TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい 作:WhatSoon
深夜、ヒイロのデッキ調整を手伝って……何度か試しに、仮想敵役としてデッキを回して、また調整して。
気付けば深夜になっていたので寝た。
ヒイロはまだデッキ調整をしていたけれど。
眠かったし。
朝起きて、リビングに行けば……ソファで横になって、寝ているヒイロを見つけた。
限界ギリギリまでデッキ調整してたんだろうな……うん、若いカードバトラーにしかできない無茶だなぁ。
あ、いや、今は私も若者だけどね。
……睡眠を削って徹夜できる気がしないんだよね。
毎日8時間は寝たい。
「……ギリギリまで寝させてあげよっと」
私は簡単な朝食を用意する。
勿論、ヒイロの分もだ。
砂糖とミルクたっぷりのコーヒーを飲みつつ、テレビを付ける。
ちょっと音量は控えめで。
そして、いつもより少し遅い時間で──
「起きて、ヒイロ。もう朝だから」
「……ん、え、ぁ……えっ?」
ガバっと起きて、準備を始めた。
顔を赤くしてたけど、風邪でも引いてないか心配だ。
そんなこんなで、いつも通りの準備をして。
昨晩遅くまで調整したデッキを持って、私とヒイロは学園へと向かう。
今日はクラス対抗戦、最終日。
Cクラスとの試合日だ。
◇◆◇
僕はロッカールームで、深呼吸をした。
不安で押しつぶされそうな心を何とか整えて、振り返る。
ニーナとユウキくんは、既に準備が万端なようだ。
「ヒイロ、準備できた?」
「うん、待たせてゴメン。ユウキくんも」
「へへっ、良いって事よ。じゃ、行くぜ!」
クラス代表である3人で、ロッカールームから出る。
既に会場は生徒で埋まっていた。
舞台の用意は出来ている。
後は……演者である3人と3人だけだ。
相手側の3人に目を向ける。
神経質そうな眼鏡の男……金髪でオールバックで、眉間に皺を寄せている。
もう1人は筋肉質で大柄な男……スキンヘッドでちょっと老け顔。
そんな2人を従えるように、堂々と立っているのが──
Cクラスのリーダー。
安東院 セレナさん。
ゴシック調の改造制服に身を包んだ、金髪縦ロールの少女。
そんな彼女の目は、ニーナに向けられていた。
……ニッコリと笑っている。
笑っているが……少しも愉快ではなさそうだ。
相手の1人、神経質そうな眼鏡の男がバトルスペースへ向かう。
それに合わせて、僕も立ち上がる。
「……最初は僕だね」
「ヒイロ、頑張ってね」
ニーナからの応援の言葉に頷いた。
直後、背中を軽く叩かれた。
「良い所見せろよ?」
振り返ると、ユウキくんがいつものように笑っていた。
「うん、ありがとう。2人とも。じゃあ──
そして、僕はバトルスペースへ足を向けた。
「行ってくるよ」
誰に言った訳ではない。
ただ、己を奮い立たせるために口にした。
緊張、不安……それと、ほんの少しの高揚。
それが戦う力になれば良いんだけど。
バトルスペースに立つ。
正面にはCクラスの代表。
「悔いなくやろう。えっと──
「レイだ。小塚 レイ」
「レイさんで、いいかな」
「好きに呼べ。桐谷 ヒイロ」
……初対面な筈だけど、僕の名前は知っているみたいだ。
やっぱり、彼は……いや、彼らは。
「……勝たせて貰うよ。レイさん」
「フン」
バトルディスクを展開させる。
緊張の瞬間、互いの視線を向け合う。
光のラインが、互いのバトルディスクを繋げる──
『『オープン・ファイト』』
そして、今、バトルが始まった。
先行は……よし、僕だ。
「僕のターン!カードを引いて、1枚マナへ!」
>ヒイロ:ターン1
>ヒイロ:手札5→5
>ヒイロ:マナゾーン0→1
手札を確認して、戦略を組み立てる。
何ターン目にリーサルを見据えるか、そこに至るまでどう動くか。
決着まで、長引かせるつもりはない。
デッキから引けるカードの枚数よりも、最初の手札の枚数の方が多い関係上……初期手札での組み立てが重要視される。
よし。
僕は、カードを1枚バトルディスクに置く。
「僕は手札から
>ヒイロ:手札5→4
>ヒイロ:マナ1→0
────────────────
①妖精の導き
呪文カード
追唱(このカードは墓場から発動する事が出来る。その後、このカードをデッキに戻す)
