TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい   作:WhatSoon

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#24 歪んだレンズ

「…………」

 

 

あの時、私は無力な1人の子供でしたわ。

私立の中学に上がりたての頃、由緒ある安藤院家の跡取り娘として……私は自意識過剰に振る舞っていました。

 

己は選ばれた人間であると。

そして他人より秀でた強き者だと。

 

この中学校は由緒ある者、そしてその子供が多く通っている私立の学校でした。

それでも尚、私と肩を並べる相手はいませんでした。

 

誰も彼もが雑魚、愚鈍、愚劣。

故に、他者を見下し、排除しても良いと思っていました。

 

……それは勘違いでしたわ。

 

誰も。

誰も私には付いてきません。

 

私を畏れはしますが、敬いはしません。

関わらないようにと、こそこそと逃げるばかり。

 

 

ええ、えぇ。

私は彼等に比べて遥かに強く、偉く、勤勉で……それでも、孤独でした。

 

羨ましく思えましたわ。

誰かと泣いて、笑えて、そして……そして。

 

気付いた時には手遅れでしたわ。

今更、何も変えられません。

 

 

私は、選択を間違えました。

 

 

私は孤独でしたわ。

虐められるほど弱くはありませんでしたが、誰かと親しくなれるほど強くもありませんでした。

 

 

私は、無力な1人の子供でした。

それに気付いた事だけが、中学3年間の唯一得たもの。

 

 

中学校の卒業式。

いつも通りの髪型で、いつも通りの振る舞いで。

 

 

誰も寄りつかないまま、私は校舎を後にしました。

笑い合う同級生に疎外感を感じて、己の不甲斐なさが情けなくて。

 

 

逃げるように。

 

 

両親は学校に来ませんでしたわ。

呼んでいませんもの。

こんな情けない姿、見せたくはありませんもの。

 

 

逃げて、逃げて、逃げて。

情けなくて、情けなくて。

 

 

私の手から卒業アルバムが落ちました。

先日、雨が降っていたから……泥に、汚れてしまいました。

 

拾う気にもなれませんでしたわ。

どうせ、何も、良い思い出なんてない──

 

 

「……あの、大丈夫?」

 

 

声を掛けられた、と振り返れば……そこに私と同じ学校の生徒が居ましたわ。

制服は同じ。

胸にあるコサージュから、彼も卒業生……つまり、同い年なのだと悟りました。

 

しかし、顔は知らない。

……きっと別のクラスですわ。

にしても、顔を覚えていないなんて……それだけ、私が他者に興味を持てなかっただけかも知れませんが。

 

 

「それ、泥まみれだけど」

 

「……別に。構いませんわ。どうせ私に必要ではありませんもの」

 

 

強がりではなく本音ですわ。

何の思い出もない3年間の歴史なんて、見ても辛いだけですもの。

 

 

「……ちょっと、僕のを持っててよ」

 

 

そう言って、彼が自身の卒業アルバムを私に押し付けましたわ。

 

 

「え?まぁ、いいですけど……何を──

 

 

彼は、泥の中のアルバムを拾いました。

躊躇なく。

自身の着ている制服が汚れると言うのに。

 

 

「な、何をしてますの!?」

 

「え?あぁ……あー、しまったなぁ」

 

 

言葉では想定外、と言っていますが、その態度には焦りはありません。

 

 

「そんな、泥まみれになって……!バカですの!?」

 

「……はは、そうだよね。うん、しまったな」

 

「……あ、貴方ねぇ……」

 

 

流石に呆れてしまいました。

そんな泥まみれの卒業アルバム、私には必要ないと言うのに。

 

 

「これじゃ、君に返す事もできないや。だから……そう、僕の卒業アルバムと交換しない?」

 

「えっ?」

 

「どうせ中身は一緒だし。今の僕が触れると、その卒業アルバムも泥まみれになっちゃうからね」

 

「…………あ」

 

 

そこでようやく理解した。

恐らく、この理屈にまで持っていくことを……彼は最初から想定していたのでしょう。

 

思わず、そう、本当に思わず──

 

 

「……ぅ」

 

 

涙が溢れましたわ。

 

 

「え?ご、ごめん?色々、勝手に言っちゃって」

 

「いいですわ……これは、別に、別にいいですの……」

 

