ブルアカ転生掲示板   作:タマヤ与太郎

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24話です。なんとか30話行く前にはアビドス編終わらせられそうです……
今回小説パートのみ。


24:決着するやつら

 

 

アビドス砂漠某所。ウリエを除くシャーレ幹部(転生者)6人にホシノとヒナを加えた8人は、旧アビドス本校にほど近い地点に集結していた。

ソニドリが彼方を見やり、少しの間瞑目した後、口を開く。

 

「ビナー確認しました、30分後に会敵予定です。手前あたりで引っ張り出しますんで、後は流れで!」

 

「ソニドリちゃんなんか作戦とかないの!?」

 

「見 敵 必 殺!」「それを作戦って言うのはどうかなっておじさん思うよ!?」

 

「まじめにやりなさい、そにどり」「はい」

 

「急に落ち着かれても困るよ!?」

 

漫才を繰り広げるアビドス組を呆れたように見ながら、ヒナは傍らの先生を見上げ、先生はそれに笑顔で返す。

この先生と関わるようになってから、本当に色々なことがあった。エデン条約が破談寸前の事態に陥ったところに助け舟を出してもらったし、ろくに休む暇もない労働環境もかなり改善された。

万魔殿の横槍もなくなり正直落ち着かないが、それでも、周りから心配されることが少なくなったのは、良い事だろうか。

そして現在。ヒナはどことなく所在なさげに周囲を見回すと、すぐそばにいた先生に気付き、声をかけた。

 

「……先生」

 

「ヒナちゃん? 緊張してる?」

 

「あ……ええ、少し、緊張してるかも。私と同じぐらい強い人達と並び立つなんて、初めてだから」*1

 

事実である。ゲヘナにおいては自分に比肩するのはウリエのみ。そのウリエも万魔殿所属という事もあり、単独で暴れていることはあれど、ヒナと協働することなど今までなかった。

部下を指揮して戦うにあたっても、隔絶しすぎた実力差から自分が突っ込み、イオリや一般風紀委員達がそれに続く、というのが常。他の学園最強格達と一つの目的に対するなど、今回が初めてなのだ。

それを言わずとも理解してくれたことに対して嬉しさと気恥ずかしさが同時に浮かび俯くも、先生は穏やかに笑ってヒナの頭をわしわしとなでた。

 

「……そっか。でも、これからはこういう事増えてくると思うから、慣れていこうね。これからは私もたくさん頼りにすると思うから……ヒナちゃんもたくさん頼っていいんだよ?

 直ぐには無理かもしれないけど……それでも、私達がいる。ヒナちゃんばっかりが頑張る必要はないんだからね」

 

「……うん」

 

ヒナはそう呟くと、くすぐったそうに目を細めるのであった。

 

 

 

「――――――さて、と」

 

先生はヒナを一しきり撫でると、漫才をしているアビドス勢の中に割って入り中断させる。そして最前列に出ると、懐から1枚のカードを取り出した。

それは、ICチップ付きクレジットカードのような何か。先生が『先生』としてこの世界で目覚めた時、その懐に入っていたもの。

先生の脳裏に、討伐戦開始前の、ある男との会話が思い浮かぶ。

 

 

 

「……黒服さん、だったかな?」

 

先生の前には、スーツを纏った黒い人型、とでもいうべき、異様な人物。ソニドリと一時的に提携している組織、『ゲマトリア』の1人。黒服と呼ばれている男が立っていた。

場所は、アビドス高校の一室。唐突に表れた黒服が、先生に伝えねばならないことがある、と言い、2人きりで話したいと言ったのだ。

 

「まあ、偽名というか、あだ名というか……小鳥遊ホシノにはそう呼ばれておりますね。天保印羊子先生。お初にお目にかかります、お気軽に黒服と、そう呼び捨てていただければ。

 ともあれ、用件は手短に参りましょう。あなたとはゆっくりお話ししたいのですが……お急ぎのようですしね。

 先生、貴女は『大人のカード』をお持ちですね? 黒い、クレジットカードのようなものです。あなたがキヴォトスへ来た時に、いつの間にか持っていたもののはず」

 

「よく知ってるね? これが、なんだと?」

 

先生が懐から『大人のカード』を取り出すと、黒服はさも愉快そうにククク、と笑う。その笑いに、どこか懐かしさと寂しさが籠っているように見えたのは、気のせいだろうか?