自分の場に種族「フェアリー」を持つパワー1/タフネス1のフェアリー・トークンを生成する。
────────────────
場に妖精が姿を現した。
昨日、ニーナに協力して貰って、調整したフェアリーデッキ。
その本質はコンボ偏重のデッキ……ではない。
序盤からクリーチャーを展開する事で、相手プレイヤーのライフを削る。
ライフが削れれば、コンボに必要なフェアリーの数が減る……つまり、コンボの難度が下がる。
それが今の僕のデッキだ。
「僕はこれでターンを終了する」
「私のターン。後攻故にカードを2枚引いて、1枚マナへ置く」
>レイ:ターン1
>レイ:手札5→6
>レイ:マナゾーン0→1
さて、相手の出方は──
「そのまま、ターン終了だ」
よし、1コストの除去は握っていないようだ。
序盤で一気に有利を作らせてもらおう。
「僕のターン!カードを引いて、1枚マナへ!」
>ヒイロ:ターン2
>ヒイロ:手札4→4
>ヒイロ:マナゾーン1→2
空っぽの盤面。
ここは好機、一気に攻める!
「まずは場のフェアリー・トークンで相手プレイヤーへ直接攻撃!」
>フェアリー・トークン(1/1)
妖精が相手へ突進を繰り出した。
「チッ……」
>レイ:ライフ20→19
まずは1点。
そしてまだ、さらに削らせて貰う!
「さらに、手札から『妖花の精霊』を召喚!」
>ヒイロ:手札4→3
>ヒイロ:マナ2→0
場に半透明の精霊が現れた。
────────────────
② 妖花の精霊
クリーチャー・カード
種族:スピリット・フェアリー
召喚時:自分の場のクリーチャーを1体破壊する。
その後、このクリーチャーは「速攻」を持つ(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)。
パワー3/タフネス1
────────────────
「その効果により、場のフェアリー・トークンを破壊し『速攻』を持つ!」
場のフェアリーを吸収して、精霊が姿を変える。
より、俊敏そうな姿へ。
「『速攻』を手に入れた『妖花の精霊』で相手プレイヤーを攻撃!」
>妖花の精霊 (3/1)
「っ……」
>レイ:ライフ19→16
これで合計4点のダメージ。
1/5削る事に成功した。
盤面に3/1、これも弱くはない。
十分な打点になる筈だ。
「僕はこれでターンを終了するよ」
「私のターン。カードを引いて、1枚マナへ置く」
>レイ:ターン2
>レイ:手札6→6
>レイ:マナゾーン1→2
手札枚数はレイさんの方が多い。
後攻1ターン目の2ドローと、1ターン目パスによる影響だ。
僕が警戒していると……彼が視線をこちらへ向けた。
「私は、手札から『砦のゴーレム』を召喚する」
>レイ:手札6→5
>レイ:マナ2→0
場に巨大な建造物を模した巨人が現れた。
────────────────
②砦のゴーレム
クリーチャー・カード
種族:ゴーレム
防衛(「防衛」がフィールドに存在する場合、相手は防衛を持たないキャラクターに攻撃できない)
パワー1/タフネス4
────────────────
代わりに
最悪、あのクリーチャー1体でフェアリー・トークン4体と交換させられる可能性があるって事だ。
「私はこれでターンを終了」
しかし、『防衛』クリーチャーの展開は想定済みだ。
今……いいや、このゲームが始まる前からだ。
「僕のターン!カードを引いて、1枚マナへ!」
>ヒイロ:ターン3
>ヒイロ:手札3→3
>ヒイロ:マナゾーン2→3
『対策をしている』という事が、対策相手にバレている場合……その『対策』に対する『対策』が容易に出来る。
自分のデッキの弱み……その弱みに対する対抗策。
そして、その対抗策を貫通するためのカードを用意すればいい。
目の前の巨大なゴーレムへ目を向ける。
僕のデッキに対する対策の一つ、『防衛』クリーチャーによる防御。
それは既に想定済みだ。
デッキの調整段階から、僕も考えているんだ。
「手札から
>ヒイロ:手札3→2
>ヒイロ:マナ3→0
────────────────
③新緑の一撃
呪文カード
クリーチャー1体に4ダメージ。
その後、自分の場に種族「フェアリー」クリーチャーが存在する場合、相手プレイヤーに2ダメージ。