「え、あっ……そ、そうなの?」

 

「そうですの……ぐすっ」

 

 

その泥まみれの少年とは、その後別れましたわ。

泥がついたら拙いと、それに待たせている人が居るからと。

 

引き止めたい感情はありましたが、邪魔には思われたくなくて……見送りました。

名前も聞けませんでした。

 

 

 

家に帰った私は、自室で卒業アルバムを開きました。

そして、顔写真が並ぶ一覧を追いました。

 

彼の名前が知りたくて。

ただ、知りたくて。

 

そして、見つけました。

私と別のクラス、その名簿の中に。

 

 

「『桐谷 ヒイロ』……」

 

 

私は天蓋の付いたベッドに転がり、アルバムを胸に抱きました。

どうでもいい筈だった卒業アルバムは、この時から……少しだけ、特別になりましたわ。

 

桐谷 ヒイロ……ヒイロくん。

えぇ、えぇ……良い名前ですわ。

 

初めてですわ。

家族でもない、他人に興味が湧いたのは。

 

 

そして、学園に入学して……彼も、桐谷 ヒイロくんも入学したのだと知りました。

これは運命なのだと、私は思いましたわ!

 

しかし、現実は非情……残念ながら別のクラスに分けられてしまいましたわ。

 

ですが、ですが!

私は転んでもタダでは起き上がらない女ですわ!

 

彼は優しい男の子ですわ。

そんな彼が興味を持つとしたら?

 

聡明で優しく、誰からも頼れるリーダーではないかしら!?

 

私は中学校での反省を活かし、クラスをまとめ上げましたわ!

一見すると愚鈍な輩も、磨けば光るモノがありましたわ。

 

進むべき道を指し示し、努力の仕方を教えれば……結果は付いて来ましたわ。

 

 

結果的に言えば、私はクラスのリーダーになりましたの。

強く、聡明で、可憐なリーダーに。

 

 

そうして、ようやく私は桐谷 ヒイロくんにアプローチを掛け始めましたの。

去年度のクラス対抗戦では、敢えて私がクラスの2番手になり直接カードバトルもしました。

 

負けてしまいましたが……それでも接戦でした。

きっと記憶の中に残してくれるであろうと、私は思いました。

 

クラス同士の喧嘩があった時には、仲裁だってしましたわ。

その時は、彼から褒めていただけましたの!

 

 

『安藤院さんって、責任感が強いんだね』

 

 

好感触ですわ〜!

あらら、このまま恋人、ゆくゆくは結婚!?

ハネムーンはフランスに行きたいですわ!

私のお気に入りの店がありますの!

 

 

この頃には、私は自覚していましたわ。

 

私、桐谷 ヒイロくんが『好き』なのだと。

愛しているのだと!

 

だって考えても見なさい!

あの華奢な身体……細い線のような綺麗な手。

男性にしては綺麗な肌、か弱そうに見えて芯のある目!

それでいて、自己犠牲を厭わぬ優しさ!

 

少し気は弱いですが、そこもまたチャーミングで……守ってあげたくなる……好きにならない方が変ですわ!

 

そんな、ヒイロくんの身の回りで、最近急に変な事が起きましたの。

親しそうにする女が1人、急に湧いて出て来たんですの!

 

ゆ、許せませんわ〜!

あんな、あんな!

あんな、互いを信頼している、みたいな態度!

ちょっと調べたら家が同じマンションのようですし!

 

脳が、脳が壊れますわ〜っ!

 

 

 

…………。

 

 

 

はぁ。

えぇ、こうして茶化さなければ、本当に苦しくて参ってしまいそうになりますわ。

 

私の方が先に好きだったのに。

あの、斉木 ニーナとかいう女。

 

嫉妬。

 

そう、嫉妬ですわ。

 

彼女はヒイロくんと大層、仲が良かったですから。

悲しいですけれど、付け入る隙はありませんでした。

 

遠くで見ていた私と、身近にいる彼女。

そこには大きな溝がありましたの。

 

景色から色が抜け落ちました。

シェフの作る料理の味がしません。

涙腺が弱くなりました。

朝、目が覚めてもやる気が起きませんでした。

 

辛い、悲しい、苦しい、寂しい。

でも、ヒイロくんには嫌われたくない。

だから、彼女には手を出せない──

 

 

『そんな事なくない?いいじゃん、奪っちゃえばさ』

 

 

あ、え……で、でも、ヒイロくんは彼女の事を信頼していて……きっと、家族のように……。

 

 

『だからって身を引くの?ダッサ〜、戦う前から敗北宣言ってコト?』

 

 

そ、そういう訳ではありません!

