TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい 作:WhatSoon
「先攻は俺だな。カードを引くぜ!」
>ユウキ:ターン1
>ユウキ:手札5→6
僕の目の前でユウキくんと、ニーナの
観客は僕と羽金さん、あと店長が離れた所からこっちを見てる。
気にしているみたいだけど、レジから離れられないのだろう……さっきみたいに、急にお客さんが来るかも知れないし。
「手札を1枚、マナゾーンへ置く。これでターン終了だ」
>ユウキ:手札6→5
>ユウキ:マナゾーン0→1
……今は、目の前のバトルに今は集中したい。
1ドロー、1マナ。
静かな立ち上がりだ。
『
それこそ、速攻デッキや僕みたいな特殊なデッキではない限り、手札の消費を抑えるために1コストのカードのデッキの採用枚数は少なめにしている筈だ。
手札枚数の管理。
それこそが、この『
「私のターン。後攻だから、カードを2枚引く」
>ニーナ:ターン1
>ニーナ:手札5→7
先攻の方が先にマナが増え、先に攻撃できる。
つまり、先攻が有利……これが基本原則。
しかし、先攻が『必ず』有利になるとは限らない。
ルール上の後攻2ドロー……初期手札枚数1枚の差。
これだけで先攻後攻の差が埋まる程、手札1枚に対する価値は重い。
「まずは、マナゾーンへカードを1枚置く」
>ニーナ:手札7→6
>ニーナ:マナゾーン0→1
ここはニーナも、ターンを終了する筈──
「そして私は、手札から『這いずるワーム』を召喚」
>ニーナ:手札6→5
>ニーナ:マナ1→0
いや、違う。
1コストのクリーチャーをプレイした?
「その効果で、互いのデッキの上からカードを1枚破棄する」
デッキ、破壊……?
デッキを破壊して、相手にドロー出来なくさせるデッキタイプに採用されるカード……。
だけど、『
1枚や2枚破壊した所で意味はない。
デッキ破壊は、ボードアドバンテージもライフアドバンテージも手札アドバンテージも稼げない……それ単体では無意味なカードだ。
デッキ破壊をするなら、デッキ内のカードの殆どをデッキ破壊カードにしなければ意味がない。
僕はバトルディスクを操作して、彼等のバトルネットワークに観戦モードで接続する。
すると、カードの情報が表示された。
────────────────
①這いずるワーム
クリーチャー・カード
種族:テラー・インセクト
召喚時:お互いのデッキの上から、カードを1枚破棄する。
破棄したカードを互いに確認し、同一のカード・タイプだった場合、+1/+1の修正を受ける。
パワー1/タフネス1
────────────────
……なんだ、このカード?
互いのデッキを破壊し、破壊したカードの種類が被っていたら自身をバフする?
手札リソースを1枚消費してまでやる事なのか……?
困惑する僕を無視して、バトルは進む。
「私がデッキから破棄したのは……『精神を刻む者』。クリーチャータイプのカード」
「俺が破棄したのは……『赤竜の咆哮』。残念だったな、
彼女がプレイした『這いずるワーム』の召喚時効果。
それは特定の条件下でパワーアップする効果だ。
しかし、それは不発……だけどニーナは少しも悔しそうにしていない。
横にいる羽金さんも手を口元に当てて、推理しようとしている。
そんな僕達を気にせず、ニーナが口を開く。
「私はこのまま、ターンを終了する」
一旦、意識を切り替える。
試合に集中しないと。
「俺のターンだ。カードを引いて、1枚マナゾーンへ」
>ユウキ:ターン2
>ユウキ:手札5→5
>ユウキ:マナゾーン1→2
マナゾーンにカードが2枚。
つまり、2マナのカードがプレイできるという事。
2マナ帯のカードは『
だが、1コストカードと違って無視できないパワーのあるカードが多い。
「俺は手札から、呪文カード『竜脈の採掘』を発動!」
>ユウキ:手札5→4
>ユウキ:マナ2→0
────────────────
②竜脈の採掘
呪文カード
