百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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三十五発目 再装填……?

 

「はぁ……では次の質問よ、あなたは連邦生徒会と内通し、ミレニアムの機密を盗み出していたのではないかしら?」

「否でありますな、俺はあくまでアビドス高等学校の生徒であります、そもそも業務上知り得た機密をわざわざばら撒くなんて奴は本当にごく一部のアホだけであります

連邦生徒会に所属しているのは確かでありますが、知っての通りアビドスは極貧学校でありますから、一室の末席に在籍だけしているだけの状態でありますよ」

 

 これは本当にそうだ、現状オウカは『連邦生徒会調停室に所属している』というだけで仕事はしていない

一室の末席と表現するのもむべなるかなと言ったところであるのだが、そんなことを斟酌しないのがリオ会長。

 

「証拠は?」

「証拠……?」

 

 あまりに提示しようがないので言葉に詰まるオウカ、流石に連邦生徒会の在職票なんてとってくるわけには行かない、仮にとってきてもそれには旧所属である連邦軍部の名前がガッツリ載っているだろうし、連邦生徒からの証言も内通者を庇っているだけだと言われればそれで終わりである。

 

「証拠が提示できないのであれば……」

「待ってください」

 

 言い淀むオウカに詰め寄ろうとする会長を止めたのは、アカネだった。

 

「病院に身元を引き取りに行った時、面会記録には連邦生徒役員の名前もありました、しかしこれを内通の証拠とすることができるでしょうか?」

 

 『連邦生徒会役員と面会をしていた』ことと『その時に機密情報をやりとりしていた』は等号では結び得ない、その二つを結びつけるためには面会中の映像や音声データを加えて考えなくてはならないからだ

情報の漏洩をしていたと言い切ることも、その確たる証拠がなくてはできない事だ、言い掛かりじみた詰めで無理矢理アビドスに強制送還することを目論んでいたのだろうリオ会長が言い分を折られて黙り込む。

 

「もういいんじゃないか?オウカはまともに仕事も勉強もしているのを私も見ている、C&Cとしての働きも、その所属の経緯もここにいる全員が知っていることだからそこに嘘はない、連邦生徒会側に情報の公開も要求しているんだろう?ならもうそれでいいんじゃないか?」

 

「くっ……」

「そうですよ会長!オウカだって意図して二重所属していたわけじゃなく、結果としてそうなっただけでスパイのために潜入してきたとかじゃないんですよ!ねぇオウカ」

 

 ねぇ、で同意を求めるように僅かに首肯しながらこちらを見つめるユウカ、空気は完全にオウカ側に傾いていた。

 

(連邦生徒会長これ帰って来たらブン殴るでございます……)

 

 なぜ彼女が失踪するだけで自分が迷惑を被らねばならないのだと内心憤慨しながら、同意を込めてユウカに頷くと、やはりと言わんばかりに全体の空気が和らぐ。

 

「なぁリオ、もういいだろ

あくまでも納得いかねぇってのなら、オウカ、お前アタシと戦え」

 

 全員の総意をもって場を納めようとするネルと、あくまで不穏分子を解除したがるリオの視線が衝突する

ミレニアム最低レベルの身長を持つネルと、ミレニアム最高レベルの身長を持つ会長はともすれば親子のように見えるほどの身長差をしているが、二人は生徒会の全権を握る支配者である生徒会長と、最高峰の実力によって暴力機関を束ねる最強の戦士

この場での扱いは同格であった。

 

「……良いでしょう、ネル、火力演習に使うフィールドを用意するわ、武装火器の制限も一切を解除する

ユウカ、演習場の使用手続きをお願い」

「はい!」

「っーわけだ、ツラ貸せや」

「うっわ凄まれても目つき以外ぜんぶ可愛いだけだ……」

 

 その後、カリンを除くC&Cのメンバーで演習場へと移動し、それを上から肉眼で見ることができる管制()でセミナーメンバーとカリンが観察の姿勢をとった。

 

 ネルVSオウカ、身軽さと手数でゴリ押すタイプのネルと、パワーで押し切るオウカ

今回、ネルに手加減の必要(ストレス)はなくオウカの側にもC&Cに入った時のような不調はない、互いにフルスペックで戦えるのは確認済みだ。

 

[今演習のルールを説明いたします]

 

 入場ゲートを管理しているAIがスピーカーから合成音声を鳴らす、ガイダンスが終わったら開戦だ。

 

[今演習は火力演習であり、より迅速にエネミーを全員殲滅することを求められます、主な評価基準は撃破タイムと残体力であり、3ウェーブの敵の殲滅を3セット行いその評価合計を集計して点数とします]

 

 オウカの軍刀は既に復元され、左目も金霞眼も、右目の義眼も輝いている

ネルはさっきまでのスカジャンをお気に入りの物に変えて、靴も履き慣れた物に変えている。

 

[正確に照準を定め、迅速に、敵を殲滅してください

これより、火力演習を、開始します]

 

 ブザーの音が、鳴ったかどうかは定かではない

壁を垂直に登れるほどの脚力を持つネルのスピードは新幹線並みの時速300キロに及び、開始と同時にオウカは()()してきたネルを受け止めることに掛かり切りになったからだ。

 

「オラオラどうしたどうしたどうしたどうしたァ!」

 

「まさに疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドランク)でありますな……!」

 

 脚が見えなくなるほどの速度の跳躍突進で体当たりし、その衝撃で無理やり武装を解除、あるいは破壊する一手、初手で繰り出す攻撃とは思えないが、事実としてそれは有効と言わざるを得なかった。

 

「でも近接はこちらの間合いでありますよ……!」

 

