TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい   作:WhatSoon

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#17 VS吉祥院アキラ

そして、放課後。

第三実技室。

 

そこは通常の教室の数倍の大きさがあり、観客用の二階建ての席もある教室だ。

小さな体育館と言ってもいい。

 

使用許可はミユちゃんが取った。

学生同士、何かしらの理由があれば簡単に貸し出される場所だ。

 

そんな実技室の中央で、ニーナとアキラくんが向かい合っていた。

互いにバトルディスクを用意している。

 

そんな彼女達を二階の観客用の席から見ていると──

 

 

「うぅ、大変な事になっちゃったよ」

 

 

頭を抱えているミユちゃんの姿があった。

この勝負……というか、もう喧嘩みたいなものの原因はミユちゃんがクラス対抗戦の代表に、ニーナを推薦した事が原因だ。

 

確かに……ニーナがクラス対抗戦の代表になれば、成績3位のアキラくんが外されるのは分かるけど……少々強引すぎる、というか突発的過ぎる言動だったと言わざるを得ない。

 

最初はニーナを推薦するだけで、アキラくんを含めて話し合うつもりだったみたいだけど……ああして喧嘩のようなカードバトルに発展してしまったのだ。

それはミユちゃんからすれば想定外だっただろうに。

 

そうして、頭を抱えているミユちゃんの肩を、ユウキくんが叩いた。

 

 

「大丈夫だって。寧ろ、いいガス抜きになるんじゃねーの」

 

「え?」

 

「アキラもさ、ニーナの実力が分からねー訳じゃねぇと思うんだよな。実技の授業で、ニーナのバトルタクティクスは知ってるし」

 

「じゃ、じゃあ何で喧嘩売るような真似したの?」

 

「そりゃ、アキラが男だからだろ」

 

 

ユウキくんが指を立てた。

 

 

「男……?」

 

「あー、性別的な意味じゃなくてな……なんつーか、そういうもんなんだよな」

 

「……何それ?」

 

「単純なんだよ、アキラは。いい意味でも、悪い意味でもな」

 

 

ユウキくんの言葉に、ミユちゃんは首を傾げた。

彼女は分からなかったみたいだけど、僕には何となく分かった。

 

アキラくんにもプライドがあるんだ。

一回も戦った事ない人が、自分より強いだなんて認めたくないんだろう。

例え、本当に自分より強かったとしても、戦った上で認めたい……そう考えているんだ。

 

だから敢えて挑発して、彼女と戦おうとした。

 

クラスの代表という地位が欲しいだけなら、ニーナが譲った段階で気分よく受け取っていた筈だ。

そして、そんな事を彼の誇り(プライド)が許さなかった。

それだけだ。

 

 

「……お、始まるみてーだぞ」

 

 

ユウキくんがそう言うと同時に、ニーナとアキラくんがバトルディスクを構えた。

 

 

『『オープン・ファイト』』

 

 

試合の開始を告げる声が響いた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「先攻は私。カードを1枚引き、1枚マナへ置く」

>ニーナ:ターン1

>ニーナ:手札5→5

>ニーナ:マナゾーン0→1

 

 

私はマナに不要なカードを置き、手札へ視線を落とす。

……初動は充分。

だが、手札の消費は抑えたい。

 

まずは相手デッキの動きを見切る。

ここは何もせず、ターンを受け渡そう。

 

 

「私はこれで、ターンを終了する」

 

「そんなら、ワイのターンや!後攻1ターン目、カードを2枚引いて、マナへ置く!」

>アキラ:ターン1

>アキラ:手札5→6

>アキラ:マナゾーン0→1

 

 

視線を相手プレイヤーへ向ける。

彼のデッキタイプは分からない。

 

ヒイロが対戦前に、気を利かせて教えてくれそうになったが……それでは意味がない。

この勝負、確実に勝たなければならない『訳ではない』。

クラスの代表を決めるだけの、至って平和な勝負。

 

敗者にペナルティがあり、守らなければならない物があるのだとしたら……対戦前にデッキを教えて貰っていただろう。

 

だが、違う。

これは単純な力比べだ。

 

