TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい   作:WhatSoon

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激闘!学園編
#16 学園生活は波乱がいっぱい


目覚まし時計が鳴っている。

ジリジリと音が鳴っている。

 

僕はベッドの上、布団の中から手を伸ばして……止める。

 

 

「ふぁ……」

 

 

掛け布団を退けて、あくびを一つ。

カーテンを開けて、太陽光に目を細める。

 

重い足取りでドアを開けて、リビングに向かう。

既にリビングのカーテンは開けられており、日光が差し込んでいた。

 

学生服を着たニーナがキッチンで、じーっと機械を眺めていた。

そこには最近購入したトースターがあった。

既に稼働中みたいでパンを焼いているようだ。

 

……別に、そこで眺める必要はない気がするけど。

何も言わず、僕は洗面所へ行き、顔を洗った。

少し目が覚めた気がする。

 

そのままリビングをまた横切る。

まだニーナはトースターを眺めていた。

 

自室に入って、寝巻きから学校の制服に着替える。

ズボン、ベルト……カッターシャツにブレザー。

 

着替えを終えた僕は、寝巻きを持って自室の外に出る。

洗濯カゴに寝巻きを入れて──

 

鈴のような音が響いた。

 

僕がリビングに戻ると……すぐ横にあるキッチンで、皿も出さず食パンを齧っているニーナが居た。

 

 

「……おはよう、ニーナ」

 

「んぐ……おはほう、ひひろ」

 

「食べ終わってからでいいよ」

 

 

僕がリビングの机、その椅子に座ると……ニーナが焼けた食パン1枚とバターを、僕の前に置いた。

 

 

「あ、ありがとう」

 

「んぐ」

 

 

ニーナが指を立てた。

僕の分も焼いてくれてたみたいだけど……いや、その、立ったまま焼きたてを食べているのは行儀が悪くないか?

 

そう思いながら、僕は食パンにバターを塗り、齧った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

学校への道を歩く。

僕とニーナの二人で、だ。

 

彼女も同じ学校に通っているのだから、当然、登下校も一緒になる。

 

 

「あ、ポメ次郎」

 

 

ニーナがいつも散歩ですれ違う犬に小さく手を振った。

ちなみに、ポメ次郎は飼い主さんから聞いた名前だ。

ポメラニアンのポメ次郎らしい。

 

そのポメ次郎はニーナを見つけて──

 

 

「ワンワンワンワンワン!ワンワンワン!!」

 

 

めちゃくちゃ吠えた。

 

僕に向かっては吠えないんだけど、ニーナに向けては異常なほど吠える。

飼い主さんがちょっと申し訳なさそうにしているが、ニーナは無表情のまま腕を組んで頷いた。

 

 

「うんうん、ポメ次郎はいつも元気だね」

 

「ギャワゥッ!」

 

 

ポメ次郎はそんな、人に向かって吠える犬じゃないんだよ……なんて、僕も飼い主さんも言えなかった。

何故か、彼女に向かってだけ異様に吠えるのだ。

 

そのまま、ポメ次郎と飼い主さんから離れて、学校へ向かう。

 

 

「朝から元気だったね、ポメ次郎」

 

「そ、そうだね……」

 

 

なぁなぁに頷きながら、足を進める。

 

少し歩けば、僕達と同じ学校へ通っている学生達の姿も増えてくる。

 

……少し、視線を感じるけど。

理由は分かってる。

 

少し横へ視線をずらす。

 

 

「……何?ヒイロ、どうかした?」

 

「何でもないよ」

 

 

彼女に見えないように、吐息を吐く。

 

そう、ニーナは人目を引く。

シルクのように綺麗な銀髪、綺麗な赤い目。

整った目鼻。

 

テレビで見るアイドルより可愛いんじゃないか?

