ブルアカ転生掲示板   作:タマヤ与太郎

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そんなわけで35話です。
switch2を買うか、パソを新調するか、割と本気で悩んでいます。switch2は一向に抽選当たらんのですが!


35:若返るやつ

【捕虜】青く透き通るGTA世界に祝福を・38【虐待】

 

 

 

924:実力派センセイ

 

所で近いうちに山海經って学校に行くことになったんだけど、これイベントかなぁ? 最近そっち系のイベントが多発してるし……

 

 

925:名無しの転生者

 

これは……どれだ?

 

 

926:名無しの転生者

 

時系列的に言うなら『ネバーランドで捕まえて』だが……原作通りのイベント発生順じゃねえからなあ、メインイベントすら最初に始まったのがカルバノグだったし

……先生、誰に呼ばれたんだ?

 

 

927:実力派センセイ

 

えーっと、練丹術研究会のサヤちゃんって子かな。色々相談したいらしくて

 

 

928:名無しの転生者

 

あっ良かったネバーランドだった……他のイベントだと下手すると戦争になりそうなんだよな……

そうだ先生、サヤから出された物には絶対手を付けるなよ? 何入ってるか分かったもんじゃねえんよ

 

 

929:オール・フォー・オール

 

サヤさんは薬学においては天才ですがいたずら好きな性分ですからねえ。他人の同意を取らずに臨床実験かますのでやらかしたらぶん殴っていいと思いますよ*1

実際エンジニア部よりはなんぼかマシ程度には良識がアレですし

先生も全身が金色になったり灰色の毛が生えたり太らない代わり常時カロリー摂取してないと餓死するような体になりたくないでしょう?

 

 

930:実力派センセイ

 

改めて思うけどキヴォトスの子って倫理観ゆるゆるな子多いよね……まあ気を付けるよ

所でさっき言ってた『他のイベントなら戦争になりかねない』って?

 

 

931:墓守の狩人

 

山海經は中国モチーフの学校でね。現堂主(生徒会長)の竜華キサキさんは大分穏健な人なんだけど、その下がねぇ……

よく言えば伝統を守る気質が強い、悪く言えば保守的に過ぎる脳死連中って言うか

他のイベントなら戦争って言うのも、一部例外を除けば根本的に排他的・攻撃的な連中が多いのよ。なんだったらキサキ堂主直属の上級幹部ですらね

基本的に質の悪い便利屋68とか性格の悪いレッドウィンターみたいな感じ? そんな所に写輪眼さんやライダーさん連れてったらどうなるか

カリスマがあるってのも考えものよね

 

 

932:名無しの転生者

 

お前も割とそっち側じゃね?

 

 

933:墓守の狩人

 

別に私はカッとなってどうこうってのはあんまりないわよ? ま、ライダーさん同様、会話で収めるライン超えたらぶん殴るって方針ではあるけどね

 

 

934:実力派センセイ

 

となると今回はにゃんこちゃん連れてった方がいいのかな……

 

 

935:名無しの転生者

 

まあ今回は派手なドンパチにはならなそうだし、たまにはにゃんこちゃん連れてって上げても良いんじゃない?

 

 

936:名無しの転生者

 

あとは墓守ネキもまあ比較的マシな方だし……

 

 

937:G級ライダー

 

何か馬鹿にされていませんか、私

 

 

938:名無しの転生者

 

ライダーネキがキレたら止まらんのは事実でしょ

そう言う意味では同列に並んでても写輪眼ネキの方がマシよ

 

 

939:写輪眼

 

いや俺も抑える所は抑えるぜ? まあ今回は俺もエデン条約の関係でバタバタしてっから行けねえけど……変態はどうよ?

 

 

940:囚人キング

 

ボクはこないだご一緒したから遠慮しとこうかな? 墓守ちゃんとにゃんこちゃん、先生をお願いするね?

にゃんこちゃんは難しいだろうけど墓守ちゃんは割と躊躇なく先生でもぶん殴れるだろうし

 

 

941:名無しの転生者

 

先生も微妙に信用されてなくて草

まあ先生自体素直に謝れないなら泣くほどぶん殴る人だしなぁ……

 

 

942:にゃんこ大線路

 

は、はい! 頑張ります!