 

「それについて助言と、忠告を。もっとも『それ』について、私の知っていることは多くはありません。ですが……」

 

黒服はそこで一度言葉を切り、瞑目するかのようにかぶりを振り、改めて先生を見やる。

 

「『それ』が、先生(あなた)だけの武器(・・)である事。使えば使う程、先生(あなた)の生が、時間が、削られていくはずだという事。

 その末路は――――――今、先生(あなた)の目の前にいるゲマトリア()こそが、そうであるという事。人として生を終えたいのであれば、使い所にはお気を付けください。

 それだけは、貴女に伝えておかねばならない。そんな気がしたのです」

 

「そっか。ま、それなら良かった。削られるのが私からだけなら安心して使えるからね。これの使い方は、何となくだけど分かってる。

 これは、因果を捻じ曲げるオーパーツだ。これを使えば、様々な奇跡じみたことを起こすことができる。いるはずのない人間(・・・・・・・・・)を呼び寄せたり、あるはずのないもの(・・・・・・・・・)を持って来たり、とかね。*2

 あるいは……このキヴォトスにいるはずの(・・・・・)ない人間(・・・・)を、さも前から予定があったかのように呼び寄せる事、とかもかな?」

 

「最後に関しては、何とも。ですが、ありえないとも言い切れないでしょう。……先生とはもっと語り合いたいものですが……この辺りが潮時でしょう。

 それでは、本日はこれにて。羊子先生……ゲマトリアは、貴女の事をずっと見ていますよ」

 

 

 

(……大人のカード、か)

 

キヴォトスに来たその日、ふと気が付いた時にはポケットの中に入っていたもの。その使い方を、羊子は理解している。

それが『大人のカード』の機能なのか、『先生』としてキヴォトスに呼び寄せられた自分にインストールされた知識なのか、それは分からない。

分かっているのは、これが神秘という概念の存在するキヴォトスにおいても埒外のオーパーツである事。

トリオンを観測し、トリガーすら『エネルギー(使用に必要なトリオン)さえ用意できれば再現できます』と宣うソニドリによる解析でも、その素材もエネルギーソースの片鱗すらも解析できなかった事。

だが、『これ』で何ができるのか、『これ』を使うために何が必要なのか、それだけは理解していた。黒服の言葉からもその理解は正しいものであったのだろう。

 

(命を削る、時を削る。それが生物的な『命』を指すのか。概念的な『寿命』を指すのか、まあ、そこはどうでもいい(・・・・・)

 重要なのはこれに何ができるか。私が今やろうとしていることが恐らく可能であることも、それが『可能である』という事だけは分かる)

 

天保院羊子という人間にとって、このキヴォトスにおいて得た第二の人生(転生者ライフ)は、前世という人生を生き切った自分に対するご褒美のようなものである。そう認識している。

しかし自分は『終わった』人間だ。未練もある、後悔もある。だがそれでも人事を尽くし、納得ずくで死んだのだ。しかし自分という意識は変わらず連続している。

ならばどうするか? 決まっている。天保院羊子という人間が生命活動を続けている限り、住む世界が変わろうと全力で生き切る(・・・・)。ただそれだけだ。

 

命とは投げ捨てるものではないとは北斗の拳のトキの言葉だったろうか。なるほど確かにその通りだと思う。だが、こうも思う。命とは使い所(・・・)があるものだと。

無闇に命を捨てるつもりもない。だが、安穏と怠惰に生きるつもりもない。死を恐れては何もできないのだ。常にではないが、時に死地に命を投げ出してこそ活路を見出だせるものである。

