TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい 作:WhatSoon
「私は
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ4→1
────────────────
③邪教の首飾り
オーナメント・カード
お互いのターン終了時:そのターンのプレイヤーは、手札を1枚破棄する。
────────────────
目の前で銀髪の少女がカードをプレイした。
宝石のような赤い瞳。
シルクのような透き通る銀髪。
人形のように整った目鼻。
そんな彼女が浮かべているのは、無表情。
生身の人間ではなく、人のフリをした人形と言われた方が納得できる。
吐き気がする。
私、斉木 サエコは彼女の事が嫌いだ。
……いや、違うか。
理解できなくて、恐ろしくて、気持ちが悪い。
こちらの方が近い。
昔。
そう、15年前。
私がまだ12歳だった頃。
私は斉木 サエコという名前ではなかった。
名前なんてなかった。
私は孤児だった。
父と母の顔は知らない。
そんな私を育てたのは……何だったか、今では名前も覚えていない……そう、所謂『悪の秘密結社』だった。
そこで私はエージェントとなるべく育てられた。
愛もなく、ただ使命感だけを植え付けられた。
この世界ではよくある話だ。
『VAX』のような非合法な組織だって、珍しい物じゃない。
そんなよくある話の中で、私はただただ一人のエージェントとして、組織のために戦った。
戦って、戦って、戦って──
『悪の秘密結社』は滅びた。
一人の少年の手によって。
突如、自由になった私は途方に暮れた。
どうしたら良いのか、何をすれば良いのか。
何も分からなかった。
そんな私に手を差し伸べてくれたのが……組織を倒した少年だった。
私は彼に色んな事を教わった。
人間として必要な事も。
私は彼と友人……いや、それ以上の関係になった。
私と彼で、沢山冒険をした。
一緒に遊んで、色んな所に行って、悪い奴らと戦った。
二人で色んな事をした。
何をすべきか、ではなく、何をしたいか……初めて、そう考える事が出来た。
私は少年……ヒロトと会うために産まれてきたんじゃないかって、そんな笑えるような事を本気で考えていた。
若かったんだ、私も。
だけど、そんな冒険の日々も……急に終わってしまった。
ヒロトが死んでしまったからだ。
あぁ、よくある話だ。
『悪の秘密結社』は潰しても潰しても生まれてくる。
人の悪意に際限はない。
アレが欲しい、コレが欲しいと……本当に、世の中には我儘な奴が多い。
だから、この世界ではありふれた不幸だった。
だからといって、納得は出来なかった。
私は、国際警察機構、ICPOの局員になった。
ヒロトのような悲劇を、二度と繰り返してはならないと思ったからだ。
だけど、『悪の秘密結社』はICPOの影を見つけると逃げ出してしまう。
あと一歩の所まで追い詰めても、最後の最後で逃げられてしまう。
追って、逃げられて、追って、逃げられて。
そうして規模が広がって、被害も大きくなって。
あぁ、その時に理解した。
何故、ただの子供だった私やヒロトが『悪の秘密結社』を倒せたのか。
舐められていたからだ。
子供だったからだ。
正義の味方は、子供にしかなれない職業だった。
そんな事を大人になってから気付いたんだ、私は。
私はICPOを辞めて、カードショップを経営しようと思った。
ヒロトは「大人になったら、カードショップの店長になりたい」なんて言っていた。
その夢を代わりに叶えてあげたかったからだ。
彼の望みを私が継ぎたかった。
しかし、機密保持条約によってICPOを辞める事は出来なかった。
諦めきれなかった私は、現地でのカモフラージュだと上層部を説得して『カードショップ・ダイス』を開いた。
方便だ。
ICPOの上層部からすれば、私の店なんてお遊びのような物だと思っているだろう。
だけど、カードショップの店長こそがヒロトの……いや、私がやりたい事だった。
だから……誰がなんと言おうと、今はICPOの方が副業だ。
「私はターンを終了する。その瞬間、『邪教の首飾り』の効果で手札を1枚破棄する」
>ニーナ:手札2→1
目前の少女に視線を戻す。
補佐官から手渡された調査報告書で、初めて彼女の存在を知った。
フラスコの中で作られた、紛い物の少女。
なんて哀れだと思った。
可哀想だと思った。
しかし、『VAX』に残された研究資料を読めば……そんな感情は消えてなくなってしまった。
曰く、彼女は歩くより先に走る事を覚えていた。
研究施設の外の世界を、何故か知覚していた。
1を聞いて10を知るような少女だった、と。
だが、あり得ない話だ。
一度も研究施設から出た事もない少女が、外界の情報を持っていて……人から話された内容を自力で補完できる筈がない。
頭がいい……だけでは、通用しない。
何かがおかしかった。
まるで、別の人間が成り代わっているような──
「私のターン。カードを引く」
>サエコ:ターン7
>サエコ:手札3→4
彼女は見た目相応の人間ではない。
いきなり外界に放り出されても、他者を踏みつけて生き残れる強かな存在だ。
その強かさは、どこで身に付けたのか。
補佐官から送られてきた資料の中に、カードバトル中の昏睡事件の調査資料があった。
被害者と対戦していた相手は……銀髪の、赤目らしい。
彼女と同じ姿だ。
関係はあるのか?