デッキの上からカードを3枚確認する。
その中から種族「ドラゴン」のカードを1枚、マナゾーンに置く事ができる。
────────────────
マナ
本来、『
だが、マナ
相手プレイヤーとの間にマナ差を広げ、早期に多くのマナを得られるこの戦術はランプ戦術と呼ばれている。
「俺はデッキの上からカードを3枚確認し、ドラゴン・クリーチャーをマナゾーンに置ける。デッキの上から3枚……『竜魂統一』、『飛竜の駆り手』……それと『ブレイジング・ドラゴン』だ」
公開された3枚のカード。
その中、3番目のカードに僕は驚いた。
それは、ユウキくんの切り札……デッキに1枚だけ入っているレジェンド・カードだったからだ。
◇◆◇
目の前で、ユウキのデッキトップが公開された。
デッキトップに依存する、安定性が低そうなマナ加速カードだ。
『
だから、2マナから加速するには相応の手札消費か、デッキコンセプトを統一するしかない。
……ユウキは、この戦術のためにデッキ内に種族『ドラゴン』のクリーチャーを多く採用していると考えて良いだろう。
そして、公開されたデッキトップのカードをバトルディスクから確認する。
────────────────
④竜魂統一
呪文カード
手札のドラゴンカードを1枚、マナゾーンへ置く。
その後、カードを2枚引く。
────────────────
これは単純なマナ加速カードか。
手札の消費がない代わりに、少しコストが高い……手札交換をしながらマナ加速できるカードだ。
これは『ドラゴン』クリーチャーではなく呪文カード……『竜脈の採掘』の「ドラゴンクリーチャーをマナに置ける」効果の対象外となる。
次だ。
────────────────
⑤飛竜の駆り手
クリーチャー・カード
種族:ナイト・ドラゴン
速攻(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)。
攻撃時:このクリーチャーは+1/+0の修正を受ける。
パワー4/タフネス2
────────────────
攻撃する度に攻撃力が上がる速攻クリーチャーか。
……なるほど、ユウキのデッキはランプ戦術と速攻を組み合わせた攻撃的なデッキか。
これは『ドラゴン』クリーチャーだから、マナ加速に使える。
ここまでは問題ない。
だが、私が最も気になっているのは最後の1枚だ。
────────────────
⑧ブレイジング・ドラゴン
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:ドラゴン
速攻(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)。
攻撃時:敵クリーチャー全てに6ダメージ。
パワー7/タフネス6
────────────────
攻撃時に
単純な効果……故に、強力。
このクリーチャーがフィールドに出た時点で速攻によるリーダーダメージと、フィールド全体にダメージを同時に与えられる。
そして、この効果は召喚時ではなく攻撃時……除去できなければ次ターンも続く事を示している。
素早く除去しなければ、莫大なリターンを得られてしまう。
しかし、返しのターンに除去しても、既に速攻攻撃によるライフアドバンテージと全体除去によるボードアドバンテージを得ている後だ。
『ブレイジング・ドラゴン』でフィールドを一掃しながら攻撃し……除去されたとしても、次のターン、新たな速攻クリーチャーで後押しすればライフが一気に削れて敗北する可能性もある。
出されたタイミングによって『詰み』も発生する、厄介な速攻クリーチャー。
これが、ユウキの切り札。
あの時、映像で見たドラゴン・クリーチャーに違いない。
マナ加速から早期に着地されたら拙い──
「俺は『ブレイジング・ドラゴン』をマナゾーンへ置く」
>ユウキ:マナゾーン2→3
「……何?」
何故、切り札である『ブレイジング・ドラゴン』をマナゾーンに置いたんだ?
