TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい 作:WhatSoon
「私のターン。カードを引いて、マナへ置く」
>ニーナ:ターン5
>ニーナ:手札5→5
>ニーナ:マナゾーン4→5
フードが外れ、素顔を彼等に見られてしまった。
だが、別に無理をして隠すほどの物ではない。
この容姿で悪目立ちしない為にかぶっていただけだ。
再度、フードをかぶり直す必要もない。
カードのプレイに支障はない。
今はただ、このカードバトルに集中したい。
それだけが全てだ。
「そして、手札から『屍集うタイラント』を召喚」
>ニーナ:手札5→4
>ニーナ:マナ5→0
巨大な骨格が姿を現した。
────────────────
⑤屍集うタイラント
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:自分プレイヤーをX回復し、このクリーチャーは+X/+Xの修正を受ける(Xは自分の
パワー1/タフネス1
────────────────
「『屍集うタイラント』は
周囲から骨が集まり、その身体に肉付けをしていく。
より強く、巨大に……異形へと姿を変えた。
「私の
>ニーナ:ライフ9→14
>屍集うタイラント(1/1)→(6/6)
私のデッキには多くの手札破棄カードが存在している。
そして、恐怖を司る種族『テラー』のクリーチャーも。
だから、この『屍集うタイラント』は最速の5ターン目に展開しても5コスト以上のパフォーマンスを生み出せる。
ライフは大きく回復できた。
本体も6/6と5コストの平均を越えるステータスを持っている。
確かに『竜の幻出』による『ブレイジング・ドラゴン』早期着地を活かした『
だが、弱点はある。
プレイ後の盤面が空になるということ。
次ターンで削りきれないラインまで体力回復された場合、私の盤面に付き合わなければならない筈だ。
『邪な儀式』によるドロー変換効果は使用せず、このまま盤面の主導権を握らせて貰おう。
「私はターンを終了する」
ユウキへ視線を向ける。
私の素顔を見た衝撃から、立ち直っていた。
またカードバトラーに相応しい顔へ戻っている。
……そうこなくては。
「俺のターン!カードを引き、マナゾーンへ!更に『竜の財宝』で1枚引く!」
>ユウキ:ターン6
>ユウキ:手札2→3
>ユウキ:マナゾーン7→8
このバトル中、ユウキにはマナ加速を2回もされている。
私との間のマナ差が大きく開いてしまった。
マナが多く生み出せるということは、それだけ強力なカードをプレイできるということ。
そして、マナが少ないという事はその『強力なカード』への対処が難しいということ。
「俺は手札から
>ユウキ:手札3→2
>ユウキ:マナ8→4
────────────────
④灼熱の螺旋
呪文カード
クリーチャー1体に6ダメージ。
相手プレイヤーに2ダメージ。
その後、残りマナが4以上ならデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加える。
────────────────
骨の異形が炎の嵐に飲み込まれ、爆ぜた。
「っ……」
>ニーナ:ライフ14→12
「そして、俺はデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加える!」
>ユウキ:手札2→3
更に、後続まで用意された。
ユウキの残りは4マナ。
しかし、『灼熱の螺旋』はクリーチャーを対象にする
私の場にクリーチャーが存在しない今、プレイできない。
なら、別の手を使う筈だ。
「俺はターンを終了する!」
いや……クリーチャーを展開せず、そのままターンを終了したのか。
それとも
「私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」
>ニーナ:ターン6
>ニーナ:手札4→4
>ニーナ:マナゾーン5→6
……関係ない。
踏み抜かせて貰う。
「私は『背徳の狂信者』を召喚する」
>ニーナ:手札4→3
>ニーナ:マナ6→4
黒い法衣を着たゾンビが現れた。
────────────────
②背徳の狂信者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:相手プレイヤーはマナを6失う。
パワー1/タフネス1
────────────────
「『背徳の狂信者』の効果。相手はマナを6つ失う」
黒い法衣を着たゾンビが、歪な讃美歌を歌い始めた。
「なっ……!?」
一見すると強力なマナ破壊効果。
しかし、その実態、『背徳の狂信者』の効果トリガーは『召喚時』だ。
自ターンでしかも手札からプレイした時にしか発動しない。
無闇に使っても、相手のターン開始事にはマナがマナゾーンの数まで回復するため、意味はない。
このカードの役割は、
つまり、このカードは相手の
ユウキが今、出来る事は『背徳の狂信者』に
更に、この効果は起動効果ではなく召喚時効果……つまり、ダメージ呪文による『除去』ではなく、召喚自体を無効化する『打ち消し』でなければ効果を止められない。
この召喚に対して除去呪文を撃ったとしても、結局、マナを失わせる効果は働く。
「……いいぜ。俺は何もしない」
>ユウキ:マナ4→0
ほんの少し、短い時間だったが、ユウキは悩み……
手札に握っている
そもそも、握っていなかったのか?
