流石のオウカも入院中は無駄に寝ているばかりで暇なので、とりあえずセリナさんに適当に医学書を持って来てもらい、それを読み耽っている
ある程度の応急処置は必要になるため習得済みなのだが、整体や栄養学などの方面に関しては全く知らないというレベルなので多少なりとも知識を入れられるように努力しているのだ。
「鷲見殿ー」
「はい!」
「度々ありがとうございます、つきましてはこちらの本を読了いたしましたので次の巻などございましたらご用意いただきたく存じます」
「あの……ビジネスじゃありませんよ?」
「ビジネス会話ならもっと気を使うでございます、されこそマナー講師の教えるために作った謎マナーでもやる所でありますよ」
そこは胸を張るところではないのだが、オウカはおおきな胸を張り、傷口が刺激されたのか痛っと声をあげて姿勢を戻すのだった。
「それにしても、銃で撃たれて大怪我、なんて珍しいです、なにかきっかけや当時の状況とかに覚えていることはありますか?」
「あー……俺は拳銃に軍刀がくっついたような銃を使っているでありますが、それが戦闘中に折れてしまい、その隙を突かれて弾幕、というか掃射を喰らってしまいましたので単純に受けた弾の数が多かった、というのと全身の力を一気に解放した影響で一時的に脱力に近い状態にあった事が原因ではないかと」
カラッと言い切ったオウカに対して、セリナは恐る恐るといった様子で言葉を挟む。
「あの、剣が生えた銃が折れたって……もしかして本当に剣として使ったんですか?」
「いや?鞘からは抜いていないでございますよ、銃撃を受けて鞘ごと砕かれたのでやむなく刀身の峰で叩きましたが」
絶句してしまったセリナをなんとなく可愛く感じてそっと頭を撫でようとするオウカ、なおベッドの上からは手が届かないので諦めた模様。
「まぁ打ち直すにも金だけでなく時間もかかりますゆえ、取り敢えずは普通に銃として運用するであります、俺は……ちょっと当地とは関係が良くないので、修理できるかは分かりませんが」
「きっと直りますよ、私、応援していますから」
「おっ、それは直る気がしますな、鷲見殿は治す事に掛けては一流でありますから」
「あはは……その、機械の方は専門外です」
ハードカバーの本で口元を隠して恥じらうセリナの朱の差した頬を眺めながら和んでいると、コンコンと扉が叩かれる。
「どうぞ」
「はい、失礼します」
そう、
「会長?なぜこのような下郎の床などに御自ら!」
「いいのです、それよりもあなたは自分を過剰に卑下するのはやめてくださいと言ったはずですよ?仮にも一部署の責任者なのですから、ね?」
「は、はい!」
「それはそうと、今回貴方には朗報があります、じゃん!」
彼女が背中に回した左手にノールックで取り出されたのは、手持ちの小さなホワイトボード、それも連邦校舎の玄関で給食当番などの表に使われていたそれを持って来たのだろう、ところどころ黒や赤のペン跡で掠れた名前や役職名などが残っていたり落としたか何かの傷がついているものだった。
「連邦よりの出向命令、でありますか?」
そこに書かれていたのはミレニアムへの一時出向とアビドスへの学籍移動の指示、なぜいったんアビドスを経由するのかはまるでわからないが取り敢えずミレニアムに留学をすることはわかった。
「その通り、あなたにはまずはいったんアビドス高等学校への転校措置をとった上でミレニアム学園へ留学してもらいます、これはですね、連邦軍部としての肩書を消して、アビドス高校の生徒としてミレニアムに留学することで『ミレニアムに連邦との繋がりを作らずに貴方を留学させ』、かつ連邦からは出せないアビドスへの経済的支援を貴方個人が『所属生徒の1人として行う』ことで規約をすり抜ける一挙両得の策なんです!」
両目を><にしながらホワイトボードを手渡してくる会長と、それを受け取ってベッドサイドテーブルに置くオウカ。
「なるほど?それになんのメリットが」
「まず、アビドス自治区の砂漠化のことは、知っていますよね?」
「はい」
これにはオウカも神妙に頷く、アビドスの砂漠化は発覚当初から大きな問題として度々話題になっており、その詳しいデータなども連邦生徒の中では知れ渡っている話でもある、しかしその復興に関わることはできないという話だったはずだが……。
「それを『どうにかする』ためにアビドスはこれまでに多額の資金・時間を投じて砂漠化防止の研究とそのための投資を行い、結果としてそれは実らず、多額の借金を負っています
ですが、それはあくまでアビドス高校生徒会自身の判断であり、それに対して連邦生徒会に支援を求められても、残念ながら直接援助はできません
それはこれまでの状況を鑑みて砂漠化対策に効果やリターンが見込めないということと、すでに借金を作ってしまった生徒会に対して助成金を多額出資する事で借金を返済させてしまうと前例を頼って数多くの資金難の学校が同じく支援を求めてくるからです」
連邦生徒会だって、無限に資金があるわけではありませんからね、と言葉を結んだ会長は一つ呼吸を置いて続ける。
「そのため、『アビドスの生徒達による借金返済活動を連邦生徒会が補助する』のではなく『アビドス生自身が努力する』自助努力に収めるために転向措置を行い、そして砂漠化によって土地が壊滅的な状態となり、経済が破綻し掛けているアビドスではなく、最新・最先端技術をもち今まさに発展の道を歩んでいるミレニアムで活動を行う事で、いわば出稼ぎのようにお金をミレニアムからアビドスに流す事ができるのです」
「アホの考える策じゃないですか、普通に考えて仕送りが1人分増えたところでせいぜい10万
一見合理的でも冷静になれば明らかに無駄な事がわかる詭弁に抵抗するオウカだったが、連邦生徒会長はさらに言葉をつなげていく。
「実はですね、ミレニアムの方には投資も十分回収できる見込みがあるという事で各方面からの技術や株式への投資が盛んなのです!