レジェンド・カードはデッキに1枚しか搭載できない……マナに置いてしまえば、レジェンド・カードである『ブレイジング・ドラゴン』はプレイできなくなってしまう。
『竜脈の採掘』が指定しているクリーチャーは種族『ドラゴン』だ。
『飛竜の駆り手』で問題ない筈──
いや、違う。
目の前にいるのは、組織を崩壊させた優秀なカードバトラーだ。
プレイングミスではない。
何かしらの布石になっている。
そう考えた方がいい。
「これで俺はターン終了だぜ」
「……私のターン。カードを引き、手札を1枚マナへ」
>ニーナ:ターン2
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナゾーン1→2
悩んでも仕方ない。
今の私に出来る事をしていくしかない。
「そして『這いずるワーム』でプレイヤーへ直接攻撃」
>這いずるワーム(1/1)
ワームが飛び跳ねて、ユウキへと噛みつき攻撃を繰り出した。
「くっ」
>ユウキ:ライフ20→19
この1点。
たかが1点だが、この1点で勝ち負けが決まる事もある。
私は手を抜いたりはしない。
手札のカードに指をかけ、バトルディスクへと配置する。
「そして、私は
>ニーナ:手札5→4
>ニーナ:マナ2→0
フィールドに骨で組み上げられた簡易神殿が作り出された。
────────────────
②邪な儀式
オーナメント・カード
起動効果:自分の場のクリーチャー1体を破壊する。
その後、カードを1枚引く。
────────────────
「『邪な儀式』の効果を発動。場の『這いずるワーム』を破壊して、カードを1枚引く」
直後、ワームは簡易神殿に飲み込まれ、砕けた。
そのまま私はカードを1枚引く。
>ニーナ:手札4→5
『邪な儀式』は自分の場のクリーチャーを破壊する代わりに1ドロー出来るオーナメント。
つまりボードアドバンテージを手札アドバンテージに変換できるカードだ。
しかし、このカード自体の損失と、クリーチャーの損失……その対価が1ドローと効率が良いとは言えない。
だが、このカードは
毎ターン使えるのだ。
1回のコストパフォーマンスが悪いのなら、2回、3回と使えばいい。
2対1の交換も、3対2、4対3となるにつれて損失の割合が減り、許容できるようになる。
使えば使うほど効率が良くなる、長期戦向けのカードだ。
「そしてこのまま、私はターンを終了する」
「よし、俺のターンだ!カードを引いて、1枚マナゾーンへ置くぜ」
>ユウキ:ターン3
>ユウキ:手札4→4
>ユウキ:マナゾーン3→4
先攻を取られ、更にマナ加速された所為でマナ差も開いている。
中量級のミニオンに対して、除去を強要させられ続ければ……厳しい展開になる。
「俺は手札から『マッハ・リザード』を召喚!」
>ユウキ:手札4→3
>ユウキ:マナ4→0
赤い鱗を身に纏った、二足歩行の蜥蜴がフィールドに飛び出した。
────────────────
④マッハ・リザード
クリーチャー・カード
種族:ドラゴン・ビースト
速攻(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)。
パワー4/タフネス1
────────────────
単純な速攻クリーチャー。
だが『防衛』クリーチャーが場に存在しない今、私にとって脅威となり得る。
「そして、『マッハ・リザード』で攻撃!」
>マッハ・リザード(4/1)
「…………っ」
>ニーナ:ライフ20→16
ユウキのデッキタイプ……これは、マナ加速から中量、大型の速攻クリーチャーを出してライフを削りきるランプデッキだろう。
場に出たターンから攻撃できる速攻クリーチャーでライフを削り、私に除去を強要させ……動きが鈍った所に、更に速攻クリーチャーを出しライフを削り切る……という事か。
攻め気の強いデッキだ。
私はライフを守るために、除去と回復……もしくは『防衛』クリーチャーによる防御をしなければならない。
『邪な儀式』で何も考えず自分のクリーチャーを割っていれば、主導権を取り損ねる……少し、戦い方を考えなければ。
「俺はターンを終了するぜ」
「私のターン。カードを引き、手札を1枚マナへ」
>ニーナ:ターン3
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナゾーン2→3
手札のカードを確認し、フィールドを見渡す。
『
現状の私の手札は5枚。
つまり、マナ配置とカードプレイを毎ターンしていれば5ターン後に手札が0になる。
そうなればマナゾーンにカードを置く余裕もなくなり、デッキトップに頼る運ゲーになってしまう。
