今回小説パートのみです。
所でサツキが実装されましたが、声があまあま過ぎてエロゲから抜け出てきたような外見とのギャップでちょっと情緒がおかしくなりそうです。たすけて。
「はいはいどーも! シャーレの御用改めですよ! 神妙にお縄についてくださいね!」
「いやソニドリ、令状があるとはいえ一応そう言うのは手順を踏んでだな」
ある日の夜。D.U.シラトリ区、カイザーコーポレーション本社ビル。その最上階の大半を占める社長室のドアを蹴破り、ニコニコ顔のソニドリが入って来る。
その後ろからはヴァルキューレ公安局長、尾刃カンナが呆れ顔をしながらその横に並び、同じく公安局の職員たちが続々と入って来る。
「動く――――――ぐあっ!?」
「撃t……がぁっ!?」
室内に詰めていた警備の兵が銃を向けるが、瞬時に広がった翠色の翼、そこから撒き散らされた無数の羽に視界を遮られ、それらをぶちぬいて叩き込まれた大口径の拳銃で沈黙する。
「抵抗確認、排除しました」
社長室の窓際、その地位に相応しいほどの巨大なデスクの向こう側には、周囲の兵とは様相を異にする、黒スーツの機械人が立っていた。
公安部の突入、そして即座に打ち倒された警備を前にしても動じずゆっくりと振り返ると、厳かに口を開く。
『プレジデント』。カイザーグループの首魁であり、アビドスを借金漬けにし、砂漠で何がしかを探している黒幕である。
「……公安部の『狂犬』、そして……ハチドリの長か。何の用だ?」
「あれ? 良いんですかプレジデント。今際の際ですよ? 大物ぶってないでもっと見苦しく足搔くべきでは?」
「お前が我らカイザーグループを目の敵にしているのは知っている。だが、我らをどうこうできると思っているのか?
カイザーを潰した所で何も変わらんよ。また新たな火種が現れ、そして我らもまた名を変え顔を変えて動き出すまでだ」
「…………プレジデント、収賄、テロ準備罪、脅迫、その他多数の容疑で逮捕する。同行願おうか」
そう言いながらもカンナは内心で歯噛みする。プレジデントの言は間違いなく事実ではあるからだ。
これまでカイザーは数多くの犯罪に関わり検挙されてきたが、規模が大きい故にその伸ばした尻尾も非常に長く多様。
何かある度に直接関わった末端や関係部署を切り離し、依然としてキヴォトス1の大企業の地位を守り続けた。
切り落とす尻尾が数多い上にその手も長く、逮捕した面々が司法に回った手により軽微な罪で放免されたことも数知れない。
自分もまたかつてはカイザーと組み汚職に手を染めていたが故に、カンナはそのやり口をよく知っていた。
……だが。
「へー。そうですか。……ぽちっとな」
唐突にソニドリが取り出した巨大で毒々しい警戒色のボタン。それを芝居がかったしぐさで押すと、眼下に広がるD.U.の夜景、そのうちの1か所が朱に染まった。
端的に言えば、眼下のビル群のいくつかが爆炎を上げて吹き飛んだ。
「「「「「「……は?」」」」」」
予想外の事態に目が点になる一同。プレジデントすら持っていた杖を取り落とし窓際にかぶりつく中で、ソニドリは嬉々としてボタンを乱打する。
その度にD.U.地区のあちこちから爆炎が上がり、社長室にアラートが鳴り響く。
『ぷ、プレジデント! グループ系列企業、及び当グループの持ちビルが次々と爆破されている模様! 幸いにして人員は事前に非常警報が鳴り避難できていますが……』
「な、な……っ!?」
肩を戦慄かせるプレジデント。確かに爆炎の上がっている位置はカイザーの所有するビルや系列企業のビルがあるはずの位置だ。
その様子を見てさも愉快そうに笑い、ソニドリは鼻歌すら歌いながらリズミカルにボタンを乱打する。その度に気の抜ける「へぇ~」という電子音声が成るが、そんなことに突っ込む余裕はプレジデントには、そして横で顔を青くしているカンナにもない。
「ちょ、おま、ソニドリ!? 何をしている?」