ありませんが……で、でも。

 

 

『イイじゃん。カードバトルで、排除しちゃおうよ』

 

 

そ、そんなの──

 

 

『私も、お手伝いしてあげるからさ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現実に、意識が戻る。

 

私は……あの憎き、ニーナと向き合っていますわ。

そう、クラス対抗戦……私が、勝たなければ。

 

 

「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」

>ニーナ:ターン5

>ニーナ:手札5→5

>ニーナ:マナゾーン4→5

 

 

彼女の場は空。

対して、私の場には4/5となった『大天使 リコリス』が立っていますわ。

 

このまま盤面に残れば、そのまま呪文(スペル)を連打して私の勝ち。

 

 

「私は手札から『悪夢の改造体』を召喚する」

>ニーナ:手札5→4

>ニーナ:マナ5→1

 

 

場に、獅子のような体を持ち、鷲の顔、蝙蝠の羽を持つ、ちぐはぐな怪物が現れる。

────────────────

④悪夢の改造体

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:下記から1つ選び、効果を適用する。

・このクリーチャーは+4/+0の修正を受けて、「突撃」を持つ。

・このクリーチャーは+0/+4の修正を受けて、「防衛」を持つ。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

 

「『悪魔の改造体』は2つの効果を持ち、いずれかを選ぶ効果」

 

 

選択(チョイス)クリーチャー……。

片方は『防衛』、受けの効果。

もう片方は──

 

 

「私が選ぶのは前者。『悪夢の改造体』の攻撃力(パワー)を強化し、キーワード能力『突撃』を付与する」

 

 

場の『悪夢の改造体』が肥大化した。

>悪夢の改造体 (1/1)→(5/1)

 

 

「そのまま、『大天使 リコリス』へ攻撃」

>悪夢の改造体 (5/1)→(5/0)

>大天使 リコリス(4/5)→(4/0)

 

「っ……!」

 

 

破壊される事は想定していましたわ……!

彼女ほどの腕ならば、こんな事で終わる訳ないと!

 

しかし、リソースは吐かせましたわ!

それに、マナの残りは1、大した事は出来な──

 

 

「更に、私は手札から『這いずるワーム』を召喚」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ1→0

────────────────

①這いずるワーム

クリーチャー・カード

種族:テラー・インセクト

召喚時:お互いのデッキの上から、カードを1枚破棄する。

破棄したカードを互いに確認し、同一のカード・タイプだった場合、+1/+1の修正を受ける。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

「っ……!?」

 

 

ここで1コストのクリーチャーを!?

 

 

「『這いずるワーム』の効果により、互いのデッキのカードを破棄する。私が破棄したのは……呪文(スペル)『黒渦の引用』」

 

「……私は、呪文(スペル)『真言』ですわ」

 

「カード・タイプの一致。それにより、『這いずるワーム』の能力値は上昇する」

>這いずるワーム(1/1)→(2/2)

 

 

1コスト2/2……確かに強力な能力値ですわ。

しかし、彼女の手札は残り3枚。

こんなカードにリソースを使っていいのでしょうか?

 

いいえ。

明らかな、プレイングミス──

 

 

「これで私はターンを終了する」

 

 

……いえ、それも違いますわ。

間違いなく、何か意図がありますわ。

 

獅子は兎を狩る時にも全力……えぇ、彼女は『兎』ですらないでしょうけれど。

ここで油断はせず、徹底的に屈服させてあげますわ!

 

 

「私のターン!カードを引いて、1枚をマナに置きますわ!」

>セレナ:ターン5

>セレナ:手札5→5

>セレナ:マナゾーン4→5

 

 

手札に目線を落とす。

ここは──

 

 

「手札から『奇跡の祈り手』を召喚しますわ!」

>セレナ:手札5→4

>セレナ:マナ5→2

 

 

息の根を止める、その下準備をさせていただきますわ!