 

 

943:墓守の狩人

 

任されたわ

 

 

944:実力派センセイ

 

まあ否定はできないけどね……そういえば山海經っていうとシュンちゃんのとこなんだっけ? 一応彼女とは面識あるんだよね

たしかシュンちゃんは梅花園って幼稚園みたいなとこの先生やってるんだよね。お転婆な子が多いから毎日大変だって言ってたっけ

肩が凝るとも言ってたけど……これ多分ハスミちゃんの体重的な悩みだよね? あんだけスタイルよければ肩も凝るよね

 

 

945:名無しの転生者

 

それはそう

 

 

946:囚人キング

 

キヴォトス人のクーパー靭帯って頑丈だよね……

ボクもニヤやカホ程とは言わないけど、せめてブラジャー必要なぐらいは欲しかったなぁ……

 

 

947:G級ライダー

 

分かります。私もせめてもう少し身長が高くスタイルが良ければ良かったと思いますよ

ノノミやユメやソニドリなどが周りにいると、たまに考えてしまいますよね

 

 

948:にゃんこ大線路

 

分かります! すごく! ええ!

ワカモさんとかすっごいスタイルいいし美人なので妬けちゃいますよね……同じハイランダーでもスオウ*2さんとか制服で隠し切れないぐらいにスタイル良かったですし

 

 

949:名無しの転生者

 

まあ、ノーコメントって言っておくわ

しかしにゃんこちゃん、スオウと関わり有ったのね?

 

 

950:にゃんこ大線路

 

あ、はい。まあ管轄は違いますけど……ノゾミちゃんとヒカリちゃんのあれこれの関係でちょくちょく話してました

あの人も確か本来起こるはずだったアビドス編3章の重要人物なんでしたっけ

 

 

951:名無しの転生者

 

せやね。まあ色々あってハイランダーに流れ着いた子らしいけど……そういえばアビドス3章ってどうなるんかね?

地下生活者とか結構無法な能力してたが、いまんとこゲマトリアと仲いいよね先生ら

 

 

952:実力派センセイ

 

地下生活者? その人もゲマトリアのメンバーなの?

 

 

953:オール・フォー・オール

 

厳密に言えば元メンバーですね。方針の違いで追放されたとか。他者の意識に干渉して自分の都合のいいように動かす、みたいな能力があるらしいですよ

ま、既にぶっ潰してるので万が一にも干渉してくることはあり得ませんけどね! ご安心ください!

 

 

954:名無しの転生者

 

いやまあ存在知っててゲマトリアと一応連携してんならこの緑色が行動起こしてねえわけないよな

となると列車砲の存在がどうなるか、か? まああれも原作のアビドスメンバーホシノ抜きでどうにか出来る程度の欠陥兵器だったらしいが

 

 

955:写輪眼

 

そういやシェマタだったか? あれも雷帝関連のブツなんだよな……ヒナとかに話して潰しとくべきか?

 

 

956:実力派先生

 

え、雷帝って確か前のゲヘナの会長さんだよね? 色々やってたらしいって聞くけど……

 

 

957:聖剣の保安室長

 

あの野郎関係のブツか? 潰すんなら手伝うぜ。一応あたしも関係者っちゃ関係者だし

 

 

958:オール・フォー・オール

 

あ、大丈夫ですよ、既に破壊済みです。1年ぐらい前に

 

[動画]

(巨大な列車砲らしき兵器がソニドリによって粉々に粉砕される動画)

 

 

959:名無しの転生者

 

何してんのお前!?

 

 

960:名無しの転生者

 

知 っ て た 

 

 

961:写輪眼

 

報連相しろっつってんだろーが!

 

 

962:オール・フォー・オール

 

だってこの転生者チーム出来るよりも前の話でしたし……どうせどうあってもアビドス三章発生しない流れにするからあんなポンコツなくてもいいかなと

 

 

963:名無しの転生者

 

あのさぁ……

 

 

964:G級ライダー

 

ソニドリ、後で砂風呂の刑三時間ですよ

 

 

965:オール・フォー・オール

 

まあ、覚悟の上でしたが。でも会長、あれ砂風呂って言うよりはシンプルに生き埋めですよね?