「ボタンを押してるだけですよ? 思わせぶりなボタンを思わせぶりに連打してるだけで、外の爆発とは無関係ですよ、
このボタンはただのおもちゃです、音が出るだけのね? 確かに
爆発しているのは
嘘を吐け。プレジデントやカンナを含むその場の全員が、同じことを想ったが口には出さなかった。
もっとも、ソニドリが持っているこのボタンは押すと「へぇ~」という電子音声が成るだけの、ソニドリが自称する通りのおもちゃである。
外の爆発とは全く関係ないただの玩具であり、事実このボタンを押した所で音が出るだけで、爆弾を起爆させるための電波が出るわけではない。
ならばソニドリが本当のことを言っているのかと言えば否であり、「ボタンを押して爆破している」事実こそないが「カイザーのビルが次々と吹き飛んでいる」のはソニドリの仕業である。
ソニドリはこの作戦が始まる数日前から、下水や通気口を通じて、かつてオクトパスバンクを吹き飛ばした爆弾脳無と同じものをキヴォトス中のカイザーグループ関係施設へと送り込んでいた。それらを個性『電波』で操り、ボタンを1回押すごとに起爆をしている、というのが真相である。
一応は法治国家であるキヴォトスにおいて犯罪をすれば(その上で捕まれば)罰せられる。しかしそれは『犯罪行為を行った』という事が立証されればであり、
どれほどボタンを押した後に必ず爆発が起きようと、どれほど王釣ソニドリという少女がカイザーグループを蛇蝎の如く嫌っていようと、ソニドリがやったという確たる証拠がない以上、ソニドリは罰せられることはない。
そう、これまで散々カイザーグループがそうしてきたように、『法に触れていると立証できなければ犯罪ではない』のである。
「ま、カイザーグループは敵も多いですから、爆破テロぐらい起こっても不思議じゃないですよね。丁度シャーレとヴァルキューレ公安局が踏み込んで大混乱ですから、いいタイミングでしょう。
ところで、プレジデント。さっきも言いましたが――――――今際の際ですよ? もっと見苦しく足搔いて命乞いをしてくださいよ。あなたには、アビドスやユメ先輩、セリカちゃんやアヤネちゃん、ホムラ先輩が受けた苦しみの何倍もの苦しみや屈辱を味合わせて……完全に完璧に絶対的に社会から抹殺するために、この数年、ずぅっと牙を研いできたんですから。
ああ、やめるつもりはないですよ。今日はカイザーという企業がキヴォトスに存在できる最後の日です。私がそう決めました」
何時もの狂気じみた笑いではなく、見る者に本能的な恐怖を呼び起こさせるような美しい笑みを浮かべながら、そう宣言するソニドリ。
そこから少しの間ボタンを乱打すると、今度は立体映像を投影するドローンとリモコンを取り出し、電源を入れる。
すると空中に投影された無数の映像、そこには砂漠の上に建造された軍事基地のような施設が映し出されている。
その基地に刻まれている紋章に、プレジデントは覚えがある。系列企業、カイザーPMC、またはカイザーコンストラクションの社章だ。
「王釣ソニドリ、貴様……」
「言いましたよね、今際の際だって。アビドスからカイザーを放逐……いえ、駆逐するのが今回の私の目的です。
さ、椅子に座ってください、プレジデント。一緒に見届けましょう? ご自慢の王国が跡形もなくなる所をね」
「やあ、どうも。理事自らお出迎えしてくれるとは思ってませんでしたよ」
「シャーレの先生が来たとあれば一兵卒に任せるわけにもいくまい? それで、要件を言ってもらおうか。これでも忙しい身でね」
アビドス砂漠・旧アビドス本校周辺、カイザーPMC駐屯地。アビドスにカイザーが作った基地の1つで、先生とカイザーPMC理事は対峙していた。
場所は門前、ふらりと
「では、単刀直入に。カイザーPMC理事、及びカイザーPMCの構成員全員に逮捕状が出ています。ご同道願えますね?」