なんて思えるほど、整った容姿。

 

そんな彼女と歩いている僕にも、当然視線が集まる訳で。

 

ちょっとトゲトゲしい視線を感じる。

多分、嫉妬とかそういうのだ。

少し居心地が悪いけど……。

 

 

まぁ、それでも甘んじて受け止めるしかない。

 

確かに、ニーナと別々で学校に登校すればこの視線は無くなるだろうけど……なんて、ありえない。

僕は少し眉尻を下げて、ため息を吐いた。

 

誰かにどう見られようとも──

 

 

「…………」

 

 

ニーナの横顔を見て、僕は頬が緩んでしまうのを自覚した。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「よっ、おはよう二人とも」

 

 

教室に入って、自席に座ればユウキくんが挨拶して来た。

 

 

「おはよう、ユウキくんも」

 

 

僕が朝の挨拶をすると同時に、隣の席からも──

 

 

「おはよう、ユウキ」

 

 

なんて声が上がった。

 

ニーナの席は僕の隣だ。

学校側からの配慮らしく、彼女と既に交流があった僕の隣の席が割り当てられたのだ。

 

 

「今日さ、放課後に『ダイス』来て欲しいって。羽金さんが言ってたぜ」

 

「私も?」

 

「おう、ニーナも含めて」

 

「ふーん」

 

 

ニーナと顔を合わせて、頷く。

 

彼女が転校してから、ユウキくんとは凄い勢いで仲良くなっていた。

気付けば僕、ユウキくん、ミユちゃんの三人組の中にニーナは入り込んでいた。

仲良し三人組、改めて四人組だ。

 

 

「おはよー、ニーナちゃん!」

 

「あ、ミユ。おはよう」

 

 

そんな事を考えていると、ミユちゃんもこちらに来て……ニーナにハグを繰り出した──

 

 

「んがっ」

 

 

だが、彼女の手に阻まれてミユちゃんは接触する事すら出来なかった。

 

ニーナは嫌そうな、というか焦ったような顔をしている。

彼女は他人……特に同性とのボディタッチを避ける傾向にある。

僕の脇腹とかすぐに突く癖に、ミユちゃんの肩は叩かない。

理由は分からないけれど……こうして、ミユちゃんのスキンシップを嫌がり抵抗するのも、今回に限った話ではない。

 

しかし、ニーナは常人の何倍もの力がある。

故に、ミユちゃんを退けようとして怪我をさせてしまう可能性がある。

なので、力加減をしながら抵抗しているのだ。

 

 

「お、ミユも今日、放課後に『ダイス』な」

 

「えー、今日、買い物の予定あるんだけど」

 

「……用事が終わったら荷物持ちしてやるからさぁ」

 

「え?ホント?しょーがないなぁ……」

 

 

ユウキくんの言葉に、ミユちゃんがニコニコとしている。

 

ユウキくんはメチャクチャ鈍感なので気付いていないようだが、ミユちゃんは割とユウキくんの事を異性として意識している。

新参のニーナですら分かるのに、何故かユウキくんは分からないのだ。

鈍感すぎる。

 

めんどくさそうな雰囲気を感じ取って、僕とニーナは少し距離を取った。

邪魔をしたら悪いからね。

 

 

「ヒイロ。今日の授業、なんだっけ?」

 

「えーっと、国語、数学、歴史、カードバトル実技だね」

 

「げ、歴史」

 

 

ニーナが無表情ながら、少し嫌そうな顔をした。

彼女は殆どの教科は人並みだが、歴史だけは苦手なのだ。

 

何でも『私の知ってる歴史と違う……』というのが彼女の言い分だ。

よく分からない理屈だが、VAXの研究施設では変な架空の歴史でも教えられていたのだろうか?

 

そうだとしたら少し不憫だな、なんて思った。

 

だって彼女、世間では割と常識な織田信正の対AOEの三段撃ちズー理論について全く知らなかったし。

前後でカードプレイの常識が変わったとも言われているデッキ構築論なのに、それも知らなかったし……。

 

なんて、横で口を窄めるニーナを見て、苦笑した。

彼女にも苦手な物があるんだ、と思うと少し親近感を抱いてしまうのは……少し自分の浅ましさに自己嫌悪しそうになるけど。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

放課後、僕達はカードショップ『ダイス』に来ていた。

 

ちなみに店長は不在だ。

まだICPOの本部で仕事に追われているらしい。

この件についてはユウキくん達に、ニーナの生い立ちも含めて最近の事情については共有した。

仲間外れはいけないっていうのと、単純に、ニーナと僕の関係が説明しづらかったからだ。

 

羽金さんは、店長がICPOだってのを元から知ってたみたいだけど。

そこは彼女が大人だからだろうか、それとも店長の保護下だからだろうか。

 

 

閑話休題。

 

 

