1時間近くをかけて多量のファイルを捲り、書類の山を漁った結果、いくつかの『顧客』や『標的』の情報は見つかったが、残念ながら大半は全く関係ない事業に関連する書類だった
高利貸しのカイザーローンでも流石に事前調査くらいはするらしい、興信所への依頼記録や審査可否、各銀行や企業などの使用状況などの調査書や貸付予算などの情報だ。
「契約書はない、でありますな……」
まぁ資料室ならいざ知らず、事務室にないというのは仕方がないことだ、すぐに使わない資料や書類なんて事務室に置いていてもただの置物である。
「……仕方ない、できることはしたであります」
追加報酬案件の可能性は取れなかったが、出来る限りの仕事はしたと判断したオウカはふたたびクロークを被って姿を消しそっと扉を開く。
「…………ん?今何か軋んだみたいな音がしなかったか?」
「バカ言え、何が軋むんだよ俺らの
一応これでも新型のオートマタなんだぞ?」
「いや違う、そうじゃない……扉の音みたいな……」
その声と共にゆっくりと、自分たちが背にしていた正面入り口へと振り返る警備型オートマタ、そして……
「嘘だろ……2時間前に俺は確認したぞ、その扉が閉まっているのを!なのになんで……なんで事務室の扉が……開いているんだ!?」
「いや普通に中の警備連中とか……いや流石に事務室に用なんてない……よな?」
焦りまくっている右側と、冷静な左側の二体のオートマタ、彼らは
クロークに覆われたオウカの存在を探知はできていないのだろう、入り口の向こうからこちらに
「何がどうなっているかは分からんが、取り敢えずこれ自体は現象を記録して報告するべきだろうな」
「なんでお前はそんなに冷静なんだよ!」
「私だってこれが幽霊の仕業だというなら怖いさ、なにせ銃が効かないからな
だが幸いドアが開いたのは内側の話だ、こっちじゃない、落ち着けよ相棒」
「……おっおう……そう、だな」
冷静とは程遠いが、なんとか混乱状態から復帰する右側のオートマタ
そしてオウカもクロークの内側でカーペットに這いつくばりながら緊張しまくっていた。
(なんでこっち見てるでありますかこの連中は……!最後にもう帰るだけなのにこんなところで見つかるなんてバカみたいな事があるとは想定外であります!こんなの僕のデータにないでございますよ!)
世が世なら、あるいはモモイあたりなら『データキャラ辞めちまえ!』と心ない罵声が浴びせられただろう失態を晒しながらでも這いつくばった姿勢からなんとかリカバリーを考えるオウカ。
(とはいえ現象としてはただの怪奇現象であります、なにか起こったとしてもせいぜい『カイザーPMCの幽霊』みたいな噂程度のもの、ビルの扉が勝手に開く・閉まるなんてそれこそよく聞く話でありますから、このままゆっくり匍匐前進して視界を離れればいいであります)
こちらを見てはいても、別にオウカの姿を捉えているわけではないのだから、オウカがクロークを脱いだりしなければ見つかるような問題はない
そう結論づけて静かに・慎重に・丁寧に脱出を開始するオウカ
幸いその第一段階に必要となる一定時間の放置・状況固定はただこのまま寝ていればいいので問題はない。
(……おっぱいデカいのがうつ伏せには邪魔になるでございます……)
数分そのままの姿勢で固着したようにかたまり続け、静寂を維持していると、警備員はようやく落ち着いたのか扉を背にしてふたたび外の警備に戻る
オウカは扉を閉めるかどうかを一瞬悩んだが、閉めたら閉めたで今度は『何故か開いたはずの扉がしまっている!』という問題が勃発してしまうので閉めるのは諦め、そのまま離脱することにする。
(はぁ〜……心臓に悪いであります、潜入任務なんて)
見られたら即死ルールの中で間近で見つめられ続けるのは流石にストレスというか恐怖感が凄まじい
地面で胸が圧迫されて呼吸がしずらいこともあり、凄まじく苦しかったというのも相まって色々と辛かったのである。
(あとで絶対報酬に色をつけてもらうであります)
静かに大きく呼吸しながらその場を離れるオウカ、警備員に見つからずに出入りできる入り口は数少ないが、それに関してはトイレの換気扇が有効である