何がしたいんだ?
何を考えているんだ?
最早、どうでも良い話だ。
ICPOの本部が、彼女の身柄を欲しがっている。
私はそれに従うだけだ。
実験体217がどうなろうと、知った事ではない。
私は大人だ。
子供を守る義務がある。
しかし、その中に
この少女は、子供ではない。
子供のフリをしたバケモノでしかない。
「私は手札から、『記憶の渦潮』を発動する。
>サエコ:手札4→5
>サエコ:マナ6→3
────────────────
③記憶の渦潮
呪文カード
カードを2枚引く。
────────────────
私にはヒイロや、ユウキ……子供達を守る義務がある。
だから、排除しなければならない。
この理解できない、生き物を。
「私はゴーレム・トークンで相手プレイヤーへ直接攻撃するわ」
>ゴーレム・トークン(3/3)
「…………」
>ニーナ:ライフ14→11
あと必要な攻撃回数は4回。
ゴーレム・トークンを維持して、打点を刻めば私の勝ちだ。
「私はそのままターンを終了するわ。その瞬間、『魔導図書館ミスティオン』の効果でマナを回復する」
>サエコ:マナ3→6
「そして『邪教の首飾り』の効果を発動。貴女は手札を1枚捨てなければならない」
私は手札へ視線を落とす。
『邪教の首飾り』……互いのターン終了時に、ターンプレイヤーに手札を破棄させるカード。
だが、捨てる対象は相手が選ぶ訳でもなく、
「……私は手札を1枚捨てる」
>サエコ:手札5→4
だが、このターン私が稼いだ手札アドバンテージは失われてしまった。
あと数ターン……ドロー呪文を撃たなければ手札が枯渇する。
しかし、それは彼女も同じだ。
それどころか、現在、彼女の手札枚数は1。
私よりも早く手札切れが起きる。
このまま、リソースが切れた彼女をゴーレム・トークンで殴るだけ。
それだけだ。
「私のターン。カードを引く」
>ニーナ:ターン8
>ニーナ:手札1→2
やはり、マナゾーンにカードは置かないか。
手札消費を少しでも抑えるためだろう。
だが、現在の彼女のマナゾーンの枚数は6。
私のマナゾーンの枚数も6だが、『魔導図書館ミスティオン』のターン終了時効果によって6マナ回復するため……実質12マナ使える。
この差は大きい。
「『背徳の狂信者』で相手プレイヤーへ直接攻撃」
>背徳の
「っ……」
>サエコ:ライフ20→19
大したダメージではない。
これは無視できる。
意識すべき脅威は今、相手が引いたカードだ。
「私は手札から
>ニーナ:手札2→1
>ニーナ:マナ6→3
────────────────
③魂の変換
呪文カード
自分の場のクリーチャーを1体破壊する。
その後、カードを3枚引く。
────────────────
自身のクリーチャーを手札に変換するドロー呪文か。
……チッ、前のターン、ゴーレム・トークンで『背徳の狂信者』を取っておくべきだったか?
私は手札に視線を落とす。
……この呪文を打ち消した後、残り3マナで除去を撃たれるのは拙い。
だが、手札を増強する過程で除去呪文を引かれる可能性も考慮すれば──
「その瞬間、
>サエコ:手札4→3
>サエコ:マナ6→2
────────────────
④対抗魔術
高速呪文カード
呪文カードの発動、またはクリーチャーの召喚を打ち消す。
────────────────
ここは打ち消す!
