TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい   作:WhatSoon

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#9 1+1の答え

「私とヒイロ、二人でなら……貴方達に勝てる」

 

 

そう、ニーナが言い切った。

僕は少し驚いて、そして……息を呑んだ。

 

ニーナと、僕で……?

彼女は強い。

僕よりも……遥かに強い。

 

だけど、僕は……。

僕に何か、出来るのだろうか?

僕なんかが──

 

 

「チッ、舐めやがって!『死霊騎士 アモルファス』で『偽神デミゴルド』に攻撃だ!」

>死霊騎士アモルファス(6/4)

>偽神デミゴルド(6/6)

 

 

試合に意識を戻す。

 

『死霊騎士 アモルファス』はキーワード能力『突撃』を持っている。

『突撃』は『速攻』の下位互換能力で、場に出たターンにクリーチャーへ攻撃できる能力だ。

プレイヤーを対象に出来ないのが『速攻』との違いになる。

 

 

「『偽神デミゴルド』を戦闘破壊!同時に『死霊騎士 アモルファス』が破壊された事で『死界の亡壁』も破壊される!」

────────────────

⑥死界の亡壁

オーナメント・カード

自分の場に種族「テラー」クリーチャーが存在する場合、自分プレイヤーを攻撃対象にできない。

自分のクリーチャーが破壊された時:このカードを破壊する。

自分の場にコスト8以上の種族「テラー」クリーチャーが蘇生された時:このカードを墓場から場に戻す。

────────────────

 

 

瞬間、相手の場にクリーチャー置物(オーナメント)も無くなった。

だが、それは一時的な物でしかないことを僕は知っていた。

 

 

「そして、死亡した『死霊騎士 アモルファス』の効果により『死霊騎士 アモルファス』を蘇生(リアニメイト)!更に『死界の亡壁』も場に戻るぜ!」

────────────────

⑧死霊騎士 アモルファス

レジェンド・クリーチャー・カード

種族:テラー・ナイト

突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)

死亡時:このクリーチャー以外の種族「テラー」クリーチャーを墓場から1体、場に戻す。

パワー6/タフネス4

────────────────

 

 

場に再び、『死霊騎士 アモルファス』が現れ、死霊が壁となって蘇る。

 

 

「どうだ!これが『死霊騎士 アモルファス』の蘇生ループだ!」

 

 

状況だけ見れば、ニーナが場に出した『偽神デミゴルド』を一方的に戦闘破壊されたようなものだ。

だが、彼女は少しも焦っていなかった。

 

 

「オレのターンは終了!こっからジワジワと嬲り殺しにしてやる!」

 

 

だから、僕もその焦りを飲み込んだ。

 

 

「……僕のターンだ。カードを引いて、1枚をマナへ置く」

>ヒイロ:ターン5

>ヒイロ:手札3→3

>ヒイロ:マナゾーン4→5

 

 

さて、僕はどうすべきだ?

あの『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』の突破方法を考えないと──

 

 

「ヒイロ」

 

 

名前を呼ばれ、視線を横に向ける。

 

 

「ヒイロのやりたい事は何?」

 

「僕の……やりたい事?」

 

 

僕は目を細める。

 

 

「答えは言わなくていい。だけど、『それだけでいい』。他は余計だから」

 

「…………」

 

 

会話は敵チームに聞かれている。

だから、ハッキリと言えないのだろう。

 

何を言いたいのか?

何が言いたかったのか?

 

頭の中で整理する。

 

僕のやりたいこと……コンボデッキなのだから、ワンショットキルコンボの事だろう。

だが、相手の場に『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』が存在する限り、その攻撃は相手プレイヤーに通らない。

 

不死身のクリーチャーと置物(オーナメント)を対処する方法があるのだろうか?

 

指を口元へ持っていく。

……僕のデッキには『死霊騎士 アモルファス』の死亡時効果を発動させず除去できる手札に戻す(バウンス)効果呪文(スペル)が入っている。

置物(オーナメント)を除去する効果を持つクリーチャーもいる。

 

だが、前者は手札に戻した所で、再度プレイされた時に状況は元に戻る。

後者も、『死霊騎士 アモルファス』が死亡した瞬間に場に戻ってくる。

一時しのぎでしかない。

 

そして、それらの呪文(スペル)やクリーチャーをプレイしながら、ワンショットキルを狙おうとすれば……余分にマナが必要になる。

 

そこまでマナを伸ばす猶予はない。

『死霊騎士 アモルファス』によるリーダーへの攻撃を凌ぐにも限度があるからだ。

 

……だけど。

 

ニーナは言った。

やりたい事をしろ、と。

それ以外は余計な事だ、と。

 

ワンショットキル以外の余計な事……つまり、相手クリーチャーへの対処。

それを考えなくていい、のか?