どちらが『強い』のか決める戦い。

そこに事前の情報は要らない。

 

カードバトルの実力のみで雌雄を決しなければ、真の意味で相手より『強い』とは言えない。

例え、誰かが『それは別に卑怯ではない』と言ったとしても、私自身が認められない。

 

真正面から小細工はなしで戦いたい。

 

 

「……ワイはこのまま、ターンを終了。オマエのターンや」

 

 

……ふむ。

どうやら、互いに1ターン目の行動はないようだ。

 

 

「私のターン。カードを引いて、マナへ」

>ニーナ:ターン2

>ニーナ:手札5→5

>ニーナ:マナゾーン1→2

 

 

デッキタイプは不明。

なら、様子見させて貰おうか。

 

 

「私は手札から『猛毒マイマイ』を召喚」

>ニーナ:マナ2→0

>ニーナ:手札5→4

 

 

フィールドに髑髏を背負った、極彩色のカタツムリが姿を現した。

────────────────

②猛毒マイマイ

クリーチャー・カード

種族:テラー

猛毒(「猛毒」を持つクリーチャーが他クリーチャーと戦闘した場合、戦闘後にそのクリーチャーは破壊される)

パワー1/タフネス2

────────────────

 

 

『猛毒マイマイ』はキーワード能力『猛毒』を持つクリーチャー。

その効果は戦闘後に、戦闘した相手クリーチャーを破壊する効果。

 

つまり、攻撃した場合、または攻撃された場合に、どれだけ相手クリーチャーが強靭でも確実に1対1の交換ができるという事だ。

 

私は視線を相手プレイヤーに戻す。

 

 

「へっ、随分と気色の悪いカードを使うんやな」

 

 

それは見た目が、か。

それとも効果が、か。

まぁ、どちらもか。

 

 

「私はターンを終了する」

 

「ほな、ワイのターンや!カード引いて、マナへ!」

>アキラ:ターン2

>アキラ:手札6→6

>アキラ:マナゾーン1→2

 

 

アキラの表情を読む。

先程、カードを引いた時に片眉を上げていた。

そして、何かを押し殺すように舌を上唇を舐めていた。

 

それは恐らく、興奮。

そして歓喜。

 

つまり、何かしら思い通りのカードが引けたのだろう。

 

 

「うし、ワイは手札から『星読みの道士』を召喚や!」

>アキラ:マナ2→0

>アキラ:手札6→5

 

 

場に白い法服を着た男が現れた。

────────────────

②星読みの道士

クリーチャー・カード

種族:スピリット

召喚時:カードを2枚引く。その後、手札を2枚、デッキの下に戻す。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

 

「『星読みの道士』の召喚時効果!カードを2枚引いて、2枚デッキの下に戻す!」

>アキラ:手札5→7

>アキラ:手札7→5

 

 

ふむ。

手札交換カード、か。

召喚時効果は2枚引いて2枚消費だが、クリーチャー本体の手札消費を加味すれば2枚引いて3枚消費になる。

更に消費の本質もデッキ戻し……墓場利用にも繋げられない。

 

だが、デッキからカード2枚も引けると言うのは大きい。

それだけ手札の質を高められる、という事は……。

 

このデッキは何かしらのキーパーツを重要視しているのか。

デッキに戻す事に意味があるのか。

 

まだ断定はできない。

様子見は継続だ。

 

 

「へっ、これでワイのターンは終了や!」

 

「私のターン。カードを引いて、マナへ」

>ニーナ:ターン3

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナゾーン2→3

 

 

さて、取り敢えずは……デッキの構成が分かっていない以上、『星読みの道士』を場に残して置きたくない。

そして、私の場の『猛毒マイマイ』の能力値は(1/2)。

 

プレイヤーに攻撃しても1点だけ。

ならば──

 

 

「『猛毒マイマイ』で『星読みの道士』を攻撃」

>猛毒マイマイ(1/2)→(1/1)

>星読みの道士(1/1)→(1/0)

 

 