深さ10mの穴にぶち込まれて上から砂かけられるのは私じゃなかったら死んでますよ

 

 

966:G級ライダー

 

貴方だからそうしているのです。小突いた程度じゃ聞きやしないでしょう

 

 

967:実力派センセイ

 

相変わらず平然とバイオレンスなことやってるよねライダーちゃん……

AFAちゃんもお仕置きは想定に入れた上で情報開示したり行動したりしてるし

 

 

968:名無しの転生者

 

まあでもこれは10割報連相しないし多少小突かれた程度じゃ全く反省しないAFAネキに問題あるし……

 

 

969:名無しの転生者

 

こいつぜってえまだ明かしてない情報山ほどあるぞ? 未だ所在不明らしい先代アリウス生徒会長の行方とかぜってえ掴んでるしあまつさえ連絡取り合ってるぞこいつ*3

 

 

970:実力派センセイ

 

あはは、まっさかぁ。流石にそんな重要事項黙ってないよね?

……ね?

 

 

971:名無しの転生者

 

先生も微妙に信用しきれてなくて草

 

 

972:名無しの転生者

 

だってAFAネキだぞ? 信頼(仕切れない)と安心(できるわけない)のクソ緑だもん

 

 

973:オール・フォー・オール

 

こやつめ ははは

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――――さて」

 

薄暗い一室の中、レイが厳かにホルスターから抜いた銃を目の前の人物に突き付ける。気弱な普段と違いその目は据わっており、ともすれば即座に撃ちかねない危うさを秘めていた。

目の前の人物はカジュアルな私服を着用し、グレーの髪をした頭にはネズミの様な大きな耳がついている。山海経高級中学校・練丹術研究会部長、薬師サヤ。

掲示板で警戒されていたトラブルメーカーである彼女だが、現在は椅子に縛り付けられ、据わった目のレイに銃口を向けられ怯えた表情をレイに向けていた。

その脇ではアオが椅子に座り、我関せずとそこらにある鍋やビーカーで作ったインスタントラーメンを啜っている。

 

「何か申し開きはありますか、サヤ部長」

 

「とりあえずボク様の拘束を解いてほしいんだが!? 縛られていては解毒剤も作れないのだ! このまま縛られていても状況は好転しないと思うのだ!」

 

「……遺言がそれということになりますが?」

 

「話聞いてたのだ!? というかなんで部長のボク様すら知らない隠し部屋をお前たちが知ってるのだ!?」

 

絶叫するサヤ。そう、この場所は練丹術研究会の部室。その片隅に何故かあった、サヤ自身も知らない隠し部屋の中である。

隠し部屋があった事(・・・・・・・・・)はともかく、何故部外者がそれを知っているのか。もっともな疑問ではある。

しかもこの部屋を見つけたのはアオ。数度棚をノックした後、どういう経緯なのかは知らないがよどみなく隠し部屋のスイッチを見つけ出し、サヤを監禁したのだ。

アオはサヤを見つめながらラーメンを食べ終えると、表情を変えぬままに口を開く。

 

「隠し部屋探索は狩人のたしなみよ? あるのは知ってたから、後は何処にあるか、どこを弄るか、かしらね。

 練丹術研究会の先代部長の事を考えれば、どっかしらに隠し部屋があるだろうっていうのは明白よ。それを恐らくあなたは知らないだろうって事も含めてね」

 

「流石はシスターフッド、という事なのだ……?」

 

「ご想像にお任せするわ。まあ、この部屋は貴女を監禁するのにちょうどよかったから入っただけだけど……あなた、やったこと分かってる?

 他人に、しかも連邦生徒会の要人に無断で一服盛ったのだけど……割とそれ以前の問題よね? まあ、私はそこまで深刻には考えてないけれど、レイちゃんは別よ?

 大好きな先生に臨床試験もろくにしてない新薬投与とか、私がサクラコ様に同じことされたら腕1本じゃ済まさないわよ」

 

「う……それは……」

 

言い淀むサヤ。というのも、今回先生がアオとレイを伴い訪れた時、丁度肌荒れについての相談に梅花園教官、春原シュンが訪れていた。

そこで自身も四十路を過ぎて色々しんどくなってきたことを先生が漏らし、そこにサヤが丁度出来たばかりの新薬、子供のような肌艶を取り戻すことのできる『若返りの秘薬』を差し出したのだ。

