TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい   作:WhatSoon

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#6 切り札はこの手に

「私のターン。カードを引いて、マナへ置く」

>ニーナ:ターン5

>ニーナ:手札5→5

>ニーナ:マナゾーン4→5

 

フードが外れ、素顔を彼等に見られてしまった。

だが、別に無理をして隠すほどの物ではない。

この容姿で悪目立ちしない為にかぶっていただけだ。

再度、フードをかぶり直す必要もない。

 

カードのプレイに支障はない。

今はただ、このカードバトルに集中したい。

それだけが全てだ。

 

 

「そして、手札から『屍集うタイラント』を召喚」

>ニーナ:手札5→4

>ニーナ:マナ5→0

 

 

巨大な骨格が姿を現した。

────────────────

⑤屍集うタイラント

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:自分プレイヤーをX回復し、このクリーチャーは+X/+Xの修正を受ける(Xは自分の墓場(トラッシュ)に存在する種族『テラー』クリーチャーの数に等しい)。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

 

「『屍集うタイラント』は墓場(トラッシュ)に存在する『テラー』クリーチャーの数だけプレイヤーを回復させ、能力値を上昇させる」

 

 

周囲から骨が集まり、その身体に肉付けをしていく。

より強く、巨大に……異形へと姿を変えた。

 

 

「私の墓場(トラッシュ)に存在する『テラー』クリーチャーは5体……私のライフを5点回復し、『屍集うタイラント』は+5の修正を受ける」

>ニーナ:ライフ9→14

>屍集うタイラント(1/1)→(6/6)

 

 

私のデッキには多くの手札破棄カードが存在している。

そして、恐怖を司る種族『テラー』のクリーチャーも。

だから、この『屍集うタイラント』は最速の5ターン目に展開しても5コスト以上のパフォーマンスを生み出せる。

 

ライフは大きく回復できた。

本体も6/6と5コストの平均を越えるステータスを持っている。

 

 

確かに『竜の幻出』による『ブレイジング・ドラゴン』早期着地を活かした『全体除去(AOE)による盤面一掃』と『速攻によるダメージ』は驚異的だ。

 

だが、弱点はある。

 

プレイ後の盤面が空になるということ。

次ターンで削りきれないラインまで体力回復された場合、私の盤面に付き合わなければならない筈だ。

 

『邪な儀式』によるドロー変換効果は使用せず、このまま盤面の主導権を握らせて貰おう。

 

 

「私はターンを終了する」

 

 

ユウキへ視線を向ける。

私の素顔を見た衝撃から、立ち直っていた。

 

またカードバトラーに相応しい顔へ戻っている。

……そうこなくては。

 

 

「俺のターン!カードを引き、マナゾーンへ!更に『竜の財宝』で1枚引く!」

>ユウキ:ターン6

>ユウキ:手札2→3

>ユウキ:マナゾーン7→8

 

 

このバトル中、ユウキにはマナ加速を2回もされている。

私との間のマナ差が大きく開いてしまった。

マナが多く生み出せるということは、それだけ強力なカードをプレイできるということ。

そして、マナが少ないという事はその『強力なカード』への対処が難しいということ。

 

 

「俺は手札から呪文(スペル)『灼熱の螺旋』を発動する!対象は『屍集うタイラント』だ!」

>ユウキ:手札3→2

>ユウキ:マナ8→4

────────────────

④灼熱の螺旋

呪文カード

クリーチャー1体に6ダメージ。

相手プレイヤーに2ダメージ。

その後、残りマナが4以上ならデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加える。

────────────────

 

骨の異形が炎の嵐に飲み込まれ、爆ぜた。

 

 

「っ……」

>ニーナ:ライフ14→12

 

 

呪文(スペル)によるダメージは6点、そして『屍集うタイラント』の体力(ヘルス)も6点……除去されてライフにまでダメージが入ってしまった。

 

 

「そして、俺はデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加える!」

>ユウキ:手札2→3

 

 

更に、後続まで用意された。

 

ユウキの残りは4マナ。

しかし、『灼熱の螺旋』はクリーチャーを対象にする呪文(スペル)だ。

私の場にクリーチャーが存在しない今、プレイできない。

なら、別の手を使う筈だ。

 

 

「俺はターンを終了する!」

 

 

いや……クリーチャーを展開せず、そのままターンを終了したのか。

高速(クイック)呪文(スペル)による妨害狙いか?

それとも虚勢(ブラフ)か?

