最近アイデア力が枯渇してきて毎日更新ができていないんだ、オラに感想を分けてくれーっ!!
「あの、大丈夫ですか?意識はありますか?」
「………………先輩」
オウカの意識が覚醒した時、真っ先に目に入ったのは黄金の髪、そしてそれを背にするアユムの姿だった。
「天使が見える……天国でありますな……」
「ま、まだ死んでいませんから!生きてますから天国じゃありません!」
アユムは慌ててオウカの上体を少し起こすと呼吸を楽にする回復体位に倒した
そのまま腫れたり裂けたりした身体の傷を抑えたりさすったりしながら冷やし、ある程度の応急処置を施していくアユム、彼女は何も問おうとはしなかった
なぜこんなところでオウカが倒れているのか、なぜ突然オウカがその職務を解任されたのか、なぜ血痕がついた刀身や床壁に撒かれた血飛沫が残っているのか
湧き上がる疑問は数多いだろうが、それらを口の
「すみません、やられました……」
顔面蹴りを食らった時に口の中が切れたのだろう、ネバつき、血の滲むような味のする口腔内、最低限舌と歯の無事を確認しながらオウカは呟くように彼女に告げる
その言葉を聞いた彼女は儚げに微笑んで返した。
「それを言われると、『誰に』とか、『いつ』とか『どうやって』とかいろいろ聞きたくなってしまいます、だから今は……じっとしていてください
もうじき救急車が来ますから」
「もう自分で動けるでありますから……」
「ダメです」
レーザーブレードを形成するエネルギーは持ち主の神秘由来のそれ、レーザー発振によって神秘は激しく消耗し、それが肉体の脆化を招いているようだ
軋む関節に鞭をくれてやろうとするオウカを強く制したアユムがオウカを抱き起こすように膝あたりに触れると、超硬金属刃の破片で切ったのだろう切り傷を撫で付けてきた。
「いいったい?!」
傷口の断裂痕がずらされた事で起きた神経パルスの干渉でぞわぞわと粟立つ背筋と脳に激痛の電器信号を送ってくる脊髄が反射で跳ね、さらに全身の痛みを誘発する
突然の痛みに悶絶しながら転がるオウカを押さえつけるようにしながらアユムは優しくささやいてくる。
「動くどころか立つこともできないじゃないですか、無理をしてはいけません、いいですね?」
「それは明らかに今先輩が傷口を開いて」
「何か言いましたか?」
「……イエナンデモ」
天使のような彼女の笑顔はそれはそれは美しかったが、それはそれとして笑顔は元来牙を剥き出す威嚇の構えであり、臨戦体制を意味するという言説を思い出すオウカであった。
「知ってる天井、でございますな…」
「知ってるなら言わなくて良いんじゃない?一応お見舞いに来る私の目の前でさ」
そのあと救急車が本当にきてD・U市内の病院に運び込まれ、治療を……(あまりに応急処置が適切であったため、ほとんどやる事がなかったらしいが)受けたオウカは入院着でぼんやりベッドに転がっていた
そしてベッドの前の椅子には並んで座るモモカとスモモ。
「俺は個人的に『お見舞い』はサボりの口実にされるべきではないと思うんですが、それについてどう思いますか?」
「あくまで個人の思想だね〜」
「別にどうだっていいんじゃない?」
相も変わらず病室でポテチや見舞い品をパクつくモモカと、それをじとっとした目で見ながらすげなく言葉を切るスモモ
普段頻繁にサボっていたりして一見忙しそうには見えないが、なんだかんだ言って忙しい彼女等までもがわざわざ見舞いに来ているというのがどれほどの事態かというのはもうわかるだろう
そう、『連邦生徒会長が失踪した』のだ。
「はぁ〜〜……今ね、会長、どこ探してもいないって大騒ぎだよ、最後は駅に向かった形跡があったからって駅に行ったらミレニアムの制服着たまま倒れてるのを見つけるし、いくらわたしが交通室長でハイランダーの出だからって誰の動向なんでも知ってるわけないじゃんって言って抜けてきちゃった」
「……俺は、会長と戦ったであります」
「詳しく、教えてくれる?」