 ネルの着弾を受け止め、オウカの腕の筋肉が断裂しそうなほどのパワーをかけられた刀が、それでも折れずに跳ね上がる

刀を蹴って再度跳躍し、距離をとったネルに対しておよそ10メートルの間合いで正対したオウカが、両手に握った軍刀を正面中段、つまり正眼に構える

それは軍刀で戦うために身につけた剣技の最古の型、対野獣戦のために作られた基本の型、第一の型『修練』の構えだった。

 

「卍……か」「させねえよ」

 

 気合いを入れるために腰を落として全力で柄を握ったオウカに対し、再び踏み込んで刀身を蹴り上げたネル、しかし

逆巻く円月の軌道を描く刀身はネルの蹴り上げを受けてそのまま加速、オウカは一本足でくるりと身を翻し、その場で一回転しながら左逆袈裟斬りで切り上げる。

 

「ふっ!」

 

 ネルのスピードと脚力がそのまま勢いになった振り切りは刀身の鋭さを合わせてネルの剛性を上回り、その短い胴を切り裂きながら顔面へと届き、地べたに血飛沫を振り撒きながらネルが仰け反った。

 

 左足を地面に突き刺すように着地して回転を押さえ込んだオウカは今度は軍刀の柄を左手一本で握り込み、右手は掌で柄頭を抑えるようにする

頭の右横まで軍刀を引き寄せ、地面と水平になるように構える

刀身全てを大きく引き込んだその構えは全力の横薙ぎのためのプレモーション!!

 

「秘剣 燕返し」

 

 百鬼夜行の生徒特有の節操のないラーニング、それによって取り込まれたフィクションの技術の実現、鍛え込まれた肉体によって為される『あり得ない』とされた瞬間三撃の同時攻撃が動きの止まったネルへと切り掛かり。

 

「舐めんなぁっ!!」

 

 ネルの両手のツイン・ドラゴンが左右に向けられた

左から右へ抜けるX軸、縦斬りのY軸、奥へと抜ける右斜め斬りの3つの斬撃の交差点に置かれたというのなら

単純なこと、全て同時に迎え撃つ……!

 

「馬鹿なッ!」

 

 左右の水平斬りとなる初太刀は右手の銃で、続く右袈裟斬りは左手の銃で、そして最後の幹竹割りは彼女自身の蹴り出した左足でオウカの腕を、全て同時に迎撃することに成功したネルはそのままトリガーを維持しながら両手を正面に向ける

全力を込めた全ての攻撃を同時に弾かれ、大きな隙を見せたオウカに、双頭龍(ツイン・ドラゴン)が吼え掛けた。

 

「オラオラオラオラオラアッ!!!」

「うぐぅぁぁっ!」

 

 もし、彼女が忍術の使い手であったなら

変わり身と称して丸太でもなんでも入れ替わっただろう、だが彼女は忍者ではなくあくまで戦士、その銃弾をかわすことはできなかった。

 

「オウカっ……!」「オウカちゃん!」

「……」

 

 ユウカとノアの声は、もちろん遠く届かない

だが、物理的な声ではない、心の声は確かに届いた。

 

「I'llbeback」

 

 銃撃の嵐に吹き飛ばされ、演習場の地面を転がるオウカが逆再生じみた奇怪な動きで立ち上がり、刀を手元に引き寄せた。

 

「流石に一撃で死ぬほど脆くないであります」

「そうかよ、なら何度でも……!」

 

 再びツイン・ドラゴンを構えたネル、そして銃撃に対してオウカは右半身を一歩後ろに、刀を肩の高さで水平にして弓を引くようにその鋒に左手を添える第三の構えを取る

流麗な動きで銃弾を弾き逸らして受け流し、キンキンと弾かれた銃弾がネルにも帰ってくるが、撃たれて帰ってきた弾はそれだけ弾速が落ちている

威力の減衰した弾の一撃二撃など、ネルにとっては避けるに値しないものだ。

 

「アタシにそれは効かねえぞ!」

「それが狙いではないでありますゆえ」

 

 火花をあげて刀身を焼き、白熱させながらそう吐き捨てるオウカ、ネルの弾数を以ってすればこのまま白熱化した刃が本当に溶け落ちるまで撃ち続けることすら可能だろうと脳内で割り切って、白熱刃で斬り殺すことは諦めたのだ。

 

「ゆえに弾切れまでそこで撃ち続けてもらうであります、ホームランダービー、見たことくらいあるでありましょ?」

「あぁ?!アタシはピッチングマシンかよ!ふざけやがって!」

 

 激昂したネルが飛び込んでくることは……流石にない、熱によって焼灼・溶断する白熱刃はネルにとっても流石に警戒対象らしい。

 

「そのまま焼け落ちてな!」

「本気でありますか」

 

 すでに刀身は白く染まり、輝いている、これ以上は刀身の耐久の方が限界に来てしまうだろうというくらいには熱を蓄えているのだ。

 

「なら、こう」

 

 銃弾の雨の中、半歩だけ身をずらして射線を回避したオウカが急遽取った突きの姿勢でトリガーを引く、当然軍刀の鍔に当たる銃部分から弾が吐き出され

そしてそのままトリガーを引き続けていると、刀身が弾けるように射出された

 

「びっくり箱かテメエ!」

「イースターエッグでありますぅ!」

 

 スペツナズナイフのように射出された刀身がネルへ迫り、咄嗟に受けたツイン・ドラゴンの右手側を焼き焦がして動作不良に追い込んだ。

 

「それで……こう!」

 

 刀身のなくなったオウカが普通に拳銃として南部自動拳銃を使い、接近しながらツイン・ドラゴンの左手側を破壊せんと接近する

振り抜かれた銃身同士が激しく激突した。




これ投稿3分前まで書き込み続けてるってマジ?
昨日の分もまとめて投稿してありますので前話からご覧ください
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