どちらにせよ、甘い。
「『邪な儀式』の効果。場の『背徳の狂信者』を破壊して、1枚引く」
>ニーナ:手札3→4
リソース勝負ならば、ここで『背徳の狂信者』を除去すべきだった。
こちらには『邪な儀式』が存在する。
『背徳の狂信者』をドローへ変換する事だって出来るのだ。
これで、残り手札は4枚。
その内の1枚を、バトルディスクに設置する。
「私は『無貌の供物』を召喚する」
>ニーナ:手札4→3
>ニーナ:マナ4→0
黒いヘドロが湧き出て、羊を形作る。
────────────────
④無貌の供物
クリーチャー・カード
種族:テラー
このクリーチャーは攻撃できない。
死亡時:自分はマナを4生成する。
パワー0/タフネス4
────────────────
そして、聞き心地の悪い鳴き声を響かせた。
まるで黒板を引っ掻いたような声だ。
「そのまま、私はターンを終了する」
私は手札へ視線を落とした。
『切り札』へと。
◇◆◇
僕は目前の試合に釘付けになっていた。
ニーナが出したクリーチャー……『無貌の供物』。
死亡時にマナを生成するカードだ。
そう『マナを生成する』だ。
『マナを回復する』とは違う。
マナを回復するカードでは、マナゾーンの最大値を超えて回復は出来ない。
マナゾーンにカードが7枚あり、マナが7つある状態で4つ回復させても……合計は11にならない。
つある状態で4つ回復させても……合計は11にならない。
最大値の7を越えたマナは、コップから溢れた水のように消失する。
一方の『マナを生成する』では、最大値なんて関係ない。
一時的にマナゾーンの枚数を無視して、11マナになる。
これが何を指し示すかというと、自身のマナゾーンの数……マナの最大値を越えたカードのプレイが可能だという事だ。
厄介な──
しかし、そんな効果を持つ『無貌の供物』には、一目見ただけで分かる弱点がある。
『マナを生成する』効果が『死亡時』効果である事だ。
更に攻撃できないデメリット効果があるため、攻撃力4以上のクリーチャーに自爆特攻し自壊する事もできない。
だが、それは『無貌の供物』単体での弱点だ。
ニーナの場には『邪な儀式』が存在している。
自壊させて1ドローまで付いてくる
つまり、任意のタイミングで自壊し、4マナ生み出せるという事だ。
盤面に残しておくのは得策ではない。
相手ターンに膨大なマナ量で動かれないように、自分のターン中に除去すべきだ。
そして、ユウキくんはその為のカードを握っている。
「俺のターン!カードを引き、マナゾーンへ!そして、更に『竜の財宝』でドラゴン・クリーチャーを公開する事で1枚引く!」
>ユウキ:ターン7
>ユウキ:手札3→4
>ユウキ:マナゾーン8→9
ユウキくんの手札は『竜の財宝』のお陰でリソース切れの心配はないらしい。
ユウキくんのデッキの殆どがドラゴン・クリーチャーだから、『竜の財宝』のドロー効果の起動条件を心配する必要もない。
「俺は『無貌の供物』を対象に『灼熱の螺旋』を発動するぜ!」
>ユウキ:手札4→3
>ユウキ:マナ9→5
────────────────
④灼熱の螺旋
呪文カード
クリーチャー1体に6ダメージ。
相手プレイヤーに2ダメージ。
その後、残りマナが4以上ならデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加える。
────────────────
炎が巻き上がり、黒い羊のようなモノへ殺到する。
焼き尽くし、その余波がニーナに降り掛かった。
「…………」
>ニーナ:ライフ12→10
「そして、俺は3枚目の『灼熱の螺旋』を手札に加えるぜ」
>ユウキ:手札3→4
ユウキくんがデッキから『灼熱の螺旋』を手札に加えた。
『
ユウキくんは『灼熱の螺旋』の後続用意効果を安定して使えるように最大値である4枚、投入している。
現在、その4枚中2枚使用し、3枚目を手札に加えた……という訳だ。
視線をニーナへ向ける。
ユウキくんの手札に『灼熱の螺旋』がある事を、彼女も知っていた筈だ。
それなのに、何故『無貌の供物』をプレイしたのか。
何か、考えがあるのか……?
