TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい 作:WhatSoon
『『オープン・ファイト』』
バトルディスクが先攻を差し示す。
これは完全なランダムであり、互いのプレイヤーが干渉しない采配。
つまり、運。
そして、バトルディスクが選んだ先攻は……私か。
「先攻は私。カードを1枚引く」
>ニーナ:ターン1
>ニーナ:手札5→6
引いたカードを確認する。
手札は……悪くはない。
尖った性能のカードばかりだが、その性質はまばらだ。
問題はどのカードをマナに置くかだ。
先攻1ターン目。
つまり、まだ相手から得られた情報は0。
デッキ構成の推測もできない。
どのカードが有効になるか分からない。
ここは一旦、今はまだ使い道のない高コストカードをマナゾーンに置こう。
「……そのまま1枚をマナへ。そして、ターンを終了する」
>ニーナ:手札6→5
>ニーナ:マナゾーン0→1
「なら私のターンね。カードを引いて、1枚マナへ」
>サエコ:ターン1
>サエコ:手札5→6
>サエコ:マナゾーン0→1
後攻1ターン目のドローは2枚。
相手は手札アドバンテージを持っている。
それを大事に取っておくのか。
それとも──
「そのまま、私もターンを終了するわ」
私も相手も、互いに動かなかった。
手札を温存する流れか。
序盤から攻めたいタイプのデッキではなさそうだ。
「……私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」
>ニーナ:ターン2
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナゾーン1→2
取り敢えず、動いていくしかない。
「私は手札から
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナ2→0
────────────────
②無謀な契約
呪文カード
手札を1枚破棄する。
その後、カードを2枚引く。
────────────────
発動したのは手札交換カード。
本来、このカードは相手の動きを見てからプレイした方がいい。
この効果で破棄するカードは不要であればあるほど有意義なのだから。
私のデッキはハイランダー。
そして、状況に応じてプレイするカードを変えるデッキだ。
散りばめられたピン刺しのカードを、運良く引く事が出来る事に賭けている……訳ではない。
『
つまり、毎ターン手札を1枚ずつ交換しているという事だ。
通常のドローで引いたカードの半数はマナに行く。
そして、マナに送ったカードはその試合では基本的には使用できない。
さらに、このデッキには手札を破棄して動くカードもある。
つまり、試合中に私が手札に加えたカードの半分程度は、マナや墓場に行き使用できないという事。
逆に言えば、残りの半数さえ相手に刺さればいい。
引いたカードの内、3割が
それらが互いに干渉する訳ではない。
相手がコンボデッキならば、引いた3割のアグロ対策カードをマナに送ったり、手札から破棄すればいい。
そうすれば結局、ゲーム中にプレイするコンボ対策カードの割合が増える。
それは簡単な事ではない。
完璧に手札の取捨選択を行う事は困難だ。
引き運だって絡んでくる。
試合の終盤に「あの時、捨てなければ……」なんてミスも起こり得る。
だが、困難だが……出来ない訳でもない。
重要なのは……相手のデッキタイプの把握。
早めに判別できれば、早めに手札の質を上げられる。
そして、プレイング。
相手の先を読み、数ターン後に使用したいカードの保持と、使用する場面のないカードの破棄。
それらを見極める判断力が求められる。
……その為には、相手の勝ち筋を見極める必要がある。
「私はターンを終了する」
「私のターンね。カードを引いて、1枚マナへ」
>サエコ:ターン2
>サエコ:手札6→6
>サエコ:マナゾーン1→2
マナが伸びる。
そろそろ、動くか──
「ターンを終了するわ」
……動かない?
余程、手札が事故っているのか?
それとも、速度が遅いデッキなのか?
