百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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三十二発目

 

「連邦生徒会長、これはどういうことですか」

「見ての通り、ですよ?」

 

 やっと辿り着いた連邦校舎の正面、連邦線連邦校舎前駅にて、水色の髪の彼女へと問いかける

帰ってきたのは、あっさりとしたその一言だった。

 

「突然部署の解体など前代未聞です」

「前例は作るものであって、頼るものではありませんよ、それにプレパラートの全権回収はシャーレへの引き継ぎのための必要経費です、本来の計画(プラン)ではあなたの神秘に頼るつもりでしたが、このままでは勝てないのです」

 

 連邦生徒会長たる彼女は冷たく笑って、そう言い切った。

 

「計画を変更するにしても双発化(ツインエンジン)ならまだしも以前のそれを切り捨てるとは何故ですか、貴女が計画だの予定だのというのはもう慣れましたが、わざわざ百鬼から招聘された身の上で突然免職は腑に落ちるものではない!」

 

「もう言いました、それでもまだはっきりと言われたいなら言いましょう、天目一個『あなたでは能力不足だ』と、さぁもういいでしょう?もう電車が出てしまいますから」

 

「納得できない、でありますな、理由も告げずに人を駆り出し送り出して役職につけて仕事を任せ、それでお題目通りに仕事をしていたら能力不足だと?……ふざけるな」

 

 彼女は普段絶対にしない怒りに任せた掻きむしるような髪の掻き上げ方をして、耳に掛かっていた髪を背中に戻したと同時に()を抜いた。

 

「俺の席を、俺の願いを奪うなら……容赦しない」

「速く、終わらせましょう、先生が来る以上は

どのみち貴女はいなくても構わないのだから」

 

 その言葉を聞き終わる前にオウカは発砲し、連邦生徒会長は左側にあったコンクリの柱に寄りかかるようにして回避

ハイヒールの彼女はさぞ動きづらかろうと言わんばかりに足元の隙を突きにいくオウカだが、

空中を歩くかのようにバク宙し、上下逆さになった会長が首を目掛けて掴みを仕掛けてきたため、攻撃を中断して退却(バックステップ)、しかし以前として近距離、全弾発射(フルバースト)でヒットを狙う!

 

「先生とは何者だ」「世界を救う方ですよ」

 

 会長は一瞬姿を消したかと思えばオウカの目の前に出現、いや跳躍で視界から一気に抜けたのだとオウカが気付くより前に踵落としが直撃する。

 

「うぐぅっ……まだだ!」

 

 オウカは身体を傾げながらも応戦を選び、右手で軍刀を逆袈裟斬りに振り切った。

 

(激闘の型!)

 

 パワーで相手を圧し斬る大振りを繰り出す型で反撃してきたオウカに僅かに表情を変えながらも冷静に左爪先をオウカの顔面に捩じ込む会長

足の長い彼女が蹴り込んだ爪先を振り抜けばそれはそのまま距離となり、間合いを無理矢理離された軍刀はかすり傷程度に収まってしまう。

 

「成長を見込んで楔としたあなたには膂力も神秘も思慮もまだまだ足りていない、だから私は世界を救うために新たに救世主(メシア)を招聘する、そしてメシアは……2人もいらない」

 

 連邦生徒会の制服の脇腹に薄く付いた切り口、開いたそれを抑えながら空中から吐き捨てる会長。

 

「その時『見よ、ここにメシアがいる。見よ、あそこだ』という者がいても信じてはならない

偽メシアや偽預言者が現れて、しるしや不思議な業を行い、できれば選ばれた人たちを惑わそうとするからである、だからあなた達は気をつけていなさい、マルコによる福音書13章21項23条、私がその偽物だと?」

 

 着地した連邦生徒会長に向けて、首狙いでオウカが剣を振り抜くが、彼女は一歩引くだけで間合いを外し、剣先を掴み取って見せた。

 

「残念ながら、あなたは真実に救うものではなかったのです」

 

 剣先をこじって奪おうとする会長に対して(なかご)を締め込む留め金を外して刃のみを取り外し、剣を失っても銃を奪われるリスクを避けたオウカは再び発砲、

武器そのものには詳しい彼女でも、流石に近接武装の試作兵装の、刀身の留め金なんてニッチな部分のことは知らなかったのか、目を見開いたその一瞬の隙に全弾連射。

 

「あなたをどこぞに行かせるわけには……行かない、予定キャンセルしてでも生徒会室に叩き返す」

「……困りましたね、もう電車が出てしまう」

 

 扉が閉まるアナウンスは聞こえないが、オウカが聞き逃しただけかもしれない、時間制限があるというなら彼女も攻撃をしてくるのだろう

気を引き締めなくてはならない。

 

