百鬼夜行より連邦へ、弾丸を込めて   作:魚介(改)貧弱卿

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三十八発目 先生到着

「キヴォトスは数千の学園が集まって出来ている巨大な学園都市です、これから先生が働く場所でもあります

きっと先生がいらっしゃったところとは色々なことが違っていて、最初は慣れるのに苦労するかもしれませんが……」

 

「でも先生なら、それほど心配しなくとも良いでしょう」

 

 声の良い、顔の良い美女、リン行政官に連れられてエレベーターに乗り、静かな稼働音と共にどんどん上階に昇っていく

窓の外には無数の超高層ビルの狭間を流れる広い河、そしてそこに反射する空の青色に染まった藍摺りの景色、目の前の彼女の蒼い瞳と共に私を、“先生”を迎えるキヴォトスの景色が広がっていた。

 

「あの連邦生徒会長が、お選びになった方ですからね」

 

 彼女はその『連邦生徒会長』によほどの信頼を置いているのだろう、彼女が選んだなら大丈夫だ、と見ず知らずの人間に向けて言い放てるとは素晴らしいことだ。

 

「それはあとでゆっくり説明する事として」

 

 その言葉と共にチャイムが鳴り、エレベーターの扉が開いた

その先にいたのは、彼女とは打って変わって黒と紺のスーツじみた服を纏った青色の髪のツインテール少女だった。

 

「……」

「ちょっと待って!代行!見つけた、待ってたわよ、連邦生徒会長を呼んできて!……うん?隣の大人の方は?」

 

「主席行政官、お待ちしておりました」

「連邦生徒会長に会いにきました、風紀委員長が今の状況について納得のいく回答を要求されています」

 

 黒と赤のセーラー服を来た黒髪の美女と、ブラウンの髪を巻いたふわふわしているメガネの少女、勢いからして彼女らはリンの部下というわけではなさそうだが、どう言う関係なのだろうか。

 

「あぁ……面倒な方達に捕まってしまいましたね……」

 

 心底面倒くさそうにため息をついた彼女は聞こえよがしにそう言うと、ワントーン上げたよそゆきの声で挨拶をする

挨拶もなく本題を叩きつけてくるのは無礼だ、という遠回しな牽制も兼ねているのだろうか?

 

「こんにちわ、各学園から()()()()ここまで訪問してくださった生徒会、風紀委員会、その他時間を持て余している皆さん」

 

 にこにこと柔らかな笑顔を向けながら明らかに言葉は喧嘩腰になっている、それほど苛立っているというのはどう言うことなのだろうか。

 

「こんな暇そ……大事な方々がここを訪ねてきた理由はよくわかっています、今学園都市に起きている混乱の責任を問うために、でしょう?」

 

「そこまでわかってるならなんとかしなさいよ!連邦生徒会なんでしょ!?数千もの学園自治区が混乱に陥っているのよ!この間なんかうちの風力発電所がシャットダウンしたんだから!」

 

 刺々しいリンに対して、青髪の少女が怒鳴る、とはいえ昔から『連邦』やら『連盟』やらは上位独立組織として私腹を肥やし、下の構成組織が餓死しても自分たちが飽くほど喰らうことはやめないものだと相場が決まっているのだ

彼女の言葉は残念ながら叶わぬ夢物語にすぎないだろう。

 

「連邦矯正局で停学中の生徒たちについて、一部が脱出したと言う話もありました」

「スケバンのような生徒たちが、登校中のうちの生徒を襲う頻度も、最近急激に高くなりました、治安の維持が難しくなっています」

「戦車やヘリコプターなど、出所の分からない武器の不法流通も2000%以上増加しました、これでは正常な学園運営に支障が生じてしまいます」

 

 残りの3人はまだ理性的なようで、冷静に被害や状況を並べ立てる

2000%武器の流通量が上がったとはなんなのかちょっとよくわからないが、とにかく治安を回復させろと言うことなのだろうか?

 

「こんな状況で、連邦生徒会長は何をやっているの?どうして何週間も姿を見せないの?今すぐ会わせて!」

 

 口火を切った青髪の少女が最後をも飾り、締めとなる言葉を言い切る、しかしリンは目を閉じて、それらを聞き答える様子はない。

 

「連邦生徒会長は今、席におりません、端的に言えば行方不明になりました

結論から言うと、サンクトゥムタワーの最終管理者がいなくなったため、今の連邦生徒会は行政制御権を失った状態です、認証を迂回できる方法を探していましたが、先程までそのような方法は見つかっていませんでした」

 

 それは過去形の発言だ、つまり今現在は、その方法が見つかっていることになる

仮にも聡明な人達なのだろう、それについてはすぐさま突っ込んできた。

 

「それでは、今は方法があると言うことですか?主席行政官」

「はい」

 

 黒髪の女性に問われたリンは自信満々にメガネを掛け直して、私へと視線を向けてきた。

 

「この先生こそ、フィクサーになってくれるはずです」

「えっ?」

 

「この方が?」

「そういえば、この先生はいったいどなた?どうしてここにいるの?」

 

 青髪の彼女は周囲の状況が自分の予測と違いすぎて混乱しているようだが、黒髪の女性は冷静だ。

 

「キヴォトスではないところから来た方のようですが、先生だったのですね」

「はい、こちらの先生はこれかはキヴォトスの先生として働く方であり、連邦生徒会長が特別に指名した人物です」

 

 リンの言葉と共に、全員からの視線が強くなる

権限の引き継ぎどころか事前の説明すらなく失踪してしまった連邦生徒会長の、その肝煎りなどと言われてもまるで信用ならん、といった様子だろうか?