とにかく、動かないなら今がチャンスだ。
「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」
>ニーナ:ターン3
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナゾーン2→3
マナは3つ。
手札のカードに目を向ける。
彼女のデッキが何かは分からないが、場の主導権を握らせて貰おう。
「私は『骸の槍兵』を召喚』
>ニーナ:手札5→4
>ニーナ:マナ3→0
目の前に、槍を持った骸骨が姿を現した。
────────────────
③骸の槍兵
クリーチャー・カード
種族:テラー・ナイト
突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)
パワー4/タフネス1
────────────────
このクリーチャーは本来、キーワード能力『突撃』を活かして、4点ダメージの除去として扱うカードだ。
だが、盤面がガラ空きの今、次ターンで相手プレイヤーへの4点ダメージを警戒させる事ができる。
「これで私はターンを終了──
「その瞬間、私は
>サエコ:手札6→5
>サエコ:マナ2→0
────────────────
②魔力の一矢
高速呪文カード
相手のクリーチャー1体に2ダメージ。
────────────────
光の矢が『骸の槍兵』を貫き、破壊した。
このターン、私は3マナを支払って何も出来なかったことになる。
対して彼女はこのターンが終わればマナが回復する。
……上手くやられた、か。
「……私はターンを終了する」
「それなら、私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」
>サエコ:ターン3
>サエコ:手札5→5
>サエコ:マナゾーン2→3
店長は手札に触れて……こちらに視線を向けた。
……さっきから感じている感覚。
いいや、初めて会った時から感じていた感覚。
彼女がヒイロや、ユウキなどに向けている視線とは違う……私にだけ向けている、底冷えのする目。
これが、私が彼女を信用できない理由だ。
言葉がどれだけ優しくても、その根底に私への労りがない。
「私は手札から
>サエコ:手札5→4
>サエコ:マナ3→0
地面が競り上がり、人型の土塊が姿を現した。
────────────────
③ゴーレムの召喚
呪文カード
パワー3/タフネス3のゴーレム・トークンを1体生成する。
────────────────
「ふむ……」
実質的にクリーチャーとして代用できる
3コストで生み出すクリーチャーとしては及第点だが、劇的なメリットもない。
普通はデッキに入らないようなカード。
何か、意図があると考えていいだろう。
呪文である事か、トークンである事か、何かに意味がある。
「そして私はターンを終了するわ」
「……私のターン。カードを引いて、1枚マナへ置く」
>ニーナ:ターン4
>ニーナ:手札4→4
>ニーナ:マナゾーン3→4
取り敢えず、あのクリーチャーは除去しなければならない。
3点というダメージは決して安くはない。
「手札から
>ニーナ:手札4→3
>ニーナ:マナ4→1
────────────────
③追い剥ぎ
呪文カード
クリーチャー1体に3ダメージ。
その後、カードを1枚引く。
────────────────
私がプレイしたのは
これで先程取られてしまったアドバンテージを取り返し──
「その瞬間、私は手札からカードを1枚破棄し、
>サエコ:手札4→2
>サエコ:マナ0→0
青い光がゴーレムを包み、私の発動した
────────────────
②活性
高速呪文カード
代替(1)(マナを支払う代わりに、手札を1枚破棄する事が出来る)
クリーチャーを対象とした呪文カードを打ち消す。
────────────────
「
手札コストを支払う事でマナを踏み倒せる、
だが、
序盤から扱うには……拙い筈だ。
それに、守る対象のゴーレム・トークン……手札を2枚消費してでも、守る価値はあるのか?