クリーチャーを除去されながらダメージを受けている……このまま『灼熱の螺旋』を撃ち続けられたら、
そして、
……だというのに、彼女は少しも焦っていなかった。
「破壊された『無貌の供物』の死亡時効果。私はマナを4つ生成する」
>ニーナ:マナ0→4
マナを生成する死亡時効果は、相手ターンでも発動する。
だが、自ターンで11マナ使用する目論見が外れたと言っていいだろう。
「……さて、どうすっかな」
ユウキくんがポツリと小声で呟いた。
ユウキくんの残りマナは5……だが、手札にある
それとも──
「……よし、俺は手札から『歴戦のドラゴニュート』を召喚するぜ!」
>ユウキ:手札4→3
>ユウキ:マナ5→0
フィールドに片目が潰れた人型のドラゴンが現れた。
その身には防具を装備しており、手には斧が握られている。
────────────────
⑤歴戦のドラゴニュート
クリーチャー・カード
防衛(防衛がフィールドに存在する場合、相手は防衛を持たないキャラクターに攻撃できない)
死亡時:自分のマナゾーンから1枚、手札に戻す。
種族:ドラゴン・ウォリアー
パワー6/タフネス5
────────────────
2枚目の『背徳の狂信者』、もしくは類似効果の
『歴戦のドラゴニュート』はプレイヤーのライフを守れる『防衛』効果持ち……死亡時にデメリット効果としてマナカードを1枚
しかし、ユウキくんのマナゾーンは既に十分に溜まっている。
マナゾーンからカードを戻す効果はデメリット足り得ない。
それどころか、マナゾーンに存在する『ブレイジング・ドラゴン』が回収できる。
『歴戦のドラゴニュート』を破壊しなければ高い
これにはニーナも──
微かに笑いながら、ユウキくんを見ていた。
何も焦っていないようで、僕は不気味に感じていた。
その不気味さに、ユウキくんも少し顔を顰めた。
「……俺はこれでターンを終──
「その瞬間、私は
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ4→0
「なっ!?」
でも、マナは……!
そうか!
僕は『無貌の供物』のマナ生成効果を、自ターン中に扱うためだと考えていた。
だけど、相手ターン中に破壊される事で
「『不浄なる再生』の効果。このターン中に破壊されたクリーチャーを
────────────────
④不浄なる再生
高速呪文カード
このターン中破壊されたクリーチャー1体を、そのプレイヤーの場に戻す。
────────────────
大地がひび割れ、再び『無貌の供物』が姿を現した。
破壊される事で4マナを得て、4マナで蘇生する……実質なノーコストで蘇生した。
そして──
「……くっ、俺はそのままターンを終了する」
ユウキくんのマナは0。
もう行動できない。
妨害もできない。
「私のターン」
>ニーナ:ターン7
目に見えた明確な隙。
「カードを1枚引いて、1枚マナへ」
>ニーナ:手札2→2
>ニーナ:マナゾーン6→7
その隙を逃す彼女ではない。
「
>ニーナ:手札2→3
黒いヘドロのような羊が砕けて、光の粒子が宙を舞う。
「そして『無貌の供物』の死亡時効果。マナを4つ生成する」
ニーナ:マナ7→11
これで彼女のマナは11。
だけど、これは最大値である7を超えた状態で……過剰なマナは次ターンに持ち越せない。
だから、このターンさえ凌げば、まだ──
「私はマナを全て支払い──
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ11→0
11マナの超大型クリーチャーだって……!?
「手札から『解き放たれし破滅 エルザイン』を召喚」
空間が裂けた。
そこから光を全て打ち消すような、黒い液体が流れ落ちた。
まるで世界が傷を負って、血を流しているかのような景色。
その黒い液体が収束し、巨大な水溜りが出来た。
瞬間──
そこから、腕が生えた。
真っ黒な、生命を感じさせない人型……いいや、人型にしては歪すぎる腕。
それが、六本。
そして中央が裂けて、その本体が姿を現した。
筋肉質な女型のマネキンに似た身体に、長い腕が六本生えている。
頭部は……歪で、右に三つ、左に二つ……計五つの目があった。
口は耳元まで裂けていて、中から真っ赤な何かが見えている。
そして背中には……まるで大きな手のひらのような形をした翼。
邪悪な姿……生理的悪寒を感じる威圧感。
『解き放たれし破滅 エルザイン』が姿を現した。
「『解き放たれし破滅 エルザイン』は、自身の
重複するカードが存在しない場合……?
