「残り8人」
吐き捨てながら見定めるのは赤ヘルのスナイパー、おそらくこの集団のリーダーと思われる人物だ。
右手に握った剥き身の刀、鞘が完全に破壊されてしまったため、もはや収める場所のないそれを正面に向けて、引き金を引くふりと共に大跳躍、ビルの3階あたりの空いていた窓のフチに着地して転がり込む
スナイパー相手に射線の通る場所にはいられないからだ
普通なら寄れば落ちるのが狙撃手だが、
「少し通ります」
窓の中にいたロボ社員を避けながらビル内の吹き抜けを利用して5階へ移動、そこからヘルメット団連中の真上をとりながら狙撃を試みるが、流石に『ヘルメット』団なだけあって撃ちづらく、貫通性の低い拳銃弾では役に立たないと判断して諦めて飛び降りる。
「イッツ、ショウ、タイム、であります」
ビルの5階、約20mの高度から逆さまに落下しながらの狙撃、脳のリミッターを外した超反応による一瞬の判断で狙いを澄まし、三連射して次へ、さらに三連射して次、引き金を引くと同時に空弾倉を引き抜く、空中での交換は間に合わない。
「はぁっ!」
仕方がないので峰の一撃による兜割りを仕掛けて1人のヘルメットを粉砕し、どこぞの三刀流の如く柄を噛み締めて顎を引き五点接地法による回転着地から飛び跳ね、ロンダート、バク宙に繋げる、体操の演技ならば高得点だろう動きを評価するものもないまま口を離して右手で銃把を握ると同時に左手でジャケットのマガジンを取り出して装填した
僅か6秒のうちに繰り広げられた絶技である。
「あと5人」
手首のスナップを利かせて8の字を描くように刃先を回し、左半身を前に立って弓を引くように手を伸ばす、水平にして引き絞った剣先に左手の指をそわせ、再度の宣言と共に銃弾を弾き返してヘルメットの縁ギリギリの眉間に命中させる。
「実はこの構え、適当に銃弾を弾く逸らすだけでなく、相手に向けて跳ね返すこともできるでありますよ」
流石にレールガンだのレーザーだのと持ち出して来たら困るので、並大抵の銃弾数発なら刀身が耐え得るうちはなんとか防げる、という程度であひますが、と付け加えると同時に拳銃持ちの茶髪サイドテールが崩れ落ちた。
「くっそーっ!お前等諦めんなよ!こんなところで引くわけには……行かねーだろうがっ!」
「うぉーリーダーっ!」
「なんか盛り上がってるところ悪いでありますが……お前等犯罪者は人間のクズであります」
犯罪者に生きる価値なし、どこかの赤い大将が言っていそうなセリフを投げかけながら弾倉を一つ渡すように投げて、思わず受け取った赤ヘルの黒髪ショートボブAR持ちの手の中にあるそれを撃ち抜く
正確に弾倉の中の薬莢を破壊した銃弾はそれを爆発させ、内蔵された弾が無茶苦茶な方向に飛び散る
破片手榴弾と同じ理屈による破片飛散を至近距離で受けた赤ヘルが体の前面がズタズタになって倒れる。
(ちょっとやりすぎたかもしれないな……)
残りマガジンは3つ、戦闘続行可能
敵はスナイパー1 SMG1 そしてARを持ち替えたらしい
「ぶちのめせー!」「やれーっ!」「イヤーッ!」
「1人空手やってるのがいますな」
他の仲間がやられても退却しなかった理由は圧倒的な火力を持つガトリングがあったからなのであろう、流石に重火器まで持ち出されるとオウカも盾や居合フォームなしには防げないため、一方的に撃ち掛ける手段としては有効なのだが、相手が悪かった。
「すでにリミッターは外したでありますよ」
予備動作もなしにビルの3階まで垂直跳躍する脚力を以てすれば数メートル程度の高度差など高所優利と呼ぶに値しないのだ。
オウカはバリケードへと飛び込む算段を立てながら、赤く染まった視界の中でガトリング弾の軌道を予測して線を引き、それを回避
指を切り落とす危険性を顧みずに自らの軍刀の剣先に指をかけて引っ張り合う力を蓄積し、一気に解放する事で居合と同じ速度を再現すると、飛来したスナイパーの一撃を跳ね返して頭に直撃させ、狙撃手を沈める。
「あっ……」
あまりの衝撃に刀身が耐えきれずに折れてしまった軍刀を眺めながら悲しげな一声を上げるオウカ。
「よし!いまだっ!」
一瞬、意識が逸れたその隙を狙ったガトリングとSMGの一斉射撃が横殴りの暴風雨のようにオウカの全身を包んだ。
「ええい……騒がしい!」
大声一喝霹靂の如し、爆音が鳴り響き周囲の全てを衝撃波が弾き飛ばした。
「えぇーっ!?」「なになになに!?」