「……私は、これでターンを終了する」
思案しながらも、ターン終了の宣言をした。
「私のターンね。カードを引いて、1枚マナへ」
>サエコ:ターン4
>サエコ:手札2→2
>サエコ:マナゾーン3→4
私と彼女の間に手札の枚数差はある。
だが、恐らく……ドロー系の
「私は
>サエコ:マナ4→2
────────────────
②精神統一
呪文カード
追唱(このカードは墓場から発動する事が出来る。その後、このカードをデッキに戻す)
カードを1枚引く。
────────────────
「『精神統一』は自身をデッキに戻して、カードを1枚引く効果。私はカードを1枚引く」
>サエコ:手札2→3
なるほど、先程の
2コスト呪文のマナ消費の代替として1枚捨てて、後から2マナ支払って1枚引く……手札の消費は抑えられる。
つまり、実質的なマナの後払い。
『精神統一』単体では2マナで1:1の交換しかできない。
だが、手札から発動した後に墓場から発動する事によって4マナで1:2の交換ができる。
単独使用ではアドバンテージを得られない。
そして、2回発動すればコストパフォーマンスが悪い。
それを墓場にコストとして捨てる事で2マナの0:1交換へ変換しているということか。
墓場に捨てなければコストパフォーマンスが悪いカードを入れているという事から、相手のデッキには
「そして、私は場のゴーレム・トークンで直接攻撃」
>ゴーレム・トークン(3/3)
土の巨人が腕を振るい、私へ攻撃を繰り出した。
「くっ」
>ニーナ:ライフ20→17
「このままターンを終了するわ」
ライフは削られたが、まだ許容範囲だ。
まだ焦るような段階ではない。
「……なら、私のターン。カードを引いて、1枚マナへ置く」
>ニーナ:ターン5
>ニーナ:手札3→3
>ニーナ:マナゾーン4→5
しかし……
間違いなくクリーチャー主体の
一つ、脳裏に過った推測。
その推測が当たっていれば……手札に視線を落とす。
対処札が手札にはない。
いいや、そもそもカード1枚で何とかなるデッキタイプではない可能性がある。
厄介。
その一言に尽きる。
視線を場に戻す。
ゴーレム・トークンを除去から守った、その理由。
……試してみるか。
「私は手札から
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ5→2
────────────────
③祝福の対価
呪文カード
プレイヤー1人を選択する。
選択したプレイヤーに2ダメージ。
その後、選択したプレイヤーはカードを2枚引く。
────────────────
これは、自身を対象にすれば2点ダメージをくらう代わりに、2枚引けるドロー呪文。
そして、相手を対象にすれば2枚引かせる代わりに、2ダメージ与える火力呪文。
二つの性質を持つカードだ。
勿論、今、対象にするのは──
「対象は私。カードを2枚引いて、2ダメージを受ける」
>ニーナ:ライフ17→15
>ニーナ:手札2→4
妨害は吐かなかったか……。
それとも、そもそも握っていないのか。
目前にいる『店長』と呼ばれているプレイヤー。
彼女は私の挙動に一喜一憂しない。
完璧なポーカーフェイス……常に薄く笑っている。
プレイヤーの表情から、デッキ情報を引き出せない。
それはゲームへの理解度だけで得られない技術……つまり『慣れ』だ。
緊迫した状況でもペースを崩さず、焦らず、冷静に判断できる経験値。
それが彼女にはあった。
ならば──
「私は手札から
>ニーナ:手札4→3
>ニーナ:マナ2→0
────────────────
②強制埋葬
呪文カード
パワー3以下のクリーチャーを破壊する。
────────────────
「その瞬間、私は手札から『魔力乱し』を発動し、『強制埋葬』を打ち消す」
>サエコ:手札3→2
>サエコ:マナ2→0
────────────────
②魔力乱し
高速呪文カード
相手の発動したコスト3以下の呪文カード1つを打ち消す。
────────────────
また除去呪文が打ち消されてしまった。
だが、相手のデッキタイプが見えてきた。