 

彼女にはこの状況を突破する手段がある……のか?

しかし、その手段は分からない。

 

 

それでも──

 

 

「…………」

 

 

それでも、信じる。

信じたい。

 

僕を信じると言ってくれた、彼女を信じたいんだ。

 

 

「よし、僕は『根源のトーテム』の効果を発動!デッキからコスト1の呪文(スペル)カード、『新緑の回廊』を発動し、カードを1枚引く!」

>ヒイロ:マナ5→4

>ヒイロ:手札3→4

────────────────

①新緑の回廊

呪文カード

カードを1枚引く。

────────────────

 

 

手札を確認する。

コンボパーツはまだ揃っていない。

 

ならば、『死霊騎士アモルファス』の攻撃を受け止めるために、クリーチャーを──

 

いいや、違う。

 

僕がすべき事は──

 

 

「僕は手札から呪文(スペル)『生命の循環』を発動する!」

>ヒイロ:マナ4→0

>ヒイロ:手札4→3

────────────────

④生命の循環

呪文カード

デッキの上からカードを3枚捲る。

そのうちの1枚を手札に加え、1枚をマナゾーンへ置き、残りの1枚を破棄する。

────────────────

 

 

最短、最速で、僕の『やりたい事』へ突き進む事だ!

 

 

「デッキを3枚捲り……手札に1枚加え、マナに1枚置く。そして、残りの1枚は墓場(トラッシュ)に破棄する!」

>ヒイロ:マナゾーン5→6

>ヒイロ:手札3→4

 

 

『生命の循環』は以前、ニーナに敗北してからデッキに採用したカードだ。

 

このカードは手札枚数という観点では1:1交換でしかない。

しかし、デッキトップ3枚を確認できている事から、ただの1ドローより質の高いドローになる。

そして、何よりマナ加速出来ている所が重要だ。

 

僕の『妖精姫エルザ』を使ったコンボの始動には8マナ必要だ。

だから、本来ならば8ターン目以降にしか出来ない。

しかし、それでは間に合わない事もある。

ワンショットキル可能なターンを前倒しにすること……それがコンボデッキにおけるマナ加速カードの強みだ。

 

だが、手放しで採用できる訳ではない。

このカードは4マナ。

プレイした場合、それだけのテンポロスが発生しているという事だ。

 

事実、今……相手の場のクリーチャーに干渉できず、場にクリーチャーの召喚も出来ていない。

 

リスクはある。

だが、今は……ニーナを信じて、僕は準備を優先すべきと判断した。

 

 

「僕はこれでターンを終了する」

 

「フン、それじゃあアタシのターン!カードを引いて、1枚マナへ!」

>ヨーコ:ターン5

>ヨーコ:手札2→2

>ヨーコ:マナゾーン4→5

 

 

ヨーコの手札は少ない。

『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』を墓場(トラッシュ)に揃えるため、リソースを吐き出した後だからだ。

 

 

「アタシは『死霊騎士 アモルファス』で相手プレイヤーを攻撃!」

>死霊騎士 アモルファス(6/4)

 

 

黒い鎧を装備した騎士が、槍を持って突進してきた。

 

 

「くっ……!」

「…………」

>ニーナ&ヒイロ:ライフ28→22

 

 

6点のダメージ!

決して安くはない……だが、ニーナは狼狽えていなかった。

その事実に安心しつつ、ヨーコへと視線を戻す。

 

 

「そしてぇ、アタシは手札から呪文(スペル)『魂の変換』を発動!『死霊騎士 アモルファス』を破壊してカードを3枚引くわ!」

>ヨーコ:マナ5→2

>ヨーコ:手札2→4

────────────────

③魂の変換

呪文カード

自分の場のクリーチャーを1体破壊する。

その後、カードを3枚引く。

────────────────

 

 

場の『死霊騎士 アモルファス』が砕け散り、『死界の亡壁』も消失した。

だが──

 

 

「その瞬間、『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』は場に戻る!実質的に無料(タダ)ってワケ」

 

 

やはり、厄介だ。

彼等のデッキは2体の『死霊騎士 アモルファス』による蘇生ループ、そのコンボの成立に特化したデッキだ。

だが、蘇生ループの完成後に強力なシナジーを発揮するカードも多く採用されているようだ。

 