こちらの体力値(タフネス)は2。

『星読みの道士』と戦闘しても1残る。

ここはクリーチャーを上から踏み、ボードアドバンテージを稼がせて貰う。

 

『猛毒マイマイ』が毒液を吐いて、『星読みの道士』を破壊した。

 

 

「チッ」

 

 

アキラの舌打ちを無視して、次の手を考える。

手札へ視線を落とす。

そこには自身のクリーチャーを生贄にする事でドローできる呪文(スペル)、『魂の変換』があった。

────────────────

③魂の変換

呪文カード

自分の場のクリーチャーを1体破壊する。

その後、カードを3枚引く。

────────────────

 

これでリソースを回収……と一瞬思ったが、その考えを改める。

アキラのデッキの正体が分かっていない今、交戦させるだけで大型クリーチャーすら除去できるキーワード能力『猛毒』を持つ、『猛毒マイマイ』を自壊させるのは拙いか。

 

手札に這わせる指を、一つ左にずらす。

 

 

「私は手札から呪文(スペル)『無謀な契約』を発動。手札を1枚破棄して、2枚引く」

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナ3→1

────────────────

②無謀な契約

呪文カード

手札を1枚破棄する。

その後、カードを2枚引く。

────────────────

 

 

私もアキラと同様に、手札交換を選んだ。

場にキーワード能力『猛毒』を持つクリーチャーが居るため、次の相手クリーチャーを確実に破壊できるからだ。

 

そして、更に──

 

 

「手札から破棄した『蠢く屍』の効果。自身を再生(リアニメイト)する」

────────────────

②蠢く屍

クリーチャー・カード

種族:テラー

このクリーチャーが手札/デッキから墓場に送られた時、再生する。

パワー2/タフネス1

────────────────

 

 

自分の場に半壊したゾンビが姿を現した。

これで『猛毒』を持つ『猛毒マイマイ』、2/1の能力値(ステータス)を持つ『蠢く屍』が並んだ。

 

私のデッキには手札破棄をコストとするカードが多く採用されている。

手札破棄された時に再生(リアニメイト)できる『蠢く屍』は相性が良い。

 

 

「これで私はターンを終了する」

 

「フン、ならワイのターンや!カードを引いて、1枚マナへ置く!」

>アキラ:ターン3

>アキラ:手札5→5

>アキラ:マナゾーン2→3

 

 

アキラが視線を私の場へ向けた。

 

 

「手札から呪文(スペル)『オドの風』を発動!手札を1枚破棄して、場のクリーチャー全てに4ダメージを与える呪文(スペル)や!」

>アキラ:手札5→3

>アキラ:マナ3→0

────────────────

③オドの風

呪文カード

手札を1枚破棄する。

その後、場のクリーチャー全てに4ダメージ。

────────────────

 

 

手札をコストにした全体除去(AOE)か!

場に竜巻が発生し、私の場のクリーチャー全てを破壊した。

 

これで場は空になってしまった。

だが、場が空にはなったがアキラはマナを使い果たした。

このターンはもう動けない……ならば、私が主導権を握っているのは変わらない。

 

 

「これでワイのターンは終了や」

 

「私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」

>ニーナ:ターン4

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナゾーン3→4

 

 

しかし、手札コストを要求する全体除去(AOE)……それだけ、速攻(アグロ)対策を重く見ているのか。

ならば、アキラのデッキは中速(ミッドレンジ)以降の遅いデッキだろう。

 

とにかく、ここは得られた主導権を握り続ける事が重要だ。

 

 

「私は手札から『魂の賭博者』を召喚。カードを3枚引く」

>ニーナ:手札4→6

>ニーナ:マナ4→0

────────────────

④魂の賭博者

クリーチャー・カード

種族:デーモン・ウィザード

召喚時:カードを3枚引く。

死亡時:手札を3枚破棄する。

パワー4/タフネス3

────────────────

 

 

手札交換をしつつ、4/3という能力値(ステータス)のクリーチャーを用意できた。

これでまた、アキラに除去を強要できる。

 

 

「私はこれでターンを終了」

 

「ワイのターン!カードを引いて、1枚マナへ」

>アキラ:ターン4

>アキラ:手札3→3

>アキラ:マナゾーン3→4

 

 

さて、どうする?