店内に店長も居ないが、客も不在だ。

僕達以外に誰もいない。

 

いつも通りだが、今日は更に理由がある。

入り口に『今日は臨時休業』と書いているからだ。

 

静かな店内。

いつもの席に座りながら、店員の羽金さんに目を向ける。

 

 

「それで、羽金さん。用って何ですか?」

 

 

羽金 エリス。

VAXの幹部『セブンス』の元一員だ。

僕達より幾つか歳上で、カードバトルも強い。

 

そんな羽金さんが、自身の顎に手を持っていった。

 

 

「いえ、用があるのは私ではありません。用があるのは──

 

 

羽金さんがレジの裏の方へ手を振ると……見知った顔が現れた。

スーツを着た初老の男と、サングラスを掛けた男。

 

 

「ポールさん?」

 

「えぇ、久しぶりですね。ヒイロさん」

 

 

初老の男性は、ICPOのポールさんだ。

店長の部下……みたいな立ち位置の人で、喫茶店のマスターもやっている。

 

そして、その隣に立っているのは──

 

 

「……ウッス」

 

「えっと……?」

 

 

僕が困惑しながらポールさんに目線を向けると、苦笑された。

 

 

「彼の名前はエリック。私と同じ、ICPOの現地捜査局員だよ」

 

「ウッス」

 

 

何だか無口、というか……なんというか、その……威圧感が凄い人だ。

そんな彼等に、ユウキくんも少し不思議そうな顔をした。

 

 

「で?そのICPOが何のようなんだ?店長絡みか?」

 

「いえ、彼女は関係ありませんが……少し、話を」

 

「話ぃ……?」

 

「はい。注意喚起です」

 

 

ポールさんが指を立てて、そして語り始めた。

 

この街で意識不明者が出ている事を。

そして、その事件にはニーナとよく似た姿の少年の姿があると。

 

驚いてニーナに視線を向けるも、彼女に驚いた様子はなかった。

恐らく、ICPOの本部にいた頃に店長から話を聞いていたのだろう。

 

しかし、ニーナによく似た……か。

 

 

「あっ」

 

 

一つ、店長にも言い忘れていた事があった。

 

 

「僕、ニーナと店長がカードバトルしてた時に……ニーナに似た女の子に会った……んだけど」

 

「む、それは本当ですか?」

 

「ええと──

 

 

僕もニーナによく似た幼い女の子から、道案内された事を伝えた。

ポールさんは少し悩ましげな顔をしながら、思案し……口を開いた。

 

 

「ニーナさん、貴女より後に人造人間(ホムンクルス)が作られた……という可能性はありますか?」

 

「ううん、無いと思う。研究員の話を盗み聞きしてたけど、私を最後に計画は凍結されたって言ってた」

 

「ふむ……そうですか」

 

 

ポールさんも、ニーナも腕を組んで悩んでいる。

僕にはサッパリ分からないけど……ユウキくんが口を開いた。

 

 

「つまり、俺達にニーナのそっくりさんを捕まえて欲しいってコトだろ?」

 

 

そうユウキくんが自信満々に言うと、ポールさんは首を横に振った。

 

 

「いいえ、違います」

 

「あれ?」

 

「言ったでしょう。『注意喚起』ですよ」

 

 

ポールさんがため息を吐いて、指を立てた。

 

 

「ニーナさんに似た容疑者とカードバトルした人は昏倒しています、今も。貴方達は出会ったとしても『戦わない』で下さい、という事です」

 

 

その言葉に僕は頷いた。

普通はカードバトルで気絶させられる事はあっても、意識不明で何日も起きられないなんて事は起こらない筈だ。

いったい、どんなカラクリがあるのか分からないけど……とにかく、関わるのは危険だ。

 

 

「もし彼等に出会っても戦わずに、連絡を下さい。私達が現場へ向かいます」

 

「分かりました」

 

「……おう」

 

 

あ、ダメだ。

ユウキくん、全然納得してない顔だ。

ミユちゃんが、あぁまた……みたいな顔をしてる。

 

ニーナは……ニーナも納得してなさそうな顔してるなぁ。

 

この二人、カードバトルに関しては驚くほどに負けず嫌いだ。

多分、軽く挑発されたらすぐバトルしてしまうだろう。

 