だからこそ、『邪な儀式』によるドローが必要だ。
『邪な儀式』はクリーチャーの性質を『召喚時効果+本体ステータス』から『召喚時効果+1ドロー』に変換できるカード。
全ての召喚時効果持ちクリーチャーを、
……手札はまだ、必要。
だが、速攻クリーチャーは除去しなければならない。
そして、除去した後にフィールドの主導権を握るためにクリーチャーを残したい。
全ては叶えられない。
だが、いくつかは叶える事が出来る。
「私は手札から『魂魄の指揮者』を召喚』
>ニーナ:手札5→4
>ニーナ:マナ3→0
フィールドに燕尾服を着た骸骨が現れた。
────────────────
③魂魄の指揮者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:自分の場に1/1の「速攻」と「ターン終了時:このクリーチャーを破壊する」を持つゴースト・トークンを2体生成する。
パワー2/タフネス1
────────────────
「召喚時効果。フィールドに、ターン終了時に自壊するゴースト・トークンを2体生成する」
『魂魄の指揮者』が指揮棒を振えば、周りに青白い炎が二つ生まれた。
「まずは、一体目のゴースト・トークンで『マッハ・リザード』を攻撃。破壊する」
>ゴースト・トークン(1/1)
>マッハ・リザード(4/1)
青白い炎が『マッハ・リザード』に直撃し、粉砕した。
同時に、青白い光……ゴースト・トークンも霧散する。
相打ちだ。
「そして、もう一体のゴースト・トークンでプレイヤーへ直接攻撃」
>ゴースト・トークン(1/1)
ゴースト・トークンがユウキにぶつかり、ダメージエフェクトが光った。
「……くっ」
>ユウキ:ライフ19→18
これでゴースト・トークンの役目は終了だ。
『魂魄の指揮者』によって生み出されたゴースト・トークンはターン終了時に破壊されてしまう。
だが、今この状況なら、追加でアドバンテージを得られる。
「私は『邪な儀式』の効果を起動。ゴースト・トークンを破壊して1枚引く」
>ニーナ:手札4→5
これが『邪な儀式』で効率良くアドバンテージを得る方法。
生み出したトークンや、必要のない低ステータスのクリーチャーをドローに変える。
『魂魄の指揮者』の効果起動で召喚したゴースト・トークンをドローに変換する事で、手札消費を抑えつつ2/1の本体を残せた。
十分だ。
「これで、私はターンを終了」
「俺のターン!カードを引いて、マナへ!」
>ユウキ:ターン4
>ユウキ:手札3→3
>ユウキ:マナゾーン4→5
ユウキがカードを引き、手札を1枚マナゾーンに置いた。
……こうして、毎ターン、マナ配置+カードのプレイを続けていれば手札が毎ターン1枚ずつ減ってしまう。
ユウキの手札は3枚……ドロー効果のあるカードを使わなければ、残り3ターンでドローしたカードを投げる事しかできなくなる。
だから、どこかでドローしなければならない。
もしくは、残り3ターンで私のライフを削り切るか。
ドロー効果やリソース回復に専念するなら、そこが隙になる。
「俺は
>ユウキ:手札3→2
>ユウキ:マナ5→1
フィールドに金色の財宝が現れた。
────────────────
④竜の財宝
オーナメント・カード
自分のターン開始時:手札の種族『ドラゴン』クリーチャーを見せ、カードを1枚引く。
見せなかった場合、このカードを破壊する。
────────────────
ドラゴン・クリーチャーの開示さえ出来れば毎ターン2ドロー出来るカード……やはり、手札リソースの枯渇を恐れたか。
ここは様子見、という事だろう。
「俺はターンを終了するぜ」
「なら、私のターン。カードを引いて、マナへ設置」
>ニーナ:ターン4
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナゾーン3→4
マナにカードを配置し、バトルディスクのカードに触れる。
「まずは『魂魄の指揮者』で直接攻撃」
>魂魄の
「……くっ」
>ユウキ:ライフ18→16
これでライフは同点。
迂闊に私のフィールドのクリーチャーを無視できなくなるだろう。
だが、私のフィールドには『魂魄の指揮者』と『邪な儀式』しかない。
しかも、片方は
フィールドにクリーチャーを増やして主導権を握りたい現状、『邪な儀式』で『魂魄の指揮者』を手札リソースに変換するのは悪手だ。
「私は
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナ4→2
────────────────
②無謀な契約
呪文カード
手札を1枚破棄する。
その後、カードを2枚引く。
────────────────