直後、先生の肩口で何かが弾ける。そこに残っていたのは、中空で静止し、何かにぶつかりひしゃげたライフル弾。
理事は忌々し気に舌打ちすると片手を上げ、直後無数のレーザーサイトが先生に突き刺さる。
「こちらからも投降を呼びかけておこうか。如何に貴様が隔絶した戦闘力を持っているとはいえ、一人でこの基地の全戦力を相手できるとは思っているまい? 本当に一人で来たわけでもないだろうが、それにも限りがあるだろう。
しかし、プレジデントからは捕縛命令が出いていたが……シッテムの箱とやらか。本当に厄介だな」
「うん、そうだね。この姿でもがっちり守ってくれるから、すごい助かってるよ。ありがとうね、アロナちゃん」
『えっへん! 先生はすぐトリガー? とかいうので着込んじゃいますからね! もっと私を頼ってくれていいんですよ!』
懐から取り出したタブレット―――連邦生徒会長が残した由来不明のオーパーツであるタブレット型デバイス、シッテムの箱―――の画面に表示された、どこか既視感を覚える水色髪の少女、
シッテムの箱のメインOS『A.R.O.N.A』が、可愛らしく鼻を鳴らして胸を反らす。その姿に微笑みながらも先生は懐にシッテムの箱を戻し、代わりにグリップ状の物体、転生特典である『トリガー』を取り出す。
「さて、大人しく捕まる気はないようだし、とりあえず全員叩きのめそうか。――――――トリガー、
シャーレの白コートを纏った姿が、黒い飾り気のないコートを纏った姿に変わる。トリガ―を起動し、先生の体が戦闘用義体『トリオン体』へと変換されたのだ。
「アルちゃん、聞こえてる? 突入開始。全員叩きのめしてね。得るものは何もないから丸ごと吹き飛ばしても良いよ」
『五人で基地1つ落とすとか正気じゃないわよ!?』*2
「大丈夫大丈夫、便利屋68は一騎当千の猛者だと思ってるし……まあ、装備が良くてもこの程度なら手間はかかるけどなんとかなるよ。
あ、巻き込むと危ないから私の半径100m以内には近づかない方が良いよ?」
『前々から思ってたけど先生っていい意味でも悪い意味でも
「細かいことは気にしないのが長生きするコツだよアルちゃん。……ああ、ごめんね理事。生徒達に指示も出したし、それじゃあ――――――やろうか」
先生が『外』の人間ながら、ヘイローを持つ生徒、その上澄みクラスとも五分以上にわたり合える猛者なのは知っている。だが、先程の口振りから、先生、及び裏切った便利屋68、合計で最大でも五人。
先生の名が広く知られるようになった最初の戦い、七囚人・狐坂ワカモ率いるアウトロー勢力を自分を含めたたった5人で突破していることから、本当に増援はおらず、本気で5人で自分達を壊滅させる気でいるという疑惑が拭えない。
カイザーPMCという一大組織を預かる理事であったが、椅子を尻で磨くだけでのし上がってきたわけではない。プレジデントは冷酷だ、何か失態があれば躊躇なく部下を切り捨てる。のし上がるためには、常に自分の価値を示し続ける必要がある。
そんな中でカイザーの矛であるカイザーPMCのトップであるためには、相応の胆力、政治力、そして武力が必要であった。そして、理事の直感は告げている。戦うなと。
しかしそんなことをすれば切り捨てられる。辛うじてカイザーから切り捨てられないとしても、場末の末端職員として飼い殺されるのがオチだ。
兵士としての直感は戦うなと叫び、企業人としての理性は戦えとがなり立てる。体感では無限の、現実では一瞬の逡巡の後、理事が選んだのは……
「……う、撃て! 包囲して集中砲火! 私も
理事が最終的に選んだのは、企業人としてのプライド。理事の号令一下、先生を包囲していた兵たちの弾丸が放たれるが、先生は寸前で跳躍して回避。
その頂点でグラスホッパーを用い基地の建物の上に移動すると、そこにいた狙撃兵達をレイガストのシールドチャージで吹き飛ばし、離れていく理事を見ながら獰猛に微笑んだ。