シュンはそれを快諾して服用し……結果、案の定想定外の副作用により当人曰く9歳ほどの少女の姿に若返ってしまう。それだけならまだ良かったのだが、あまりの事態に気が動転していたのか、先生もまた不用心にもサヤの差し出した『茶』を一口。

 

ここで思い出してほしいのだが、薬師サヤという少女は天才的な頭脳と卓越した薬剤師としての腕前、旺盛な探求心を持つ、いわゆるマッドな類の天才である。

その探求心とキヴォトス的民度が悪い方向に噛み合ったのか、この少女、新薬を無断で他人に服用させる事がしばしばある。掲示板でもそれを警戒するようにと言われていたのだが……

スタイル抜群の美女が可愛らしい少女に若返る、という事態に気が動転していた先生が口にしてしまった茶にも、当然のように薬が盛られていた。

混ぜられた薬はシュンが飲んだものと同様の『若返りの秘薬』。それを呑んでしまった先生もまた薬の副作用で若返ってしまい、シュンの倍以上、実に26歳も若返り、16歳、高校生時代の肉体へと戻る事となる。

その後は勝手に薬を盛ったことに『次は気を付けようね』と窘められる程度で済んだが、解毒剤の調合待ちの間外を見て来たい、と先生とシュンが外出。その背中を見送った後、あれよあれよという間にサヤは拘束され、隠し部屋に監禁されて尋問を受ける事となったのだ。

サヤがちらりとレイの方を見ると、先程同様の完全に据わった目で銃口をサヤのこめかみに押し付けてきた。完全に激怒している。

 

「大好きかどうかはさておきまして……先生は私にとって尊敬すべき先達で、訳も分からず連邦生徒会にスカウトされた私を幹部として迎え入れていただいた大恩人です。

 そんな人に臨床試験も済ませていない薬を飲ませるなんて、何を考えているんですか? 先生はヘイローの加護のない外の世界の人間。高校生程度で止まってくれたからまだ良かったですが……」

 

「わ、分かった! とんでもないことをしてしまったという自覚はあるのだ! 解毒剤も即座に作る! だから解放してほしいのだ!

 何をするにしてもまず解放してもらわないと話にもならな『ダンッ』あだあっ!? 撃った!? ちゃんと反省して解毒剤を作るって言ってるのに撃ちやがったのだ!?」

 

「は?*4 事前に解毒剤も作らずに先生に薬を飲ませたんですか? やっぱりもう少し痛い目を見せないといけないでしょうか」

 

温度が数度下がったと錯覚するほどの冷たい声音。そこから決死の命乞いによりどうにか監視の元解毒剤の調合を始めるのだが、それが認められるまでにサヤは数度撃たれたのだという。

なお、アオはその様子を肴に暢気に食後の紅茶としゃれこんでいた。*5

 

 

 

「先生! 見てください! ミカンのタンフールーですよ!」

 

「タンフールー……果物を飴でコーティングしたお菓子*6だったかな。サンザシを使う事が多いんだったかな?

 あ、そうそうシュエリン(・・・・・)、今は『先生』はナシ。ちゃんと『羊子』って呼んで欲しいな」

 

「あっ、すいません羊子さん……でも、ミカンのタンフールーなんて初めて見ました。串に刺さったミカンが金色にキラキラ輝いて……見てるだけでワクワクしちゃいます!」

 

サヤが針の筵に座らされながら*7解毒剤を調合している頃、若返った先生とシュンは山海経を散策していた。現在はシュンの所属する梅花園とも付き合いのある商人連合、玄武商会の縄張りを巡り、美食に舌鼓を打っている。

唐突に若返った2人は、解毒剤が調合できるまでの間、若返った姿で大いに楽しむ事にしており、かたや連邦生徒会の要人、かたやわんぱくな子供達を毎日相手にする梅花園の教官という肩書をひと時脇に置き、肩の力を抜いて楽しむべきだろう、というのが先生の言。

先生自身もシュン同様に肉体年齢に引っ張られている所はあるにはあるが、今回の散策の主目的はシュンにひと時でも気を抜いて楽しく過ごしてほしい、という親心からくるものであった。*8

シュンは生徒でありながら子供を預かり教え導く梅花園の教官であり、妹であるココナもまた教官として梅花園に所属しているため、中々気を抜けるタイミングというものがない。

