百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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三十一発目

「うへへぇ〜〜……」

 

 砂漠の学校の一室でほにゃほにゃとしていたピンクケダマ……ならぬ暁のホルスは、アビドス高校唯一の教室である対策委員会室に入ってくる人影を認めた。

 

「うへ?シロコちゃん、登校にはまだ早いよぉ〜」

「ん、大丈夫、今日は少し早く起きただけ」

 

「ならいいけどさ〜?ちゃんと寝られるうちは寝た方がいいよ〜」

 

 ゆるるん、と言わんばかりの気だるい雰囲気を纏ったまま転がっている彼女はどうやら身を起こすつもりはなさそうだ。

 

「昨日、カイザーからの通達」

「あれね〜……利率の引き上げ」

 

「ん、おかげで来月の返済額は5割り増しの1100万になった、これじゃあの子の仕送り分を含めても返しきれない」

 

 シロコの表情は暗い、だがホシノは変わらず眠たげな顔を崩すことはない。

 

「また賞金首狩り、やんないとね〜」

「ん、でも、最近は大物がいない、10万単位で稼いでも割に合わない」

 

 ただでさえ忙しい毎日を送る中、チマチマした稼ぎでは埋め合わせきれないほどの額に膨れ上がった返済額に苛立ちを覚えるシロコだが、ホシノはそれを制して止める。

 

「それは私がなんとかするよ、それでも返しきれないくらいならまたその時に考えよう?」

「……ん、わかった」

 

 時間は午前7時、そろそろみんながやってくるだろう、そう察したシロコはそこで会話を打ち切りにして、自らの席へと座った。

 


 

「申し訳ない、であります、物証を手に入れる為に潜入しておきながら、電子データしか回収できなかったであります」

 

「……いえ、それは良いわ、ミレニアムに於いて電子データとは血判状も同じ物

それさえあればそれを証拠にすることも容易いわ」

 

 びしっと決まった黒のレディーススーツ、赤い瞳の黒髪ロングの長身

ミレニアムの生徒会長、調月リオ会長はそう言い切った。

 

「取り敢えず、証拠はどれほど集まったのかしら、それによって状況は変わってくるわ」

「了解であります、データを移すでありますよ」

 

 ぴこぴこという一昔前の携帯端末やゲームセンターの筐体のような軽快な効果音が鳴り、無線経由でデータの送信が完了した旨を伝えてくる。

 

「よし、これでOKであります、そちらからご確認お願いするでございます」

「確認したわ、これだけ情報があれば、契約書そのもののデータを含めて証拠としては十分だと思うわ

これでミレニアムサイエンススクールの行政管轄機関(セミナー)としてカイザーをミレニアムから排斥できる」

 

 リオは普段冷静かつ無表情だが、成功を確信したこの時ばかりは僅かに口角が上がっているようだ。

 

「……報酬は同じように口座に振り込んで欲しいであります……ただ、流石に時間と疲労のアレが……」

「そう、長期任務お疲れ様ね、話しはこれで終わりにするから、今日はもう休んで置きなさい」

 

「いや報酬を」「セミナー会室のシャワー設備を開放するから朝食を摂ってからシャワーを浴びて寝なさい」

 

「報酬」「は振り込んでおくわ」

 

 にべもない、冷たい対応、これぞ冷酷な算術使いのあるべき姿と言わんげにオウカを置いて去っていくリオ

かくなる上は直接会計(ユウカ)に相談するしかあるまいと判断し、一旦交渉を諦めるオウカ

二人の会話は終了され、お互いがそっと部屋を出た。

 

 

「……私だって悪いとは思うわ」

 


 

「というわけであります、ひどいとは思わないでありますかぁ?」

「あくまでそれが会長の判断なら仕方ないわよ、セミナーの会計として認可できない予算は出せないわ

どうしても報酬を増額して欲しいなら、まずはノアと会長を説得してからにしなさい」

 

生徒会室を出て少し歩き、電算室にいたユウカに話しかけにいくオウカだが、流石に容易く予算を出してはくれないようだ、しかしリオとノアを説得しろということは……

 

