「というわけなんでございますよ」
「それはそれは……なぜトリニティではなく、ミレニアムに転入する事になったのでしょう、数億クレジットならティーパーティの地位を持ってすれば単独権限で充分に動かせる程度の額ですのに」
対面の席で紅茶を飲んでいるのは、ハスミ
そう、傷も塞がり退院してからすぐにオウカは約束を守るべくハスミに連絡を取ってフルーツパーラーに来ていたのである。
「その辺については学区を跨ぐ機密だのなんだの、だそうでありますな」
カットされたモモを一切れフォークで刺して、自分の手元の皿に移してから音が出ないように割り、一口大の範囲に収めてから相手に切り口が見えないよう手前側の片割れを再び刺して口に運び、
相手に口の中が見えないように少し下を向くようにして口に入れる
たったこれだけの動作にも関わらずおそらく違反したマナーは5.6個あるだろう
ハスミはマナーなどにはあまり厳しい方ではないが、無駄に粗探しが上手なトリニティ系生徒は多いので、転校先がトリニティだったらオウカは気苦労が絶えなかっただろう。
「流石良いところだけあって良い味をしている」
「でしょう?ここは紅茶もフルーツも美味しいですし、それらを使ったパフェやアイスも美味しいのです、そこらの喫茶店では味わえないようなものもあります」
温かい紅茶で冷えた口を温めながら、今度は紅茶の香りと味を楽しむ、流石に湯気が上がる温度の紅茶を一気飲みはできないが、今はその温度が身に染みる。
「抹茶フレーバーとかもあるようでありますな、それにしてもお品書きまで古式表示とはユーザビリティの欠片もないことだ」
古代語はトリニティでは必修科目であるが、だからと言って皆それが堪能というわけではない、筈なのだがそんなことはまるで考えていないのだろうお品書きを眺めながら、その『上流階級向け』っぷりを笑うオウカ
「それもまたトリニティの重んじる伝統ですからね、それに貴方は古代語も読めますし不都合はないでしょう?」
「読めるのと使えるとは違うでありますよ、気を安めに来たのに作法やら読解やらで苦労するのでは本末転倒であります」
角砂糖を一つ入れ、スプーンを入れる、かき混ぜずに優しく行き来させるように砂糖を溶かしてからスプーンをカップの奥へと置く、ティーカップを半回転させ、3時の方向へ取っ手を向けてからその取っ手を摘むようにして右手に取る、この時ソーサーは持たない
着席で紅茶を飲む時はソーサーを持たないというのは半年ほど前、初めて席を共にした時にハスミから教わった事だ。
「でも、今では作法もそれなりに身についているように見える」
「
「あら、ではもう一段ほど基準を引き上げても良いですか?」
「作法の試験でも受けさせる気でありますか?」
パフェを上品に(!)食べながら微笑むハスミと、それに応じて身を竦めるオウカ
なお、この茶会でハスミはメロンパフェ1、いちごパフェ1、バニラアイスとココアのティラミス1皿を食べ切り
オウカはカットフルーツ(桃)を1皿、りんごのフルーツショートケーキを1切れとココアのティラミス1皿を食べ切った
体重計は今日もこちらへ微笑んでいる。
「ご馳走様、であります」
食後の紅茶を一杯、口にひろがる甘やかな風味
ティーバックの安物や古くなった買い置きの紅茶などではない、高品質の鮮度の良い茶葉を沸騰したての軟水で抽出してよく蒸らして、と長い手順を細やかに守って気を遣って淹れた紅茶はやはり『格』が違うのだろう。
「あら、もう良いのですか?」
「あまり詰め込むのもよくないでありますからな、せっかくの良い菓子も食う側の腹に空きがなくては満足に味わえない」
ハスミはまだまだ余裕そうだが、彼女は三食にパフェを三つずつ食べられるほどの容積とそれがみんな胸尻と太腿に行く特異体質の持ち主である、
ボディバランスが崩れると近接戦が上手く行かなくなってしまうなどの懸念もあるので、これ以上の危険は避けなくてはならない。
「では、お開きとしましょうか」
「うん、そうしよう」
ばさりと黒い羽を鳴らして立ち上がったハスミが店員を呼びつけるとさっさとカードレスで支払いを済ませてしまったので、慌てて割り勘を提案するオウカだったのだが
「誘ったのは私ですし、ここは淑女の園トリニティ、せめてお茶の後でくらいは、私に花を持たせてください」
「うっ……わかりました」
大きな
「と、いうわけで、本日よりアビドス高等学校にお世話になります、連邦生徒会調停室直轄連邦軍部プレパラートより出向して来ました、憂晴オウカと申します」
「ううーん、どう考えるべきかな〜?」
「知らないところでずいぶん話が進んでしまっているような気がしますね〜♧」
「ん、新人は歓迎」
時候は春、ついこの前進級して2年になった十六夜ノノミと『アビドススナオオカミ』こと砂狼シロコ、うなりながらうへっているのが唯一の3年生にして最後のアビドス生徒会役員、小鳥遊ホシノだ。