 

 

場に深くローブをかぶった少女が現れる。

────────────────

③奇跡の祈り手

クリーチャー・カード

種族:セイクリッド

呪文カードが発動した時:カードを1枚引く。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

 

「そして手札から呪文(スペル)『聖なる一撃』を発動!これは相手のクリーチャー1体に3ダメージを与えるカード!対象は勿論、『這いずるワーム』ですわ!」

>セレナ:手札4→3

>セレナ:マナ2→1

────────────────

①聖なる一撃

呪文カード

相手の場のクリーチャー1体に3ダメージ。

────────────────

 

 

聖なる光が降り注ぎ、ワームを焼き払った。

>這いずるワーム(2/2)→(2/0)

 

 

「むっ……」

 

「そして『奇跡の祈り手』の効果。呪文(スペル)が発動する度にドローする効果ですわ!カードを1枚引きますわ」

>セレナ:手札3→4

 

 

引いたカードは……あらあら!

なんてお誂え向きなのかしら!

 

 

「さらに、手札から呪文(スペル)『既視の予知』を発動!」

>セレナ:手札4→3

>セレナ:マナ1→0

 

 

このまま、有り難く使わせて頂きますわ!

 

 

「その効果は、私の墓場(トラッシュ)にて重複している呪文(スペル)を1つ手札に戻す効果ですわ!」

────────────────

①既視の予知

呪文カード

自身の墓場に同名カードが存在する呪文カードを1枚、手札に戻す。

────────────────

 

「……むっ」

 

「私が対象にするのは『真言』!貴方が『這いずるワーム』で落とした呪文(スペル)ですわ!」

>セレナ:手札3→4

 

 

自身で発動して1枚、『這いずるワーム』の効果処理でもう1枚墓場に送られてますわ。

この状況、利用させて頂きますわ!

 

 

「そして『奇跡の祈り手』の効果!カードを1枚引きますわ!

>セレナ:手札4→5

 

 

これで『奇跡の祈り手』を場に出した際の手札消費も回収できましたわ。

よって、このターン、私の手札消費は0!

 

そして──

 

 

「さらに今加えた呪文(スペル)『真言』を発動しますわ!対象は『奇跡の祈り手』!」

>セレナ:手札5→4

>セレナ:マナ0→0

────────────────

⓪真言

高速呪文カード

場のクリーチャー1体は、+0/+2の修正を受ける。

────────────────

 

 

祈り手に光が降り注ぐ。

>奇跡の祈り手 (1/1)→(1/3)

 

 

「まだですわ!『奇跡の祈り手』の効果で、さらにカードを引きますわ!」

>セレナ:手札4→5

 

 

本来ならば0コスト呪文(スペル)である『真言』を今、使うべきではありませんわ。

私のデッキ構成の都合上、0コスト呪文(スペル)を1ドローに変換してもアドバンテージは得られませんもの。

1枚の手札が1枚……えぇ、それと気持ち程度のバフになるだけ。

 

ここまでターンが進んだ今、体力(タフネス)が1だろうと3だろうと除去難易度は変わりませんもの。

強化(バフ)を主目的にするには薄い……。

 

手札に温存し、より強力なクリーチャーと共にプレイすべき。

それが普通。

……でしたら何故、今、使用したのか?

 

単純な話ですわ。

強力なクリーチャーを手札に呼び込む為ですわ。

 

現在、私の手札にはもう1枚の『奇跡の祈り手』、そして残りは低コストの呪文(スペル)

フィニッシャーになるクリーチャーを手札に迎えるためにプレイしたんですの。

 

ですが、このドローでも引けませんでしたわ。

仕方ありません……次のドローに賭けなければなりません。

 

 

しかして。

 

 

私が0コスト呪文(スペル)を使った意味……それを彼女が読み取っていても、おかしくはないですわ。

私の手札にフィニッシャーがいないこと、故にドロー効果を優先したこと……悟られてると考えた方が良いですわね。

それだけの技量、知識が彼女にはある……でなければ、ヒイロくんを誑かせませんわ。

 

 

「私はこれでターン終了ですわ」

 

 

油断はしません。

警戒心は強ければ強いほど、良いですわ!

 

 

「私のターン。カードを引いて、マナへ」

>ニーナ:ターン6

>ニーナ:手札3→3

>ニーナ:マナゾーン5→6

 

 

しかし、彼女の残り手札は3枚。

どこかのタイミングでドロー呪文(スペル)を使うと考えて良いでしょう。

でなければ、このまま擦り減らして手札のリソースを吐かせきるまでですわ!

