時を止める実力者になりたくて   作:Mr.不器用

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誤字報告とコメントありがとうございます。


時間停止って案外使いどころ少ないな

 シャドウガーデンを設立してから3年ほどが過ぎた。この3年間はいろいろなことがあった。まず、ディアボロス教団である。これは俺とシドが一晩で考えあげた設定だから存在しない組織のはずなんだが、アルファが何やら資料を持ってきて、「あなたたちの言うことは本当だった」なんて言うもんだから、なかなかに演技力高いなー程度で思っていたのだが、いよいよ敵が、ディアボロス教団を名乗り始めてから、おや?と思い始めて本格的に調べ上げたらまさかの実在しましたよと。しかもディアボロス教団の組織があるだけでなく、その組織の目的や悪魔憑きまですべて俺とシドで考えた設定と同じなんだ。ほんと、どんな確率なんだか。

 

 ちなみにシドにはこのことは言ってない。本当にすごい確率だが、あいつが言ってきたでまかせは、ほとんど当たっているのだ。あいつに本当のことを教えたら逆にボロを出しそうだからあえてこのままにしておいている。

 

 もし、あいつの言ってきたことがでまかせなんてバレたら今まで築き上げてきた彼女たちの俺への信頼も地に落ちてしまう。だから今俺は、シドがぼろを出さないように全力でフォローしている。まぁ、とは言ってもそこまでフォローは大変ではない。なぜなら彼女たちがシドの言葉を、都合よく解釈してくれるからである。

 

 ちなみに彼女たちというのはアルファがつれてきた悪魔憑きのことである。今は7人いて順番にアルファ、ベータ、ガンマ、デルタ、イプシロン、ゼータ、イータ、である。なんともツッコミたくなる名前だが、当の本人たちが喜んでいるので特には何も言わないでおく。ちなみに悪魔憑きはベータまでは俺が治していたのだが、ガンマからシドもやりたいと言い出したのでじゃんけんで決めることになった。その結果、

 

 アルファ、ベータ、イプシロン、ゼータ←俺

 

 ガンマ、デルタ、イータ←シド

 

 となっている。そして、彼女たちの面倒は誰が見ているのかということだが、もちろん俺だ。拠点の設置から、家事全般、戦闘訓練、メンタルケアまでほとんど俺がこなしている。ちなみにシドは来たいときに来ては戦い方を教えて満足したら帰る、その繰り返しだ。今でこそは、彼女たちだけで生活していても問題ないが昔は大変だった。まずは掃除、洗濯、料理を徹底的に教え込んだ。でも彼女たちは呑み込みが早く案外簡単にマスターしてくれた。メンタルケアは特にベータだ。覚悟を決めたとはいえ、まだ子供。人を殺すことに恐怖を持っていた。戦いでは一瞬のためらいが死につながるから何とか恐怖心をなくしてあげられるように頑張った。彼女はどうやら童話やおとぎ話が好きなようでいろいろな話を聞かせてあげた。そしたら恐怖心も次第に薄まっていき今では頼れる仲間の一人だ。

 

 そして一番苦労しているのが戦闘面だ。ガンマとデルタ。この二人が問題だった。この問題に関しては俺の手に負えなかったので、シドに丸投げした。普段俺に丸投げしてるんだからこれくらいはしっかりやれとあいつに言ってやった。シドは何度も逃げ出そうとしたが、そのたびに時を止めて引き戻した。俺は他の5人に教えながらたまにシドの方を見ていたのだが、この問題に一人で取り組ませるのも少し可哀想になってきたので途中からは俺も特訓に付き合った。

 

 その結果、最初のころよりは多少マシにはなった。ガンマはたまにドジではあるものの少し動けるようになったし、デルタも少しは考えるようにはなった。

 

 そうやって日々苦労して生活を送っている俺だが、得たものもある。彼女たちからの信頼だ。頑張って面倒を見たおかげか今ではかなりなつかれていると思う。

 

♢♢♢♢

 