 

「よろしくね、みんな」

 

「こっ!こんにちわ、先生、私はミレニアムサイエンススクールの……い、いや挨拶なんて今はどうでもよくて!」

 

「そのうるさい方は今は気にしなくて良いです」

「冷たいね?」

 

 ユウカのテンパりを遮ったリンに対してツッコミを入れると、では全員と挨拶でも?と軽口で返される

流石に全員相手にいちいち挨拶をしていたらそれだけで日が暮れてしまうのはわかる

今は『サンクトゥムタワー』の権限復活についてを考えないといけないだろう。

 

「先生はもともと、連邦生徒会長の立ち上げた部活動の顧問として招聘されました、『連邦捜査部 シャーレ』単なる部活ではなく一種の超法規的機関、連邦組織のため、キヴォトスのあらゆる学園の生徒達を制限なく加入させることすら可能で、各学園の自治区内で制約なく戦闘行為を行うことも可能です」

 

 聞く限りあまりにもぶっ飛んだ権限だが、そんな権限をわざわざ1つの部活動に集約する必要がどこにあったのだろうか

そんな風に疑問に思っていると、リンは『私にもわかりません』といった目線を送ってくる。

 

「シャーレの部室はここから約30キロ離れた外郭地下にあります、今はほとんど何もない建物ですが、連邦生徒会長の命令で、そこの地下に『とある物』を持ち込んでいます、

先生を、そこにお連れしなくてはなりません」

 

 彼女は通信機を起動すると、声を張り上げた。

 

「モモカ、シャーレの部室に直行するヘリが必要なのだけど」

[シャーレの部室ぅ?今その辺大騒ぎになってるよ?ヴァルキューレが鎮圧には向かってるけど、ダメだね、全然抑えられてないや]

 

 可愛らしい、しかしどこか投げやりな荒んだ声が聞こえてくる、ホログラムに映し出された低身長ながらに肉のついたピンク髪の幼女だった。

 

「矯正局を脱走した生徒が騒ぎを起こしてるんだって、どうする?巡航戦車まで持ち出してシャーレの部室を占拠しようとしてるみたいだけど、無理言って大部隊で押し込む?」

「いえ有象無象ではいくらいても意味がありません、ちょうどいいことにここには今、各学園を代表する暇そうな方達がいらっしゃいますので……」

 

「えっ?なに!?どうして私達を見つめてるの!?」

「キヴォトスの正常化のために暇を持て余した皆さんの力が切実に必要です、いきましょう、車を出します」

 

「えっ!ちょっと待って!どこに行くのよぉ!」

 

 リンに引っ張られるまま全員で車に乗って30分ほど、そしてユウカ・チナツ・スズミ・ハスミと車中で簡単な挨拶と自己紹介を交わすことになる。

 

「初めまして、私はシャーレの先生だよ」

「はい、私はミレニアムサイエンススクールの『セミナー』会計を担当しています、早瀬ユウカです、よろしくお願います」

 

「トリニティ総合学園、『正義実現委員会(ヤバそうななまえ)』の副委員長、羽川ハスミです、私は見ての通り狙撃手なので、前衛はお願いします」

「同じくトリニティ総合学園の自警団、守月スズミです」

 

「ゲヘナ学園、風紀委員、火宮チナツです」

「えっと……話すこと、何かないかな」

 

 全員で車の中という至近距離、顔を合わせずとも呼吸やみじろぎさえ把握できる中、ワタワタと上体の忙しないユウカに対して、ぴしっと背筋が伸びているスズミとハスミのトリニティ組

制服は白基調と黒基調なのは同じ学校でも組織が違うと制服も違うものなのだろうか?

 

「あの、先生、戦闘になったら危ないので、後衛(バックポジション)で私がお守りします、

ですから物陰からは出ないようにしてくださいね」

「そうですよ!先生はヘイローがないんですから!銃撃戦が当たり前のキヴォトスでそんなの不安です!絶対に戦場に来ないでくださいね!」

 

「安心してください、先生、スナイパーである私の後ろに弾が飛ぶことはありませんから、私より後ろにいてくだされば、危険はありません」

 

「……みんな銃撃戦に慣れすぎてる……」

 

 私の一日はカルチャーショックの連続だったが、特に大きいのは今日今このときのようだった。

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