 

やはり、前ターンに1コストクリーチャーを出したのはミスですわ。

何か意図があろうと、手札を減らし過ぎてしまっては意味がありませんもの!

 

選択肢の減少は、対応力の低下に繋がりますわ。

何もできないターンが増えれば増えるほど、テンポロスも激しくなる……常識ですわね。

 

 

「私は手札から『デーモンの詐欺師』を召喚」

>ニーナ:手札3→2

>ニーナ:マナ6→3

 

 

場に眼鏡をかけた悪魔が現れた。

────────────────

③デーモンの詐欺師

クリーチャー・カード

種族:デーモン

召喚時:お互いのプレイヤーは、カードを2枚引く。

パワー2/タフネス2

────────────────

 

 

「召喚時効果。お互いにカードを2枚引く」

>ニーナ:手札2→4

 

「……えぇ、引かせてもらいますわ」

>セレナ:手札5→7

 

 

相手プレイヤーにもカードを引かせるけれど、自身もカードを引きながら2/2というステータス……悪くありませんわ。

しかし、それでもやはり相手に2枚の手札アドバンテージを与えるのは……えぇ、あまりにもリスクがありますわ。

 

それだけ、手札枚数が足りなかった……という事かしら?

だとしたら、判断を誤りましたわね。

 

私のデッキは、手札枚数が『強さ』に直結するデッキ!

ドローの価値は彼女よりも高い……。

 

 

「私はこれでターンを終了する」

 

 

そして、システム・クリーチャーである『奇跡の祈り手』の除去まで手は回らなかったようですわね!

 

 

「私のターンですわ!カードを引いて、1枚をマナへ!」

>セレナ:ターン6

>セレナ:手札7→7

>セレナ:マナゾーン5→6

 

 

引いたカードは……来ましたわ!

手札枚数、マナ数、そして場には『奇跡の祈り手』!

 

準備は万端、ここで決着をつけますわ!

 

 

「私は手札から『豪風の天使』を召喚しますわ!」

>セレナ:手札7→6

>セレナ:マナ6→3

 

 

これが私の切り札の1つ!

このデッキのフィニッシャー!

 

風が吹き荒れ、小さな天使が場に現れる。

────────────────

③豪風の天使

クリーチャー・カード

種族:セイクリッド

速攻(「速攻」を持つクリーチャーは、相手の場にクリーチャーがいないかのように攻撃できる)

呪文カードがプレイされた時:+1/+0の修正を受ける。

パワー1/タフネス2

────────────────

 

直接、相手プレイヤーに攻撃できるキーワード能力『速攻』!

呪文(スペル)カードのプレイ数に応じて強化(バフ)される能力!

 

このまま『奇跡の祈り手』の効果と組み合わせて、大量の小型呪文(スペル)を使い、ドローしつつ大ダメージを──

 

 

「その瞬間、私は手札から高速(クイック)呪文(スペル)『失われた希望』を発動。その召喚を打ち消す」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ3→0

────────────────

③失われた希望

高速呪文カード

クリーチャーの召喚1つを打ち消す。

その後、自分の場のクリーチャー1体を手札に戻す。

────────────────

 

「っ……厄介な事を!」

 

 

場の『豪風の天使』が光の粒子となって霧散する。

 

 

「そして、私は場の『デーモンの詐欺師』を手札に戻す」

>ニーナ:手札3→4

 

 

打ち消されてしまったのは面倒ですが……しかし、これで盤面は空ですわ。

対して、私の場にはまだ『奇跡の祈り手』がいますわ!

 

 

「私は手札から呪文(スペル)『新緑の回廊』を発動しますわ!」

>セレナ:手札6→5

>セレナ:マナ3→2

────────────────

①新緑の回廊

呪文カード

カードを1枚引く。

────────────────

 

 

まだまだ私の方が有利!

 

 

「その効果はデッキからカードを1枚引く効果……ですが!場の『奇跡の祈り手』により、さらにカードをもう1枚引けますわ!」

>セレナ:手札5→7

 

 

手札が増え、マナも十分にあれば1ターンに決着を付けられますわ!