『魂の賭博者』の打点は4、無視するには厳しい攻撃力だ。

そして、死亡時にデメリット効果もある以上、除去したい筈──

 

 

「そのまま、ターンを終了や」

 

「む……?」

 

 

ドローゴー……何もせずにターンを受け渡した?

プレイできるカードが無かったのか……手札事故か?

それとも、高速呪文(クイックスペル)による妨害狙いか?

だとしても……あからさま過ぎる。

 

それにボードアドバンテージを取られている今、アキラに私の妨害をする余裕があるようには見えない。

 

 

「……私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」

>ニーナ:ターン5

>ニーナ:手札6→6

>ニーナ:マナゾーン4→5

 

 

マナを全て支払ったカードを打ち消されると拙い。

ここは軽量クリーチャーを小出しにして、様子見をするか。

 

 

「私は手札から『スパルトイ』を召喚。その召喚効果によりスパルトイ・トークンを生成する」

>ニーナ:手札6→5

>ニーナ:マナ5→3

────────────────

②スパルトイ

クリーチャー・カード

種族:テラー・ナイト

召喚時:自分の場に1/2の『スパルトイ・トークン』を1体生成する。

パワー1/タフネス2

────────────────

 

 

場に鎧を纏った骸骨が2体現れた。

……高速(クイック)呪文(スペル)による妨害はなかったか。

単純に無いのか、それとも発動タイミングを見計らっているのか。

 

 

「そして私は呪文(スペル)『魂の変換』を発動。スパルトイ・トークンを破壊してカードを3枚引く」

>ニーナ:手札5→7

>ニーナ:マナ3→0

────────────────

③魂の変換

呪文カード

自分の場のクリーチャーを1体破壊する。

その後、カードを3枚引く。

────────────────

 

 

ここにも妨害はない。

……単純な手札事故、なのか?

 

とにかく、今、無防備であるならば攻めるべきだ。

 

 

「私は『魂の賭博者』で相手プレイヤーへ攻撃」

>魂の賭博者(4/3)

 

「ぐっ……!」

>アキラ:ライフ20→16

 

 

『魂の賭博者』であと4回殴ればライフは0だ。

そこまで『魂の賭博者』を維持できるとは思わないが、他の打点カードやクリーチャーと組み合わせる事で削り切れるだろう。

 

 

「私はこれでターンを終了──

 

「その瞬間、高速(クイック)呪文(スペル)『旧蔵の採掘』を発動するで!」

>アキラ:手札3→2

>アキラ:マナ4→0

 

 

このタイミングで……!

やはり、マナを残していたのは高速(クイック)呪文(スペル)を撃つ為だったか。

 

 

「 『旧蔵の採掘』は自分の墓場(トラッシュ)に眠る置物(オーナメント)を場に戻すカードや!」

────────────────

④ 旧蔵の採掘

高速呪文カード

自分の墓場に存在するコスト5以下のオーナメント・カードを1枚、場に戻す。

────────────────

 

 

置物(オーナメント)……?

だが、アキラはまだオーナメントをプレイしていない。

……いや、そうか。

手札コストを要求する全体除去(AOE)『オドの風』で捨てていたのか。

 

 

「ワイが墓場(トラッシュ)から場に戻す置物(オーナメント)は……これや!」

 

 

アキラの場に、赤い木々で組まれた祭壇が現れる。

そして、その祭壇の中央には黄金の杯……そして、その杯には『炎』が注がれていた。

 

 

「『根源の火』や!」

────────────────

⑤根源の火

レジェンド・オーナメント・カード

起動効果:手札からコストX以下のクリーチャー1体を場に出す(Xは自分のマナゾーンの枚数に等しい)。

ターン終了時:マナゾーンのカードを1つ破棄する。

────────────────

 

 

レジェンド・オーナメントか!

これがアキラの切り札……!