彼女が自ら置いた『邪教の首飾り』で手札切れを起こさせる。
彼女の残りの手札は1枚。
ターン終了時に破棄されるなら──
「私は手札から
>ニーナ:手札1→0
>ニーナ:マナ3→0
残り1枚もプレイできる算段だったか。
……つまり、『魂の変換』は打ち消される前提でプレイしたのか?
しかし、拙い。
マナの残量的に、このカードを打ち消せない。
「『蛆殺し』の効果。それは自身の場のクリーチャー1体を破壊し、お互いの手札をランダムに2枚破棄させる」
────────────────
③蛆殺し
呪文カード
自分の場のクリーチャーを1体破壊する。
その後、お互いの手札からカードを2枚、ランダムに破棄させる。
────────────────
「…………っ」
こ、こいつ……!
自身の手札を破壊しても、私の手札を破壊するカードを!
思わず奥歯を強く噛んだ。
「私の手札は0枚。破棄するカードはない」
>ニーナ:手札0→0
「……私は、手札からカードを2枚破棄する」
>サエコ:手札3→1
私の手札まで、枯渇させられる。
ようやく、この少女が狙っている事を理解した。
デッキの1番上のカードだけで勝負するつもりだ。
そして、それを私にも強要している!
「私はターンを終了する。『邪教の首飾り』の効果が発動するけど……捨てる手札はない」
>ニーナ:手札0→0
『邪教の首飾り』は互いの手札を削る
この少女が手札を全て捨てた事でリスクを踏み倒しているからだ。
このカードはただ、私の手札を削るだけの
「私のターン、カードを引くわ」
>サエコ:ターン8
>サエコ:手札1→2
ドロー呪文はない。
先程の
そして、今引いたカードは打ち消し。
受動的なカード。
手札に蓄えておきたいが、毎ターン『邪教の首飾り』で捨てさせられる都合上……使い所が難しい。
折角、『魔導図書館ミスティオン』でマナを生み出しても、それが活かせない。
あの
だが、しかし──
「……ゴーレム・トークンで相手プレイヤーを直接攻撃」
>ゴーレム・トークン(3/3)
「…………」
>ニーナ:ライフ11→8
依然、私が有利。
場にゴーレム・トークンがいる限り、毎ターンライフが削れるのは確定している。
あと3回の攻撃でライフは0になる。
手札が0枚だろうと、関係ない。
「私はターンを終了する。そして『邪教の首飾り』の効果で手札を1枚捨てるわ」
>サエコ:手札2→1
迷った末、残したのは万能打ち消し『対抗魔術』。
これはクリーチャーの召喚も、
これで彼女が引いたカードを打ち消す算段だ。
「私のターン。カードを1枚引く」
>ニーナ:ターン9
>ニーナ:手札0→1
何を引かれようと関係ない。
確実に止める。
「
>ニーナ:マナ6→3
────────────────
③霊魂の再生
呪文カード
追唱(このカードは墓場から発動する事が出来る。その後、このカードをデッキに戻す)
墓場に存在するクリーチャーを1体選択し、手札に戻す。
────────────────
追唱
邪教の首飾りで捨てていたのか。
しかし……くっ、このカードは打ち消せない。
追唱の処理は、発動、効果適用、デッキ戻しの順だからだ。
ここで発動を止める打ち消しを行った場合、デッキに戻す処理が行われない。
再度マナを支払えば発動できてしまう。
このカードを打ち消しても、リソースを枯らす事は出来ない。
「私が手札に戻すのは『骸の槍兵』」
>ニーナ:手札1→2
だが、結果は同じだ。
手札に加えたカードを打ち消せば良いだけだ。
彼女の残り手札は2枚だが、『邪教の首飾り』による1枚破棄を考慮すれば……手札に戻した『骸の槍兵』を打ち消せば、手札は0枚になる。
さぁ、来い──
「私はそのまま、ターンを終了する」
……なっ。
「『邪教の首飾り』の効果で、手札からカードを1枚破棄する」
>ニーナ:手札2→1
『霊魂の再生』で回収したカードを、そのまま破棄した?
ここは最初に握っていた手札を次ターンに持ち越そうという考えか。
上手く回避された形になるが……問題はない。
結局は手札に蓄えたカード全てを打ち消せば良いだけの話だからだ。
「私のターンね。カードを1枚引くわ」
>サエコ:ターン9
>サエコ:手札1→2
引いたカードは……ドロー呪文!