かつてホムラが言っていたように、容易く賭けられる程度の命に価値などはない。だが、死にたくはない、死ぬわけにはいかないと思いながらも賭ける命には、値千金の価値があろう。それが天保印羊子のモットーであった。

 

「だったら――――――答えは一つだよね!」

 

言葉と同時、手の中の『大人のカード』が光を放つ。そして光が収まった時、羊子の目の前の砂地には黒い杖が刺さっていた。

突然物体が現れた事に驚くホシノとヒナ、しかしそれ以上に目を剝いたのはソニドリを除く他の転生者達だった。

 

「あれ先生……その杖、まさか『星の杖(オルガノン)』? それに今『大人のカード』使ってたよね。ってことは……どういうことか、分かって使ったよね?」

 

「うん。これがどういうものかは分かってるし、何ができるのかも大体は分かってた。実際どこまでできるのかを試したくもあったし……手加減とか、してる余裕ないでしょ?」

 

やや刺々しいフミの問いに、苦笑する先生。フミは何か言いたげに沈黙するが、結局は肩をすくめ、腰の刀に手をかけた。

 

「ま、実際そうだけどね。でも、(ブラック)トリガー出したからには使えるんでしょ?」

 

「『風刃』と違ってこっち(・・・)は使った事ないけど、そのはずだよ。――――――トリガー、起動(オン)

 

杖を掴み、起動する。するとその姿はいつものトリガーを起動したときのような黒コートではなく、コートの代わりに連なった〇の模様が描かれた黒いマントを羽織った姿に変わる。

『星の杖』。それは『ワールドトリガー』に搭乗する特殊なトリガーの一種、『黒トリガー』に属するトリガーで、近界(ネイバーフッド)に存在する大国、アフトクラトルの保有する国宝の1つであり、本来先生が知っているはずも、持っている可能性もないもの。

黒トリガーとは高いトリオン能力を持つ人間が自分の命と全トリオン能力を賭して生み出すことのできる特級のトリガーであり、その特異な能力の他に作成者のトリオン能力が使用者のトリオン能力に上乗せされるという特性を持つ。

デカグラマトンという原作においても全容の知れない敵を相手に、自分の出来る限りの本気で戦うために、先生は大人のカードを持って『自分に使える黒トリガー』を呼び出したのだ。

 

「とりあえず、作戦は出てきたら全力で叩く。ソニドリちゃん、ビナーの兵装は?」

 

「口から出すごん太ビーム、複数人に対して飛んでくるミサイル、全体攻撃の砂嵐ですかね。あ、砂嵐も2パターンありまして。

 大粒の砂塵による全体攻撃と目くらましや銃器のジャムを誘発する細粒の砂嵐があるんで、複雑な機構がある銃の人は気をつけるか諦めて殴ってください

 後シンプルに体当たりとかもあるのでこれも頑張って避けてくださいね、受け止められれば受け止めてください」

 

「ソニドリちゃんアバウト過ぎない!?」

 

「ビームとミサイルは何とでもなるけど……デバフは厄介だし砂嵐は気をつけた方が良さそうね。まあ、なんとなれば確かに殴るのも手かな。攻め手が分かってるだけ逃げ回る温泉開発部よりはマシかもね」

 

「びなーはしんぷるにおおきいのでさばくでたたかえるのはよいことですね。なぐりとばしてもひがいがないですから」

 

「先輩と委員長ちゃんもそれで理解しちゃうんだ?!」

 

ツッコミ役の様相を呈してきたホシノを尻目に、一同は配置につく。

前衛、先生・フミ・アオ・ホムラ(&イヤンクック)・ホシノ。

後衛、ソニドリ・レイ(inショベリウス)・ヒナ。

各員が配置につき少ししたところで、ソニドリは通信機に向かって大声で叫んだ

 