 

 

「知っとるか?万物の始まりは一つの火やった……って言うで」

 

「…………?」

 

「は、無視かいな。ノリ悪いのぉ……まぁ、ええわ。ワイのターン!」

>アキラ:ターン5

>アキラ:手札2→2

>アキラ:マナゾーン4→5

 

 

いや、無視した訳ではなく……よく分からなかっただけだが……。

 

まぁいい、先程場に出されたレジェンド・オーナメント『根源の火』の効果を確認する。

効果は2つ。

 

毎ターン、自身にマナ最大値以下のクリーチャーを無料(タダ)で出せる効果。

自身のターン終了時に、自身のマナを1枚破棄させるデメリット効果。

 

……なるほど。

マナを破棄するデメリットは自ターン終了時……私のターン中に出せば踏み倒せる。

だから敢えて私のターンに場へ出したのか。

 

しかし、メリット効果である『マナ最大値以下のクリーチャーを出せる』効果。

これを扱うには十分な手札が必要な筈だ。

何故なら、効果によって手札を1枚消費して、更に残ったマナでカードをプレイすればすぐに枯渇する。

今、手札がない──

 

 

「手札がないワイが、この効果を上手く扱える訳がない……そう思っとるやろ?」

 

 

……図星だ。

アキラに視線を向ける。

 

 

「そら甘いわ。甘すぎて口から砂糖が出るぐらい楽観視しとる!ワイは『根源の火』の効果を発動!手札からクリーチャーを場に出す!」

 

 

アキラのマナゾーンの枚数は5……コスト5以下のクリーチャーが場に出せる。

 

 

「『大式神(オオシキガミ) 炎鬼(エンキ)』を場に出すで!」

>アキラ:手札2→1

 

 

場に、真っ赤で無機質な……鬼を模した霊が姿を現れた。

────────────────

⑤大式神 炎鬼

クリーチャー・カード

種族:スピリット・デーモン

突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)

死亡時:デッキから「大式神 土蜘蛛」を手札に加える。

パワー4/タフネス3

────────────────

 

 

「『大式神 炎鬼』はキーワード能力『突撃』を持つ!そのまま、オマエの場の『魂の賭博者』に攻撃や!」

 

 

炎鬼が突進し、悪魔に衝突し……互いに砕けた。

>大式神 炎鬼(4/3)→(4/0)

>魂の賭博者(4/3)→(4/0)

 

 

「……魂の賭博者の死亡時効果。手札を3枚捨てる」

>ニーナ:手札7→4

 

 

マナの支払いなしに出されたクリーチャーに、『魂の賭博者』が破壊されてしまった。

手札も捨てさせられたが……十分だ。

 

そして、何よりアキラの手札は残り1枚──

 

 

「『大式神 炎鬼』死亡時効果を発動!ワイはデッキから『大式神 土蜘蛛』を手札に加える!」

>アキラ:手札1→2

 

 

……名称指定のピンポイントなデッキサーチ?

珍しい効果に眉を顰める。

 

 

「そして、今手札に加えた『大式神 土蜘蛛』を召喚!」

>アキラ:手札2→1

>アキラ:マナ5→0

 

 

場に、土のような色をした、巨大な蜘蛛を模した式神が現れた。

────────────────

⑤大式神 土蜘蛛

クリーチャー・カード

種族:スピリット・インセクト

死亡時:デッキから「大式神 金獅子」を手札に加える。

パワー5/タフネス5

────────────────

 

 

このクリーチャーも死亡時に、名称指定のサーチ効果を持っている……?

 

 

「よー分かっとらんようやから、教えといたる」

 

「…………?」

 

「『火』は灰となり『土』へ返り、『土』は地中で『金』を産む。『金』は表面に『水』を滴らせ、『水』は『木』を育て……やがて『火』に燃ゆる」

 

 

アキラが得意げに指を開いた。

 

 

「即ち『五行』の転換。万物の流転を表しとるんや」

 

「……そう?随分と詳しいね」

 

「アホか。ワイの苗字を忘れたんか?ワイは吉祥院 アキラや」

 

 

吉祥院……?