でも、ニーナは手札からカードを捨てたりしていた。
『
なのにそんな、安定性のないカードを──
いや、違う……まさか──
「まさか、ハイランダー……?」
思わず漏れてしまった僕の小さな声に、ニーナが一瞥し──
「……うん、ご明察」
指を立てて、小さく頷いた。
何でもないかのような、その仕草に……僕は目を瞬いた。
『ハイランダー』とは、同名カードをデッキに1枚しか採用しない構築だ。
つまり、デッキ50枚、50種類のカードで組むということ。
だが、それは複数使用する事で強いカードや、戦術にあったカードを複数投入できないという事。
『
対処札も減るし、デッキの構成も、方向性だって……いや、だから彼女のデッキには、様々な対処札が入っていたのか。
だけどそんなデッキ、引きたい時に引きたい対処札を引くなんて事は出来ないはず。
……そうか、その為に手札交換カードを採用しているんだ。
だとしても、余程、自分の引き運に自信が無ければ組めないデッキだ。
だけど、全ての辻褄が合う。
その構築も、プレイングも、重複したカードを使ってこない理由も……全て。
彼女のデッキが、様々な状況に対処できるカードを1枚ずつ入れたハイランダーデッキだったのだとしたら!
デッキ構築の制限……そこまでしても、この『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を使用したかったのか?
それだけ、効果が強力なのか!?
彼女が視線を、ユウキくんへと戻した。
「そして、『解き放たれし破滅 エルザイン』の召喚効果。
それだけの為に、11マナも払うのか?
僕は視線をバトルディスクに落とした。
────────────────
⑪解き放たれし破滅 エルザイン
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:テラー
自分の場/墓場に同名カード(トークンを除く)が存在する場合、このクリーチャーは効果を失う。
召喚時/互いのターン開始時:墓場に存在するクリーチャーを1体選択し、デッキに戻す。
そのクリーチャーが「召喚時」効果を持つなら、その効果を得る。
パワー5/タフネス13
────────────────
効果の発動タイミングは『召喚時』……または、『互いのターン開始時』だって?
視線を上げて、悍ましい姿をしたクリーチャーへ目を向けた。
このクリーチャー『解き放たれし破滅 エルザイン』は、召喚時に効果を持ちながら、互いのターン開始時にアドバンテージを稼げる……システム・クリーチャー……なのか?
僕はまだ、その本質を掴めずにいた。
「
────────────────
③屍喰いグール
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:クリーチャー1体にXダメージ(Xはこのクリーチャーの攻撃力に等しい)。この効果でクリーチャーを破壊した場合、カードを1枚引く。
パワー1/タフネス3
────────────────
『屍喰いグール』……彼女が、僕とのバトルで使っていたクリーチャーだ。
だが、このクリーチャーはユウキくんとの試合では使ってない筈──
そうか、手札交換で既に落としていたのか!
彼女は手札からカードを破棄して、手札を交換していた。
全てはこの『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を活かす為に……!
「『屍喰いグール』の召喚時効果。自身の
『屍喰いグール』本体の攻撃力は1……だから僕の時は1点しかダメージが出なかった。
しかし、今回は『解き放たれし破滅 エルザイン』が同一の効果を得ている。
その攻撃力は5……つまり、5ダメージの除去が出来る!
『解き放たれし破滅 エルザイン』の身体が裂けて、腹部から何かが露出する。
紐のような内臓が組み上がり、『屍喰いグール』を模した。
「効果の対象は『歴戦のドラゴニュート』。『解き放たれし破滅 エルザイン』の
腹部に生えた『屍喰いグール』の頭部が裂けて、液体を吐き出した。
その液体は『歴戦のドラゴニュート』に命中し……溶解させた。
「クリーチャーが破壊された事で『屍喰いグール』の追加効果が発動し、私はカードを1枚引く」
>ニーナ:手札2→3
「くっ……だが、『歴戦のドラゴニュート』の死亡時効果!俺はマナからカードを1枚回収する!」
>ユウキ:マナゾーン9→8
>ユウキ:手札3→4
でも、これでユウキくんの手札に『ブレイジング・ドラゴン』が帰ってきた筈だ。
『解き放たれし破滅 エルザイン』の体力は13……『ブレイジング・ドラゴン』本体の攻撃力は7で、効果によるダメージは6……合計で13ダメージ。
つまり、『ブレイジング・ドラゴン』で攻撃すれば除去できる。
更に『解き放たれし破滅 エルザイン』の攻撃力は5で、『ブレイジング・ドラゴン』の体力は6だ。
場に残したまま、『解き放たれし破滅 エルザイン』を戦闘破壊出来る。
このまま、『解き放たれし破滅 エルザイン』を残しておけば甚大な被害が出るけど……まだ、巻き返せる!
