「遊びは終わりだ。全てよ、凍れアブソリュートゼロ」
そしてここにある空間は一部を除いて絶対零度-273℃に到達した。
「ー、ー、ー」
おっさんが声を発しようとするが既に凍り付き口が回らないので思うように言葉を出せていない。
「寒さで口が回らないみたいだな。何が起こったのか聞きたいのだろ?単純だ。ここは既に絶対零度の空間、生物は全て凍り付き少しの衝撃で崩れ落ちる。こんな風に」
俺は魔力の斬撃を無数にいる複製体に飛ばして一瞬で消し去る。
「シド、そろそろいいだろ」
「もちろん」
俺とシドはお互いの位置を入れ替えるように動く。そして俺はアウロラを手で引き寄せる。
「え、え、な、なに?」
急に引き寄せたことで戸惑っているようだ。
「俺にしっかりつかまっててくれ」
「わ、わかったわ。それより何をするつもりなの?」
「あの剣を抜いてから鎖を切って核を破壊する。そんなの面倒だから全部まとめて破壊しようってこと。だからそんな威力から君を守るために俺から離れないで欲しいんだ」
そしてシドはためていた魔力を開放しこの空間にシドの魔力が漂う。
「アイ・アム」
「ジ・オールレンジ」
「アトミック」
アブソリュートゼロの範囲を俺らの周囲1cmに限定する。範囲を狭めることでより長く保つことができるが、もし保つことがもしできなければもはや回避することは叶わず、俺らも巻き込まれるだろう。
だが、今回はアウロラがいるどのくらいかもはやわからないが長年閉じ込められている彼女を解放してあげたい。その思いが強くしてくれたのか分からないが、アトミックの光も次第に小さくなって、消えていった。
「耐えきったってことか」
アトミックを撃ったシド本人は、近くには見当たらない。聖域を破壊した影響でどこかに飛ばされたのか、それとも元の場所に戻ったのか。まぁあいつのことは今はどうでもいい。
「ようやく、君を解放してあげることができた。って言っても、解放したのは俺じゃないけど」
「そんなことないわ。あなたがあいつの相手をしてくれてたから、彼もあそこまで魔力を貯められたんだと思うわ」
「そう言ってもらえるとありがたいね。それより、これからどうする?何かおいしいものでも食べに行く?この辺でおいしいお店見つけてあるんだ。吹き飛ばされてないといいけど」
「そうね。そうしたいけど、難しいわ」
「あーなるほど。1000年ぶりのご飯は確かに胃に優しくないから、まずは胃に優しいものの方がいいか。なら何がいいかな」
胃に優しいものと言ったら、お粥やおじやか。てか、そもそもこの世界の主食はパンだから米がないや。どうしよ。
「そうじゃないの」
アウロラが悲しそうな顔をしながら否定してくる。
「あなたにはあえて言ってなかったけど、ここでの解放は肉体の解放ではなく魂の解放。つまり、私はもう消えるのよ」
「は?え、は、え、どういう」
「これが証拠よ」
アウロラは俺に触れようとするが触れることは叶わず透けていく。
「なんで、教えてくれなかったんだ?」
昔ここに来た時彼女は解放されると言っていたが、それを魂の解放とは言っていなかった。俺は、彼女自身が閉じ込められていると思っていた。
「本当は最後、聖域が消えたら一人で消える予定だったの」
「だからなんで!」
「そんなのあなたが私にとって大切な人だからに決まってるでしょ」
アウロラが悲しそうな声で答える
「あなたが初めて聖域に来た時は、今日みたいなことはなくてしばらく二人で過ごしたわよね。あの時が最低でも数百年一人で過ごしてきた私にとって、どれほど楽しかったことか。優しいあなたのことだから、話したらきっとどうにかしようと方法を考えてくれたと思うわ」
「当たり前だ!」
当たり前だろ。そんなの、そんなの。
「でも、数百年ここで過ごしてきた私にはわかる。そんな方法はない。私がいくらそう言ってもあなたは探すでしょ。私もそれに甘えて、次第にはここに一緒に残らないか、自分がそう提案しそうで怖かったの。そうすればまたあなたに迷惑をかけてしまう。だからそうならないように黙っていたの」
「・・・・」
考えろ、考えろ、時間操作でどうにかならないか?時間を戻して肉体があるときまで遡るか?駄目だ。仮にこの方法でいけるにしても遡る時間が長すぎて無理だ。他に方法は・・・・
「もう、時間みたい。最後に大切な記憶をありがとう」
ああ、もう無理みたいだ。
だからせめて、泣くな!これが彼女の最後なら笑顔で向き合え!今できる精一杯はそれしかない。