また山海経でも有名人であるが故にどこへ行っても『梅花園の教官』として見られることも多く、外に出たとしても気が休まることもあまりない。

ならば、若返って誰とも分からなくなった現状ぐらいは子供らしく遊んで気を抜くべきである、というのが先生の考えであった。

 

「うんうん、シュエリンも楽しそうで何より。じゃああれも買っちゃおうか。まだお腹大丈夫そう?」

 

「いいんですか!? わーい!」

 

肉体年齢に引っ張られているのか子供のように無邪気に喜ぶシュン、それを見て暖かく微笑む先生。この世界で上の役職に就くという事は即ち罰ゲームである、とは掲示板の面々の言葉だったろうか?

実際、この世界では生徒、即ち子供が社会を引っ張る役割であり、『そう言うものである』と分かってはいても先生から見てこの世界は歪んでいると思っている。

だからこそ積極的に原作の流れに介入してヒナが十分に休める様にしたり、色々派手にやることも多いのでよく怒られはするが、連邦生徒会の業務自体も以前に比べれば倍以上は楽になっているはずだ。

今目の前で喜んでいるシュンですら、教官としての業務が多忙であるため生徒としての諸々がおろそかになったりもしているらしい。そんなことはあってはならない。

とはいえ、できる限りをやっているとはいえ先生としてできる事にも限界はある為、十全に出来ているとはいいがたいが……せめて、このひと時シュンが懸念ごとを忘れ楽しめるよう、先生は願う。それが、自分がこの世界へと転生させられた理由だと思っているから。

 

 

 

「で、できたのだ! 解毒薬!」

 

同時刻、練丹術研究会部室。憔悴した顔のサヤが掲げるフラスコの中には、ゲーミング発光する奇妙な液体が満たされていた。

シュンと先生が服用した若返り薬、その効果を解除する解毒薬である。あのあとサヤはレイ(とレイの使役するネコ達)の監視の元、死力を尽くして解毒薬を調合した。

かつてこれほどの鬼気迫る勢いで薬を調合したことはなく、また身の危険を感じた事もない。そんな喉元に刃を当てられているような状況で作り出した解毒薬には、掛け値抜きで今のサヤが出せる全身全霊が籠っていると言って差し支えはないだろう。

一瞬でも気を抜こうとするとレイが背後で『ヴァルキューレ公安局の尾刃カンナさんとか元七囚人の狐坂ワカモさん、この事を知ったらどう思うでしょうね?』などと呟いていた事に対して思う事がないではなかったが、公安部の『狂犬』、そして七囚人が七囚人と呼ばれる所以たる『災厄の狐』のことはいくらサヤでも聞き及んでいる。

かつてのヴァルキューレで起こった一大汚職事件の際先生がその剛腕を振るったことも、『災厄の狐』がシャーレの部員となり先生にとても懐いているというのも有名な話だ。そんな2人に『先生に無断でどんな副作用が出るかもわからない薬を盛りました』などと知れたら、考えるだけで背筋が冷える。

 

「その解毒薬を服用することにより先生に何か不調があれば……分かりますね?*9 カンナさんはまだ話が通じるかもですが、ワカモさんは本当に先生に何かあったと知れば一切の容赦をしませんよ?」*10

 

「なんぼボク様でも研究者生命どころか物理的に命に危険が及びかねない環境でバカをやったりはしないのだ! お前はボク様を何だと思っているのだ!?」

 

「キヴォトス人じゃない外の人間にキヴォトス人が飲むこと前提の薬を盛った外道ですかね。そもそも無断で薬を盛るのが常習って時点で論外だと思いますが」

 

出会った当初に見せた気弱な小動物のような印象からは一転、一切の躊躇なく急所を言葉のナイフで抉って来るレイ。

言いたいことは山ほどあるが、言っていること自体が正論なのは間違いないし、何よりレイがちょっとスマホでコールすれば殺戮モードの入った『災厄の狐』が襲い掛かってくることも間違いない。

サヤは自分の普段の言行を少し後悔し始めたが、身から出た錆なので諦めてほしい。そんな2人のコント*11を眺めていたアオであったが、2人の様子を見てスマホを弄ると、重い腰を上げてサヤとレイの間に入る。

 