これで手札アドバンテージを取り返せる。
だが、取り敢えずは──
「ゴーレム・トークンで直接攻撃」
>ゴーレム・トークン(3/3)
「…………」
>ニーナ:ライフ8→5
残り、5点。
あと2回の攻撃で終わりだ。
更に手札も補充させて貰おう。
「そして、私は手札から
>サエコ:手札2→1
>サエコ:マナ6→3
────────────────
③記憶の渦潮
呪文カード
カードを2枚引く。
────────────────
「その瞬間、私は
>ニーナ:手札1→0
>ニーナ:マナ3→0
────────────────
③打ち砕かれた希望
高速呪文カード
墓場に存在する種族『テラー』クリーチャーを1体選択し、デッキに戻す。
呪文カードの発動、またはクリーチャーの召喚を打ち消す。
────────────────
こ、このっ……!
私の残りマナは3、対して『対抗魔術』は4コスト。
彼女の『打ち消し』を更に『打ち消す』事ができない。
私のドロー呪文が霧散する。
「私は、ターンを終了する。そして、『魔導図書館ミスティオン』の効果でマナを回復する」
>サエコ:マナ3→6
マナを回復しても意味がない。
相手ターンに発動できる
確かに今、1枚打ち消しを握っているが──
「……そして、『邪教の首飾り』の効果で、手札を1枚破棄する」
>サエコ:手札1→0
『邪教の首飾り』によって破棄させられた。
そして、彼女の狙い通り……手札が0枚になってしまった。
ここから先はデッキトップを捲り、カードをぶつけ合うだけのゲームが始まる。
一見、対等に見えるデッキトップのぶつけ合い。
しかし、その実態は……私が不利だ。
私のデッキには相手のカードを打ち消す、受動的なカードが大量に入っている。
それらは全て、ハズレだ。
『邪教の首飾り』の効果によって相手ターンまで持ち越せないからだ。
カードを2枚以上引けるドロー呪文が来れば、相手ターンに打ち消しを構えられるが……。
そう都合よく引けるのか、という問題がある。
対して、彼女の方はどうだ?
彼女のデッキはハイランダー……そして、私のデッキに比べて『打ち消し』カードも少ない。
クリーチャーカードも私のデッキに比べて多い。
つまり、当たりが多い。
一見、互いの手札を全て破壊し、互いにリソースが切れたように見えるが……その実は彼女に有利なゲームにさせられたのだ。
視界を上げる。
目の前の少女へと。
……笑っている。
アレだけ無表情だったのに、今は……笑っていた。
その笑顔が理解できなくて、少し不快感を感じた。
「随分と楽しそうね。何がそんなに面白いの?」
気付けば、口が開いていた。
笑顔の下に隠していた感情が、言葉となってしまった。
だが、そんな私に、彼女は笑顔を浮かべた。
「だって、カードバトルは楽しいから」
『ヒロトくんはさ、何でそんなに楽しそうに戦うの?』
『そりゃあ……だってカードバトルはさ、楽しんでやるもんだろ?』
『……そうかな?』
『サエ、自覚ないかも知れないけどさ。カードバトルしてる時はすげぇ楽しそうにしてるぜ』
脳裏に浮かんだのは、いつの会話だったか。
どうしてそんな話をしたのかも、思い出せない。
それでも忘れられない、私の記憶。
思わず呆けてしまった私に、彼女は視線を向けた。
「貴女は、楽しくないの?」
「……私は──
右腕に装着されたバトルディスク、そこに装着されたデッキへと目を落とす。
私が『クロック・パーミッション』を使用しているのには、理由がある。
確実に初見で相手を倒す為だ。
拘束対象の戦術が何であろうと打ち消して、安定して勝とうとしているからだ。
だけど、それだけではない。
それだけではないんだ。
私が『クロック・パーミッション』を使う理由は、それだけではない。
ヒロトと組んだデッキだから。
ヒロトと共に戦ったデッキだから。
楽しかった時も、苦しかった時も、ずっと……一緒に戦ってきたデッキだから。
だから──
「私も、楽しいに決まってるじゃない」
「……うん、なら良かった」
あぁ、そうか。
この少女はただ、カードバトルが好きなだけなのだ。
生まれがどうであっても。
不審点があったとしても。
分からない事があったとしても。
それでも彼女の中には、一つ真っ直ぐ通っている感情がある。