 今日も平和な一日を過ごそうと思ったのだが、屋敷の中が少し騒がしかった。何があったのかと思い聞き耳を立ててみるとカゲノー男爵家の長女クレアが誘拐されたらしい。それで捜索部隊を出すのにこっちにも協力してくれとの通達があったらしい。

 

 それにしてもクレアが誘拐されるとは。あいつを誘拐しても暴れられて面倒なだけだと思うのだが。そんなことを考えていると部屋の前に気配を感じる。

 

「入ってくるがいい」

 

 クロノスモードに切り替えて対応する。

 

「さすがね。気配だけで気づくなんて」

 

 メイド服を着たアルファが入ってくる。

 

「お前の気配ならもうわかる」

 

「知っていると思うけどシャドウの姉であるクレアが誘拐されたわ。犯人は」

 

「ディアボロス教団だろ。誘拐された場所は?」

 

「今、全力をあげて捜査をしているわ」

 

「地図を持ってこい」

 

 アルファは地図を持ってきて机に広げる。

 

「クレアはここに捕らえられている」

 

 シドからクレアが悪魔憑きみたいな症状を起こしたと言われた時から、なんとなくこうなることが起きるかもと予測して誘拐にぴったりな場所を確認しておいた。そしてこの場所には最近ディアボロス教団らしきものが出入りしていたからほぼほぼ間違いないだろう。

 

「さすがねクロノス。この膨大な資料から一瞬で見抜くなんて。私も早くあなたたちに追いつけるようになりたいわ」

 

「精進するといいい。シャドウのもとには」

 

「ベータが行っているわ」

 

「そうか」

 

 それにしてもシドが適当な場所言ってたらどうしよ。そしたら、あらかじめ痕跡でも残しておいてここの拠点は俺があらかじめつぶしておいたってことにするか。

 

「作戦は今夜決行する。準備をしておけ」

 

「わかったわ」

 

 クロノスからトキに戻り、別れ際に一言言っておく。

 

「アルファ、メイド服似合ってるよ」

 

「ッ////」

 

 顔を赤くしながらアルファが去っていったことを俺は知る由もなかった。

 

♢♢♢♢

 

 今夜は遠足がてら絶賛ディアボロス教団のアジトに来ています。

 

「アルファ、敵の数は?」

 

「およそ50。リーダーは教団の幹部クラスよ」

 

「どうしたものか」

 

「どうされたのですかクロノス様?」

 

 俺が悩んでいる理由をガンマが聞いてくる。

 

「一瞬で片を付けるか、どうかと悩んでいたのだ」

 

 あれから3年がたち今では俺は5分は時を止めていられる。そこで問題なのが使いどころである。50なんて時を止めれば一瞬で片が付く。でもそうすると彼女たちの経験を奪っていくことになる。かといって中途半端に倒してもダサいだけなので倒すにしたら全部倒したい。そう考えると今日も時間停止を使うことはなさそうだ。

 

「そんな、クロノス様のお手を煩わせるほどの相手ではありません。ここは私たちにお任せください」

 

 ベータがそう言ってきてくれるが正直ありがたい。久しぶりに彼女たちの実力を見ながら、後方腕組で行くか。

 

「裏ボス、ボスはどこに行ったのです?」

 

「あいつは独自のルートで行った」

 

 ぶっちゃけあいつのことは知らん。なんか、「先に行ってくる」なんて言ってさっそうと行ったのである。そしておそらく迷っている。組織のボスが道に迷うなと言いたいところではあるが、言うだけ無駄だ。だが、彼女たちにシャドウは道に迷っているなんてとても言えないので独自のルートで行っていることにしてある。そう言うとたちまち彼女たちはそろって「さすがはシャドウ様」と尊敬のまなざしを籠めていっているのでなんか悲しくなってくる。

 

 おしゃべりをしている時間も終わりでアルファが指示を出す。

 