手札は増えないが、これでいい。
……そして、引いたカードに視線を落とす。
来たか。
11コストの超大型レジェンド・クリーチャーが。
前回は使うタイミングが無かったが、今回は──
視線を上げる。
ユウキへと向ける。
予感が、した。
「私は手札から『スパルトイ』を召喚」
>ニーナ:手札5→4
>ニーナ:マナ2→0
鎧を身に纏った骨が現れた。
────────────────
②スパルトイ
クリーチャー・カード
種族:テラー・ナイト
召喚時:自分の場に1/2の『スパルトイ・トークン』を1体生成する。
パワー1/タフネス2
────────────────
「そして『スパルトイ』の召喚時効果……場に『スパルトイ・トークン』を生成する」
フィールドに『スパルトイ』と同じ姿をした鎧を纏う骨が生まれる。
「そのまま『邪な儀式』の効果。『スパルトイ・トークン』を破壊してカードを引く」
>ニーナ:手札4→5
『邪な儀式』の効果で、手札消費なしで1/2のクリーチャーを召喚出来た。
これにより、私の場は2/1の『魂魄の指揮者』と1/2の『スパルトイ』が並んでいる事になる。
無視し辛い打点だ。
そして、相手が
先程の『マッハ・リザード』のように
「私はターンを終了する」
「俺のターン。手札を1枚、マナへ置くぜ」
>ユウキ:ターン5
>ユウキ:手札3→2
>ユウキ:マナゾーン5→6
ユウキが手札を1枚、マナゾーンへ置いた。
「そしてスタートアップ・フェーズ。『竜の財宝』の効果を発動!手札のドラゴン・クリーチャーを見せる事で追加で1ドローできる!」
>ユウキ:手札2→3
私のバトルディスクにカードが表示される。
────────────────
①ベビー・ファイアドレイク
クリーチャー・カード
種族:ドラゴン
召喚時:クリーチャー1体に1ダメージ。
パワー1/タフネス1
────────────────
小型の除去効果持ちクリーチャー、か。
このカードを見せられた事によって得られる情報アドバンテージは無いに等しい。
「そして手札から『魔力の暴走』を発動!」
>ユウキ:手札3→2
>ユウキ:マナ6→1
────────────────
⑤魔力の暴走
呪文カード
デッキの上からカードを2枚マナゾーンに置き、マナを3回復する。
ターン終了時、マナゾーンのカードをランダムに1枚、手札へ戻す。
────────────────
私は目を細めた。
マナ増強のカード?
2つ置いて1つ手札に戻す……実質2コストの
……そうか、レジェンド・クリーチャーの『ブレイジング・ドラゴン』を手札に戻すつもりか。
「俺はデッキからカードを2枚マナゾーンに置き、マナを3回復する!」
>ユウキ:マナゾーン6→8
>ユウキ:マナ1→4
マナ
ここから私の盤面に干渉するのなら、大した動きは出来ない──
「そして、俺は手札から
>ユウキ:手札2→1
>ユウキ:マナ4→0
フィールドに青白い光の粒子が集まり、空間に巨大な穴が空く。
その穴の先を目視することは出来ない。
「『竜の幻出』の効果!俺は自分のマナゾーンから、その枚数以下のコストを持つドラゴン・クリーチャーを……ターン終了時まで場に出す事が出来る!」
────────────────
④竜の幻出
呪文カード
自分のマナゾーンからコストX以下の種族「ドラゴン」クリーチャーを1体、自分の場に出す(Xは自分のマナゾーンの枚数に等しい)。
ターン終了時、この効果で出したクリーチャーをマナゾーンに置く。
────────────────
私は目を見開く。
マナゾーンからのコスト踏み倒しか!
そして、今のユウキのマナゾーン枚数は……
『
裏側で配置されるため、相手はその情報を得る事はできない。
事実、私はユウキのマナゾーンに置かれているカードの情報を得られない。
たった、1枚を除いて──
「俺がマナゾーンから場に出すのは……『ブレイジング・ドラゴン』だ!」
空間に空いた異空間へのゲートから、光が放たれる。
そして空を裂き、赤く煌めくドラゴンが姿を現した。
────────────────
⑧ブレイジング・ドラゴン
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:ドラゴン
速攻(「速攻」を持つクリーチャーは、場に出たターンから攻撃できる)。
攻撃時:敵クリーチャー全てに6ダメージ。
パワー7/タフネス6
────────────────
ユウキが態々、マナゾーンへ『ブレイジング・ドラゴン』を置いたのはこの為か。
なるほど、マナゾーンに置いておけば、私の
ヒイロから私のデッキに
それとも、元々踏み倒す為の構築だったのか?