────────────────
新緑の靄が矢に変わり、『砦のゴーレム』を貫いた。
>砦のゴーレム(1/4)→(1/0)
「さらに、場に種族『フェアリー』が存在する場合、相手プレイヤーへ2ダメージを与えるよ!」
「っ……なるほど……!」
>レイ:ライフ16→14
『防衛』クリーチャーを除去しつつ、打点を飛ばせるカード。
僕の狙い通りだ。
テンポのロスは最低限に、盤面の処理と、ライフダメージを稼げた。
そして、今、彼の盤面は空だ。
「『妖花の精霊』で相手プレイヤーを攻撃!」
>妖花の精霊 (3/1)
「チッ……」
>レイ:ライフ14→11
残り11点。
このまま、何かされる前に削り切る。
「これで僕はターンを終了するよ」
「……そうか。ならば、次は私のターン。カードを引いて、1枚マナへ置く」
>レイ:ターン3
>レイ:手札5→5
>レイ:マナゾーン2→3
盤面に残っている打点は『妖花の精霊』による3点。
除去されてもリカバリーは効くけれど……。
「そして、このままターンを終了する」
……何もせず、ターンを終了した?
除去もせずに……?
何で……いや、そうか。
僕が今握っているデッキは、本来のコンボ・デッキではなく、
それをレイさんが事前に知っていないのならば、彼のデッキにはコンボを妨害するためのカードが多く入っている筈だ。
故に、序盤に使えるカードが入っていない……という事かな。
「……僕のターン。カードを引いて、1枚マナへ」
>ヒイロ:ターン4
>ヒイロ:手札2→2
>ヒイロ:マナゾーン3→4
僕の残りの手札枚数も少ない。
あまり、悠長にプレイしていたらリソース切れを起こしてしまう。
ここは詰める。
相手の策略だとしても、僕は詰めなければならない。
「まずは、『妖花の精霊』で相手プレイヤーを攻撃!」
>妖花の精霊 (3/1)
「…………」
>レイ:ライフ11→8
よし、残り8点。
十分に
ここは更に、盤面を充実させて次ターンに備えよう。
「まずは墓場に存在する
>ヒイロ:マナ4→3
────────────────
①妖精の導き
呪文カード
追唱(このカードは墓場から発動する事が出来る。その後、このカードをデッキに戻す)
自分の場に種族「フェアリー」を持つパワー1/タフネス1のフェアリー・トークンを生成する。
────────────────
キーワード能力『追唱』。
それは
この効果により、僕は手札消費なしでフェアリー・トークンを1体生成できた。
しかし、これは布石だ。
次にプレイするカードのための──
「さらに、僕は手札から『エルフの降霊術師』を召喚!」
>ヒイロ:手札2→1
>ヒイロ:マナ3→0
場に、杖を持ったエルフが現れた。
「『エルフの降霊術師』の召喚時効果!それは自分の場のクリーチャーを1体破壊して、自身をコストが1つ高い『エルフ』クリーチャーに進化させる効果!」
────────────────
③エルフの降霊術師
クリーチャー・カード
種族:エルフ
召喚時:自分の場のクリーチャーを1体破壊する。
その後、このクリーチャーより1つコストが高い「エルフ」クリーチャーをエクストラ・ゾーンから重ねて進化する。
パワー2/タフネス2
────────────────
「むっ……」
「僕は場のフェアリー・トークンを破壊して、『エルフの降霊術師』を進化させる!」
場の降霊術師の元に、光の柱が降り注ぐ。
「『妖精騎士 シンシア』へ進化!」
場に、エメラルドの鎧を着た妖精が現れた。
────────────────
④妖精騎士 シンシア
エクストラ・クリーチャー・カード
種族:フェアリー
進化元:クリーチャー
進化時:自分の場に種族「フェアリー」を持つパワー1/タフネス1のフェアリー・トークンを2体生成する。
パワー3/タフネス3
────────────────
「『妖精騎士 シンシア』の効果!場にフェアリー・トークンを2体生成する!」
場に妖精が現れる。
これで盤面は充分。
除去が追いつかなければリーサルも見えるだろう。
「これで僕はターンを終了──
「その瞬間、私は手札から
>レイ:手札5→4
>レイ:マナ3→0
くっ、やっぱり握っていたのか……!