それは私や『彼』と同じ……『カードバトルが楽しい』という感情。
目を見開く。
そして、少女……ニーナと視線をぶつけた。
「随分と巻き返したつもりだろうけど……依然、私の方が有利。それは変わらない」
「知っている。ここからが、勝負」
既に、彼女に感じていた不快感は消え去っていた。
全てが理解できなくとも、いくつかは理解できた。
そして、その『いくつか』だけで十分だった。
彼女も、私や……他の子供達と同じ、カードバトルが好きなのだと理解できた。
それでも、負けるつもりはない。
彼女を蔑ろにしている訳ではない。
勝った後、保護する前に色々と考えよう。
ICPOの上層部に私から訴えかけてもいい。
私はそれなりに立場と実績がある……無視はできない筈だ。
手加減はしない。
彼女も、それを望んではいないだろう。
私達は何者であろうとも、『カードバトラー』だ。
勝利を奪い合い、その過程を楽しむ人種なのだ。
「私のターン。カードを1枚引く」
>ニーナ:ターン10
>ニーナ:手札0→1
視線を戻す。
私の手札リソースは切れた。
打ち消しを引いても、ターン終了時に『邪教の首飾り』に破棄される。
相手ターンに打ち消しを構えられなければ、『魔導図書館ミスティオン』によりマナを回復させても意味がない。
私の戦術は既に崩壊している。
だが、それでも。
手札リソースが無いのはニーナも同じだ。
ニーナのライフは残り5。
ゴーレム・トークンによる3点の打点により、残り2ターンで私の勝利となる。
残り2ターンの間にゴーレム・トークンを除去できなければ私の勝ちだ。
「……私は『迂闊な埋葬者』を召喚」
>ニーナ:手札1→0
>ニーナ:マナ6→2
場に布切れを身に纏った、瘦せこけた女が姿を現した。
────────────────
④迂闊な埋葬者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:自分のデッキから、任意のクリーチャーを1枚破棄する。
パワー1/タフネス1
────────────────
「その効果により、デッキからクリーチャーを1枚、
デッキから任意のクリーチャーを
だが、この現状……間違いなく、何か、
「私はそのまま、ターンを終了。『邪教の首飾り』の効果が発動するけど……捨てる手札はない」
>ニーナ:手札0→0
「私のターン、カードを引くわ」
>サエコ:ターン10
>サエコ:手札0→1
引いたカードは……チッ、打ち消しのカードか。
「私はマナに、カードを1枚置く」
>サエコ:マナゾーン6→7
どうせターン終了時に捨てさせられるのなら、マナゾーンに置いた方がマシだ。
今回のデッキトップはハズレ……だが、盤面はまだ私の方が有利。
相手の場を見る。
『迂闊な埋葬者』は1/1の貧弱なステータス。
無視してもいい。
……本来ならば、だ。
ニーナのデッキには自身のクリーチャーをコストに効果を発揮するカードが採用されている。
ならば、除去するべきなのか。
ゴーレム・トークンで攻撃すべきなのか。
だが、そんな事をすればニーナのライフを詰められない。
「…………」
少し悩み、そして私は決断した。
「ゴーレム・トークンで相手プレイヤーへ直接攻撃!」
>ゴーレム・トークン(3/3)
決着を急いた。
だが、焦った訳ではない。
デッキトップでの勝負は私に不利。
理解している故の判断だ。
早期に試合を終わらせる事で、彼女にカードを引かせる回数を減らす。
デッキトップでの解決を探す、その試行回数を稼がせない事を優先した。
「っ……!」
>ニーナ:ライフ5→2
流石に彼女の顔にも焦りが浮かんでいる。
当然だ。
次の攻撃で、この戦いに決着がつくのだから。
「私はターンを終了。各オーナメントの効果が発動するけど……まぁ、もう影響はないかな」
>サエコ:マナ7→7
>サエコ:手札0→0
「……私の、ターン」
>ニーナ:ターン11
砂埃が巻き上がる。
月の光を反射して、まるで彼女自身が輝いてるかのように錯覚した。
「カードを1枚引く」
>ニーナ:手札0→1
緊迫、緊張。
張り詰めた糸のように、身体が強張る。
このドローで、決まる。
何を、何を引いたんだ?
「……私は──
何を。
「
違う!
前ターン『迂闊な埋葬者』で破棄したクリーチャーの効果か!