オウカ最初から侵入口が換気ダクトだったこともあり、脱出口もそことして考えていた。
「……静かに……静かに……」
一階女子トイレのカビじみた臭い空気、流石に汚いとは思うがわざわざ掃除してやる義理もないので普通に換気口だけを使わせてもらう
換気扇のファンを外し、配線を取り除いたら60センチ四方くらいの枠ができる
その外枠を外してさらに10センチほど大きな穴ができるのでそこに刀・荷袋を送り込み、更に靴や上着など引っかかるものを先に送ってからほぼ下着状態の自分もそこに身体を滑り込ませる
4日ほどほぼ絶食状態であったため、来た時より多少痩せているのだろう、胸以外はするりと通り抜けられた。
(外で下着姿は余程自分の体に自信があるか、あるいは一部の変態しかやらない格好でございますな)
肋骨を折る覚悟で無理やり体を押し込むと、壁尻状態からどちゃりと上半身が抜けてくる
流石に関節を外して狭い場所に滑り込むような技術は習得していないので、大きめの枠で助かったが、最悪『女子トイレに自生する壁尻』というある意味『夜中に勝手に開く扉』よりよっぽど危険な存在になるところだったオウカは、静かに呼吸とずり上がったブラを整えて、服を着直していく。
(脱出完了、であります)
一度脱出すればあとは内側から換気扇の枠とファンを付け直してやれば元通りになる
そうしたらあとはもう『カイザーPMC本社に潜入したエージェント』ではなく『たまたま近くに来た女子高生』であるからして、知らぬ存ぜぬを切り通せば良いのである。
「……」
物陰でのセルフチェック
(圧を掛けた肋骨は……折れていないようだ、よかった
もしかしたらおっぱいが型崩れしたかもしれないけど、元々ハリの強いタイプだからミレニアムの美容技術系の部活を頼ればなんとかなるであります、太ももはちょっと細ったか?……膝が痛いでありますな……)
酷使した部分や長く使わなかった部分、同じ姿勢で長くいたことからエコノミークラス症候群などの症状が発生しないかと恐れてはいるのだが、膝や胸がちょっと痛む程度で特に問題はないようだ。
「任務成功、これより帰還するでございます」
実に5日ぶりに人通りも少ないアビドスの夜道に出たオウカはアビドス高校へと歩を進めていく
流石に夜中すぎてもうまともに泊まれる場所もない、不法侵入してその辺りの家のフローリングで寝るのも『アリ』だが、だとしても抵抗がある
ならば曲がりなりにも所属する学校という居場所であるアビドスの方が良いだろうという考えだ。
「……しかし……」
数日前には『アビドスは監視されているだろうから出入りしない方が良い』と考えていた自分を振り返り、どうするべきか思案するオウカ。
(今一日だけ入る、いや稼ぎ口が増えたことは向こうも気がついていたであります、アビドスの監視は強化されているはず……)
駅に向かうか、学校に向かうか
砂に埋まりかけた十字路の真ん中で迷うオウカに、朝日が差し込んだ。
(午前5時過ぎ、時間的には日の出でありますな……)
砂丘の向こうから冷えた空気と共に差し込む陽光に手をかざして、黒髪の少女はそっと光に背を向けた。
「ミレニアムに、向かうであります」
破暁の金光のその奥の、彼女を見つめる瞳に向けた言葉を残して。
「うへぇ〜〜……フラれちゃったよぉ〜」
ぴこぴこぴこ、手を振るように揺れるアホ毛がぱたりと倒れ、ピンクの塊がクッションに沈んだ。
前アンケートを踏まえて、先生は?
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必要である、原作にできる限り近づけるべし
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女先生って……いいよね
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便利屋版先生を代入する
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不要である、オリ先生など吐き気がする
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亡き者にしろ