「それじゃあウリエさん、ぶわぁ~っとやっちゃってくださーい!」

 

『おうよ、巻き込まれんなよお前ら! 荷電粒子砲(・・・・・)発射ァーッ!』

 

「ちょっと待ってウリエちゃんすごい聞き捨てならない言葉聞こえたんだけど!? デスザウラー作っちゃだめって前言ったよね!?」

 

思わずソニドリを振り返る先生に対しソニドリは眼前でちっちっち、と指を振り――――――

 

「ええ、作っちゃだめって言われたので開発は中止しましたよ、デスザウラーは(・・・・・・)。なので別なのを作りました! 荷電粒子砲撃ちたかったですし!

 ハミングバード・インダストリー製ウミサソリ型ゾイド、デススティンガー君With荷電粒子ビーム偏向脳無達です!」

 

「そにどり、あとでおにごっこのけいですよ」

 

全く悪びれずサムズアップまでするソニドリに、底冷えする声音で言うホムラ。

直後、一同から少し離れた砂漠に天から極太のビームが着弾。爆音と膨大な砂、そしてその中に紛れて立ち上がるのは白亜の巨蛇。

オレンジに光るラインを持った黒い内部構造を幾節にも分かれた白い装甲で包み、砂上に突き出した部分だけでも数階建てのビルに匹敵する巨大さ。

頭部の四つの目は内部構造に走るラインと同じオレンジに光り、機械としてはありえない、同色のヘイローすら有する埒外の存在。

デカグラマトン第三の預言者・ビナー。先生たち率いるシャーレが、最初に対峙した預言者であった。

 

 

 

『ミサイル来ます! ターゲットの方は各自迎撃を! 続いてビナー口腔部に高エネルギー反応!』

 

ショベリウスに乗ったレイが警戒の声を上げる。ビナーとの戦いが始まり、今の所戦線離脱者はいないまま戦いを続けられている。

そこで分かった事は、ゲームにおいてのビナーと現実においてのビナーは、似て非なるものという事であった。

 

「やれやれ、かったいなぁ! 鬼殺しで斬れない相手なんて久しぶりだよ!」

 

2振りの巨大な日本刀―――転生特典であるシャーマン能力で構築したO.S.(オーバーソウル)、『鬼殺し』である―――を振り回しミサイルを叩き落しながら、フミが言う。

戦車やゴリアテを苦も無く両断するそれであっても、ビナーに通用はしても痛打にはなっていない。あまつさえ斬撃で付けた傷が癒えていくのを見て、ソニドリがひとりごちる。

 

「それにこれ自己修復機能もありますね。まあこれは砂漠で数十年稼働可能な時点で予測されてた事ですが……荷電粒子砲も砂で威力殺されてそんなに通じてないですねぇ。ヘイローがあるという事は神秘防御あるって事ですし、それも加味した上でデススティンガーの荷電粒子砲だったんですけど……

 やるなら動きを止めて、その隙に一瞬で再生不可能な大ダメージを与えるのがベターですかね。推定TORMENT以上の総力戦ボスとかめんどくさいですよねえほんと」

 

周囲を飛び回る羽で援護をしながら自分に飛んでくるミサイルを落としつつも、ソニドリ。ゲームにおけるビナーは『搦手は少ないものの高い攻撃力と防御力を併せ持つ超巨大な敵』である。

それはこの世界線においても同等だが、ここは現実世界。ゲームのような相性はなく、ライフゲージなどというものも存在しない。

その上で少々の損傷は自己修復してしまう上、戦況が不利に傾けば相手は逃走を躊躇しないだろう。そもそもゲームにおいても撃破とは言え、描写から見るに痛手を与えて追い払う程度が精々なのだ。

このまま対症療法を続けるよりはこの場で完全撃破してしまいたい。ソニドリは声を張り上げる。

 

「皆さん、五分ください! ――――――アレをぶち壊します!」

 

『ビーム来ます! 目標ソニドリさん!』

 

