「このあとめちゃくちゃ救護された、でございます……」
端的にいえばその通り、現在地点はトリニティ総合学園の救護騎士団本部、中央総合病院の1階西棟、診察室の奥にある患者用のベッドである
簡単な問診や以前の傷病記録の照合から始まりアレルギーや体質などの確認やら血液検査、果ては足先に昨日作った擦り傷の痕を咎められたりまでして、静かに詰め寄ってくる救護騎士団の団長の圧力から解放されたのは12時を過ぎた頃になってしまった
事前に岩櫃調停室長に連絡を入れてヴァルキューレとの合流時間を後ろに回してもらったとはいえ、本来の予定よりもだいぶ遅れている。
「それにしても自分の住所と電話番号を覚えていないのは記憶力に異常があるだろう、だなんて言われても覚えるに値するものでもないんだから覚えてないだけでしょうに……」
トリニティ総合学園3年、蒼森ミネ救護騎士団長、彼女は傷病を嫌う性質と公正明大たることを希求する性格、最後に頑固すぎる欠点の全てが同じ方向に向いているという極めて特殊な性格の女性だ
いわゆるところの『医師の判断』に基づく行動は医学的には正しいのだろうが、手足を軽く切っただの剥いただの程度でこんな拘束時間を設けられてはたまったものではないと言わざるを得ない。
「それに血液型なんて自己申告でいいでしょう」
「いいえ、そういうわけにもいきません、確かに血液型のABO分類は今は無記録で済ませれば検査のための時間は短縮できるかもしれませんが、他のトリニティの生徒のように健康診断の記録が存在しない外来の患者である貴方の事は参照するべき過去の記録が存在しないのですから、重傷や大病をしてから血液型を検査するよりも、今の時点で記録を作成しておいたほうが良いのです、それに自分の住所を正しく記憶していない人物にアレルギーや血液型などの細かなデータが記憶できるとは思えませんから」
「なかなか酷いことを言う、それに……あぁ」
連邦生徒会所属の生徒はそちら側の医務室の方になら投薬や手術などの記録が存在しているが、いわば国連のごとき動かざる上部組織であるため一学校であるトリニティの医療機関に過ぎない救護騎士団による個人データの開示請求など当然の如く無視されるのである
それに今開示請求しても実際に開示されるのは何年後になるやらもわからないというのはアビドス地区を見れば一目瞭然である
そこに思い当たったオウカはため息一つで言葉を流して諦めた。
「おわかりいただけましたか?」
「理解しました」
「それは何よりです」
相変わらず冷たい態度と救護への熱すぎる情熱で自律神経失調を起こして救護のお世話になる永久機関を発明してしまいそうだが、そこはぐっと堪えていると、ふと別の方向に思考が飛ぶ。
「して、勘定の方はいかほど……」
「こちらの処置及び記録は全て終わりましたので、どうぞお大事に」
こちらの言葉に聞く耳を持たない団長に追い返されながら、受付の子に処置の費用は正実が持つことを告げられた。
「それは助かりますな、いやトリニティの保険には入っていない物で医療費がいくらになるか肝を冷やしていた所でありますゆえ」
「大丈夫ですよ、さぁどうぞお大事に〜」
「はーい」
手足の傷を治療して戻ってきたはいいものの、銃の鞘には大きな傷がついてしまったし、現在時刻は13時近くになってしまった
もう今から行ってもランチメニューの提供時間の都合を考えれば流石にもう食べられないだろうし、諦めて自販機の適当なチョコバーでも齧るしかないと割り切りたかったのだが、運悪く自販機もほとんどが売り切れ表示となっており、絶望感に思わず膝をつきそうになるオウカ。
「……」
「ほら、ポテチ食べる?」
その時、気の抜けた声と共に目の前にとても見覚えがあるパッケージの袋が差し出された、縋るように目を上げた先に居たその袋の持ち主はピンクの髪の小柄な少女、由良木モモカ交通室長だった
「分けてもらっても、よろしいですか?」
「うんにゃ、袋ごとあげる、どうせ今日ずっと駆け回ったりなんだりで忙しかったんでしょ?昼ごはんもまともに食べられずに帰ってきて、せめて適当にツマミでも買おうとしたら売り切れてた、ってところかな?どう、当たってる?」
悪戯っぽく笑う彼女は全てを見通す悪魔のように状況を言い当てて見せ、それに驚いて左目を見開いたオウカは取り敢えず握ったポテチの袋を抱き込んで返事。
「全部当たっているでございます、ありがたく頂きます」
「それだけだとどうせ足んなくなるから、あとで自前で買い足しなよ?」
「はい、承りました」
「ハンドペーパーとかあるから食堂行って食べときな、床とか書類にポテチの跡作りたく無いでしょ?」「はい、行ってきます」
どうやらまだ幸運の女神はオウカを見捨てては居なかったようだ。
「これで良かったんですか、会長」
「はい、彼女にはこれからもいろんなところで交流を深めてもらわないといけませんから」
「あんなバカみたいな理屈こねてまで仕事を押し付けるなんて正直言って訳が分かりませんが……ポテチ代は会長側で出してもらいますよ」
「ええっ!?」
なお、この時試したいちごミルク+明太子ポテチは絶望的に合わなかったとのことである
一方で食堂に向かったオウカはすぐに明太子ポテチにマヨネーズをディップする手法を編み出し、辛味を軽減しながら揚げ物+マヨネーズのカロリーを摂取していた