「……社長、私達先生を敵に回さなくてほんとによかったね……」
先生の指定した区域と被らないようにデストリッチで移動しながら戦闘する便利屋一行。先生に戦力が集中しているのかそれ程でもない攻め手を捌きながら、一行は浮いた駒を少しずつ削りながら基地攻略を進めていた。そんな中、一息ついていた時にカヨコが漏らしたのが、そんな呟きだった。
「まあ、とんでもなく強いらしいっていうのは聞いたけど……実際、どんなものなの?」
「見てみる?」
そう言ってカヨコが見せて来たノートパソコンの画面では、ドローンの空撮らしい映像の中で、黒コートの女性、トリオン体の先生が大暴れしていた。
後続の突撃をその残骸を
完全に包囲されながらも余裕のある立ち回りで着実に包囲を食い破らんとするその様子は、今まで散々辛酸を舐めさせられてきた空崎ヒナすら想起する戦いぶりであった。
「とんでもないわね……何か見たことないような武器使ってるのは何なのかしらこれ……」
「あの武器は『トリガー』っていう先生が元居た所で使ってた武器らしいよ。ナイフのグリップだけみたいな感じの中にチップが入ってて、起動すると専用の武器を持った『トリオン体』って義体に変わるんだって言ってた」
「カヨコ、詳しいのね? そういえばカヨコ、シャーレでバイトしてるものね、話を聞く機会ぐらいあるかしら」
「まあね。先生は昔、
先生が持ってるトリガーはそのうちの戦闘に特化した技術の1つでしかないらしくて、トリオンを様々に応用して活用するのがトリガー技術の肝だって言ってたかな。先生自体もそう言うトリガーの研究開発もやってたらしいから」
「人は見た目に依らないのね……バリバリの前線指揮官系だと思ってたわ」*4
感嘆の溜息をもらすアル。穏やかで人懐っこい雰囲気の普段とは違い、獰猛な笑いを見せながらまるで猛獣が暴れるように荒れ狂う。
攻撃の度に10人単位で兵が吹き飛ぶその様は、無双系のTVゲームのようでいっそ痛快ですらあった。
「アルちゃーん! そろそろ次いこっか?」
「……はっ! え、ええ、そうね! 先生が敵の大半を引き付けてくれてるし、私達もどんどんぶっ壊していくわよ!」
別の所で暴れていたムツキとハルカも合流し、休憩は終わりと頬を叩くアル。この後も便利屋一同は暴れに暴れ基地の大半を破壊する事となるが、その端々で先生の暴れっぷりを目撃し、その度に自分達が最後の一線*5を踏み越えてなくて良かった……と心底安堵するのであった。
「―――おや、本命登場かな。アロナちゃん?」
『はい! ゴリアテ……のようですが、気をつけてください先生! この場で出してきたという事は、これまでのゴリアテとは違う特別製だと思われます!』
巨大な物体が動く駆動音。そちらに目をやれば、両腕に機関砲、背部に巨大な大砲を背負い、全身を重装甲で固めた数m程の二足歩行兵器、ゴリアテ*6がこちらへと向かってくるところだった。
搭乗員はPMC理事、アロナが忠告する通り、普段交戦しているゴリアテとは段違いに動きも良く、装甲に使われている素材もかなり上質なものを使っているように見える。
「好き放題やってくれたな……貴様がキヴォトスに来てから、何もかもがめちゃくちゃだ! ヴァルキューレとの関係は早々に切られ、アビドスを借金で縛れなくなり、おまけに今この状況だ! 本社とも連絡が取れなくなっているが……大方貴様の差し金だろう!」
「いや別に私あんまり関係ないよ? アビドスの借金はどっちみちホムラちゃんが返してたろうし、ヴァルキューレとの癒着云々も今カイザー本社と連絡取れてないのもソニドリちゃんが絵図書いてた話だし……
というかそもそも君たちが悪いことするからこうやって跳ね返ってきてるだけだし、自業自得じゃないかな。君達はちょっと生徒を舐め過ぎだよ。
ソニドリちゃんやホムラちゃんがもっと短絡的に動いてたら、多分私が来る前にカイザー本社ごと吹き飛ばされてたんじゃないかな?」