「任せて!」

 

先生がビナーの眼前に飛び出し、『星の杖』本体にいくつもの光の輪が連なって浮かび―――直後、発射されたビームが先生の直前で千々に裂かれ、一同にあたることなく砂漠に砂柱を吹き上げた。

 

「『星の杖』をそういう使い方するのね……ほんと、スラスター旋空といい、裏技的な使い方が上手いったら」

 

襲い来るミサイルを両手に構えた獣肉断ちで叩き落しながら、呆れ混じりに口笛を吹くアオ。

先生の眼前にはいくつもの円環が浮かび、その円環に沿うようにトリオンの思しき光の刃がビナーに切っ先を向けて浮かんでいる。

最も内側にある刃は先生を守る様に円錐状に組み合わされており、それを持ってビナーのビーム『アツィルトの光』を切り裂いたのだろう。*3

 

「『星の杖』はシンプルだからね。障害物のない砂漠で戦うなら『風刃』*4よりはこっちの方がやりやすいんだよ」

 

ビームを防がれたとみるや体当たりに移行してきたビナーの攻撃を、先生は浮かんだままのブレードに乗り、そのブレードを滑らせた勢いで跳躍し、また別の円環に這わせたブレードでビナーの死角に回る。

『星の杖』の機能は、展開した円環状のレールの上を強度と切れ味の良いブレードが走るという、他の黒トリガーと比較してもシンプルで分かりやすい類のものである。

もっともそれが目にもとまらぬ超高速であり、基本的に自分の周囲の全てを叩き斬る為本来集団戦には向かない。が、先生はその特性を利用し、超高速で動く超強度のブレードを盾にビームを裂き、レールの上を高速で動くブレードを足場に空中を高速移動していた。

これは機能を知っているという『原作知識』もあるが、根本的に言えば、生前は近界民(ネイバー)を相手に戦い続けてきた先生の経験と戦闘勘によるところが大きい。

 

「みんなの倍以上長く生きてるからね、このぐらいはやらないと……ねっ!」

 

ビナーの胴体に沿うように展開したブレードが、ミキサーのようにビナーの体を削っていく。それでもその巨体を止めるには及ばないが……

 

「先生ばっかりに任せてるのもかっこ悪いよねぇ、ヒナちゃん、突っ込むから合わせて!」

 

「分かったわ。――――――逃がさない」

 

ホシノが突っ込んでショットガンを乱射すれば、ヒナが機関銃から神秘を纏った弾丸を撒き散らす。*5弾丸は『星の杖』の創った装甲の亀裂から内部に入り込み、内部機構を破壊してゆく。

アオとフミも『星の杖』のブレードの隙間から攻撃を差し込み、装甲を剥がし、砕き、ビナーにダメージを与えていく。

苦痛か、怒りか、ビナーが咆哮を上げ、ミサイルを放ちながらビームを撃たんとするも、イヤンクックの放つ熱線がミサイルを叩き落し、ホムラの放つ神秘砲がビームを迎え撃ち、相殺した。

そしてその直後、横っ面をハンマーで殴られたようにビナーの頭部が揺れる。レイが弾道を計算しセンサーをそちらに向ければ、そこには黒い装甲を持ったヴェロキラプトルのような機体。

発せられる識別信号からは『ガンスナイパー*6・蓮常寺ウリエ機』という情報が読み取れる。かねてよりウリエがソニドリに注文していた機体のようだ。

 

『危ねえ危ねえ、祭りに乗り遅れる所だったぜ! クソ緑もたまにゃあいい仕事するなぁ! おい千路、にゃんこ砲は撃てんな? 合わせろ!』

 

『了解です!』

 

「……ウリエちゃんにも後で話があるからね?」

 