「それってつまり、ユウカは説得されてくれたってことでありますな!?」

「されてないわよ!あくまで前提として筋を通しなさいってことなんだから間違えないでよね!」

 

 後ろを向いたまま吐き捨てるユウカの腕を掴んで、キラキラした目線(していない)で見つめると乱雑に振り払われる

だが我々は理解して(わかって)いる、ユウカの甘さを。

 

 あぁは言っても後でリオ会長にも自分から交渉してくれたりちょっとだけポケットマネー出してくれたり色々するのがユウカ(ミレニアムのおかあさん)なのだ

冷酷な算術使いの異名が聞いて呆れるほど温かみがある優しい少女である。

 

「仕方ないであります、ノアを探すなら……資料室あたりでありましょうか……」

「ノアなら、今は天文学部の部室あたりじゃないかしら、確率的に〜」

 

 ……つまり、『ノアは大体の場合その辺にいるだろう』と予測したユウカの胡散臭いセリフに一瞬目を細めながらもそれを受け入れ、オウカは天文学部の部室、部室棟最上階西側を目指した。

 

「午前7時08分、憂晴オウカさんと遭遇、天文学部になにか用ですか?」

「いえ、用があるのはノアさんであります」

 

「……私、ですか?もうこれから教室に行かないと授業に間に合いませんので、休み時間にしましょうか、12時20分に、食堂で良いですか?」

「わかりました、ありがとうございます」

 

 果たして本当にいたノアに若干驚きながら、昼に予定をとるオウカ、スマホにメモをしようと起動したその時。

 

「メール、連邦生徒会から?」

 

 驚きながらスマホの画面に視線を落とす、するとそこにあった文面は連邦生徒会長からのメッセージだった。

 

[連邦軍部Präparatは本日をもって全任務を終了と看做(みな)し、これを解体する

連邦生徒会会則に基づき、プレパラート部員憂晴オウカの所属を調停室へ変更し、プレパラートの全権限を回収する

また連邦生徒会直轄組織、連邦捜査部シャーレを設立し今後プレパラートの後任とする]

 

[オウカちゃんごめんなさい、せっかく頑張ってもらっていたけれど、私は結局間違ってしまったようです、私の後のことは先生にお願いしますので、オウカちゃんは引き続きミレニアム・アビドスで頑張ってください]

 

「ノア殿申し訳ない、今日は体調不良で授業を休むであります!」

「えっ?あっオウカちゃん!!」

 

 

 全速力で連邦生徒会本部、連邦校舎へと向かうため窓から飛び降りるオウカ、だが大体の建物が超高層ビルであるミレニアムの中の、さらに高い天文学部部室という場所はキヴォトス人でも流石に身投げ同然と言わざるを得ない

慌ててオウカを追い、窓際に駆け寄ったノアが見たのは

空中に身を踊らせながら壁を蹴って地上に向けて加速していくオウカの後ろ姿だった。

 

 全身を縦に一直線にすることで逆さまに最高速度で落下(ダイブ)し、

地面が近づけば足に力を込めて壁を蹴り破らんばかりの勢いで足蹴にし、その勢いと神秘放射による反動でロケットの着陸のように減速する

まるで人の背にジェットエンジンとブースターでもつけたかのようなあり得べからざる挙動で彼女はノアの視界から消えていった。

 

「……どうしましょうか」

 

 そう、天然生の英傑(やくさい)でもあるまいに、どう頑張ったってあんな動きで無事に着地なんてできるわけがない、そもそもここは地上200メートル近い高さがあって、下は耐摩耗性アスファルトの路面だ、いくらキヴォトス人でも落ちればヘイローが砕けかねない。

 

「『体調不良』と言っていたのに、随分元気そうです」

 

 どうやらノアが心配していたのは不正休学(そちら)だったようだ。

前アンケートを踏まえて、先生は?

  • 必要である、原作にできる限り近づけるべし
  • 女先生って……いいよね
  • 便利屋版先生を代入する
  • 不要である、オリ先生など吐き気がする
  • 亡き者にしろ
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