「はぁ……ネル先輩には撒かれるし、爆発の原因は見つからないし……困り尽くしたであります……」
ネル達の戦闘開始より、少し前
ネルを探し、爆発の発生地点を探し回って見てもなかなかそれは見つからない、仕方ないので諦めてアカネに連絡を取ろうとして、自分が今メイド服ではなく普通の入院着であることを思い出す。
「……」
「ちょっとこれまずいでございますね」
防弾・防火性能など諸々もりもりの特殊繊維で出来ているメイド服と、簡素な入院着では防御力に違いがある、本体性能は変わらなくても収納装備や防御力が違うと戦略も変わってくる
全裸でも戦える人は例外側の存在なのだ。
「喧嘩を売る相手を……間違えたなぁっ!」
「……あっ、ネル先輩」
聞こえた銃声とドスの効いた声を追ってそこに向かうと、ちょうどいい具合に倒れたヘルメット団を拷問しているネルの姿があった。
「ネル先輩、流石に拷問はまずいでありますよ、過度な苦痛を与えて尋問する行為はミレニアムの校則では違法でありますから、取り敢えず銃押し付けるのやめましょう?」
「あぁ?……おう、遅かったな」
鋭い目線と同時にドスの効いた声が向けられるが、すぐにその睨みつけている対象がオウカであることに気付いたのだろう、落ち着いた声に戻る。
「おい、仲間の数と、配置は?」
「ちょっと先輩?」
「こんなくらいやんねぇと懲りねぇんだよ最近のコイツらは!黙って見てろ!」
ドンドンと打ち込みながら拷問を続けるネル、しかしその視線はチラチラとオウカに向けられていた。
(止めろってことでありますか?……
『
一つため息をついて、それを制止するために一旦
「それ以上は看過できないであります、今すぐにでもやめないと俺が貴方を逮捕することになるでありますよ」
「できるモンならやってみな」
「……どうしてもやめないでありますか?」
「痛めつけてやんねぇと気が済まねぇんだよ!」
銃床でヘルメット団員を一度殴り、その反動で持ち上がった銃を即座にリロードすると同時にオウカに銃を向けるが、普段なら即座に売ってくるだろうネルは引き金を引こうとはしない
わざとらしい演技にはなるが、一発だけ撃ってみようかと思考を巡らせるなかで、やがてネルは聞こえよがしに舌打ちをしてホールドアップ。
「オラこれでいいのかよ!?」
「それでいいでありますよ」
馬鹿馬鹿しい演技はこれで終わりだ、オウカは言外にそう伝えると、ヘルメット団員を抱き起こした。
「まだ生きてるでありますか?よかった、取り敢えず病院に運ぶでありますから、痛くても意識をできるだけ保つであります」
「うぐっ……」
「チッ!面倒臭ぇな!んなモン情報吐きたくなるまでタコ殴りにボコってやりゃ良いんだよ!」
(似合わなすぎであります、いやある意味顔面には似合ってるけど素の性格と
普段強い言葉はあまり使わないネルがその辺の3流エセヤクザ崩れの半グレチンピラみたいなバカなセリフを垂れ流しているのはあまりにも似合わないが、これで鉄パイプでも肩に乗せていたら完璧に調和するんじゃないかとも思えるギリギリを攻めているようにも見える。
「ほら、エレベーター使うでありますから、最初の揺れに気をつけるでありますよ」
このヘルメット団員を運ぶべき近くの医務室というと、オウカが寝ていた部屋なのだが、どうするか一瞬オウカは判断に迷い、ネルに視線を向けると、向こうも軽く頷く
つまり、そうしろと言うことだろう。
「ほら、ちゃんと怪我を消毒して手当をするでありますから、まずは傷を見せてもらうでありますよ」
擦り傷や切り傷は傷口を一度開いて水で洗い、泥や皮膚片を取り除いて消毒を施し、絆創膏でカバーして処置は完了だ、打撲痕については内出血をどうこうはオウカにはできないため一旦放置、腹腔内出血みたいな状況にならないことを祈りながら傷をよく見て悪化の兆候がないかを確認するように伝えると、彼女はやたらありがたがって縋り付いてきた。
「それで、俺も尋ねないといけないことがあるでありますが……」
「わかったよ……」
そこで尋問を試みると、流石にいやそうながら口を割らせることに成功した
どうやらネルの読みは当たったらしい
グッドコップ・バッドコップは尋問手法ではメジャーなものだが、その分効果的に扱う手法が確立している時言っても良い、今回のケースもまた、それが通用したようだ。
「私に仲間はいない、
「そうでございますか、そりゃあ……なかなか大変だったのでは?」
「大変だったよ、まぁ喧嘩にも銃を持ち出すキヴォトスだから当然と言えばそうなんだけど、やたら撃たれるから……まぁ私は身体が硬いからあんまり傷にはならないんだけど」
どうも彼女も苦労しているようだ、いやそれはそれとして。
「取り急ぎ聞かないと困る物だけは聞かせてもらうであります、まず何が目的で爆発をおこしたでありますか?」
「ん……そりゃあ……ここだけの話だけど、ほんとな?マジでここだけ、実はミレニアムの学校のシャッターって金になるんだよ、だから壁とかシャッターとかの建材?を持ってこうとしたんだ」
「……建材」
「いやマジだって信じてくれよ!」
流石に技術的格差があるからといってシャッター数枚を高く売れるとは思えない、しかもミレニアムの学校としての中枢部から離れた部活棟の近くのシャッターが『高く売れる』とはどう言うことなのだろうか?