 

 

「私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」

>ニーナ:ターン6

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナゾーン5→6

 

 

……関係ない。

踏み抜かせて貰う。

 

 

「私は『背徳の狂信者』を召喚する」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ6→4

 

 

黒い法衣を着たゾンビが現れた。

────────────────

②背徳の狂信者

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:相手プレイヤーはマナを6失う。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

 

「『背徳の狂信者』の効果。相手はマナを6つ失う」

 

 

黒い法衣を着たゾンビが、歪な讃美歌を歌い始めた。

 

 

「なっ……!?」

 

 

一見すると強力なマナ破壊効果。

しかし、その実態、『背徳の狂信者』の効果トリガーは『召喚時』だ。

自ターンでしかも手札からプレイした時にしか発動しない。

無闇に使っても、相手のターン開始事にはマナがマナゾーンの数まで回復するため、意味はない。

このカードの役割は、高速(クイック)呪文(スペル)用に確保していたマナを消費させる事だ。

 

つまり、このカードは相手の高速(クイック)呪文(スペル)による妨害を、その上から妨害するカード。

 

ユウキが今、出来る事は『背徳の狂信者』に高速(クイック)呪文(スペル)を撃つか、このターンの妨害を諦めるか、この二つだ。

更に、この効果は起動効果ではなく召喚時効果……つまり、ダメージ呪文による『除去』ではなく、召喚自体を無効化する『打ち消し』でなければ効果を止められない。

 

この召喚に対して除去呪文を撃ったとしても、結局、マナを失わせる効果は働く。

 

 

「……いいぜ。俺は何もしない」

>ユウキ:マナ4→0

 

 

ほんの少し、短い時間だったが、ユウキは悩み……高速(クイック)呪文(スペル)による妨害を諦めたようだ。

手札に握っている高速(クイック)呪文(スペル)を温存したかったのか……?

そもそも、握っていなかったのか?

 

どちらにせよ、甘い。

 

 

「『邪な儀式』の効果。場の『背徳の狂信者』を破壊して、1枚引く」

>ニーナ:手札3→4

 

 

リソース勝負ならば、ここで『背徳の狂信者』を除去すべきだった。

こちらには『邪な儀式』が存在する。

『背徳の狂信者』をドローへ変換する事だって出来るのだ。

 

これで、残り手札は4枚。

その内の1枚を、バトルディスクに設置する。

 

 

「私は『無貌の供物』を召喚する」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ4→0

 

 

黒いヘドロが湧き出て、羊を形作る。

────────────────

④無貌の供物

クリーチャー・カード

種族:テラー

このクリーチャーは攻撃できない。

死亡時:自分はマナを4生成する。

パワー0/タフネス4

────────────────

 

そして、聞き心地の悪い鳴き声を響かせた。

まるで黒板を引っ掻いたような声だ。

 

 

「そのまま、私はターンを終了する」

 

 

私は手札へ視線を落とした。

『切り札』へと。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

僕は目前の試合に釘付けになっていた。

ニーナが出したクリーチャー……『無貌の供物』。

死亡時にマナを生成するカードだ。

 

そう『マナを生成する』だ。

『マナを回復する』とは違う。

 

マナを回復するカードでは、マナゾーンの最大値を超えて回復は出来ない。

マナゾーンにカードが7枚あり、マナが7つある状態で4つ回復させても……合計は11にならない。

つある状態で4つ回復させても……合計は11にならない。

最大値の7を越えたマナは、コップから溢れた水のように消失する。

 

一方の『マナを生成する』では、最大値なんて関係ない。

一時的にマナゾーンの枚数を無視して、11マナになる。

これが何を指し示すかというと、自身のマナゾーンの数……マナの最大値を越えたカードのプレイが可能だという事だ。

 

厄介な──

 

しかし、そんな効果を持つ『無貌の供物』には、一目見ただけで分かる弱点がある。

『マナを生成する』効果が『死亡時』効果である事だ。

更に攻撃できないデメリット効果があるため、攻撃力4以上のクリーチャーに自爆特攻し自壊する事もできない。

 

だが、それは『無貌の供物』単体での弱点だ。

 

ニーナの場には『邪な儀式』が存在している。

自壊させて1ドローまで付いてくる置物(オーナメント)が……。

つまり、任意のタイミングで自壊し、4マナ生み出せるという事だ。

 

盤面に残しておくのは得策ではない。

相手ターンに膨大なマナ量で動かれないように、自分のターン中に除去すべきだ。

そして、ユウキくんはその為のカードを握っている。

 