「さようなら、憂晴さん」

 

 握られた刀身部分を指を落としかねない危うさで持ち替え、刃をこちらへと向ける会長に対して、オウカも銃口を突きつける

弾は再装填できていない、入っていない

だがそれでも、意志は確かにそこに込められている。

 

 実体のない架空の剣先を左右に円を描くように回して、肩の高さで弓を引くように右手を後ろに引き、左手の指をその刀身に近づける

そこにまるで刃があるかのようにぴたりと第三の構えを取ったオウカの銃身から、光の剣が放射される

それはウタハ達の強化改修により、銃身内部に追加されたエネルギーブレードエミッターの機能

刀身の摩耗が限界を超えてもなお戦う時のため、僅かな時間、刀身そのものをエネルギーで構築する光の剣を顕す機構だった。

 

光の剣(ライトセイバー)……」

「光の剣・レイディアンサー、であります」

 

 超高エネルギーの放射を維持する機能の都合上、刀身の崩壊までの時間は短い

だらだらとしてはいられない、だが向こうも時間制限があるというなら、むしろ短期決戦には都合がいい。

 

「ふっ……!」「はぁっ!」

 

 袖で包んだ(なかご)を握った会長が切り掛かり、オウカも応戦して切り払う

銃の世界(キヴォトス)では場違いな、騎士同士の決闘のような剣戟戦が始まった。

 

 右手の光剣を回し、体と共に半時計周りに旋回、途中でバネを弾くように逆回しに回転、遠心力を利用して振り切るように剣を払うが、会長はそれを跳躍して避け、壁を蹴って2メートルほど離れ、今度は地面を蹴って低い姿勢で膝狙いの突きを繰り出してくる

その動きは彼女の知る第四の型『踏破』に酷似していた。

 

「なぜあなたがそれを!」

「私はキヴォトスを治める連邦生徒会の会長、猛者を束ねるその長が、誰かより弱いというわけには行かないのです」

 

 視線を振り切るほどに早い跳躍とその勢いを生かした切り掛かり、死角からの攻撃は本来なら騎士道的とは言い難いものだが、彼女のそれは敵を翻弄する型として完成している

だが、オウカとて相手が自分と同じ剣術を使ってくるというだけで倒されるほどヤワではない

形を剣士同士の戦いを前提とした剣を打ち交わさずに弱点を狙う第二の型『決闘』へと切り替え、正眼に剣を構えて突きと薙ぎを交えながらの攻撃を仕掛ける。

 

 オウカの振りの早い横薙ぎは一撃を当てることを優先して浅く払うようなそれ、に対して使えるのが刀身のみという違いから必殺を狙い、深く踏み込んで切り付ける会長

動きの違いは体力の消耗にも大きく関わってくる

その形がどうあれ、生徒同士の、キヴォトスでの戦いとは神秘を叩きつけ合うものだ

ダメージを受ければ神秘は削れ、弱る

オウカの光の剣は超高エネルギー放射によるレーザーブレードであるのに対し、鋭いとはいえ当てなくては効果の出ない物理の刃である会長は不利になっていく。

 

「話はベッドで聞かせてもらうであります!」

「人をベッドに連れ込むには……気が早いですよ!」

 

 超硬金属鍛造の刃は一瞬レーザーと打ち合った程度では融けはしない、僅かに火花を散らし、赤熱しながらも依然として刃は鋭いままだ。

 

「このまま……っ!」

 

 互いに刃を都合三十合ほど打ち合うなかで、オウカの見出した一瞬の隙

彼女の脇腹にできた傷跡からの出血で赤く染まった左腕への一撃が振るわれ、その瞬間。

 

「……待っていました」

 

 右側への大跳躍によって間合いを抜けられたオウカが空振りし、姿勢を崩したその隙に、焼けたコンクリの柱を蹴って飛び込んできた彼女が大上段からの幹竹割(からたけわり)を放った。

 

 

「……ごめんなさい、今は詳しく説明することは……できない」

 

 カラン、と音を立てて、血に濡れた刀身を捨てた会長は、最後にホームに倒れたオウカの頬へと指を添える。

 

「貴方だけではだめだった、救えなかった

だから、私の弱さを許してください」

 

 彼女はオウカをホームに残したままで、止まっていた電車へと乗り込む、お行儀よく席に座って、そして痛む脇腹を隠すように膝をあげた。

 

「お願いです、先生……」




はい、というわけで連邦生徒会長が失踪しました

途中なんかジェ○イの騎士いましたが関係ありません

前アンケートを踏まえて、先生は?

  • 必要である、原作にできる限り近づけるべし
  • 女先生って……いいよね
  • 便利屋版先生を代入する
  • 不要である、オリ先生など吐き気がする
  • 亡き者にしろ
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