長引けば有利……なんて考え、真正面から打ち砕いて差し上げましょう!

 

 

「さらに、手札から呪文(スペル)『天使の抱擁』を発動!カードを2枚引きますわ!さらに、『奇跡の祈り手』の効果によりもう1枚引きましてよ!」

>セレナ:手札7→9

>セレナ:マナ2→0

────────────────

②天使の抱擁

呪文カード

カードを1枚引く。

その後、このターンに使用したカードの枚数が(このカードを含めず)2枚以上だった場合、カードを1枚引く。

────────────────

 

 

ええ、ええ!

手札に『豪風の天使』が再び来ましたわ!

それも、2枚!

 

まだ私の切り札(レジェンド)は来ませんが、これで十分!

決着はすぐ、そこまで来ていましてよ!

 

 

「私は場の『奇跡の祈り手』で攻撃しますわ!」

>奇跡の祈り手 (1/3)

 

「くっ……」

>ニーナ:ライフ20→19

 

 

やはり、私の方が優れていましてよ!

彼に相応しいのは私っ──

 

 

「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」

>ニーナ:ターン7

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナゾーン6→7

 

 

少しも焦りも、していない。

まるで平常だと言わんばかりの表情……。

 

 

「あらあら……少しは焦ってみたらいかがかしら?」

 

 

思わず、そう口にしてしまいますわ。

何かが気に食わない。

何もかもが気に食わないですわ。

 

 

「……?まだ焦るような場面じゃないと思うけど」

 

 

その余裕の笑み……!

自分の置かれた状況を理解していないのかしら!?

 

……腹が立つ。

腹が立ちますわ。

気分が悪いですわ。

苛立ちますわ!

気に食わないですわ!!

 

 

ふと、頭に浮かぶ。

 

 

「……この勝負、負けた方がリスクを負わない試合では面白くないですわ」

 

「そう?」

 

「ええ、カードバトルとは魂のぶつけ合い。食堂の食券や、名声程度ではチャチなものでしてよ」

 

「……まぁ、それはちょっと分かるかも」

 

「ですから、賭けましょう?」

 

「賭け?」

 

 

私は手札の束を口元に寄せますわ。

笑みが相手へ見えないように──

 

 

「負けた方が勝った方の命令を1つ聞く……というのはどうでしょう?」

 

 

あまりにも重い対価。

勝負1つで、こんな曖昧な事、賢ければ受けはしません。

 

ダメ押しの挑発を──

 

 

「いいね。それでやろっか」

 

 

……私の浮かべていた笑みが、冷めていく。

無意識のうちに歯を噛み締める。

 

 

「っ、その少しも敗北を考えていない、自身の不利すら気付いていない愚鈍な脳みそに……『敗北』の二文字を焼き付けてあげますわ!」

 

 

私は足を踏み締めて、彼女を睨み付けた。

黒く淀んだ『何か』が胸の内を占めている。

 

それは……きっと、私のデッキにも──

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

さて、啖呵は切ったものの……状況は不利。

だけど、勝ち筋は明確にある。

 

私の仕掛けた毒。

それが全身に回り始めている事を、セレナはまだ気付いてない。

 

それに、少々、冷静さを欠いているように見える。

アレが演技でなければ、まだ猶予はあると考えて良いだろう。

 

しかし、気付かれたら終わる。

毒というのは、致死量になるまで気付かれなくて初めて毒になり得る。

 

 

「…………ふぅ」

 

 

適度に相手の展開を受けて、フィニッシャーだけを止める。

これを徹底し……死なず、傷つけ過ぎず、悟られた時には取り返しのないように。

 

奇跡(ミラクル)というデッキタイプ。

それを万全に使い熟す彼女のプレイング。

そして……『アドバンテージ』を重視するその、見方。

 

 

何度でも立ち上がり、受け止められても仕掛け直す……その無尽蔵に見えるその『奇跡』。

 

 

「私は、手札から『デーモンの詐欺師』を召喚する」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ7→4

────────────────

③デーモンの詐欺師

クリーチャー・カード

種族:デーモン

召喚時:お互いのプレイヤーは、カードを2枚引く。

パワー2/タフネス2

────────────────

 

 

その『奇跡』が有限であることを、彼女に教えてあげよう。




バトルパートが長過ぎますわよ〜っ!

カードバトル要素を

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