 

「俺のターン!カードを引き、マナゾーンへ!そして、更に『竜の財宝』でドラゴン・クリーチャーを公開する事で1枚引く!」

>ユウキ:ターン7

>ユウキ:手札3→4

>ユウキ:マナゾーン8→9

 

 

ユウキくんの手札は『竜の財宝』のお陰でリソース切れの心配はないらしい。

ユウキくんのデッキの殆どがドラゴン・クリーチャーだから、『竜の財宝』のドロー効果の起動条件を心配する必要もない。

 

 

「俺は『無貌の供物』を対象に『灼熱の螺旋』を発動するぜ!」

>ユウキ:手札4→3

>ユウキ:マナ9→5

────────────────

④灼熱の螺旋

呪文カード

クリーチャー1体に6ダメージ。

相手プレイヤーに2ダメージ。

その後、残りマナが4以上ならデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加える。

────────────────

 

 

炎が巻き上がり、黒い羊のようなモノへ殺到する。

焼き尽くし、その余波がニーナに降り掛かった。

 

 

「…………」

>ニーナ:ライフ12→10

 

「そして、俺は3枚目の『灼熱の螺旋』を手札に加えるぜ」

>ユウキ:手札3→4

 

 

ユウキくんがデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加えた。

WoM(ワールドオブマジック)』において同名カードは4枚まで採用できる。

ユウキくんは『灼熱の螺旋』の後続用意効果を安定して使えるように最大値である4枚、投入している。

現在、その4枚中2枚使用し、3枚目を手札に加えた……という訳だ。

 

視線をニーナへ向ける。

ユウキくんの手札に『灼熱の螺旋』がある事を、彼女も知っていた筈だ。

それなのに、何故『無貌の供物』をプレイしたのか。

何か、考えがあるのか……?

 

クリーチャーを除去されながらダメージを受けている……このまま『灼熱の螺旋』を撃ち続けられたら、体力(ライフ)の余裕がなくなってしまう。

そして、体力(ライフ)が減れば速攻クリーチャーによるリーサルを警戒しなければならない。

 

……だというのに、彼女は少しも焦っていなかった。

 

 

「破壊された『無貌の供物』の死亡時効果。私はマナを4つ生成する」

>ニーナ:マナ0→4

 

 

マナを生成する死亡時効果は、相手ターンでも発動する。

だが、自ターンで11マナ使用する目論見が外れたと言っていいだろう。

 

 

「……さて、どうすっかな」

 

 

ユウキくんがポツリと小声で呟いた。

ユウキくんの残りマナは5……だが、手札にある高速(クイック)呪文(スペル)のために、マナを残したいのか。

それとも──

 

 

「……よし、俺は手札から『歴戦のドラゴニュート』を召喚するぜ!」

>ユウキ:手札4→3

>ユウキ:マナ5→0

 

 

フィールドに片目が潰れた人型のドラゴンが現れた。

その身には防具を装備しており、手には斧が握られている。

────────────────

⑤歴戦のドラゴニュート

クリーチャー・カード

防衛(防衛がフィールドに存在する場合、相手は防衛を持たないキャラクターに攻撃できない)

死亡時:自分のマナゾーンから1枚、手札に戻す。

種族:ドラゴン・ウォリアー

パワー6/タフネス5

────────────────

 

 

2枚目の『背徳の狂信者』、もしくは類似効果の高速(クイック)呪文(スペル)封じを警戒したみたいだ。

『歴戦のドラゴニュート』はプレイヤーのライフを守れる『防衛』効果持ち……死亡時にデメリット効果としてマナカードを1枚手札に戻す(バウンス)効果がある。

 

しかし、ユウキくんのマナゾーンは既に十分に溜まっている。

マナゾーンからカードを戻す効果はデメリット足り得ない。

それどころか、マナゾーンに存在する『ブレイジング・ドラゴン』が回収できる。

 

『歴戦のドラゴニュート』を破壊しなければ高い攻撃力(パワー)でライフを詰められ、破壊すれば次ターンに『ブレイジング・ドラゴン』に詰められる。

 

 

これにはニーナも──

 

 

微かに笑いながら、ユウキくんを見ていた。

何も焦っていないようで、僕は不気味に感じていた。

その不気味さに、ユウキくんも少し顔を顰めた。

 

 

「……俺はこれでターンを終──

 

「その瞬間、私は高速(クイック)呪文(スペル)『不浄なる再生』を発動」

>ニーナ:手札3→2

>ニーナ:マナ4→0

 

「なっ!?」

 

 

高速(クイック)呪文(スペル)!?