「『刃の嵐』の効果により、場のクリーチャー全てに1ダメージを与える」
────────────────
③刃の嵐
高速呪文カード
場の全てのクリーチャーに1ダメージ。
────────────────
折れた刃がフィールドを飛び回り、僕の場を襲う。
>妖花の精霊 (3/1)→(3/0)
>妖精騎士 シンシア(3/3)→(3/2)
>フェアリー・トークン(1/1)→(1/0)
>フェアリー・トークン(1/1)→(1/0)
「くっ、う……!」
盤面は崩壊。
しかし、幸い『妖精騎士 シンシア』の
これで──
「さらに、手札から
>レイ:手札4→3
>レイ:マナ0→0
────────────────
⓪餓狼の追撃
高速呪文カード
ダメージを受けているクリーチャー1体に2ダメージ。
────────────────
「なっ──
妖精騎士に飢えた狼が飛びかかった。
>妖精騎士 シンシア(3/2)→(3/0)
「そんな……」
これで盤面は空っぽ。
レイさんは軽量の除去呪文を持っていなかった訳ではなかった。
……しかし、もう僕にマナはない。
ここから動くことは不可能。
「……僕はターンを終了する」
僕に出来るのはターンの終了を宣告するだけだ。
「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」
>レイ:ターン4
>レイ:手札3→3
>レイ:マナゾーン3→4
僕のターン終了時に合わせて、除去をプレイする事で次ターンに余裕を持たせたかったんのだろう。
「……ここで完全に蓋をさせて貰う。手札から
>レイ:手札3→2
>レイ:マナ4→0
場に薄く黒い霧が立ち込める。
僕の場を除去して、隙が出来たタイミングで……?
嫌な、予感がする。
僕はバトルディスクに表示された、
────────────────
④蔓延する疫病
オーナメント・カード
場にクリーチャーが出る度、それは+0/-1の修正を受ける。
────────────────
「なっ……!?」
場に出てくるクリーチャーに対するデバフ!?
それも、
能力値が4/4などの中型クリーチャーなら問題ない。
体力が1点減ったところで問題はない。
だけど、僕のデッキには──
「これでフェアリー・トークンを活かした戦法は機能停止だな」
そうだ。
フェアリー・トークンは1/1!
場に出た瞬間、『蔓延する疫病』の効果で
「…………っ」
本来ならば、それほど強力な
場に既に存在するクリーチャーに対して効果はなく、新たに出るクリーチャーに対しても体力を1点減らすだけだ。
このカードのコストは4。
そこまでターンが伸びれば、
普通の、デッキならば……!
「くっ……!」
息を呑む。
汗が流れる。
視界が狭くなる。
どうすれば、どうすれば……!?
どうしよう、どうしよう……!?
負ける。
負ける?
負けてしまうのか?
戦う前から感じていた、不安。
それが現実味を帯びて、僕に迫り来る。
嫌だ。
嫌だ、嫌だ。
負けたくない。
負けたくない。
「これで私のターンは終了する。さぁ、次はお前のターンだ」
デッキを捲る、力が。
カードを引かなければ。
だけど、この状況を打破するカードは……。
だけど、それだけでは不十分だ。
間違いなく、彼のデッキには『蔓延する疫病』が複数枚投入されている。
その、手段は──
デッキの、上が……黒く、輝いて見える。
何だ……?