先程の『魂の変換』も、本来ならばボードアドバンテージを捨てる事で大幅な手札増強が出来るカードなのに……何度でも蘇る『死霊騎士 アモルファス』を破壊する事で、ボードアドバンテージの損失を踏み倒しているのだ。

 

 

「これでアタシはターンを終了するわ」

 

 

そして、ヨーコのターンが終われば、次は──

 

 

「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」

>ニーナ:ターン6

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナゾーン5→6

 

 

ニーナのターンだ。

……底知れなさ、という意味なら対戦相手であるヨーコよりも分からない。

どんな行動を取るのか、その予測すらできない。

 

だが、仲間である僕が分からないという事は、彼等にだって分からないという事だ。

……まぁ、これは楽観視してるかも、だけど。

 

 

「私は手札から『足を引く者』を召喚」

>ニーナ:手札4→3

>ニーナ:マナ6→3

 

 

地面が割れて、ヘドロが現れた。

そして、ヘドロは揺れ動き、手のような形状へ姿を変えた。

 

 

「『足を引く者』の召喚時効果。敵クリーチャー1体の攻撃力(パワー)を次の自分ターン開始時まで0にする」

────────────────

③足を引く者

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:敵クリーチャー1体を選択する。次の自分ターン開始時まで、攻撃力(パワー)を0にする。

パワー0/タフネス3

────────────────

 

 

ヘドロから生えた手が『死霊騎士 アモルファス』に取り憑いて、動きを阻害する。

>死霊騎士 アモルファス(6/4)→(0/4)

 

 

「チッ、鬱陶しいカードだ」

 

 

なるほど、除去をしても意味がないなら、破壊せずに攻撃力(パワー)を削る戦略か。

しかも、次の自ターン開始時まで……つまり、ヤマイ、僕、ヨーコの合計3ターンの間、効果は適用される。

『タッグマッチ』故に、効果の継続時間が長くなっているんだ。

 

 

「私はこれでターンを終了する」

 

 

これで確かに『死霊騎士 アモルファス』を次の自ターンまで無効化できた。

しかし、まだ『死界の亡壁』による防御は剥げていない。

苦しい状況は継続している。

 

 

「次はオレのターンだ!カードを引くぜ!」

>ヤマイ:ターン6

>ヤマイ:手札2→3

>ヤマイ:マナゾーン5→5

 

 

ヤマイの方はまだ、手札を補充できていない。

故にマナゾーンへの設置をしないようだ。

純粋な手札枚数を確保するためだろう。

 

『死霊騎士 アモルファス』のコンボさえ決まれば、後はマナなんて必要ない……という事かも知れないが。

 

 

「オレは手札から『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』を召喚!」

>ヤマイ:手札3→2

>ヤマイ:マナ5→1

 

 

場に、青い肌の膨れ上がった肉人形が姿を現した。

今にも、弾けそうな程に肥大化している。

 

 

「そして『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』の召喚時効果だ!このクリーチャーは相手の場に移る!」

 

「むっ……」

 

 

コントロールが移るクリーチャー!?

嫌な予感がする。

僕はバトルディスクに情報を表示する。

────────────────

④肥大化したフレッシュ・ゴーレム

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:このクリーチャーを相手の場に移す。

死亡時:自分プレイヤーと自分の場のクリーチャー全てに4ダメージ。

パワー4/タフネス1

────────────────

 

 

死亡時のデメリット効果!?

いや、そんな事よりも──

 

 

「テメェの場に移った『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』に、『死霊騎士 アモルファス』で攻撃だ!」

>死霊騎士 アモルファス(0/4)

>肥大化したフレッシュ・ゴーレム(4/1)

 

 

まずい、自爆特攻される!

『死霊騎士 アモルファス』が自壊、そして再生する事で攻撃力が元に戻ってしまう……それだけならいい。

だが、そのまま蘇生(リアニメイト)した『死霊騎士 アモルファス』で『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』を戦闘破壊されたら、デメリット効果によるダメージが……!