プレイングから見えてくる、デッキの方向性が。
『魔力乱し』はコスト3以下の呪文を打ち消せる。
つまり、私が先程発動したドロー呪文『祝福の対価』にも撃てた筈だ。
だが彼女は、ドロー呪文を無視して、除去呪文の打ち消しを優先した。
つまり、それだけゴーレム・トークンの維持が重要だという事。
そしてそれは、恐らく『ゴーレム・トークンだから』必要なのではない。
極論、場に打点となるクリーチャーが維持出来れば何でも良いのだろう。
私にはもう、彼女の戦法が理解できていた。
複数入っている妨害系の
場のクリーチャーを維持するためのプレイング。
……場に出したクリーチャーを維持し、相手を妨害する。
維持したクリーチャーでライフを刻むように、毎ターン直接攻撃を狙う
その
『クロック・パーミッション』か。
攻撃特化の
思想としては、1度展開したクリーチャーでライフを毎ターン刻み、妨害呪文で相手に何もさせないこと。
私がどれだけ強力なカードを使用しても、それが打ち消されてしまえば意味がない。
……という事だ。
相手の場にいるゴーレム・トークンの打点は3。
私の残りライフは15。
残り5回攻撃されれば、私は敗北する。
それまでに、何とか対処しなければならない。
可能性はある。
先程、引き当てたこのカードならば……そして、私の策に相手が気付かなければ。
「私はターンを終了する」
悟られるな。
パーミッションとの戦いは、
◇◆◇
「はぁ、はぁっ……!」
夜の街を走る。
太陽はもう落ちていた。
人の姿は疎にあるけれど、少しずつ減っていく。
ニーナと、ニーナを追いかけて行った店長を探して、僕は走る。
「はぁ……はぁ……!」
確かに、こっちへ走って行った筈だった。
きっと、恐らく。
「はぁ……はぁ……っ」
ニーナに、会わなきゃ。
会って……話さないと。
謝らないと。
僕は──
「はぁ、は、うっ……!」
限界だ。
心臓がうるさいぐらいに鳴っている。
コンクリートの壁に手をついて、汗を溢す。
視界がボヤけているのは疲れからか、汗なのか、それとも涙か。
そんな事も分からない。
「はぁ……は、う……っく……」
乱れた呼吸を整えていく。
頬をつたって、水滴がぼろぼろと地面に落ちる。
ニーナが何処に逃げたのか、店長が何処まで追えたのか。
分からない。
分からないんだ。
この街は広い。
頑張って走っても、見つからない。
追いつかない。
もう彼女には会えないのだと……僕は、感じていた。
「……はぁ、はぁ」
足を進める。
少しでもいいから、足を進める。
分からなくても、何もしないでなんて居られない。
喉が痛くて、足が痛くて、肺が痛くても。
僕は、彼女を追わないと──
「ねぇ、大丈夫?」
耳に聞こえたのは、僕よりも幼げな女の子の声。
足を止めて、振り返れば──
「……ニーナ?」
幼い……まだ10歳と少し……ぐらいの年齢の、少女だ。
だけど、もっと気になる点があった。
銀髪に赤目、整った容姿。
ニーナの幼い頃だと言われても納得がいくような姿。
「ううん?私はニーナじゃないよ」
「……っ、そ、そうだね。ごめん」
「いいよ、気にしてないから」
ニコリ、とニーナは浮かべないような笑みを浮かべた。
年相応の無邪気な笑みだ。
気になる。
その容姿は、あまりにもニーナに似ていた。
「君は──
「ね?何を追いかけてたの?そんなに辛そうな顔で」
僕の言葉を遮って、少女が口を開いた。
……僕は目を瞬いて、息を深く吐く。
「友達が、どこかに行ってしまったから……追いかけてるんだ」
「ふーん、友達……ね。喧嘩しちゃったの?」
「なんで、そう思う……の、かな?」
僕は視線を少女に戻す。
先程と同様の無邪気な笑みを浮かべていた。
「だって、すっごく悲しそうな顔してるから。私が心配しちゃうぐらいにね」
僕は口元を手で触れる。
確かに、そうかも。
呼吸は不規則だし、涙は出ているし。
「……そっか。心配かけて、ごめんね」
「ううん、いいよ!私は気にしてないから」
少女が足を小さく曲げて、飛んだ。
ほんの軽い動作で……1メートル以上の高さがあるコンクリートの塀に登った。
……ニーナも店長も、この女の子も。