「こちらこそありがとう。君に会えたことは、俺の人生の中で特別だった。また君が生まれ変わったら、その時は再開しよう」
「生まれ変わる?それは素敵ね。生まれ変わったら、今度は私から会いに行くわ」
「それまで、生きないとだな」
お互い笑いあってる中ついに時間が来てしまう。アウロラの体がどんどん薄くなっていく。
「最後に一つだけもし本当の私を見つけたら・・・・」
「ああ、わかった。それが君の望みなら叶えるよ」
それを聞いたアウロラは再度笑顔になり、風と共に消えていった。
♢♢♢♢
アウロラが消え、しばらくはそこで放心状態になっていたが、これでも組織のトップ。彼女らも聖域に入ったことで、得たかったものは得たようだからな。俺も受け入れ前に進まなきゃな。
今にして思えば、魔人ディアボロスがアウロラである以上、彼女は記憶だけの存在だと気づけたはずなのに、気づかなかった。いや、気づいてはいた。ただ、それを否定するために、その事実に目を背けていただけなのだから。ただの記憶として退屈な時を長いこと過ごし、その終わりが死なんてあまりにも悲しすぎる。
まあ、いろいろあったが街に戻ってきた。やっぱり町は、アトミックの影響で水に浸かった。そのため、船で移動しなきゃいけない町になっていた。
「元の状態になるにはしばらく時間がかかりそうだな」
ひとまずは宿に戻ってアレクシアの帰りを待つことにした。そして、ようやくお昼頃に慌ただしく戻ってきた。
「どうした?そんなに慌てて」
「ひとまず無事でよかったわ。あの光に飲まれてなくて安心したわ」
なるほど。俺だけ先に帰ったからアトミックの餌食になってないか心配したんだろ。
「ああ、この通り無事だよ。それよりあの光は何なんだ?光ったと思ったら町が吹き飛ぶし」
「あれは、シャドウが放ったものよ」
「シャドウ?あの犯罪者か?」
「・・・・あなたにもこの話をしておくわ。シャドウ、あの男が王都で犯罪者とされているのは、シャドウの組織と対立している組織の仕業だと思うわ。そして、私は今回その組織の一部を見た」
「それで?まさかその組織に立ち向かうとかいうんじゃないよな?」
おいおい、アレクシアが聖域に飛び込んだ時からいやな予感がしてたが、その予感が的中するとは。
「その通りよ。世界の真実を知らないで過ごしていくなんてもう嫌なの。だからそのための組織も作ることにしたの。まだ、メンバーは私とローズ会長といけ好かないけどナツメ・カフカしかいないけど、ここから拠点の確保とか始めて大きくしていくつもりよ。でも、今の私たちだけじゃ戦力がまだ足りない。だからトキも入ってくれないかしら。もちろん危険だから断ってくれてもいいわ」
ローズ会長はまぁわかる。生徒会長であり、王女で正義感があるから、人の役に立ちたいと思う節があるだろう。だがベータが協力するだと?どういうことだ?まぁ大方アレクシアに巻き込まれた、そう言う解釈でいいか。ついでに王女権限で得られる情報を得よう、そんな魂胆だろ。だがベータがいると安心だ。アレクシアとローズ会長だけでは何かあった時、守れない可能性が高い。ベータが彼女らの行動を報告してくれれば、万が一の事態が来ても対処できる可能性が高い。
「かなり考えてるようだけど、すぐに答えは出さなくていいわ。人生を左右するかもしれない決断だもの」
「アレクシアは引くつもりはないんだな?分かってるのか?あの光、町で打てば町が消し飛んだんだぞ。そんな奴が相手にしてる組織をただの学生が介入したところで死ぬのは目に見えている。引き返すなら今だぞ」
「分かってる。シャドウたちが戦っている敵を相手にするには、まだ実力が足りないことも、今回で痛いほど分かったわ。私が知っていたのは表の世界の強さ。裏の世界の強さはもっと凄まじかった。それでも、何も知らないまま生きていくのは嫌なの」
そんなにも知らないことは嫌なのか。その方が平和だというのに。これ以上何を言っても聞かないだろ。
「分かった。一応は俺も協力しよう。ただし、俺は忙しいからそんなにいられないぞ」
それを聞くと、アレクシアは顔が明らかに明るくなった。
「流石私の婚約者ね!そう応えてくれると信じてたわ!」
「いつ、婚約者になったんだよ」
「うっさいわね。細かいこと気にしたら負けよ」
恋人から婚約者に昇格って細かくない気がするが。まぁいいか。
ひとまず、この話はここでまとまり、最後に二人で街を見てから、王都に戻った。
七陰列伝や番外編みたいな話を入れるか?
-
もちろん、入れる
-
いらん