普段は怠惰に蕩けている彼女の瞳が蒼く輝く、悪魔種特有の尾が揺れて、彼女たちの感情の揺らぎを表現していた。
「生徒会長は『先生を呼ぶ』と、そう仰っていました、そして、その先生のための施設と組織を、作ると」
「先生、ですか」
「真の意味での、学校教師としての『先生』では、おそらくありません、教師ではなく、先導者としての先をゆく人、であると思われます
私もろくに話を聞けないまま負けてしまったので、詳しいことはわかりません、ですが……『キヴォトスのために先生を呼ぶ』
これだけは、事実であると考えられます」
「先生ねぇ……まぁ、会長もなんにも言わずに消えちゃったから目的が知れただけどマシってところかな……怪我して転がってたのは、やっぱりオウカが会長を止めようとしたの?」
「はい、結果として説得はできず、戦闘になり……やられました」
「憂晴さんが一方的に負けた……?」
「はい」
オウカはスモモからの言葉を肯定して、全身の鈍い痛みに目を閉じる、脳に届く不愉快な神経パルスの塊を受け入れてその先へと意識を進め、ヘイローを輝かせる
いくらヘイローを輝かせたところで、目に見えるほど治癒が早くなったりは流石にしないが、ヘイローを由来とする、全身に流れ廻る神秘を加速して擬似的に神秘の濃度を高めることで少しなりとも治癒力を上げる試みである。
「今はとりあえず一応、リンちゃんが会長代行ってことになってるんだけど、会長の行先はわからなくてもなにか掴めそうな足取りとか証拠のようなものに心当たりはないかな」
モモカの問いは当然のものだ、必要なのはオウカの戦闘記録ではない、会長の行方の情報なのだから。
「……そう言われても、たまたま見つけて問答をして、結局斬り合って負けた、という流れになったので、会長がどこに行くだとかはわかりません
ただ、私の剣はヘイローのある生徒にはまともに当たっても『ちょっと痛い』程度で済むものですが、あの時の会長は浅く薙いだ剣先で脇腹から血が滲むくらいの裂傷がついていました
おそらく、あの時すでにヘイローのエネルギーのほとんどを何かに消費して、肉体に宿す力は残っていなかったと思われます」
そう、あの時会長は
外界では致命傷になる攻撃も、犬猫やオートマタら一般住民であってさえハンドガン数発程度は『痛い』で済ませられる、キヴォトスの生徒達は中堅クラス以上にもなれば戦車砲だのミサイルだのにも耐え得るというのに
鋭いとはいえただの刀剣で脇腹を裂かれるというのは、不自然と言わざるをえない。
「銃弾くらいで傷つかない頑強な肉体を持つはずのキヴォトスの生徒が、刀の斬り合いで重症になる、ってのもおかしい話だね」
「はい、なのでそれほどのエネルギー消耗を強いられる何かが前提にあって、それで『そのままでは勝てない』と判断した会長が逆転の一手を呼び込むために……笑い話ですが、外の世界に行ったとしたら」
オウカは確信していた、『先生を呼ぶ』とはキヴォトスを離れて別の世界に行き、そこから新たな人を呼び込む事を意味しているのだと。
「外の世界から新たな『先生』を呼び込んで、その人を新しいキヴォトスの守り手にする、ってこと?
流石にちょっと信じ難いけれど……まぁ現状の情報で言えば妥当な推論かな」
モモカはスモモに持たせていたクッションを自分のポテチの空袋と入れ替え、最後の一枚になったポテチをオウカに向かって差し出した。
「はい、あーん」「ん……かっら!!やめて欲しいでありますこういうのはぁっ!ちょっ水!水くださいって!」
差し出されたそれを、雛鳥のように何も考えずに受けてしまったオウカは激辛ペッパー味だったポテチに口内の傷を灼かれて身震いしながら激痛を訴えるが、スモモはポテチの空袋を握ったままそれを遮った。
「ダメですよ、辛いもの食べた後に水を飲むとくちのなかに痛みが広がっちゃいますから」
「おっ……ひどいって!これは仕打ちとして!ひどいって!」
「「…………ちょっとかわいいかも」」
ベッドを揺らして呻くオウカをニヤリと笑う子悪魔姉妹が見つめていた。