 

 

「……それがどうかしたの?」

 

「はぁ!?知らんのか!?」

 

「知らないけど……」

 

 

私が首を傾げると、アキラは眉間に皺を寄せた。

 

 

「吉祥院っちゅーたら、大陰陽師・聖明の子孫やぞ!?」

 

「……有名なの?」

 

「映画にもなっとるやろが!5年ぐらい前やけど!」

 

「……ごめん、知らない」

 

 

アキラが更に顔を強張らせた。

 

 

「っ!……っ、まぁええわ!つまり、つまりやなぁ……!ワイの『大式神』サイクル・クリーチャーは五行によって転換し、5体のクリーチャーがそれぞれサーチし合うってコトや!」

 

「どうして、自分のデッキの事を相手に教えるの?」

 

「ほんだから、親切心や!何も分かっとらん相手に『分からん殺し』してもオモロないやろが!」

 

「……はぁ?」

 

「何やその気の抜けた返事は!?」

 

 

目の前でギャーギャー喚くアキラに目を瞬く。

 

 

「もうやる事ないなら、早くターンを終了して欲しいけど……」

 

「なんやと!?くっそ!ワイ、やっぱオマエのこと嫌いや!」

 

「そう……私は別に、アキラのこと嫌いじゃないけど」

 

 

そう。

彼は小物のような言動が目立つが、カードバトルの技能は間違いなく優れていた。

オーナメントのデメリットを踏み倒すギミック、手札消費の激しさを抑える『大式神』クリーチャー……。

 

優れたデッキ構築と、それを再現するプレイング。

優秀なカードバトラーなのだ。

だから、嫌いではない。

 

そう伝えると、アキラは顔を赤くした。

 

 

「は?はー!?何言うとんねん!嘘吐くならもうちょいマシな嘘吐かんかい!」

 

「嘘じゃないけど」

 

「〜〜〜〜っ!!」

 

 

メチャクチャ怒っているのだろう。

顔を赤くして、わなわなと震えている。

 

 

「ワ、ワイのターンは終了や!オマエのターンや、はよせい!」

 

「……そっちがターン終了の宣言を遅らせた癖に」

 

「うっさい!」

 

 

私はため息を吐いて、カードを引いた。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

「なんだか仲良さそうだね……」

 

 

ミユちゃんが僕の隣で、首を傾げた。

険悪だと思っていた二人が、想像以上に打ち解けている姿に理解が出来ないのだろう。

 

 

「…………」

 

 

ニーナは楽しそうだ。

やっぱり彼女はカードバトルが好きなのだ。

 

ユウキくんが腕を頭の後ろで組んで、頷いた。

 

 

「……ニーナとカードバトルするとさ、何か妙に楽しいんだよ。多分、すっげー真剣にカードバトルやってるから……なんだろうな。アキラもそれを感じ取ってるんだろ」

 

 

少し、何故か……胸の奥が痛い。

ジクジクと痛い。

頭の中で異音が響く。

 

……何でだろうか。

何が……何を感じているのだろうか。

 

何がそんなに。

どうしてそこまで。

なのに僕は。

 

妬ま──

 

 

「……オイ、ヒイロ。大丈夫か?」

 

「え?」

 

「ヒイロくん、保健室行くならついて行くけど……?」

 

 

二人に心配されて、僕は首を横に振る。

 

 

「い、いや、大丈夫だよ。本当に平気だから」

 

「でも、すっごい汗かいてるよ」

 

「……それでも、大丈夫だから。きんちょうしてるだけだよ、うん」

 

「……大丈夫なら、良いんだけど」

 

 

ミユちゃんの心配そうな目から、視線を逸らし──

 

 

「…………?」

 

 

僕の腕に装着されているバトルディスクが……鈍く輝いていた。

……発光機能なんてない、普通のバトルディスクの部品が……。

 

 

目を、瞬く。

 

 

……そこには、いつものバトルディスクがあった。

変な輝き方もしていない、いつもの姿。

 

 

目の錯覚……だろうか。

 

 

気付けば胸の痛みも、頭痛もなくなっていた。

息を深く吐き出して、再びニーナとアキラくんの勝負へと視線を戻した。

カードバトル要素を

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