「ぬぐ……っ」
実際、正論である。先生が無関係とまでは言わないが、対カイザーに関しては九分九厘ソニドリが計画しお膳立てを行い、ソニドリ曰く『最高のタイミングで横っ面ひっぱたいて泥まみれにする』為に機を伺っていた。
アビドスの頭痛の種であった借金も、先生が関わるより前にホムラがソニドリに相談し、ホムラが1年働く見返りにソニドリが報酬として借金全額肩代わりして支払っている。
そもそもカイザーグループはわざわざ悪事を働くまでもなくキヴォトス有数の大企業であり、その行いから先生やソニドリからは嫌われているが、その経営手腕や技術力そのものはソニドリすら認める程の物である。
理事の率いるPMCも、先生たちという特級戦力を相手にしているから木の葉のように散らされているだけで、戦力そのものはキヴォトス有数の戦力・組織力を持つゲヘナ風紀委員に比肩しうるだろう。
ならば彼らの何が悪かったのかと言えば……端的に言って、わざわざ踏まなくていい虎の尾を踏みに行ったのが原因であると言えよう。最低限アビドスを借金漬けにして土地を奪い嫌がらせをするような真似をしていなければ、ソニドリやホムラという特級戦力かつ危険人物に蛇蝎の如く嫌悪されることはなかったはずなのだ。
「まあ、最初は話し合いで事を収められれば……とも思ってたけどね。もうそう言う時点は過ぎたかなって思ってるよ。
砂漠で何か探してるとか言ってたけど……うん、これ言っていいんだね。なんかソニドリちゃんが目的の奴奪取済みらしいし?
やっぱり悪い事なんてするもんじゃないね。君たち見てると悪事を働くことのバカバカしさが良く分かるよ」
「貴っ様ぁ……! 黙っていれば言いたい放題言いおって! こうなったら徹底的に思い知らせてくれる! このゴリアテをお前が今まで相手してきた市販品と思うなよ!
我々の技術の粋を集めて作られた超強化外骨格、最高純度の素材を用いた装甲やアクチュエータ! 実戦データを基に改良を加えた最新兵器群! 学園最強クラスを仮想敵として建造した最新型だ! これならば貴様とてひとたまりもあるまい!」
「どうかな、確かに手強そうだけど……っ!」
機関砲での打撃をかわし、打ち終わりの隙を狙って弧月を振るう。が、その刃は装甲に薄い傷を残し、弾かれる。
「ありゃ、片手とは言え弧月を弾くかぁ。アロナちゃん?」
『今の衝撃から装甲強度を計算……ちょっと弧月の威力じゃ厳しそうです! 傷がついてる分強度ではわずかに勝ってるはずですけど……』
「ふむ、今の感じからして何度も同じとこ、ってのは現実的じゃないね。それじゃ、プランAで行こうか。アルちゃん達にそう伝えて」
「ふはははは! さっきの威勢はどうした! いかな貴様とてこの装甲には手も足も出まい!」
「自爆モードのイルガー*7よりはマシぐらいの硬さかな……やってやれなくはない、かな?」
全身の武装を放ち先生を遠ざける理事。先生もまた細かく動いて狙いを絞らせず、弧月を鞘に納めてサブウェポンのリボルバー型アステロイド*8を放つ。
最強格を仮想敵とした最新鋭の兵器と豪語するだけあり、理事専用ゴリアテ、仮称『ゴリアテ改』の火力はこれまで相手にしてきたカイザーの戦力とは比較にならない強さを持つ。
打撃に用いても砲身に歪みすら出ない機関砲、*9ドローンや携行式のそれとは比較にならない火力のミサイル、連射は効かないようだが圧倒的な火力の背部のビーム砲。
その後も撃ち合いを続けていると、『生命感知』に動く反応がいくつか。
『先生! アルさん達です!』
「オッケー、じゃあ決めに行こうか! プランAで!」
アルらの方を見ずにそう叫んで踏み込み、グラスホッパーで跳ぶ。それを追って腕を振り回す理事であったが、剥き出しの頭の側*10の装甲表面で火花が散る。便利屋からの援護射撃だ。