……もしそうなったら、と考えると胃が痛い。

きっと、彼等は戦っても負けないだろうけど。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

翌日。

いつも通り学校に行き……五限目。

ホームルーム中に事件は起きた。

 

教壇に立っている教師が電子白板を指差した。

 

 

「来週から学期末の恒例、クラス対抗戦がある。委員長は対抗戦に参加する3名を次週末までに決めるように」

 

 

教師がそんな指示をして、そのまま教室を出て行った。

自主性を育むにしても、無責任な気がするが……まぁいつも通りだ。

ホームルームは生徒だけで行う。

 

 

「ねぇ、ヒイロ」

 

 

横から脇腹を突かれた。

 

 

「どうかした?ニーナ」

 

「クラス対抗戦って何?」

 

「えーっと──

 

 

クラス対抗戦。

それは、学期末に行われる。

クラスから代表3名を選出し、クラス代表同士でカードバトルを行う。

それがクラス対抗戦だ。

 

勝利したチーム、クラス側には報酬として学食の無料券が配られる。

一つの学年につき三つの学級があるため、総当たりで二度の対抗戦が行われる。

二回勝てば学食の無料券が二枚貰える。

一回も勝てなければ報酬は無しだ。

 

……と言っても、学食の無料券にそれほど価値がある訳ではない。

現金にして1枚500円程度だからだ。

クラスメイト達もそれほど魅力的に感じていないだろう。

 

だがしかし、このクラス対抗戦は毎年、白熱した激戦となっている。

報酬である無料券が理由ではない。

単純に、みんな負けず嫌いなだけだ。

 

ちなみに、去年はユウキくんと僕、そしてもう一名で出た。

 

 

……なんて事を、ニーナに説明した。

 

 

「ふぅん……面白そう」

 

 

ニーナが興味深そうに頷いていた。

教壇に視線を戻すと、クラス委員長であるミユちゃんが教師の代わりに教壇に立っていた。

 

 

「えーっと、今年の代表者なんだけどー……まずは、例年と同じでユウキくんと、ヒイロくんでいいよね?」

 

 

ユウキくんと僕は、学校のカリキュラムである『カードバトル実技』で、クラスの1位と2位だ。

クラス対抗戦は実際のカードバトルなのだから、当然、その実技の成績上位者が選ばれる。

 

クラスメイト達も反論していない。

僕は安心して安堵の息を吐いた。

 

 

「それで、もう一人は──

 

 

順当に行けば、『カードバトル実技』の成績3位が選ばれる筈だが──

 

 

「私はニーナちゃんが良いと思うんだけど……」

 

「え?」

 

 

横から小さく声が上がった。

ニーナは最近転校したばかりだから、『カードバトル実技』の成績が正しく反映されていない。

だから、3位ですらないのだが──

 

 

「ちょ、ちょい待たんかい!」

 

 

やっぱり、反対意見が上がった。

席を立ち、眉を顰めているのは……実技の成績がクラス3位の男。

 

髪先は金髪だが生え際は黒色の、少し染めた後が残っている。

関西弁を喋るその男の名前は──

 

 

「え、えーっと、吉祥院さん?」

 

「おかしいやろが!何でコイツを推すねん、ワイがクラス3位の筈やろ!」

 

 

吉祥院 アキラだ。

前期に一緒にクラス対抗戦に出たクラスメイトだ。

 

彼が憤る理由も分かる。

前期はクラス代表だったし、今期も成績3位なのに……何故、転校生をクラス代表にするのか。

 

そんな彼を見て、ニーナが手を上げた。

 

 

「ミユ、別に私はクラス代表じゃなくていい」

 

「え、でもニーナちゃんってユウキくんにも──

 

「なんやオマエ!自分、調子のっとんちゃうぞ!」

 

 

ニーナが代表を譲ったが、それが逆効果になってしまったようだ。

アキラくんが額に皺を寄せて、握り拳を掲げている。

 

そんな姿をニーナは冷めた目で見ていた。

 

 

「別に、調子にのってない」

 

「その冷めた態度が気に食わんねん!クラス代表を『譲ってあげる』みたいなツラが気に食わん!絶対戦っても負けへんけどぉ、この男が鬱陶しいし譲ってあげてもいいけどぉ、大人やからぁ、みたいな顔やろが!」

 

 