でも、マナは……!

 

そうか!

 

僕は『無貌の供物』のマナ生成効果を、自ターン中に扱うためだと考えていた。

だけど、相手ターン中に破壊される事で高速(クイック)呪文(スペル)のコストを生成する事ができる!

 

 

「『不浄なる再生』の効果。このターン中に破壊されたクリーチャーを蘇生(リアニメイト)する」

────────────────

④不浄なる再生

高速呪文カード

このターン中破壊されたクリーチャー1体を、そのプレイヤーの場に戻す。

────────────────

 

 

大地がひび割れ、再び『無貌の供物』が姿を現した。

破壊される事で4マナを得て、4マナで蘇生する……実質なノーコストで蘇生した。

 

そして──

 

 

「……くっ、俺はそのままターンを終了する」

 

 

ユウキくんのマナは0。

もう行動できない。

妨害もできない。

 

 

「私のターン」

>ニーナ:ターン7

 

 

目に見えた明確な隙。

 

 

「カードを1枚引いて、1枚マナへ」

>ニーナ:手札2→2

>ニーナ:マナゾーン6→7

 

 

その隙を逃す彼女ではない。

 

 

置物(オーナメント)『邪な儀式』の効果を発動。場の『無貌の供物』を破壊して、1枚引く」

>ニーナ:手札2→3

 

 

黒いヘドロのような羊が砕けて、光の粒子が宙を舞う。

 

 

「そして『無貌の供物』の死亡時効果。マナを4つ生成する」

ニーナ:マナ7→11

 

 

これで彼女のマナは11。

だけど、これは最大値である7を超えた状態で……過剰なマナは次ターンに持ち越せない。

だから、このターンさえ凌げば、まだ──

 

 

「私はマナを全て支払い──

>ニーナ:手札3→2

>ニーナ:マナ11→0

 

 

11マナの超大型クリーチャーだって……!?

 

 

「手札から『解き放たれし破滅 エルザイン』を召喚」

 

 

空間が裂けた。

そこから光を全て打ち消すような、黒い液体が流れ落ちた。

まるで世界が傷を負って、血を流しているかのような景色。

 

その黒い液体が収束し、巨大な水溜りが出来た。

 

瞬間──

 

そこから、腕が生えた。

真っ黒な、生命を感じさせない人型……いいや、人型にしては歪すぎる腕。

 

それが、六本。

そして中央が裂けて、その本体が姿を現した。

 

筋肉質な女型のマネキンに似た身体に、長い腕が六本生えている。

頭部は……歪で、右に三つ、左に二つ……計五つの目があった。

口は耳元まで裂けていて、中から真っ赤な何かが見えている。

そして背中には……まるで大きな手のひらのような形をした翼。

 

邪悪な姿……生理的悪寒を感じる威圧感。

『解き放たれし破滅 エルザイン』が姿を現した。

 

 

「『解き放たれし破滅 エルザイン』は、自身の(フィールド)、そして墓場(トラッシュ)に重複するカードが存在しない場合にのみ、その効果が適用される」

 

 

重複するカードが存在しない場合……?

でも、ニーナは手札からカードを捨てたりしていた。

WoM(ワールドオブマジック)』では同名カードを4枚も入れられる……カード名が重複する可能性もある筈だ。

なのにそんな、安定性のないカードを──

 

いや、違う……まさか──

 

 

「まさか、ハイランダー……?」

 

 

思わず漏れてしまった僕の小さな声に、ニーナが一瞥し──

 

 

「……うん、ご明察」

 

 

指を立てて、小さく頷いた。

何でもないかのような、その仕草に……僕は目を瞬いた。

 

 

『ハイランダー』とは、同名カードをデッキに1枚しか採用しない構築だ。

つまり、デッキ50枚、50種類のカードで組むということ。

だが、それは複数使用する事で強いカードや、戦術にあったカードを複数投入できないという事。

WoM(ワールドオブマジック)』では同名カードを4枚採用できる……なのに、その利点を投げ捨てている。

対処札も減るし、デッキの構成も、方向性だって……いや、だから彼女のデッキには、様々な対処札が入っていたのか。

 

手札破壊(ハンデス)、除去、マナ破壊……それらは同名カードを複数枚入れられないが故の、統一感の無さ。

だけどそんなデッキ、引きたい時に引きたい対処札を引くなんて事は出来ないはず。

……そうか、その為に手札交換カードを採用しているんだ。

 

だとしても、余程、自分の引き運に自信が無ければ組めないデッキだ。

 

だけど、全ての辻褄が合う。

その構築も、プレイングも、重複したカードを使ってこない理由も……全て。

 

彼女のデッキが、様々な状況に対処できるカードを1枚ずつ入れたハイランダーデッキだったのだとしたら!

