたな、まさかあの状況から突撃を仕掛けてくるとは思いもよらず、むざむざ狙撃兵の前まで通してしまうとは」

「はい、それは確かに、結果としてはご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありません」

 

 感想をつぶやくオウカに応じるハスミが頭を下げてくるが、それをいうならどちらも同じである。

 

「いえ、こちらが手出しを躊躇ったのが悪いのですから、そちらにお怪我がなければそれで良いとしましょう」

「しかし、貴女も多少とはいえ銃弾を受けていたでしょう?撤収後に負傷者の身柄は救護騎士団に引き渡される手筈になっていますので、貴女も応急手当てを受けてください」

 

「……俺は個人的にその……団長殿が苦手でありますゆえ……」

 

 なお、15分後に救護(物理)された。




初投稿です

ぶっちゃけ内容どうしよう

  • ストーリー重視(このまま)
  • はやく原作入れ(会長失踪)
  • 戦え……戦え…(戦闘重視)
  • 旅しろはよはよ(関係重視)
  • 消えてクレメンス(削除)
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