「……っ」
まるで炎の奔流。
バトルディスクは熱を具現化していない筈なのに感じる、熱。
圧倒的な存在感。
目の前の炎を纏うドラゴンから感じていた。
だが、何か、違和感。
私が見た……あの監視カメラで見た姿とは少し違う気が──
「いくぜ!『ブレイジング・ドラゴン』で相手プレイヤーへ直接攻撃だ!」
>ブレイジング・ドラゴン(7/6)
真紅の竜が飛び上がれば、その翼から光と見紛う程、煌めく炎が放たれた。
「その瞬間、『ブレイジング・ドラゴン』の攻撃時効果が発動!相手のクリーチャー全てに、6ダメージを与える!」
炎が竜巻のように変わり、私の場に殺到する。
そして、『魂魄の指揮者』と『スパルトイ』を破壊した。
「っ……!」
このクリーチャー……速攻フォロワーの弱点である『相手プレイヤーを攻撃すれば、場の敵クリーチャーに干渉できない』という弱点を克服している。
相手プレイヤーへダメージを与えながら、盤面を更地にできる……正しく切り札、レジェンド・クリーチャーに相応しいカード・パワーだ。
「いけ!『ブレイジング・ドラゴン』!」
場のクリーチャーを焼き払った『ブレイジング・ドラゴン』が口を開き、そこから閃光が放たれた。
プレイヤーへの直接攻撃だ。
「く、うっ……!?」
>ニーナ:ライフ16→9
衝撃。
強烈な風に叩きつけられたかのような感触。
吹っ飛びそうになるが……それでも、なんとか踏み止まる。
研究施設の外に出てから、初めて受ける大ダメージ。
外の世界で初めてライフが10点……つまり半分以下になった。
明確に見える敗北への道。
まるで影のようにへばり付く焦燥感。
だが、しかし……楽しい。
早鐘のように鳴り響く心臓!
手に汗を握る押し引き!
身を焼く程のスリル!
楽しい、楽しい!
そうだ、そうこなくては!
このヒリ付く感触。
勝利と敗北の狭間で、カードをプレイしていく感覚。
先の見えない試合を踏み締めて進んでいく感動。
全てが……そう。
これが
これぞ
流石は暫定主人公だ!
素晴らしいプレイング、よく練られたデッキ……それならば私も、全力を以って相手しなければならない。
バトルディスクからフィードバックされた衝撃を受けきり、視界を上げ──
「…………?」
何故か、驚いた顔をしている。
攻撃した側のプレイヤーが驚くような事があるか?
私の場に出ていたクリーチャーに死亡時効果を持つクリーチャーは居ないし。
……何か見逃していたのか?
私が?
考えろ。
今までプレイされたカードを。
手札、フィールド、
……いや、意識との差異はない。
全てが把握している通り。
問題はない筈。
周りを見渡せば……観戦している名前も知らない女性と、ヒイロも驚いた顔をしていた。
その視線の先は……やはり、私。
私の顔に何か付いているのか?
手で顔に触れる。
何も付いていない……何も。
何も?
……あれ?
フードは?
私は素顔を彼等に晒していた。
◇◆◇
ユウキくんの切り札、『ブレイジング・ドラゴン』の攻撃がニーナに直撃した。
その結果、バトルディスクのダメージ・フィードバックによって……その顔を隠していたフードが捲れた。
彼女の素顔を、僕は見た。
光を僅かに乱反射する銀髪……まるで宝石のような赤い目。
長いまつ毛、整った鼻。
そして、まるで一流の人形師が作ったかのような顔立ちを。
しかし、彼女はその容姿に似合わぬ笑みを浮かべていた。
心底楽しそうな、子供のような……獰猛な獣のような、無邪気な笑みを。
その笑みに、僕は見惚れてしまった。
あまりにも楽しそうで、凄く嬉しそうで。
そして……僕達に視線を向けて、彼女は顔を顰めた。
僕も羽金さんも、対戦相手であるユウキくんでさえ、その容姿に驚いていたのだから。
不快に感じてしまったのだろうか。
「……何もする気がないなら、早くターンを終了して欲しいけど」
「っ、あ、あぁ。俺はターンを終了する」
ユウキくんはマナゾーンのカードを1枚手札に加え、フィールド上の『ブレイジング・ドラゴン』はマナゾーンへ戻った。
先程の笑みを浮かべていた彼女を思い出す。
……僕と戦っている時も、彼女は笑みを浮かべていた。
あの、笑み。
僕の手を見透かして有利を取った時にも、勝負に勝った時にも見せなかった……『
その笑みは加虐心から来るものじゃないだろう。
ただ純粋な「楽しい」という笑みだ。
……彼女は、本当は。
ただ『
レアカードハンターなんて呼ばれているけど、その本質を……僕達は勘違いしているんじゃないか?
そもそも何故、
何で他人から奪ったカードを売ってまで、金を得ようとしているんだ?
……僕は、何も知らない。
そうだ、何も知らないんだ。
そんな彼女を頭ごなしに否定して、『
恥ずかしい奴だ、僕は。
何も事情を知らないのに、僕は。
僕は──
知りたい。
彼女の事を知りたい。
彼女の視線の先にいるのがユウキくんだとしても……僕は彼女のことを知りたい。
そう思ったんだ。