来月の体重計が楽しみである。
そして13:30ごろ、オウカは僅か30分の間に凄まじい勢いで活動報告書や正実の生徒達のキルスコア、特筆すべき事項などの記録を書き上げてD.Uの市街地へと繰り出していた
しかし不安とは重なるもの、街に出て数分、ヴァルキューレのパトロールと合流する前に犯罪集団に出会してしまう。
「我々はフルフルヘルメット団!このビルは我々が乗っ取った!」
「はいはいまたイツモノヘルメット団でございますか……」
「ちがーう!我々は! フルフルヘルメット団だ!!」
「自己紹介は終わりでございますか?」
銃に弾を込め直し、壊れかけの鞘ごと引き抜いて宣言する。
「連邦生徒会調停室直轄組織、連邦軍部Praparat所属憂晴オウカである、これより貴女等を刑法第二百二十三条強要罪及び第二百三十四条威力業務妨害罪の現行犯として逮捕する」
その宣言に対し、メガホンを持っていた赤ヘルの茶髪スナイパーが叫び返してきた。
「はぁ!?風紀委員でも無い奴に警察権があるかよ!」
「特例行使でありますな、風紀委員並びにヴァルキューレと同等の権限は本来存在しないが現行犯の逮捕においてはこれを必要としない、一般市民でも逮捕はできるでございますよ」
(弾倉は残り6つ、弾は今装填しているものを含めて49発、敵の数も不明、一発も無駄にはできない、鞘は壊れかけだが刀身は無事……やるしか無いでございます)
「といっても、私人逮捕は危ない上に利のない行為ですゆえ、推奨はしないでありますが」
適当な言葉を吐き捨てながら左腰に右手を置いて、摺り足で歩み出したオウカに負けて銃弾が放たれる、彼女等の攻撃に躊躇はない、だが威力が足りない。
「ふっ!」
全てを叩き落とす必要はない、ただ自分に当たる起動の弾を僅かに逸らす、それだけでいい
胴も首も大差はない、一撃受けた程度では致命傷にはならないのだから、臆さず危険なものだけを選んで逸らしていく。
「なんだよ当たってんじゃねーか!もっと撃て撃て撃て撃て!」
アニメの刀の達人か何かのように全ての銃弾を叩き落としていく様子でも想像していたのか、何度かビスビスと命中しているさまを笑うヘルメット団員、それに気をよくしたのか攻撃が当たったことでテンションが上がって強気になったのか、更に勢いを増していく銃撃の雨の中で納刀と抜刀を繰り返し、深く腰を落とした姿勢で重く構えながら幾度も刀身を閃かせ、顔面や首など重要な器官に直撃するものだけを逸らして送り、相手の弾切れを待つ。
「せっかく救護騎士団のお世話になったというのに、ガーゼが剥がれてしまったでございますな、蒼森団長殿がお怒りになったらどうするのでございますか?」
やがて彼らの銃が弾切れを起こし、弾幕が途切れてきた頃、その中で同じ構えのまま姿を現したオウカは平然と答えた。
「別に俺は全部撃ち落としてやるなどと言ったつもりは無いでございます」
焼けたり穴が空いたりと散々な姿になってしまったジャケットと同じくところどころ穴の空いてしまったスカートから微かに見えるライムグリーンのパンツ、半端に破れたストッキングから覗く白い脚
その全てを意にも介さず構えを維持していたオウカはようやく弾切れしてきたヘルメット団の方に銃口を向けて反撃を開始する。
「どうしたでありますか?まさか狩人が、獣を恐れるのでありますか?」
先程まで熱気に浮かされて引き金を引き、一方的に攻撃していた、圧倒的な優位に立っていた
おどけたように問いながら、視線は鋭く、彼女達を貫くように。
「恐れのない狩人など、獣と何も変わらない
けれど獲物を恐れ、怯える狩人など、それは狩人たりえない」
納めていた刀を抜いて、バラバラと砕けた鞘の欠片を野球の球のように射出した
まさかの攻撃方法に回避どころか隠れることさえ間に合わずに2人が弾き飛ばされてノックアウト
その理解し難い現象に目を奪われ、倒れゆく同胞の姿を追ってしまった数人は、直後に飛び込んできた銃弾によって同じ末路を迎えることになった。
残り9人、弾は6マガジンと1発、こちらの余力は十二分。
「片付けるでありますよ」
残り1発の弾倉を潔く切り捨て、その場に捨てて交換装填しながらビル前の簡易バリケードへと駆けてゆく
装填されているものを含めて残りの弾は42発、使えるのは1人につき4発と少しと言ったところか。
「ふっ、オラァッ!」
咄嗟に銃で刀身を受けた黒ヘルメットおさげ少女を銃の撃発の反動と衝撃を活かして引き斬り、愛銃がスクラップと化した事実にヘルメットの中で涙目になる彼女を蹴りつけて引き倒してから背負うようにして盾にすると、そこに後ろからSRの一撃が着弾、衝撃はオウカの方まで伝わってくるが、生贄にしたヘルメット生徒の側にほとんどのダメージが受け止められているため無傷、優秀なシールドだ。
「まさか俺のために身を挺して庇ってくれるとは感涙ものでございますよ」
オウカは向きを入れ替えてから抱きかかえるようにしたヘルメット少女のこめかみに向けた拳銃の引き金をドンドンと2回引き、完全に気絶させてから投げ捨てるのだった
「残り8人」
初投稿です
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)