今、俺は絶賛シド、いや、ここではシャドウといったほうがいいか。シャドウと向かいあって剣を構えている。こうなっているのは別に喧嘩したからという理由ではない。事の発端は数時間前までさかのぼる。
♢♢♢♢
今日はアルファたちに呼ばれたので今歩いて向かっている。ちなみに何の用かはわからない。
しばらく歩くとアルファたち七陰の住んでいる家に到着した。彼女たちの住んでいる家は、この世界に一般的にあるような家ではなく日本にあるような一軒家の見た目をしている。なんでこうなっているのかと言ったら、シドが陰の英知なんて言って教えたからだ。ただ、あいつの言うことなんてすごくふわっとしたものであるため、俺がより具体的に教えてあげたりした。さすがの俺でも専門的な知識はないのでちょっと具体的になった程度であったが、それでもこの完成度なのだからシンプルに彼女たちがすごいということを改めて実感させられた。それに、もしかしたら俺のフォローがなくともいけたのかもしれない。
「アルファきたぞ」
別に今日は緊急を要するようなことではないらしいのでいつも道理緩い感じでいく。
「待ってたわ。さ、入って」
早速アルファが出迎えてくれて部屋に案内される。
「それで、何かあったのか?」
「今日あなたに来てもらったのはこれからについてのことよ」
「これから?」
「ディアボロス教団は世界規模の組織だった。私たちもそれに伴い組織の拡張をする必要がある。それで私たちは、あなたたちの元を離れて旅立とうと思うの」
なるほどな。ついにこの時がきたか。彼女たちのことだからいつしか世界に旅立って組織を強化するなんて言う日が来ると思っていたが、ついに来たのか。
「そうだな。今、俺とシャドウはまだ表立って動くことができない。動くにしても2年後王都に行ってからになるだろう。それでは少し遅すぎると思っていたところだ。お前らが動いてくれるならばありがたい」
今言った通り、俺自身は今動くことができない。今、俺が家を数日あけたりでもしたら大騒ぎである。かといって家を抜け出せるような口実も思いつかない。だから本格的に動き出すとしたら、2年後、魔剣士学校に通い始めてからだと思っていたが、彼女たちが動いてくれるならありがたい。
「いえ、私たちは少しでもあなたたちの役に立ちたいだけよ」
「クロノス様たちの元を離れるのは少し寂しいですが、ご期待にこたえられるように頑張ります」
「それにしても寂しくなるな」
ベータの言葉に答えるようにボソッと言ったのだが、どうやらみんなには聞こえていたみたいだ。
「裏ボス―デルタも寂しいのです」
デルタがそう言いながら抱き着いてくる。それを見たベータとイプシロンが何か言っているようだったけど聞こえなかった。
「デルタ、クロノス様が困っているでしょ。離しなさい」
「いやなのです。ガンマもデルタがうらやましいならデルタみたいにすればいいのです」
「それだとクロノス様の迷惑になるでしょ!」
「俺は別にかまわないよガンマ。来たいならおいで」
ガンマにそう言うと「クロノス様が、そうおっしゃるのなら」と言って寄ってくる。でもなぜだか知らないが、ガンマがこっちに来たと思ったら何かに気づいたようでデルタとそろって離れてしまったのだ。さすがにこれにはショックを受けた。
ちなみにこの時アルファが、トキの後ろで2人を睨んでいたのが原因なのだがトキがそれを知ることはなかった。
「寂しがらなくてもいいわよ。それに七陰の中でローテーションしてシャドウとあなたに定期的に報告に来るから」
「そうか。ならそんなに寂しくはならないな。そうだ、旅立つにつれて俺から一つ守ってもらいたいことだある」
「何かしら?」
「自分たちで対処できない事態に遭遇したらすぐに俺を呼べ。変に気を使う必要はない。定期報告の時でもいいから、少しでも難しいと感じたら報告しろ」
彼女たちは強くなった。これは間違いない。でも、世界にはまだまだ強いやつはいるだろう。当然彼女たちでは対処できないことも出てくるはずだ。もしその時に俺やシドがいなくて七陰のメンバーが死んだなんていうことは起こらないで欲しい。シドは彼女たちのことはただの役者としか思ってないのだろうが、さすがに悲しむはずだ。悲しむよな?だからこそしっかりとほうれん草をしてもらいたい。
「わかったわ、約束する。私たちだけで対処できないと思ったら必ず報告するわ」
アルファが代表して答えてくれて、他の子たちもうなずいている。
「よし、今日の話はこれで終わり?」
「いえ、もう一つあって、私たちが旅立つ前に今一度目指す場所を見ておきたいの」
「というと?」
「シャドウとクロノスあなたたちの力を見てみたいの」
「なるほど、つまり俺とシャドウが戦えばいいのか?」
「個別に見せてもらえばよかったのだけど、あなたとシャドウどっちが強いか確かに見てみたいわ」
「じゃあ、シャドウに聞いてみなきゃな」
「ゼータ、シャドウにきいてきてもらえる?」
「わかった。じゃあちょっと行ってくるね」
ゼータはそういって早速シドのもとに向かっていった。30分もすると戻ってきて二つ返事で了承されたらしい。
♢♢♢♢
その日の夜。人気のない山に来て冒頭のシーンに戻る。
「開始の合図はこの金貨が落ちてからでいいかしら」
「それで構わない」
「同じく」
アルファが金貨を投げる。
そして金貨が地面に落ちると同時に俺とシャドウは動き出す。相手がシャドウである以上出し惜しみはできない。俺は始まると同時に発動させる。
「ザ・ワールド!止まれい、時よ!」
時は停止する。