つーまーりー、今っミレニアムはまさにゴールドラッシュ!インフレ状態に入っているのでミレニアムの経済圏では労働者の賃金も跳ね上がっているのです!」
流石は超人と謳われし人物だけある連邦生徒会長、凄まじい手捌きでサイドテーブルに置かれたホワイトボードにマッ○ーでキュキュキュッと簡易的な図面を作り上げて見せた。
「見てください、まずはアビドスとミレニアムの金相場の比較です、アビドスが100グラムあたり約50万円とほぼ変わらないのに対し、ミレニアムでは100万円ほど、工業でも金を使う場面が多いからなんですかね?流通や消費が活発なので相場が跳ね上がっているんです!
つまりアビドスの金をミレニアムでクレジットに変えるだけで大儲けになるんです……本当はこれはバブルのような架空の好景気であって異常事態なのですが、時期に収まる事になるので、今のうちに稼いでおかなくてはいけません
まぁこんなように物・事に使われる金額が跳ね上がっているので、ガス抜きのためにもお金の総流通量を下げてやらないといけないので、今回の作戦はそのためでもあります」
「なるほど、アビドスには金が必要で、ミレニアムは
ぱぁぁっ!と擬音や後光がつきそうな純粋な笑顔を浮かべた連邦生徒会長はその通りです!と嬉しそうに言ってから咳払いでテンションをなんとか誤魔化そうとする。
「お分かりいただけましたか?」
「内容はわかりました、しかし……これは俺のような何もわからん有象無象より経済学に向いた……防衛室長などのような頭のキレる人材の方がいいのでは?」
「いやーそれが、カヤちゃんもアユムちゃんもリンちゃんも忙しくて……ある意味『浮いた』組織であるプレパラートにしか頼めないんです」
これには流石にオウカも冷たい目線で応じる他にない、そもそも百鬼夜行から出向として指名されて来てみれば幾らかの部署を
「もしかして、
「いえなんでも」
「あの」
「いえなんでも」
「もう許して」
「いえなんでも……
「今度いちごミルクを奢りますから!」
「トルネンブラのお高いやつでお願いします」
「ひぃん!」
さりげなくトリニティの高い菓子屋を指定したオウカと財布に入るダメージを予測したレンポウユメセンパイモドキの鳴き声が上がる、なぜいちごミルクかはわからない、会長の好みなのだろうか。
「そもそも、それにしても金が溢れていようと一人当たりの稼げる金が減ったくらいで経済が安定する物か……?」
「入金先の口座をブラックマーケットの銀行にすればネット上のマネーデータは所詮数値ですので動いたところで大した意味はありませんし、全て現金取引にこだわっているカイザーとの取引きのためにブラックマーケットの銀行から実物のお札が引き出されて、すぐにカイザーが銀行に収める、この繰り返しになるので実物のお金もループするだけです
しかしカイザーの裏取引は使途不明金として差額分のデータは消滅、つまり減っていくので結果として『ミレニアムに生まれている信用創造の架空資金をカイザーが使途不明金として消していく』ことになるので実態と架空のギャップを減らし、バブルを抑制できるのです」
ピンと指先を立てた会長が指をフリフリしてからエアでメガネを掛け直す動作をする、リンちゃん行政官に無駄によく似ている動きだ。
「うわぁカイザーコングロマリットも可哀想でありますな、数値だけで実態のないゴーストマネーを掴まされるだなんて」
「まぁ額については急に減らしすぎても今度は銀行に対する信用不安が起きますし、そうならないように慎重に減らしながらミレニアム側のインフレ抑制策と力を合わせて長期的に対処していく事になりますので、あくまで一時凌ぎ程度に考えてください」
「なるほど、わかりました」
「わかってくれたら良いのです、それでは私は帰ります、詳細な予定は退院してからリンちゃんかアユムちゃんに聞いてくださいね」
「わかりました!」
岩櫃調停室長の名前が出た事で気を取り直したか、返事の声が大きくなるが、連邦生徒会長はふふふっと優しく笑って返す。
「二人っきりの時はそんなに畏まらなくて良いですよ」
「えっ?……つかぬことを聴きますが、会長が入って来た時に鷲見殿は見ませんでしたか?」
「私が入った時から誰も出入りしていませんよ?
そもそも誰か居たら連邦生徒会としての話なんてしませんから」
「それは確かに」
風が二人の間を吹き抜けた。
初投稿です
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)