 

デッキ構築の制限……そこまでしても、この『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を使用したかったのか?

それだけ、効果が強力なのか!?

 

彼女が視線を、ユウキくんへと戻した。

 

 

「そして、『解き放たれし破滅 エルザイン』の召喚効果。墓場(トラッシュ)からクリーチャーをデッキに戻し……その召喚時効果を得る」

 

 

墓場(トラッシュ)のクリーチャー効果コピー……?

それだけの為に、11マナも払うのか?

 

僕は視線をバトルディスクに落とした。

────────────────

⑪解き放たれし破滅 エルザイン

レジェンド・クリーチャー・カード

種族:テラー

自分の場/墓場に同名カード(トークンを除く)が存在する場合、このクリーチャーは効果を失う。

召喚時/互いのターン開始時:墓場に存在するクリーチャーを1体選択し、デッキに戻す。

そのクリーチャーが「召喚時」効果を持つなら、その効果を得る。

パワー5/タフネス13

────────────────

 

 

効果の発動タイミングは『召喚時』……または、『互いのターン開始時』だって?

視線を上げて、悍ましい姿をしたクリーチャーへ目を向けた。

 

このクリーチャー『解き放たれし破滅 エルザイン』は、召喚時に効果を持ちながら、互いのターン開始時にアドバンテージを稼げる……システム・クリーチャー……なのか?

僕はまだ、その本質を掴めずにいた。

 

 

墓場(トラッシュ)の『屍喰いグール』をデッキに戻し、その召喚時効果を『解き放たれし破滅 エルザイン』は得る」

────────────────

③屍喰いグール

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:クリーチャー1体にXダメージ(Xはこのクリーチャーの攻撃力に等しい)。この効果でクリーチャーを破壊した場合、カードを1枚引く。

パワー1/タフネス3

────────────────

 

 

『屍喰いグール』……彼女が、僕とのバトルで使っていたクリーチャーだ。

だが、このクリーチャーはユウキくんとの試合では使ってない筈──

 

そうか、手札交換で既に落としていたのか!

彼女は手札からカードを破棄して、手札を交換していた。

 

全てはこの『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を活かす為に……!

 

 

「『屍喰いグール』の召喚時効果。自身の攻撃力(パワー)に等しいダメージを敵クリーチャーに与える」

 

 

『屍喰いグール』本体の攻撃力は1……だから僕の時は1点しかダメージが出なかった。

しかし、今回は『解き放たれし破滅 エルザイン』が同一の効果を得ている。

その攻撃力は5……つまり、5ダメージの除去が出来る!

 

『解き放たれし破滅 エルザイン』の身体が裂けて、腹部から何かが露出する。

紐のような内臓が組み上がり、『屍喰いグール』を模した。

 

 

「効果の対象は『歴戦のドラゴニュート』。『解き放たれし破滅 エルザイン』の攻撃力(パワー)に等しい、5ダメージを与える」

 

 

腹部に生えた『屍喰いグール』の頭部が裂けて、液体を吐き出した。

その液体は『歴戦のドラゴニュート』に命中し……溶解させた。

 

 

「クリーチャーが破壊された事で『屍喰いグール』の追加効果が発動し、私はカードを1枚引く」

>ニーナ:手札2→3

 

「くっ……だが、『歴戦のドラゴニュート』の死亡時効果!俺はマナからカードを1枚回収する!」

>ユウキ:マナゾーン9→8

>ユウキ:手札3→4

 

 

でも、これでユウキくんの手札に『ブレイジング・ドラゴン』が帰ってきた筈だ。

『解き放たれし破滅 エルザイン』の体力は13……『ブレイジング・ドラゴン』本体の攻撃力は7で、効果によるダメージは6……合計で13ダメージ。

つまり、『ブレイジング・ドラゴン』で攻撃すれば除去できる。

 

更に『解き放たれし破滅 エルザイン』の攻撃力は5で、『ブレイジング・ドラゴン』の体力は6だ。

場に残したまま、『解き放たれし破滅 エルザイン』を戦闘破壊出来る。

 

このまま、『解き放たれし破滅 エルザイン』を残しておけば甚大な被害が出るけど……まだ、巻き返せる!