凄い早口で、凄い勢いで、凄い大声で怒鳴っている。

そんな彼にニーナは少し困ったような顔をしている。

 

 

「そういう訳じゃないけど」

 

「あーん?ちゃうなら何やねん、戦っても勝てへんから、負ける前に代表の座を譲ろうって話か?ほんなら仕方ないけどなぁ」

 

 

アキラくんがそんな事を言い、すぐ横の席のクラスメイトの子に「や、やめなよ」なんて諌められている。

だが、頭に血が上っている彼を制止するに至らなかった。

 

アキラくんが、意地に悪そうな笑みを浮かべた。

 

 

「まぁ、しゃーないか!クラスの1位、2位と仲がええからってえこ贔屓されとるんやな。ちょっと顔がええからって、調子乗んなよ」

 

「…………」

 

 

あ、まずい。

 

 

「はー、だんまりかいな。そうやってバトルからも、逃げるんか?臆病者が」

 

 

何かがキレる音が、真横から聞こえた。

冷や汗が流れる。

 

 

「私は逃げてないし、臆病者じゃない」

 

「はーっ、そうかぁ?戦わずして代表譲る言うてさ、そんなんカードバトルの自信ないですぅ言うてるようなモンやろ!」

 

 

ガタリ、と椅子を蹴る音がして……ニーナが席を立った。

 

 

「いいよ、そんなに煽らなくても」

 

 

いつも通りの無表情……だけど、目が笑っている。

 

いや、アレはキレてるのを隠そうと笑っているだけだ。

めちゃくちゃ、キレてる。

 

そんなニーナが、口を開いた。

 

 

「カードバトルで決めよう。勝った方が代表。分かりやすくて良い」

 

「話が早いやっちゃな……でも、ええで。そうやな、それが一番ええわ!」

 

 

あまりにも早いカードバトルの約束。

それにクラスメイトがついて行けない中、アキラくんがミユちゃんに目を向けた。

 

 

「ミユちゃん、かまへんな?」

 

「え?あ、う、うん」

 

「おっしゃ……じゃあ、オマエ。放課後に第三実技室に集合や。そこで白黒つけようや」

 

「分かった」

 

 

そして、アキラくんが椅子に座り直した。

彼の真横の席に座っている女の子が、何やらアキラくんを諌めようと色々と言っているが……効果は薄いだろう。

 

ニーナも着席して、腕を組んだ。

何か小声で呟いていた言葉が、僕の耳に入る。

 

 

「……ボコボコにしてやる」

 

 

ぶ、物騒過ぎる。

思わずニーナの席に寄り添う。

 

 

「ニ、ニーナ?そんなに怒らなくても──

 

「…………」

 

 

あ、ダメだ。

全然、ダメだ。

今のニーナの目にはアキラくんの姿しかない。

ニーナを止めるのは諦めて、試合に関する話を口にする。

 

 

「えっと、カードバトルするなら……アキラくんのデッキについて──

 

「言わなくて良い。初対面で勝つ事に意味がある」

 

 

……そっか、試合前にデッキの情報を知るのは不公平なのか。

彼女はアキラくんをブチのめす為にカードバトルをする訳ではなく、完膚なきまでに勝つためにカードバトルをしたいのだろう。

完膚なきまでに勝つ、という事は互いに公平な条件で、真正面から戦って勝つという事だ。

事前にデッキ情報を得てしまえば、公平ではない……という判断なのだ。

 

 

「……う、うん。分かったよ……頑張ってね?」

 

「うん」

 

 

腕を組んでニーナが頷いた。

……う、うーん、やっぱり彼女、ユウキくんと同じタイプだ。

挑発されると、挑発してきた人が負けを認めるまで噛み付くタイプ。

極度の負けず嫌い。

 

そんな彼女達を見て、ミユちゃんは若干怯えた顔をしている。

 

 

「……え、えーっと……じゃあ、ユウキくんとヒイロくんはクラス代表に確定で。残り1名は未定……ニーナちゃんか、アキラくん、勝った方って事でいい?」

 

「それでかまへん」

 

「問題ない」

 

 

僕を挟んで、ニーナとアキラくんが睨み合っている。

……か、勘弁して欲しい。

 

僕はまた胃を痛めた。

そろそろ胃薬を常備しなくちゃならないかもしれない。




次回はカードバトル回

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