「『陵墓のタイタン』は能力『再生』を持つクリーチャー。マナを支払う事で、墓場から召喚できる」
ニーナ:マナ6→2
大地が裂けて、巨大な死霊が蘇る。
───────────────
⑥陵墓のタイタン
クリーチャー・カード
種族:テラー
再生(4)(このクリーチャーが墓場に存在する時、マナを4支払う事で墓場から召喚できる。「再生」で召喚したクリーチャーが墓場に送られる時、デッキに戻す)
パワー4/タフネス4
────────────────
4/4のクリーチャー!
3/3のゴーレム・トークンを一方的に戦闘破壊できるパワータフネスがある。
だが、しかし──
「惜しいわ。トークンを破壊できるクリーチャーを出そうとも、残りライフは2……召喚酔いが解ける頃には、決着がついてる」
そう、遅かったのだ。
クリーチャーは『速攻』や『突撃』を持たない限り、場に出たターンは攻撃できない。
どれだけ強力なクリーチャーを出したとしても、もう遅い。
ゴーレム・トークンの攻撃は止められない。
その、筈なのだが──
「まぁ、そんな事は……言わなくても、分かってるみたいね」
それでも彼女は笑っていた。
敗北を認めたのか?
いいや、違うだろう。
その笑みは──
「私は手札から、
ニーナ:手札1→0
ニーナ:マナ2→0
勝利を確信した者の笑みだ。
「『大いなる再臨』は自身の場の種族『テラー』を持つクリーチャーを進化させる
────────────────
②大いなる再臨
呪文カード
自分の場の「テラー」クリーチャー1体を選択する。
選択したクリーチャーより2つ、または1つコストが高い「テラー」クリーチャーを、エクストラ・ゾーンから重ねて進化する。
────────────────
「この土壇場で『進化』を……?」
「対象は『陵墓のタイタン』。そのコストより2つコストが高い……8コストの進化クリーチャーへと進化する」
ニーナの腕に装着されているバトルディスクが展開した。
そして、カードが射出され……『陵墓のタイタン』へ重ねた。
「『死皇帝ハーデス』へ進化」
場の巨大な死霊が砕けた。
霧散した屍体から魂が解き放たれ、それらは再構築される。
其れは人の形を為さない。
其れは生物の形を為さない。
霊魂が集い、強大な異形が形作られる。
厳かで、恐ろしい、偉大な王の姿へと。
「……これが、
ユウキくんが扱っているのは知っている。
見た事だってある。
だが、対面したのは初めてだ。
場に、死霊の王が降臨した。
震えるような威圧感が私の身体へ叩きつけられた。
だが、それでも……私の場にゴーレムが残っている限り、勝利は揺るがない──
「『死皇帝ハーデス』の効果。お互いの場のクリーチャーを全て破壊し、その数だけクリーチャーを蘇らせる効果」
────────────────
⑧死皇帝ハーデス
エクストラ・クリーチャー・カード
種族:テラー
進化元:種族「テラー」クリーチャー
進化時:場の他クリーチャー全てを破壊する。その後、互いのプレイヤーは破壊された自身のクリーチャーと同等の数だけ、墓場からクリーチャーを
パワー8/タフネス8
────────────────
「なっ──
世界が歪む。
現世と冥界が逆転する。
ニーナの場の『迂闊な埋葬者』が冥界へと沈む。
私の場のゴーレム・トークンもだ。
「私は破壊された『迂闊な埋葬者』の代わりに『骸の槍兵』を
────────────────
③骸の槍兵
クリーチャー・カード
種族:テラー・ナイト
突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)
パワー4/タフネス1
────────────────
『死皇帝ハーデス』の効果。
その全体破壊能力からの蘇生能力は強力だ。
しかし、それは互いに適用される効果。
私も場のクリーチャーが1体破壊された。
つまり、1体のクリーチャーを
だが……私のデッキは
更に、破壊されたのはゴーレム・トークン……一時生成されるトークンなのだ。
墓場には行かない為、即座の蘇生すらできない。
結果。
私に対しては単純な除去として適用されてしまったのだ。
相性は最悪と言って良い。
私の場はガラ空きで。
私のデッキにプレイヤーを直接焼ける
つまり──
詰めきれない。