みんな人間離れした身体能力をしてるな……。
なんて考えてから、僕は首を捻った。
「その、あんまり高い所に登ると危ないよ」
「うーん……そうかな?」
「そうだよ……」
「うん、ならやめようかな……っと」
少女が塀から飛び降りて、地面に足をついた。
その瞬間、彼女の着ている上着のような物にフードが付いている事に気付いた。
白い猫を模した可愛らしいフードだ。
「ね?お兄ちゃんも一緒に遊ぶ?」
彼女は何者なんだろうか。
ニーナの関係者だろうか。
……いや、それよりも──
「ごめん、僕、友達の所に行かないといけないから」
「……そっか、そうだよね」
純粋な、邪気のない笑みを浮かべて、少女は笑っている。
「それと、あんまり遅くなるとパパやママが心配するから帰っ──
「それは大丈夫だよ」
何が大丈夫なのだろうか。
何だか、この女の子を放っておくのは悪いことなんじゃないか?……って後ろめたくなる。
だけど、やるべき事がある。
「それじゃあ、僕は友達の所に行かないと……」
「場所、分かるの?」
少女の言葉にまた、足を止める。
「……分からないよ。でも、追いつかないといけないんだ」
「ふーん?」
少女が僕の前に立った。
そして、僕の方へと振り返った。
「教えてあげよっか?」
「え?」
「お兄ちゃんが探してる人の場所」
「知ってるの……?」
「うん」
嘘……ではなさそうだ。
何故か、そう思った。
彼女の笑みが純粋だったからか。
疑う、という感情が少しも湧いてこなかった。
「ど、どこに……」
「教えてあげても良いけど……追いついて、どうするつもりなの?」
「それは……」
その言葉に言葉が詰まった。
具体的にどうすればいいか、僕には分からない。
それでも兎に角、彼女に会いたいと思ったから……僕は追い掛けているんだ。
「お兄ちゃんは、その友達をどうしたいの?」
「どうって……それは……」
僕は彼女に死んで欲しくない。
僕は彼女と一緒に居たい。
僕は彼女へ謝りたい。
沢山ある。
「それならさ、カードで勝って……全部、好きにしたら良いじゃん?」
それは天使のような、悪魔の囁きだ。
カードバトルで相手の考えを好き勝手しようだなんて、それは傲慢な考えだ。
「そ、そんなのダメだよ!」
「えー、良い考えだと思うけどなぁ」
「それにっ、彼女は僕より強いし……!」
胸の奥がズキリと痛む。
僕は弱い。
ニーナにも、ユウキくんにも勝てない。
僕では彼女に勝てない。
弱いんだ。
だから、僕にできる事なんて──
「ね?お兄ちゃん、強くなりたいよね?」
「強く……なれるなら、なりたいよ。でも、僕は──
「なれるよ」
ニーナによく似た少女が僕に接近した。
顔が近い。
鼻が触れ合いそうなほど、近い。
「ちょっ──
「お兄ちゃんには素質があるよ。大丈夫、私が保証してあげる」
その少女の手が、僕の右腕……バトルディスクに触れた。
だけど、何故か……振り払う気にはなれなかった。
しかし、悪寒がした。
背筋に冷たい手で触れられたかのような感覚。
思わず、一歩下がった。
彼女から距離を取るために。
そんな僕の失礼な動きにも、少女は笑みを崩さなかった。
「うん、それじゃあ……お兄ちゃんが探している友達の場所を教えてあげよっか」
「っ、あ……うん、お願いするよ」
落ち着け、落ち着けと自分に言い聞かせる。
深呼吸をして息を整えて──
「場所はあっちの方。おっきいお菓子屋さんの横にある路地裏って所だね」
「そ、っか……ありがとう」
「あ、カードバトルしてるね。今から行けば間に合うかなぁ……?」
店長は、ニーナに追い付けたのだろうか。
尚更、早く追いつかないと。
僕は少女から目を背けて、指示された場所へ向かおうとして……立ち止まった。
「そういえば、君は一体、誰──
振り返ると、そこにはもう少女の姿は無かった。
「え、あれ?」
まるで夢だったんじゃないかと、自分の腕を抓る。
……痛い。
現実、だった筈だ。
彼女は何者だったのだろう。
ニーナに似た容姿。
だけど、ニーナよりも幼い。
妹だ、と言われたら納得出来てしまうぐらいだ。
それに、どうやってニーナと店長の場所を知ったんだ?