再度尾部のレールガンを伸ばし狙撃体制に移行するウリエのガンスナイパーに、転生特典であるにゃんこ城を呼び出しにゃんこ砲の発射準備をするレイ。

先生の呟きをレイは聞かなかった振りをし、ウリエの方からは口笛を吹く音が聞こえてきたが……直後、発射されたビームとレールガンがビナーを大きく仰け反らせた。

そこで、最前線に飛び出してくる影あり。ソニドリだ。しかし、その姿が異様だった。基本的には個性『剛翼』を発現したいつもの姿だったが、その右腕だけが異形へと変じている。

普段の袖の余った白衣を内側から突き破るほどに肥大したその腕は、隆々とした筋肉を持ついくつもの腕が絡まり合い、ねじれた骨が槍のように突き出し、拳の部分には鋲のようなものすら見える。

その異様な右腕に、丁度リロードに下がっていたホシノがぎょっとした目でソニドリを見やる。

 

「ソニドリちゃん、その腕……」

 

「私がこの羽を含めて色んな力が使える、というのは話したと思いますが……その中の『殴る』という系統の能力をかけ合わせたものです。ゲームで言うとスキルを掛け合わせて相乗効果を起こす感じですね。

 ここまでいっぺんに掛け合わせるのは久しぶりなので五分かかりましたけど……まあ、これで終わりです」

 

ソニドリは砂地を陥没させる勢いでの踏み込みと共に飛び上がり、一瞬でビナーの眼前に立つ。その小さな手がビナーの鼻先を掴んだ瞬間、驚くべきことが起こる。

地響きと共に、ビナーの体が持ち上がったのだ。そのまま砂中に埋もれた体ごと引きずりだされたビナーは空中高く放り投げられ、その落下点でソニドリは異形の右腕を振りかぶる。

そして落下してきたビナーに向け、咆哮と共にその暴威を解き放った。

 

「ABYDOS SMASH!!!!!!」

 

拳は過たずビナーの胴体に叩き込まれ、一瞬の静寂の後、発破解体の如く打撃した部分を中心とした広範囲が爆散した。

ソニドリがこの一撃に込めた個性は『筋骨発条化』『瞬発力×4』『膂力増強×3』『増殖』『肥大化』『鋲』『エアウォーク』『槍骨』という、いわゆる『君を殴る』コンボに加え、硬く強靭な筋肉になる『剛筋』、強引な強化により自壊する右腕を無理やり『超再生』で治しながら、普段は使わない己の神秘も全開にして殴っていた。

その上でインパクトの瞬間に『衝撃反転』を使用することにより、パンチによる発生する拳への衝撃をそっくりそのままビナーへと返し、ビナーはソニドリの全力パンチ『ABYDOS SMASH』の威力に加え、自分の自重がソニドリの拳に与えるはずだったダメージを喰らい、その体は頭部と尾の先端を残して文字通り塵になるのであった。

 

 

 

「……あー、スッキリしました! やっぱりストレス溜まった時には全力パンチですね!」

 

「……おじさん、絶対ソニドリちゃんがキレる様な真似はしないって思ったよ……っていうか腕! 腕! なんか元には戻ったけど変な方向向いてるけど!?」

 

「おっと、流石に『超再生』でもすぐには治りませんか。……ふんっ!(バキゴキグキャッ)治りました!」

 

「えぇ……」

 

元には戻ったがあらぬ方を向いていたソニドリの右腕が、逆再生のように一瞬で治るのを見てドン引きするホシノ。

それを見て皆が安堵の溜息を洩らし、先生もまた『星の杖』を解除し、そこで限界が来たのか、『星の杖』が光とともに消えていった。

他の皆も戦闘態勢を解除し、先生が撤収を指示しようとしたその時、一同をオレンジ色の光が照らす。その源は、破壊を免れていたビナーの頭部。消えていたヘイローが再点灯し、軋むような音とともに口が開き、その中に光が生まれる。

全員が脱力したほんの一瞬、そこに起こった事態に、誰もが行動を起こすまで一瞬のラグがあった。その一瞬でチャージを終えたビナー。苦し紛れの一撃であろうと、ここには先生がいる。如何に銃撃から守れるシッテムの箱があろうと、岩をも溶かす『アツィルトの光』を受けてはただではすむまい。