「どういう事なの……?」
「私たちにはよくわかりませんが、とにかく、連邦生徒会がなにか手を打ったという事なのでしょうか?」
黒い猫耳をぴこぴこしながら困惑の表情を浮かべる家庭的で細身な黒髪ブレザーが『持ってるけどどう運用すれば良いのかわからなくて使わないアタッカーランキング1位』黒見セリカ、片手でバインダーと眼鏡のフレームを抑えているのが『アビドスフツウメガネッコ』こと奥空アヤネだ。
「連邦生徒会長からの連絡があったはずでは……?」
「なーんにも、だからその証明書だって本当に正しいものなのかもわからないし、おじさんは取り合うつもりもないよ〜」
残念だったね、と吐き捨てる小鳥遊ホシノをセリカとノノミが抑え込み宥めながら校門に押し留めて、逆にオウカはシロコに手を引かれて校舎はと入っていく。
「ん、簡単にだけど校舎内の説明をするね、上履きは持ってる?」
「はい、もっております」
「ならそこで……下駄箱はもう使っているところ以外なら、どこでも使って良いから」
「承りました」
シロコは口数少なく校舎を歩き巡り、オウカもそれについて廻る。
「ん、ここは体育館、ほとんど使ってないけど跳び箱とかバスケットコートとかもある、前はホシノ先輩が跳び箱の上でお昼寝していて探すのに手間取った」
「ん、図書室、ここもあんまり使ってないけど、基本的に窓を開けないから砂が入ってこない部屋」
「部室はどこも閉鎖してる、職員室も砂がひどくて使えないし、もう部活動も全部解散したから」
「教室はこっち、私たちアビドス対策委員会の委員会室でもある、大抵だれか一人はいるから、ここは綺麗」
「ん、説明はこんなところ、なにか気になるところとか、ある?」
独特な掠れを感じるハスキーな声の低音がしっとりと耳に入ってくる、声がいい、と惚けながらとりあえずひとつ気になったことを尋ねてみる。
「砂漠化の影響で砂が校舎にまで入り込んでいるとなると、だいぶん困ると思いますが、掃除とかはどうなさっていますか?流石に窓からざらざらというわけには行かないでございましょう?」
「ん、大体校舎の横の砂に混ぜてる、生ゴミとかは流石にゴミ処理をお願いするけれど、砂は砂だから」
ある意味衝撃の答えだった、まぁ言われて考えればわざわざ遠くに捨てても溢れて押し寄せてくるのが砂なのだし、校舎や道に入ってくるのもそこら由来の砂なのだからどこに捨てようと変わらないのは事実だ。
「合理的、でありますな」
(砂は焼けばガラスになるとも聞きますが、アビドスではその辺に材料が無限に満ちていると考えればガラス産業で一躍天下も取れそうでありますな……)
アビドスからミレニアムに輸出するようなものでもあれば良いと考えていたオウカだったが、ここの生徒達はあまり砂に対する資源価値を研究するようなことはしていないのだろう、シロコは無表情を崩さない。
「ん、これからここで暮らすの?」
「いいえ、俺は学籍をアビドスに移してからミレニアムに留学する事になるでありますから、しばらくいるだけでございますな」
「しばらく居るだけ……それは、残念」
本当に残念そうな顔になり、目も耳も伏せるシロコ。
「せっかく、生徒が増えたと思ったのに」
「それに関しては私も残念でありますよ?その……小鳥遊殿には睨まれてしまいましたが、少なくとも公式的にはアビドス籍の生徒な訳ですので、ほら!アビドスの指定ノートも揃えて来たであります」
カバンから取り出したアビドスの校章刻印が入った白と灰色の技術ノートをシロコに見せるオウカ、するとシロコは自分も同じ刻印の入った水色の技術ノートを出して来て並べて、微笑する。
「ん、お揃い」
メインヒロインの風格がただよう声と可愛さだった。
「オウカ、あとでみんなにももう一回、自己紹介をしよう?そうしたらホシノ先輩もわかってくれると思うから」
「承りました」
後に本当に連邦生徒会に直接連絡を取ったアヤネが潔白を証明してくれるまで、小鳥遊ホシノは警戒を解くことはなかった。
初投稿です
ぶっちゃけ内容どうしよう
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ストーリー重視(このまま)
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はやく原作入れ(会長失踪)
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戦え……戦え…(戦闘重視)
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旅しろはよはよ(関係重視)
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消えてクレメンス(削除)