濃密な弾幕が掻き消されたことに恐怖し、手を止めてしまった2人へと、神秘の純粋放射が襲う
弾丸や爆弾のような媒介を用いた神秘の放射ではない、純粋なエネルギー体としての
戦闘開始から30秒、その瞬間に勝負は決した。
「ヴァルキューレだ!手を上げ……もう終わってる……?」
「状況終了、でございます」
「ちょっ!?重症者一名!救急車を回してくれ!」
「見た目ほど傷が深い訳ではないでありますよ〜〜あら?」
かくん、と意に背いて折れる膝、急接近してくる地面に左手を突いて止める、自分の体幹の方が崩れ落ちたのだと気付いたのはその数秒後だった。
「おい!お前!意識を保て!」
大きな呼びかけの声、背中を支える力強い腕、金の髪と三角の獣の耳が視界に入った。
「今救急車を呼んだ!5分耐えるんだ!いいな!」
自分のジャケットが汚れる事も気にせずアスファルトに敷いたそれにオウカを横たえる女性に対して、オウカは可能な限りに言葉を紡ぐ
「右腰のポーチに……止血帯……入って……」
すぐに無言でポーチを漁り、黒の手袋に清潔な包帯を一巻と止血帯を握ったヴァルキューレの女性は、躊躇う事なく目につく大きな傷に対して止血を行う。
「これか……堪えろよ!」
腿や首などの大動脈のある位置を優先して確認、失血によるショック症状を避けるために必要な処置を取る
緊縛による止血は出血部より先に血が流れて漏出することによる失血を防ぐために用いられる、直接傷口周辺を圧迫する事で周囲の血管のみを塞ぐ直接圧迫止血よりも大規模である分、酸素不足などによる壊死を招く事があるため危険だが、無数の傷をいちいち止血してもキリがない!
「よし、おい!救急車がもう直に来るからな!おい!」
揺すると再び出血を招きかねないため、声のみで呼びかけていた女性が声量を上げる
身体の神秘が一時的に大きく減衰してしまった事で体組織が脆弱化しているのだろう、いくら数があろうと銃弾程度、致命傷にはならないはずの威力の攻撃でこれほどの傷を追ってしまったのはそれが理由だ。
「こいつを早く病院に!急げ!」
金に霞んだ視界の中で、彼方に救急車が走ってくるのが見える
その姿に安心して、オウカは左目をゆっくりと閉じていくのだった。
「という顛末でございますな」
「なるほど〜それはまたお疲れ様っすね〜」
D.U区内の病院の、オウカが寝ているベッドの横でリンゴを剥いているのは糸目の正義実現委員、すっすちゃん改め仲正イチカだ。
「まぁ連邦の方から追々なにかアクションあるとは思いますけど、せいぜい補償金いくらか出るかなって所じゃないっすか?」
「ヘルメット団がまぁガトリング持ち出すなんて思ってなかったでございます、それは明確な油断でありますから自己責任ということになるでしょうな」
「つまり……」
「何も出ない」
平静を取り繕いながら冷や汗を掻いている仲正嬢と、その手元で器用にウサミミを付けられたリンゴを眺めながら、そう結論づけたオウカは、皿に置かれたウサギリンゴを一つ貰い受けて咀嚼する。
「ん、美味しい」
「タカノのフルーツパーラーで買ったやつっす、喜んでいただけたら見舞い品も喜ぶっすよ
ハスミ先輩が復帰したらここに食べに行こうって言ってたんで、退院したら連絡してあげてくださいっす」
「承った……あぁ、そうだ」
「どうかしたっすか?」
突然声色の変わったオウカに疑問符を浮かべた仲正嬢に対して、沈んだ声で返す言葉は。
「軍刀が鞘ごとスクラップになったから、新しく作り直さなくてはならない、また百鬼夜行に行かなくては」
「えっ?あの銃って既製品じゃないんすか?もしかしてハンドメイド……」
拳銃から刀身が生えた奇妙なフォルムを思い出したのか、再び顔色を悪くする仲正嬢。
「それに近い、
銃部分は回収できているので、銃把の方が歪んだりしていなければ新しい刀身を作れば良いのではあるが……それも簡単に作れるというものではないので、かなり高くつく事になります」
「うわぁ……お察しします」
「……最悪、普通に拳銃として運用するでありますな」
この日、彼女とはそんなやりとりが続く事になった、なお、病院に運ばれてからは岩櫃調停室長が真っ先に駆けつけており、連邦生徒会長に掛け合ってオウカの退院までの残りの仕事は全て彼女が背負うことになったが、オウカにはそれらの話は伏せられている。
初投稿です
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)