 

 

「そして、私はターンを終了」

 

 

 

ターンが、受け渡された。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「俺の、ターン!カードを引いて、手札を1枚マナへ!」

>ユウキ:ターン8

>ユウキ:手札4→4

>ユウキ:マナゾーン8→9

 

 

ターン開始時効果が処理されるスタートアップ・フェーズに入る。

そしてその優先権はプレイヤー側、つまりユウキから処理される。

 

 

「そして『竜の財宝』の効果で、1枚引く!」

>ユウキ:手札4→5

 

 

その後は優先権が移り……私の番となる。

つまり、『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果が起動されるということ。

 

墓場にあるクリーチャー……『精神を刻む者』へ目を向ける。

1ターン目に『這いずるワーム』の効果で落ちたカードだ。

これをデッキに戻せば、『精神を刻む者』の『相手の手札を奪う』召喚時効果をコピーできる。

 

前ターン、ユウキは『歴戦のドラゴニュート』でマナからカードを1枚回収している。

そう『ブレイジング・ドラゴン』を──

 

 

「…………ふふ」

 

 

なんて、考えてはいない。

ユウキも私の墓場にある『精神を刻む者』の効果コピーによる、手札奪取を警戒している筈だ。

 

だから、手札に戻していない筈だ。

これほどのカードバトラーなら、そんなミスはしない。

 

逆だ。

マナに残す事で手札奪取を回避し、踏み倒しを狙っている。

マナからドラゴンを呼び出す『竜の幻出』か、似たようなカードがまだ彼のデッキには眠っている……それか『歴戦のドラゴニュート』でマナから回収したか。

 

もしくは、私の裏をかいて素直に『ブレイジング・ドラゴン』を手札へ戻しているのか。

どちらか。

 

 

「ターン開始時。私は『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を発動」

 

 

だが、どちらだとしても問題ない。

プレイさせなければ良いのだ。

 

 

「私は『背徳の狂信者』をデッキに戻し、同一の効果を発動する」

 

 

目の前の『解き放たれし破滅 エルザイン』の胸が裂けて、『背徳の狂信者』を模した赤黒い何かが姿を現した。

そして、邪悪な讃美歌を歌う。

 

 

「その召喚時効果。相手のマナを6つ消失させる」

────────────────

②背徳の狂信者

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:相手プレイヤーはマナを6失う。

パワー1/タフネス1

────────────────

 

「っ……まさか!?」

 

 

ユウキも気付いたようだ。

『背徳の狂信者』の効果はマナ破壊。

本来ならば自分のターンにのみ発動できる『召喚時』効果であるため、高速呪文に対するメタカードでしかない。

 

だが『解き放たれし破滅 エルザイン』は相手ターン開始時に、その召喚効果を起動できる。

つまり、ターン開始時に起動できる『背徳の狂信者』の効果は、相手のマナをターン開始時に6つ失わせる強力なマナ破壊カードに変わる。

 

『召喚時』効果を『互いのターン開始時』効果へ『タイミングを書き換える』こと。

これが『解き放たれし破滅 エルザイン』の真の強さだ。

 

 

「マナが……!」

>ユウキ:マナ9→3

 

 

これでユウキが使用できるマナは3。

3コスト以下のカードで体力(ヘルス)が13もある『解き放たれし破滅 エルザイン』を除去するのは困難だ。

そして、フィールドに残ってしまえば私のターン開始時にも『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果が起動する。

更に、その次のターンも……。

 

次にユウキが動けるまでに発動する、効果タイミングは合計で2回。

そして私のターンに生成されるマナもある。

このターンに対処できなければ私の勝ちだ。

 

視線を、ユウキへと向ける。

 

 

「…………へへ」

 

 

だが、その目はまだ絶望していない。

勝利を目指し、突き進む勇敢な目だ。

 

その視線に、思わず私は口角が上がった。

 

 

「……そうこなくちゃ」

 

 

ここからどう対処する?

どうやって勝つ?

何をする?

 

何が出来るんだ?

何を見せてくれるんだ?

 

その全てを吐き出させた上で、私が全てで上回って見せる。

心臓の音が、煩い程に響いていた。

 

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