何が、起きてるんだ?
これは?
凄く……嫌な、感じがする。
まるで自分で組んだデッキでは、ないかのような……感触。
僕はそんな、デッキの上に指を触れた。
◇◆◇
「……あれ?お兄ちゃんが先に?」
私は足を組みながら、放送室に映る映像に目を向けた。
私の周りには誰もいない。
今、試合が行われてる別の施設に集まってるからね。
ここは隣……映像だけ引っ張ってるだけに過ぎない。
「素養があるとは思ってたけど……存外早いなぁ」
私は回る椅子に背中を預けて、くるくると回る。
「でも、ここで『成』っちゃったら、お姉ちゃんへのサプライズが出来ないじゃん。困ったなぁ」
映像の中で、お兄ちゃんがデッキに指をかける。
「……あれ?」
だけど、そこで止まった。
カードを引かずに、悩んでいるように見えた。
私は映像が映っている液晶を両手で抱える。
「どうしたんだろ?」
映像の中でお兄ちゃんは、顔を青くして……汗を流して、それでもカードを引けずにいる。
「……『それ』が良くないモノだって、理解してるの?嘘だ〜、そんなワケが……」
カメラに映るお兄ちゃんを、私は注視した。
◇◆◇
確かに感じる。
デッキの上に置かれたカード。
このカードならば、この状況を打破できる。
そんなカードは僕のデッキに無い筈なのに、それでも分かる。
だけど、だけど──
……これは、良くない『モノ』だ。
僕を僕じゃなくする、良くない『モノ』だ。
それも分かる。
引けば勝てる。
このカードならば、勝てる。
負けたくないのならば、このカードを使うべきだ。
良くない『モノ』でも、なんでも使うべきだ。
僕の実力で勝てないのなら、どんな『モノ』でも使うべきだ。
何を使っても、勝つべきだ。
そうだ。
僕を信じてくれている仲間達に幻滅されないために!
僕は、このカードを──
『確かに勝負には勝った方がいい』
『勝った方がいいけど……それでも、カードバトルは楽しい物だから』
『だから、もっと気を楽にしていい』
『何があっても、私がヒイロを見る目は変わらないから』
「っ……!」
違う!
仲間に幻滅されないために、カードを引くんじゃない!
僕は……僕の個人的な不安のために、カードを引こうとしているんだ!
それは言い訳だ!
自分以外の誰かを理由にして……!
だから、本当に仲間のことを思うのならば──
「……僕のターン」
これが良くない『モノ』ならば、そんなものに頼ってはいけない。
そんなモノで勝っても、きっと……。
気付けば、デッキから感じていた『何か』は霧散していた。
いつも通りの、僕のデッキ。
そこに指を乗せる。
「カードを引く」
そして、手札に加わったカードは──
────────────────
⑧妖精姫 エルザ
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:フェアリー
召喚時:マナを4回復する。
永続:自分の場に種族「フェアリー」を持つクリーチャーが出る度、マナを1回復し「速攻」を付与する(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)。
パワー4/タフネス4
────────────────
この状況を打破できない、カードだった。
◇◆◇
『『バトル・エンデッド』』
試合が終わった。
私の目の前で、ヒイロが崩れ落ちた。
やはり、対戦相手のデッキは強烈な
全体除去、小型除去、全体デバフ、軽量の防衛クリーチャー……それら全てで、ヒイロのデッキを封殺した。
ヒイロ側も除去や妨害を駆使して、何とかしようと立ち回っていたが……それでも限界があった。
結果は、ヒイロの敗北だった。
だけど、完敗という訳ではなかった。
限界まで食い付いていた。
……正直に言えば、最初の
しかし、それでも彼は立ち向かった。
細い勝ち筋を手繰り寄せようと、必死に戦った。
らしくない試合だった。
だけど、いい意味で『らしくなかった』。
私の持っていたヒイロの評価が、少し上がるぐらいには。
そんなヒイロを──
対戦相手の眼鏡が、見下して嘲笑った。
……何か、切れるような音が聞こえた。
きっと私の中の切れてはいけないもの。
不利な中、全力で戦った相手を……リスペクトせず、馬鹿にする?