全員が最悪の事態を想定した、その時。

 

『危なーいっ!』

 

そこに現れたのは白亜のアースムーバー。その腕に持った巨大な掘削用ドリルがビナーを貫き、それがトドメになったのかビナーのヘイローが消え、完全に沈黙する。

静まり返る一同。ソニドリすら目を丸くして驚愕していたが、その驚愕の内容は他の面々とは違うものだった。

 

「『ダイクーガ』……!? 何でここに……いやでも今の声って……まさか……?」

 

ソニドリの呟きに応えるように『ダイクーガ』の頭部コクピットが開き、中の人間が顔を出す。

ソニドリの髪よりはやや色の薄い緑のロングヘアの少女、人懐っこい印象を受ける顔に、纏った患者衣を内から押し上げる豊満な胸。

ソニドリは、そしてホムラは、ホシノは、その人物を誰よりも知っていた。

 

「ホシノちゃん、ホムラちゃん、ソニドリちゃん! 大丈夫だった!? ……ってあれ、なんでそんな驚いてるの? よく見たら知らない人も沢山いるし……

 っていうか、なんか起きたら病院みたいなとこにいるし、うろうろしてる間にかっこいいロボットみつけちゃって、弄ってたらソニドリちゃんの反応があるって出たから飛び出して、

 そしたらなんか危ない所だったから思わず壊しちゃったけど……あの蛇ロボさん、もしかして私が壊しちゃまずい奴だった?」

 

「ユメ、せん、ぱい……?」

 

呆然ととつぶやくホシノの呟きに、怪訝そうに首を傾げる少女。

アビドスでの戦いは終わった。しかし、未だ、波乱は収まることはないようであった。

 

*1
ヒナクラスの人間はまあまあいるが、ゲヘナにおいては所属違いのウリエぐらいなもんである

*2
※筆者の解釈

*3
原作でも『星の杖』のブレードを集中させて盾にしている場面がある

*4
ワールドトリガー原作に登場する黒トリガーの1つ。ボーダー所有の黒トリガー

*5
※EXスキル

*6
ゾイドに登場する小型ゾイド。尾が狙撃用レールガンになっている




そんなわけで24話でした。ビナー戦決着。あと1話か2話ぐらいでアビドス編終わりそうです。



■解説

・先生
割と無茶苦茶やった人。大人のカードに関しては多分に自己解釈混じってますが、基本『因果を捻じ曲げて不可能を可能にする』もの、と考えています。
先生はそれを本能的に理解してリスクも理解していますが、『自分の時間と引き換えなら安いもの』と考えている。別に死にたいわけでも命を軽く見てるわけでもないけど、命には賭け時がある、と思っているので賭けるべき時には躊躇なくベットする。

・クソ緑
AFOの個性フル活用でオールマイトの真似した奴。脳内AFOへの嫌がらせも込み。
撃退じゃなくて撃破に拘ったのは今後のアビドスの為にもビナーは邪魔でしかなかったので。

・ダイクーガ
ウルトラジャンプ版ユンボルで出てきた方。本来はソニドリ専用機。
大体原作通りの設計だけど、生体機関(クローン培養した人間の脳)は流石にヤバすぎるのでパンちゃん脳無を使用した制御系に変更している。(ボ卿スーツと同系統の技術)
推定アビドスユメセンパイが載れてたのもそのおかげ。

・推定アビドスユメセンパイ
わざわざ説明するまでもない気もするけどお察しの通りです。詳しくは次回。

・おにごっこの刑
24時間耐久アビドス砂漠鬼ごっこ(タイマン)。
厳密には捕まったら終わりだけど、鬼であるホムラが24時間立つまで捕まえずに常時追い立てるので実質24時間ホムラに追い立てられる地獄の鬼ごっこ。
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