「シャドウ、魔力なしで戦ったとき俺はお前には勝てないだろう。魔力ありの場合、お前はこれを攻略しない限り勝ち目はない」
シャドウの後ろに回りシャドウを気絶させようとスライムソードを首に充てる。
「これで終わりだ」
だが、俺の剣がシャドウに届くことはなく、シャドウの剣に止められる。
「な、なんだと!!!シャドウ、まさか貴様我が止まった時の世界に入門してきたというのか」
「あれから僕も練習したんだ。動けるかは正直賭けだったけど、賭けに勝ったみたいだね」
俺の時間停止にはいくつかルールがある。まず、瞬時に発動することができない。熱膨張に達するまでの温度をあらかじめ確保しておく必要がある。そして、時間停止をしているときはかなり精密な魔力制御をする必要がある。だから、動揺などしてしまうと時間停止を維持できない。まさに今みたいな状況だ。
「限界だ。時は再び動き出す」
さすがにシャドウが我が時の門に入門してきたのには動揺せざる負えなかった。まだシャドウは動けると言ってもおそらく数秒だろう。あのまま時を止め続けることができたならば勝てただろう。時間停止は連続してできない。熱膨張を起こせる温度さえあれば何回でもできるのだが、それでも時間を置く必要がある。
「クロノス、次はこちらから行くぞ」
時間停止ができない以上ここからは単純な戦いになる。
早速向かってくるシャドウの剣を受け止める。やはりこいつの剣は重いうえに速い!味方ならこの上なく頼もしいが戦うならこいつ以上に厄介なやつは存在しないだろう。
魔力操作では断然こちらが上なのでスライムをうまい具合に操作し、手数を増やす。今のところは互角に戦っているがそれでも長引くと不利になるのはこちらになってしまうのである仕掛けをしておいた。
それからしばらく激しい攻防を繰り返していたが、ようやく仕掛けが発動する。
「そろそろだな。気づかないか?シャドウ」
そういうとシャドウはハッとした表情を浮かべたのでおそらく気づいたのだろう。
「なんだ?我が動きが鈍くなってきている?」
「シャドウよ、よそ見をする暇はないぞ」
がら空きのシャドウに蹴りを入れて地面にたたきつける。
「クロノス、何をした」
地面に叩き落されたシャドウは睨みながら言ってくる。
♢♢♢♢
「なんだか寒くないです?」
「さすが、野生のワンちゃん。今まで気づかなかったんだ」
「なんです、このメスネコ!」
「やめなさい2人とも」
デルタとゼータが喧嘩を始めようとするが、アルファがそれを止める。
「イータ、今の気温分かるかしら?」
「ん。今、大体マイナス30℃」
「おかしいですね?この時期こんなに寒くなるはずはないはずですが」
「おそらく、クロノスの力よ。シャドウはさっきよりも動きが鈍くなってきているけどクロノスは動きが鈍くなってないもの」
♢♢♢♢
「クロノス、貴様今気温を下げているな」
「ご名答。俺が魔力を介して温度を吸収し気温を下げた。たとえお前が動いて体温を上げようがそのたびに奪われる。だが、俺の温度は下がることはない」
俺は、今半径10キロにあたり気温を下げている。これも時間停止で得た恩恵の一つだ。今回は、かなり大暴れしているのでシャドウがどこにいても体温を奪えるように広範囲に設定した。その分温度を下げるのに時間がかかってしまったが。
「このままでは我の方が不利だな。ならば次で決める」
シャドウを中心に紫色の魔力が広がる。
「かつて核に挑んだ男がいた」
「男は体を鍛え、精神を鍛えた。だが、それでも核には届かなかった」
「核に勝つにはどうしたらいいか、自分が核になればいい」
「真の最強をその身に刻め」
まずい、今シャドウが繰り出そうとしているのは前に言ってたやばい奴だ。温度を下げる範囲を半径10キロからわずか5メートルまでに絞って急激に温度を低下させる。今こいつの攻撃をしのぐにはこれしか思いつかない。
「アイ・アム・アトミック」
シャドウがそう唱えた瞬間、シャドウを中心に崩壊が始まる。だが、俺の方も準備はできた。
「アブソリュート・ゼロ」
アブソリュート・ゼロ。自分の周りを絶対零度まで下げすべての攻撃をゼロにする最強の防御だ。
『ウォォォォォォォォォォォ!』
「押し切れ!」
「防ぎきれ!」
核というだけあって、威力が高く絶対零度を保つのが難しい。
駄目だ!防ぎきれない!徐々に突破され体に傷ができ最後には爆風に巻き込まれ飛ばされる。
「はぁはぁはぁ、俺の負けだ。シャドウ」
「そして僕の勝ちだね」
俺は爆風に飛ばられ今は地面に寝そべっている。それに対しシャドウは膝をついているだけである。
「大丈夫、クロノス」
アルファに肩を貸してもらいながら立ち上がる。シャドウはまだ少し余力があるのか、足を引きずりながらではあるが歩いてくる。
「さすがは我が相棒だ。我にここまで力を使わせるとは」
「次は勝たせてもらうぞ、シャドウ」
「望むところだ」
「私たちが目指す場所しかと見せてもらったわ」
アルファに続きほかの子たちも目を輝かせながらこちらを見ている。
「私たちも、あなたたちの元を離れても少しでも近づけるように精進していくわ」
「え?」
あ、そういえばこいつにまだアルファたちが離れるって話してなかったな。
今のシャドウとクロノスの強さ
魔力なし
シャドウ>>クロノス
魔力あり(時と場合にかなり左右される。今回シャドウが静止した時の中を動けることをあらかじめ知っていたならクロノスが最初の段階で勝っていた)
シャドウ≧クロノス
魔力操作
クロノス>>>シャドウ
七陰列伝や番外編みたいな話を入れるか?
-
もちろん、入れる
-
いらん