「それなら学校の中枢部に近いシャッターとか扉からそれとも新素材開発部でも襲撃するべきでありましたな、あそこなら年がら年中何某かの物を作ってるでありますから、きっとミレニアム製最新素材として売れるでありますよ
シャッターだなんて意味不明なものをわざわざ爆破してまで外して持っていくのは非効率であります」
「そうか、そうすればよかったのか」「今の無しであります」
迂闊な発言で学校襲撃の犯人に新しい知見を与えてしまったというミスをどうにか誤魔化そうとするオウカだが、その前にネルが病室に入ってくる。
「おい、お前」「ぴいっ?!」
固まった襲撃犯を睨みつけたネルは銃、ではなく言葉を続ける。
「隠すな、ちゃんと吐け」
「はひい!実は連邦生徒会長がいなくなったから武器の流通が楽になって、それで燃料気化爆弾を手に入れたから使いたかったんだ!シャッターが売れるのは本当だけど壁がめちゃくちゃ硬いって評判だったからそれで爆破したんだ!」
飛び出してきた2つのワード、前者の連邦生徒会長の失踪については、オウカはもう知っている話だ
しかし、燃料気化爆弾と言われると表情も引き攣らざるを得ない
元々航空機から投下して爆撃する爆弾の中でも、『貧者の核』と呼ばれる非常に高威力な爆弾であり、少なくとも一般生徒どころか軍部に相当する風紀委員やプレパラートでも使わない、見たこともないような武装と言える。
「だからあんな衝撃波が届いたでありますな……って、燃料気化弾なんてどこから……ブラックマーケット、でありますなぁ?そんな馬鹿げたもの、マトモに手に入れる場所なんてないでありますからなぁ……」
下手をしたら自分もヘイローを砕かれかねない火力の爆弾、惜しむらくは航空機からの投下ではないため、最高性能は発揮できていないと言うところだが、流石にフルスペックでなくてもビルやバンカーを鉄筋コンクリートの壁ごと爆破できる威力の爆弾である、その流通など無視するわけには、行かない。
「ちょぉーっと行かなきゃいけないところができたであります、ネル先輩、リオ会長にやべーのが出たって伝えてくださいでございます」
「わかってる、ってかもう繋げてる」
「えっちょっ待っ」「悪いがお前にはもうちょっと用ができたんだ、詳しく話してもらおうかァ」
牙を剥き出しにしたネルがせっかくオウカの手当てした絆創膏のあたりを狙い始める
オウカもそんなことを気にするような場合ではないため、ヘルメット団員の悲鳴も無視してアカネに状況を伝えてブラックマーケットに行くべく連絡を取る。
「アカネ先輩、ちょっとブラックマーケットの武器の流通がおかしすぎるであります、なんで一般生徒の元に禁止兵器が出てくるでありますか!?」
[えっと……私に言われてもよくわからないのですが、詳しくお願いできますか?]
この後、病室を抜け出したくだりも含めてめちゃめちゃ説教された挙句に作戦参加禁止にされたオウカはヘルメット団員と仲良く病室で居残りになってしまったのだった