「そして、私はターンを終了」
ターンが、受け渡された。
◇◆◇
「俺の、ターン!カードを引いて、手札を1枚マナへ!」
>ユウキ:ターン8
>ユウキ:手札4→4
>ユウキ:マナゾーン8→9
ターン開始時効果が処理されるスタートアップ・フェーズに入る。
そしてその優先権はプレイヤー側、つまりユウキから処理される。
「そして『竜の財宝』の効果で、1枚引く!」
>ユウキ:手札4→5
その後は優先権が移り……私の番となる。
つまり、『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果が起動されるということ。
墓場にあるクリーチャー……『精神を刻む者』へ目を向ける。
1ターン目に『這いずるワーム』の効果で落ちたカードだ。
これをデッキに戻せば、『精神を刻む者』の『相手の手札を奪う』召喚時効果をコピーできる。
前ターン、ユウキは『歴戦のドラゴニュート』でマナからカードを1枚回収している。
そう『ブレイジング・ドラゴン』を──
「…………ふふ」
なんて、考えてはいない。
ユウキも私の墓場にある『精神を刻む者』の効果コピーによる、手札奪取を警戒している筈だ。
だから、手札に戻していない筈だ。
これほどのカードバトラーなら、そんなミスはしない。
逆だ。
マナに残す事で手札奪取を回避し、踏み倒しを狙っている。
マナからドラゴンを呼び出す『竜の幻出』か、似たようなカードがまだ彼のデッキには眠っている……それか『歴戦のドラゴニュート』でマナから回収したか。
もしくは、私の裏をかいて素直に『ブレイジング・ドラゴン』を手札へ戻しているのか。
どちらか。
「ターン開始時。私は『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を発動」
だが、どちらだとしても問題ない。
プレイさせなければ良いのだ。
「私は『背徳の狂信者』をデッキに戻し、同一の効果を発動する」
目の前の『解き放たれし破滅 エルザイン』の胸が裂けて、『背徳の狂信者』を模した赤黒い何かが姿を現した。
そして、邪悪な讃美歌を歌う。
「その召喚時効果。相手のマナを6つ消失させる」
────────────────
②背徳の狂信者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:相手プレイヤーはマナを6失う。
パワー1/タフネス1
────────────────
「っ……まさか!?」
ユウキも気付いたようだ。
『背徳の狂信者』の効果はマナ破壊。
本来ならば自分のターンにのみ発動できる『召喚時』効果であるため、高速呪文に対するメタカードでしかない。
だが『解き放たれし破滅 エルザイン』は相手ターン開始時に、その召喚効果を起動できる。
つまり、ターン開始時に起動できる『背徳の狂信者』の効果は、相手のマナをターン開始時に6つ失わせる強力なマナ破壊カードに変わる。
『召喚時』効果を『互いのターン開始時』効果へ『タイミングを書き換える』こと。
これが『解き放たれし破滅 エルザイン』の真の強さだ。
「マナが……!」
>ユウキ:マナ9→3
これでユウキが使用できるマナは3。
3コスト以下のカードで
そして、フィールドに残ってしまえば私のターン開始時にも『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果が起動する。
更に、その次のターンも……。
次にユウキが動けるまでに発動する、効果タイミングは合計で2回。
そして私のターンに生成されるマナもある。
このターンに対処できなければ私の勝ちだ。
視線を、ユウキへと向ける。
「…………へへ」
だが、その目はまだ絶望していない。
勝利を目指し、突き進む勇敢な目だ。
その視線に、思わず私は口角が上がった。
「……そうこなくちゃ」
ここからどう対処する?
どうやって勝つ?
何をする?
何が出来るんだ?
何を見せてくれるんだ?
その全てを吐き出させた上で、私が全てで上回って見せる。
心臓の音が、煩い程に響いていた。