「薬が出来たなら私が持っていくわよ。レイもそろそろ落ち着いて。どう考えても身から出た錆にせよ、流石にこれ以上は絞っても泣き言しか出ないわ。

 やらかした馬鹿を泣くまで殴るのは当然にせよ、死体蹴りは流石にマナー違反よ?*12

 

「こっちはこっちで歯に衣着せない物言いなのだ……うぅ、今容器に移すからちょっと待つのだ! ……というか、2人が今どこにいるか分かってるのだ?」

 

「さっきスマホで薬が出来たって伝えたんだけど、玄武商会でご飯食べてるらしいわよ。今から向かうけど……さて、このまますんなり終わるかしらね」

 

サヤは出来上がった解毒薬を手早く容器に詰めるとアオに手渡したが、アオの含みのある物言いに眉根を寄せる。

こちらとしては出来る限りはやった以上、これ以上は何か不測の事態でもない限りすんなり終わると思うのだが……

そう問えば、アオは肩をすくめてため息を吐いた。

 

「いやね、あの薬、肉体年齢を若返らせる物みたいだけど……シュンさんの様子を見る限り精神年齢も引っ張られてるみたいじゃない?

 普段の先生は落ち着いてて物分かりもいいけれど、JK相当の肉体年齢に精神引っ張られてそうな先生が、この『一時でも重責から逃れられてそうなひと時』をすんなり終わらせるとは思えなくて。

 下手すると荒事になりそうだけど……まあ、その責任は貴女に負ってもらうって事で勘弁して頂戴ね」

 

アオの最後の一言に、サヤが声なき絶叫を上げた事は、言うまでもない。

 

 

 

「―――デートの最中失礼するわよ、せん……ゴホン、羊子さん。あ、注文いいかしら? 魯肉飯、大盛りで」

 

少し後。玄武商会で本格中華に舌鼓を打っていた先生とシュンであったが、不意に第3者が同席してくる。アオだ。その服装は山海経の制服を纏い、一見するとシスターとは分からないように変装していた。

 

「解毒薬、完成したわよ。私としてはさっさと飲んで欲しいんだけど……不満そうね?」

 

注文を待つ間、アオが先生とシュンを見れば、シュンはあからさまに嫌そうに顔を顰め、先生もまた望んではいなさそうに苦笑している。

シュンは先生の袖を握り、先生はそんなシュンを宥めるように微笑みかけ、改めてアオを見遣る。

 

「せっかく来てもらって申し訳ないんだけど……せめて今日一日ぐらいは待って欲しいなって。……駄目かな?」

 

「嫌よ。いい大人が我儘言わないでちょうだい。面倒臭い」

 

一片の慈悲もない即答であった。

 

「そもそも私にそっちの事情を鑑みなきゃならない義理はないし……言っちゃえばどうでもいいの。

 それに、私は神に仕える聖職者よ? 役職のある人間には義務がある。羊子さんもシュn……シュエリンも、目の前で義務を放棄している人間には聖職者的に苦言を呈するべきよね」

 

魯肉飯をもりもりと平らげながら言うアオ。その言動に説得力があるかどうかはさておき、アオの言葉はもっともである。

シュンも先生も、肉体年齢に精神年齢が引っ張られているのはそうだが、それはそれとして自分達の立場に対する義務は理解はしている。

理解はしているが……それはそれとして、今は羽を伸ばす絶好の機会であることは確かだ。目の前のアオは聖職者でこそあれ、どちらかと言えば話の分かる類の人間でもある。

そして、先生はアオとの付き合いから、アオに『事情を鑑みる程度の義理』を発生させる言葉を導き出していた。

 

「アオちゃん、目をつむってくれるならここでの支払いは私が持つよ」

 

「……その程度では私の信仰は曲がらないわよ?」

 

「付いて来てくれてレイちゃんにその辺誤魔化してくれたら行った先での支払いも持つけど?」

 

「たった今主からお告げが来たわ。主は今から私に今日一日は休むようにと仰せよ。そして私はシャーレの部員だもの、羊子さん達を護衛する義務があるわよね?」

 

「それでいいんですか聖職者が!?」

 

先生の言葉二言で即座に主張を曲げるアオ。そのあまりの適当ぶりに思わず突っ込むシュンだったが、アオは顔の前でちっちっち、と指を振り、口を開く。

 