勝ち誇ったような、顔で?
私は立ち上がっ──
「落ち着け、ニーナ」
肩にユウキの手が乗った。
「…………」
「怒ったら相手の思う壺だぜ」
その言葉で理解した。
確かに、あの眼鏡が敗者を煽る必要はない。
勝敗は既に決しているのだから。
なら何故、あんな見下すような仕草をしたのか。
これはクラス対抗戦。
3対3。
後続のカードバトラーの平常心を失わせるために、怒らせるために振る舞ったのか。
そう気付けば、私の中にあった怒りは急速に落ち着いていった。
そう言えば、眼鏡……レイの仕草はどこかぎこちなかった。
まるで、やらされているかのような仕草だった。
つまり、アレは誰かに指示された挑発。
ならば、誰が指示したのか。
……視線を上げる。
相手側の控えに座っている、改造制服を着た女……セレナと目が合った。
「…………」
「…………」
無言のまま、セレナがニタりと笑う。
……倒すべきは、あの女か。
私は私の対戦相手に集中しなければならない。
深呼吸をして、感情を落ち着ける。
「……ありがとう、ユウキ。もう大丈夫」
「おう、良いってコトよ。つーか、それよりもヒイロを励ましてやれ」
「うん、そうだね」
頷いて、控えに戻ってきたヒイロと顔を合わせ──
え、あ、うわ、死んだ目をしてる。
生気のない目だ。
「ヒ、ヒイロぉ……?」
思わず、掛ける声もか細くなる。
私の言葉に気付いたヒイロが、私に目を向けた。
あ、ほんの少し目に光が戻った。
よかった。
「ニーナ……ごめん、負けちゃった」
仕方ないよ……とは言えない。
そんな言葉で片付けてはならない気がする。
惜しかったね……とも言えない。
あと一歩で勝てた訳ではないと、彼自身が一番理解している筈だ。
「え、えと……」
掛ける言葉が思いつかない。
何を言えば良いのだろう。
何て励ませば良いのだろう。
視界がぐるぐる回る。
今生、施設育ちの私にとって円滑円満コミュニケーションは難解難題だ。
だって慣れてないもの。
そうして私の中にある迷いと言語と感情が入り混じり、最終的に吐き出された言葉は──
「ど、どんまい?」
多分、最適解から、ありえない程離れた言葉だった。
しかし、そんな私の言葉を聞いてヒイロは……苦笑した。
「ぷ……な、なにそれ?」
その堪えられない、って笑みに少し腹が立つ。
私はこれでも、悩んだ末の励ましなのに。
なんて──
「よし、じゃあ次は俺だな。2人とも、行ってくるぜ」
「あ、うん。行ってらっしゃい、ユウキ」
ユウキに手を振ると、サムズアップした。
さっきの試合結果を見ても尚、少しも不安を感じさせない仕草だった。
そんなユウキに、ヒイロが視線を向けた。
「ユウキくん……その、勝てるかな?」
ヒイロの不安も分かる。
先鋒の敗北、即ち、私達にもう負けは許されなくなったのだ。
3対3である都合上、2試合目であるユウキが負ければ……私達のクラスの負けが確定するからだ。
だから、そんな言葉が出てしまったのだろう。
しかし、ユウキはその言葉に対して笑った。
「ん?そりゃあ、やってみなきゃ分かんねぇよ」
「え……」
「でもまぁ、勝つようにやるさ。俺は負ける前提でカードバトルしないぜ」
その仕草にヒイロは少し複雑そうな顔をした。
聞き取り方によっては皮肉にも聞こえかねない返答だけど、ユウキは皮肉とか言うタイプじゃないし。
というか皮肉を言われても気付けないタイプだし。
多分、言葉通りの意味でしかないんだろうな。
私とヒイロ、2人の視線を背中に受けながら、ユウキがバトルフィールドに立った。
筋肉質な男と一つ、二つと言葉を交わして──
『『オープン・ファイト』』
第二試合が開始した。
カードバトル要素を
-
増やした方がいい
-
このままでいい
-
減らして欲しい
-
(アンケート結果だけ見たい)