無論、先生の弧月すら通さない装甲が一般的な銃で貫けるはずもなく、理事は脅威は低いとみなし強引に無視。しかしほんの一瞬だけ、先生から注意が反れる。そこが、理事の攻勢の終わりであった。
「見様見真似だけど……上手く行くかな、私重いからなぁ」
などと嘯きながらも、先生は手の中に光の玉を生み出し、直後、理事を包囲するように複数の光の板……グラスホッパーが展開する。
先生はその中に踏み込み、1枚目を踏みつつひねりを加えながら跳びつつ、呟く。
「スラスター、
そこからの動きは、まさに一瞬だった。『スラスター』。これはレイガスト専用のオプショントリガーで、トリオンを噴射して加速するものである。
レイガストはシールドとしても使える便利なトリガーであるが重く、攻撃力としては純戦闘型の弧月に劣る。それを補うためのトリガーであり、これを用いる事で瞬間的な高速移動、及び斬撃の加速による威力の向上が見込める。*11
先生は弧月とレイガストを構え、コマのように回転しながらグラスホッパーを踏む、それにより打ち出された先にもグラスホッパーが展開してあり、さらにそれを踏んで加速。
そしてゴリアテ改の周囲を飛び回りながら弧月とレイガストで装甲のない関節部を狙って切りつけ、最後に回転したまま上空まで打ちあがり回転の勢いのまま弧月を振り下ろす。
「――――――旋空弧月」
グラスホッパーで三次元的に周囲を飛び回る『
これにレイガストのスラスターによる加速も加わり、その一線は通常の弧月では歯が立たないゴリアテ改を袈裟がけに両断した。
「クソッ、生徒を囮にするとは姑息な手を……!」
理事が毒づいた直後、その胸元に
一瞬の後弾丸は炸裂し、両断され崩れ落ちるゴリアテ改の最後を爆発で彩ったのだという。
「残念、私が囮だよ」
「……自分で打ち込んでおいてなんだけど理事、死んでないわよね?」
「大丈夫、生きてるよ。意識はないかもだけど。さ、最低限の救護したら
ゴリアテ改のハーネスを切断し理事を引き摺り出しながら、便利屋一同に言う先生。
アビドスにおける総決算、デカグラマトン・ビナー討伐戦への妨害を排除する前段階、カイザーPMC掃討戦。戦いはまだ、始まったばかりである。
そんなわけで22話でした。アバンタイトルがクソ緑パート、OP挟んで本編が先生パート、な感じ。
■解説
・クソ緑
数年越しの計画発動でギリギリを攻めながらプレジデントいじめしてる。
脳内掲示板では異様なテンションで大爆笑してるクソ緑の思考が垂れ流しになっていたそうです。
カンナも『こいつは何かやらかすだろうな……』と思ってたら予想以上の事やらかし始めたので部下共々ドン引きして白目剥いてる。
なお本社ビル内は完全制圧済みなので後はプレジデントいじめを想う様楽しんだら後をカンナに任せて基地潰しに行く模様。
・先生
はじめてのまともな戦闘描写。基本的に鋼くんみたいな弧月&レイガストで遊真とか緑川みたいなアクションする系の忍田さんか太刀川さんみたいな感じの生き物。
なお現役時代は弧月使いだったそうです。忍田さん的なイメージ。
なお今話を書くにあたり資料を漁ったら、死亡時点(ワートリ本編から5年前)で現在の城戸指令とタメ(42歳)だという事が判明。下手すると旧ボーダー最年長だった疑惑が出てきました。
・アロナちゃん
22話に至りようやくまともな出番。色々頑張ってトリガー内部に格納された状態で先生のサポートをしている。なおトリオン体時にはアロナちゃんバリアはない模様。
・便利屋一同
「マジであの時柴関爆破しなくて良かった……」と心底安堵した上で先生の戦闘力にドン引きした。
・プレジデント
先生にカイザーの最新鋭のゴリアテが結構易々とぶっ壊されて愕然としている。
その横でクソ緑が狂ったように大爆笑している。
・PMC理事
ギリ乗ってる部分には当たらないように斬られたので五体満足。部下共々脳無部隊に引き渡されブタ箱送り。