「信仰というものは今を生きる者達のためにあるもので、いるかどうかも分からない神のためのものじゃないの。*13

 それに主は寛大で慈悲深い御方よ。貴方達がひと時羽を伸ばす、その身辺警護の為に私がついていくのだもの、きっと主もお許し下さるわ。多分きっと恐らくメイビー」*14

 

「釈然としない……」

 

そんなわけで、先生とシュン、そして変装して山海経の生徒に偽装したアオは、その日一日山海経を回り、目一杯遊び、食べ、大いに羽を伸ばした。

その合間合間に、シュンは日頃の悩み、不満を、そのすべてを打ち明け、先生はそれに答え、アオは我関せずと美食を貪る。

レイを少々心配させ、サヤの胃袋に多大なる負担をかけた結果、3人はその日、思う様気晴らしを楽しんだのだという。

 

なお。

 

一部生徒に若返ったJK相当の先生の写真が出回り先生がアオを詰問するという一幕があったが、アオは頑として写真の出所を黙秘したのだという。

 

どっとはらい。

 

*1
一応解毒薬を作る用意があるだけ他のトラブルメーカー共よりはマシかと思われる

*2
朝霧スオウ。ハイランダー理事会直属の監理室所属の管理監督官。橘姉妹やレイとは所属が違う。元々ハイランダーの生徒ではないらしい

*3
何ならホムラがその先代生徒会長本人である

*4
半ギレ

*5
どうせ死ぬような事にはならないし身から出た錆なので放置している

*6
ざっくりいうとりんご飴に近いお菓子らしい

*7
サヤ「視線を横にずらすとそこに銃口が常にあるのだ……」

*8
ちょっとは自分も遊びたいという感情はある

*9
据わった目

*10
ワカモは先生大好きっ子なのである程度大人しくなっているだけで本質的には一切変わっていない

*11
なおサヤの命が物理的な意味でかかっているコント(アオ談)

*12
ちょっと飽きてきた

*13
嘘偽らざる本音

*14
なおアオの信仰心はほぼほぼサクラコに向けられているので基本的に無神論者である




そんなわけで35話でした。なんかサヤがひたすらひどい目にあっているような……まあ先生に脳を焼かれてるやつの目の前で先生に薬盛ったらそうもなりますが。
そういえば今回の話の流れでちょっと調べたんですが、勝手に薬盛るのは傷害罪になるらしいですね。



□解説

・にゃんこ
今回ずっとキレっぱなしだった気がする小動物。基本的に気弱な生き物だけど、キレると躊躇なく引き金を引く。
なお、橘姉妹はにゃんこを怒らせることだけはしません。意識的には。

・先生
若返るという割と得難い経験をした42歳。
シュンがいたので割と抑えが利いてたけど、そうでもないとどこに吹っ飛んでいくか分からなかったのでそこだけはサヤは運が良かった。
トリオン器官的にはこの頃が絶頂期だったろうけど、多分ボーダー所属したのは成人後だろうから若返ったこの状態が『天保印羊子』としての最強状態。
この後ちょいちょいソニドリ製若返り薬で若返ってお忍びでお出かけするようになった。

・アオ
終始ペースを崩さなかった無神論者。
なんとなれば先生もにゃんこもシュンもサヤも全員殴り倒して止めるつもりでいたので、先生が買収したのが一番被害が少なかった。
シスターフッド所属だけど神の存在を信じていない消極的無神論者なので、こいつがサクラコ様の前以外で神の名を口に出してる時は大体適当なことをぶっこいてる時。

・シュン
今回一番得をしたやつ。
梅花園の態勢に先生からシャーレとして苦言を呈されたりしたので今までよりはちょっと楽になった。
その上で先生に相談に乗ってもらったりたまに甘やかしてもらったりしている。
シャーレに当番で行くときは普段よりちょっとおめかししているとは妹の言。

・サヤ
今回一番ひどい目にあった奴。10割身から出た錆なので誰も可愛そうに思ってないけど。
今回の件のせいでにゃんこに頭が上がらなくなったというか、弱みを握られてしまったかわいそうなネズミ。自業自得だけど。
今回の話書くためにネバーランドを読んでたら『こいつ下手するとエンジニア部とか美食より悪質じゃねえ……?』と思ったりもしました。
なお連れ込まれた隠し部屋は先代部長が使ってた部屋です。
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