そして、ニーナの場には8点の打点を持つ『死皇帝ハーデス』と、4点の打点を持つ『骸の槍兵』。
「……ちょっと、拙いかも」
敗北の二文字が脳裏に浮かぶ。
そして、それが逃れられない未来なのだと予感していた。
◇◆◇
「はぁっ、はぁ……こ、ここかな?」
ニーナによく似た女の子に言われた場所に、僕はようやく辿り着いた。
そして、路地裏へと足を踏み入れ──
「『死皇帝ハーデス』で直接攻撃」
>死皇帝ハーデス(8/8)
異形が腕を振り下ろし、店長へと直接攻撃を繰り出した。
「うぎゃっ……!」
>サエコ:ライフ7→0
店長は情けない声を上げて、地面を転がり……僕のすぐ横で停止した。
気を失ってしまったようだが……怪我はなさそうだ。
『『バトル・エンデッド』』
店長と、対戦相手のバトルディスクがカードバトルの決着を告げる。
そして、その対戦相手へと……僕は視線を向けた。
銀髪と、赤い目を持つ少女へと。
「……ニーナ」
「ヒイロか……」
ニーナがバトルディスクを収納し、僕へと視線を向けた。
足元でひっくり返っている店長も気になるけど、今は……彼女から目を離したくなかった。
目を離した瞬間、どこかに消えてしまいそうだと思っていたからだ。
互いに言葉を発さない。
長いような、短い時間が過ぎた。
そして、先に口を開いたのはニーナだった。
「何しに来たの?ヒイロ」
「ぼ、僕は……」
悩む。
何しに来たのか。
色々な理由が思い浮かぶ。
どれも嘘じゃない。
だけど、本質ではない気がした。
「ヒイロも私とカードバトルするの?」
「……っ」
「別に、私はそれでもいいけど」
違う、僕はそんなことをしに来た訳じゃない。
……僕は悩んで、そして──
「ニーナと……は、話がしたくて」
「話?」
ニーナが目を細めた。
「まず、謝りたいんだ……急に、店長に……勝手に話して、連れて帰ってきて、ごめん……って」
「いい。それは気にしてない」
僕の内心とは裏腹に、ニーナはあっさりと僕を許した。
「それと……ニーナの身体はメンテナンスしないと長生き出来ない、らしくて。その……店長はその、国際警察らしくて──
「知ってる」
しどろ、もどろ。
言葉を選ぼうとして、結局選べなくて、僕はただ心の内に感じて考えている物を吐露しているだけだった。
それでも、ニーナは去らずに聞いてくれた。
その事実に僕は安堵した。
「なら、その……店長と一緒に──
「それは嫌」
「な、なんでっ──
「例え、早死にしたとしても。私はもう『自由』を奪われたくない」
彼女の言葉に、僕は詰まる。
彼女に長生きして欲しいと思うのは、僕の我儘だ。
だけど、それでも、僕は──
「ヒイロ。話は終わり?終わったなら、もうここに用はない」
「あっ、ニ、ニーナ……」
「今日まで、ありがとう。楽しかった」
ニーナの言葉に、僕は息を呑む。
何で、そんな……もう、二度と会えないような別れの言葉を言うんだ。
少し憤り、その憤りが気にならなくなる程に、僕は悲しくなった。
「それじゃあ、さよな──
「ま、待って!ニーナ!」
堪らず、僕は彼女の側に駆け寄り……手を握った。
その手は細く、白く、滑らかな……女性の手だった。
しまった。
と考えた時にはもう遅かった。
ニーナと視線が合う。
嫌悪感は浮かんでなかった。
「……なに?」
「え、っと、あの……」
何か。
何か、何かないのか。
「えっと……」
とにかく、今だけで良い。
彼女を繋ぎ止められる何かが。
「ば、晩御飯……!二人前作ってくれたからさ、僕だけじゃ食べきれないよ。何処かに行くとしても……食べてからで、良いんじゃない、かな……?」
そして捻り出された言葉は、あまりにも情けない物だった。
今はそれどころではないだろうに。
僕が今、彼女を繋ぎ止めたいと思って浮かんだ光景は……一緒に、ご飯を食べていた日々の光景だった。
「…………」
何でもない日常。
だけど、僕がずっと欲していた日常。
その景色が忘れられなくて……僕は咄嗟に、晩御飯の話をしてしまった。
そんな、僕をニーナは──
「……ふっ」
呆れる訳でもなく──
「ふふふ……ふふ、ふっ……」
笑った。
先程までの冷たい表情ではなく、この数日間よく見ていた優しい笑顔で。
文字数増えすぎたので分割。
キリ悪くてごめんね。
カードバトル要素を
-
増やした方がいい
-
このままでいい
-
減らして欲しい
-
(アンケート結果だけ見たい)