しかも……カードバトルしている、なんて情報も。
狐につままれたような気分だ。
だけど──
「っ、て……そんな事よりも……!」
追わなければならない。
ニーナが店長と戦っているという事は、勝敗が決まるまでは移動しないという事だ。
間に合えば合流できる。
合流して……合流してからのことは、その時考えればいい。
僕は先ほどの少女に教えられた場所へ、足を進めた。
◇◆◇
「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ置くわ」
>サエコ:ターン5
>サエコ:手札2→2
>サエコ:マナゾーン4→5
手札は残り2枚。
『パーミッション』は妨害呪文をプレイする都合上、手札の枯渇が激しい。
その為、ドロー呪文を多く採用している筈だ。
「まずはゴーレム・トークンで攻撃」
>ゴーレム・トークン(3/3)
「くっ」
>ニーナ:ライフ15→12
決して安くないダメージに冷や汗を掻く。
残り12点……ゴーレム・トークンの攻撃に耐えられるのは残り4回か。
「そして、手札から
>サエコ:手札2→1
>サエコ:マナ5→3
彼女のバトルディスクが青く輝く。
「『閃き』は残りのマナを全て消費し、消費したマナの数だけカードを引ける。私はカードを3枚引く」
────────────────
②閃き
呪文カード
マナを全て消費する。その後、カードをX枚引く(Xは消費したマナの数に等しい)。
────────────────
>サエコ:マナ3→0
>サエコ:手札1→4
3枚も手札アドバンテージを稼がれてしまった。
ライフアドバンテージも、ボードアドバンテージも負けている中……手札の有利ぐらいは得たかったが……拙いな。
この戦い。
明らかに相手に有利を取られている。
今は、私が不利。
「私はターンを終了するわ」
だが、それでも──
「私のターン……!カードを引いて、1枚マナへ置く」
>ニーナ:ターン6
>ニーナ:手札3→3
>ニーナ:マナゾーン5→6
今、明確に見えている隙。
そこを突く。
相手の手札枚数は確かに補充された。
しかし、
ここは除去を──
いいや、違う。
私は既に一度、
そして恐らく、彼女のデッキには上限枚数の4枚入っている。
つまり、使用した1枚を差し引いて、残り3枚。
引かれている可能性を考慮し、除去呪文を撃つのは控える。
また無闇に手札とマナを浪費したくはない。
「私は手札から『黙示録の獣』を召喚する」
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ6→0
錆びた銅のような毛皮を持つ獣が姿を現した。
────────────────
⑥黙示録の獣
クリーチャー・カード
種族:テラー・ビースト
召喚時:カードを1枚引く。
永続:相手がカードを引いた時、ライフを2点回復する。
パワー3/タフネス5
────────────────
「その効果により、私はカードを1枚引く」
>ニーナ:手札2→3
場に召喚された『黙示録の獣』へ視線を向ける。
ここから除去をされても痛手にはならない。
それだけではない。
『黙示録の獣』にはもう一つ効果がある。
「私はターンを終了する」
「なら、私のターンね。カードを1枚引いて──
>サエコ:ターン6
>サエコ:手札4→5
「その瞬間、『黙示録の獣』の効果が発動する。相手がカードを引いた時、2点の回復を行う」
>ニーナ:ライフ12→14
それはカードを引かれる度に回復する効果。
これでまた、ライフを削り切るのに必要な攻撃回数が増えた。
この効果は毎ターン開始時……だけではなく、ドロー呪文を使用した際にも起動する。
彼女は『黙示録の獣』を維持させたくない筈だ。
しかし、『パーミッション』が得意とする『打ち消し』効果は、既に場へ出ているクリーチャーには無意味。
それが明確な弱点だ。
「ふーん……私は手札を1枚マナへ置くわ」
>サエコ:手札5→4
>サエコ:マナゾーン5→6
除去呪文にマナを使用するなら、ドロー呪文にマナを割けないだろう。
視線を相手プレイヤーへと向ける。
その目は薄く笑っていた。
……何か、まだ余裕があるのか──
「私は手札から、レジェンド・
>サエコ:手札4→3
>サエコ:マナ6→1
彼女の背後から大理石で出来た本棚が生えた。
そこには色鮮やかな本が収められている。
ここでレジェンド・カード?