「デルタは先陣を切って敵を奇襲。イプシロン、ゼータ、イータはデルタが残した敵を殲滅。ベータとガンマは私に着いてきて。クロノスが見ているのだもの失態は許されないわよ」

 

 それぞれ返事をして敵の拠点に乗り込んでいく。

 

 いま彼女たちの戦いぶりを実際に見てみるとなかなかにすごい。大人相手であるにもかかわらず苦戦することなく一瞬で殺している。模擬戦をすることはあっても実際に戦う姿はアルファくらいしか見てこなかったのだ。だからここまで成長していることは喜ばしいが、同時にとんでもないものを育ててしまったなと思うところもある。そんなこんなで敵を蹂躙していったわけだが、ボスらしきものがとうとう出てきた。

 

 早速、デルタが殺しにかかるがアルファからのストップが入る。

 

「下がりなさい、デルタ」

 

 デルタと入れ替わりでアルファが先頭に立つ。

 

「何者だ、何が目的だ!」

 

「我らはシャドウガーデン」

 

「シャドウガーデンだと?」

 

「目的はディアボロス教団の殲滅」

 

「我々はすべてを知っている」

 

「魔人ディアボロス」

 

「ディアボロスの呪い」

 

「英雄の子孫」

 

「そして悪魔憑きの真実。アルファ、変われこいつの相手は我がしよう」

 

「いえ、あなたの手を煩わせるほどではないわ」

 

「お前たちの実力が我の想像以上であったからな、それ故に今一度頂点の戦いを見せてやろう」

 

 とか言っても実は俺が戦いたいだけである。せっかくみんなが見てるんだ、一つくらいかっこつけたいものである。

 

「わかったわ。この機会にあなたの力学ばせてもらうわ」

 

 アルファだけでなくほかの子たちも期待の目で見てくる。ベータなんかはメモ帳を出してメモを取る準備もしている。これはかっこいいところを見せなくては。

 

「図に乗るなよ!世界の広さというものをお前たちは知らない。この世には自分より強い奴がごまんといることを教えてやる!」

 

 そういって目の前にいる彼は何やら薬みたいなものを取り出して飲む。そうすると明らかにさっきまでよりも魔力量が上がっている。

 

「そうか。それがお前たちの力というわけか。なら、最強の力の一端を見せてやろう。<Time Alter>」

 

 そして時は静止する。このまま首をはねてもいいのだが、それだと面白くないので利き腕じゃないほうを切り落とす。

 

「そして時は動き出す」

 

 目の前の敵は、いきなり生じた痛みに叫びながらこちらを睨んでくる。

 

「き、貴様今何をした!」

 

「貴様が知る必要はない。死ね」

 

 とどめを刺そうとしたのだが、まさかの剣を地面に突き立てられて逃げられしまった。なんともダサい感じになってしまった。

 

「今から追うわ」

 

「その必要はない。この先にはシャドウがいる。あいつにも楽しませてやらないとな」

 

 シャドウの取り分を残したっていえば聞こえがいいからそういうことにしておく。彼女たちもさすがはシャドウ様とクロノス様って言ってくれてるし、何とか好感度は下げずに済んだようだ。それにしてもシドこの先にいてくれよ。

 

「あいつのことはシャドウに任せておいてクレアを救出に行くぞ」

 

 その後クレアは簡単に見つけることができた。簡単な治療を施してカゲノー男爵家まで運んでおいた。もし、クレアを見つけたのがシドならそのまま放置していっただろうな。

 

 あれ以降俺は、アルファたちと後処理をしていた。あの教団のボスはシドにやられたらしい。もし生き延びていたら、俺が追いかけてでも始末したがその必要はないらしい。あの男が持っていたペンダントを調べてみるとミリアという娘がいたらしく、娘が悪魔憑きになったことで彼はディアボロス教団に入ったとか。せめてもの情けに今後ミリアに会う機会があるとしたら全力で助けること心の中で誓った。

 

 

七陰列伝や番外編みたいな話を入れるか?

  • もちろん、入れる
  • いらん
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