それも、
「そのまま私はターンを終了……そして、
彼女の背後にある本棚から、青白い光が放たれる。
「私の
>サエコ:マナ1→6
────────────────
⑤魔導図書館ミスティオン
レジェンド・オーナメント・カード
ターン終了時:自分の墓場にクリーチャーが存在しない場合、マナを全て回復する。
────────────────
「むっ……」
その性質に、私は目を見開いた。
クリーチャーが墓場にいると使用できない……実質的なデッキ構築の制限が必要となるレジェンド・
そのためにゴーレム・トークンなどトークンを生成するカードを採用しているのだろう。
トークンは一時的に生成される実体のない存在……場を離れた瞬間にゲームから取り除かれ、墓場に行かない。
なるほど。
そして『魔導図書館ミスティオン』は、その縛りに相応しい効果を持っている。
その効果、ターン終了時のマナ全回復だ。
本来ならば、相手ターン中にマナが回復してもあまり意味はないが、彼女のデッキには多くの
マナを注ぎ込む先には困らないだろう。
つまり、自ターン中に通常の
……これが、彼女の
『クロック・パーミッション』を補強する強力な
だが──
「私のターン。カードを引く」
>ニーナ:ターン7
>ニーナ:手札3→4
マナには、敢えてカードを置かない。
ここからは……私と彼女の消耗戦になる。
いいや……消耗戦に『する』。
「手札から『背徳の狂信者』を召喚する」
>ニーナ:手札4→3
>ニーナ:マナ6→4
黒い法衣を着たゾンビが現れる。
────────────────
②背徳の狂信者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:相手プレイヤーはマナを6失う。
パワー1/タフネス1
────────────────
「『背徳の狂信者』の召喚時効果により、貴女のマナを6つ失わせる」
さぁ、どうする?
このカードを通せば、マナを全て失い、妨害も出来ないはずだ。
このターン中に
「私は手札から
>サエコ:手札3→2
>サエコ:マナ6→2
────────────────
④抹消
高速呪文カード
場のパワー5以下のクリーチャーを破壊する。
────────────────
私の場の『黙示録の獣』が消滅した。
……除去されたか。
だが、遅かれ早かれ除去されるのは分かっていた。
だが『背徳の狂信者』は、マナ損失という効果を見せる事で相手に
「『背徳の狂信者』の効果処理。マナを失わせる」
「…………」
>サエコ:マナ2→0
初めて、その表情に焦りが見えた……ような気がした。
表面上は薄い笑みを浮かべたままだ。
だが、私には分かる。
ほんの少し、口角が下がった。
瞬きした。
一瞬だけ、口呼吸をした。
人為的に強化された『目』があった故に見抜けた無意識の癖。
そんな彼女の焦りに対して、私は……笑みを浮かべる。
店長のマナは0。
手札も2枚、
私が次に出すカードは、止められない。
「私は
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ4→1
────────────────
③邪教の首飾り
オーナメント・カード
お互いのターン終了時:そのターンのプレイヤーは、手札を1枚破棄する。
────────────────
場に設置された
これが私の、彼女のデッキに対する『解答』だ。
カードバトル要素を
-
増やした方がいい
-
このままでいい
-
減らして欲しい
-
(アンケート結果だけ見たい)