 

 

「その瞬間、私は高速(クイック)呪文(スペル)『異次元への脱出』を発動」

>ニーナ:手札3→2

>ニーナ:マナ3→1

 

高速(クイック)呪文(スペル)だと……?」

 

 

その瞬間、『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』が次元の穴に落下し、消失した。

────────────────

②異次元への脱出

高速呪文カード

自分の場のクリーチャー1体をデッキに戻す。

カードを2枚引く。

────────────────

 

 

「その効果により、私の場に存在する『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』はデッキに戻る。つまり、本来の持ち主である貴方のデッキへ」

 

「チッ、面倒なカードを持ってやがるな」

 

 

僕達の場に召喚されていた『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』は、ヤマイのデッキに戻った。

 

 

「そして、私はカードを2枚引く」

>ニーナ:手札2→4

 

 

……なるほど、本来は高速(クイック)呪文(スペル)の即効性を活かして、破壊されそうなクリーチャーをドローに変換するカードだったのだろう。

それが偶々、状況に刺さった……という事か。

 

ニーナが視線をヤマイへ向けた。

 

 

「これで攻撃対象を失った『死霊騎士 アモルファス』は、自壊する事が出来ない」

 

「それがどうした?所詮は無駄な足掻きでしかねぇ!」

 

 

そして、ヤマイのターンが終われば──

 

 

「僕のターン。カードを1枚引いて、1枚マナへ」

>ヒイロ:ターン6

>ヒイロ:手札4→4

>ヒイロ:マナゾーン6→7

 

 

手札に視線を落とす。

僕の手札には……『光の開花』、そして『剣導のスプライト』がある。

つまり、コンボに必要なカードは残り1枚……『妖精姫 エルザ』だけだ。

 

 

「……よし、僕は『エルフの占術師』を召喚する!」

>ヒイロ:手札4→3

>ヒイロ:マナ7→4

 

 

フィールドに薄緑色のフードをかぶった、エルフが現れた。

 

 

「『エルフの占術師』の召喚時効果!デッキの上からカードを3枚捲り、その内の1枚を手札に加える!」

────────────────

③エルフの占術師

クリーチャー・カード

種族:エルフ

召喚時:デッキの上から3枚確認し、その中から1枚を手札に加える。

その後、残り2枚を任意の順番で戻す。

パワー2/タフネス2

────────────────

 

 

僕はデッキからカードを3枚捲り……来た!

『妖精姫 エルザ』だ!

>ヒイロ:手札3→4

 

僕は目当てのカードを手札に加えて、残りをデッキの上へ戻した。

 

これでコンボパーツは揃った。

あとは手札の枚数を増やして、『光の開花』でトークンを5体……いや、このルールではライフが20点以上あるから、6体以上出せるようになければならない。

じゃあ、手札の枚数は……『妖精姫エルザ』と『光の開花』、『剣導のスプライト』を含めて7枚必要になる。

 

しかし、現状、僕の手札の枚数は4枚だけだ。

それなら『根源のトーテム』で補充するしかない。

 

 

「僕はマナを1つ支払い、『根源のトーテム』の効果を発動!デッキからコスト1の呪文を発動する!」

>ヒイロ:マナ4→3

 

 

使用すべき呪文(スペル)、単純なドロー呪文(スペル)ではダメだ。

ここは──

 

 

「僕はデッキから呪文(スペル)『大地の導き』を発動!その効果により、場の『エルフの占術師』を手札に戻してカードを1枚引く!」

>ヒイロ:手札3→5

────────────────

①大地の導き

呪文カード

自分の場のクリーチャーを1体、手札に戻す。

その後、カードを1枚引く。

────────────────

 

 

使用したのはバウンス+1ドロー呪文。

ドロー枚数は1枚だが、クリーチャーをバウンスする事でもう1枚……つまり、手札を2枚増やせている。

 

 

「チッ」

 

 

更に、『死霊騎士アモルファス』の攻撃先を失わせる事が出来た。

攻撃力(パワー)が0である今、自爆されて攻撃力(パワー)を戻されたくない。

 

 

「さらに僕は呪文(スペル)『記憶の渦潮』を発動!カードを2枚引く!」

>ヒイロ:マナ3→0

>ヒイロ:手札5→6

────────────────

③記憶の渦潮

呪文カード

カードを2枚引く。

────────────────

 

 

手札は潤沢。

ただ、ワンショットキルには……あと、1枚だけ足りない。

 

 

「……これで僕はターンを終了する」

 

 

僕のデッキ、その切り札……勝ち筋。

ニーナに直接話した事はない。

カードを並べて、二人で話すような事はない。

 

一度、覗き見(ビーピング)付きの手札破壊(ハンデス)で覗かれただけだ。

 

だけど、それでも……きっと、彼女なら。

僕がワンショットキルする手順も、必要な手札枚数も理解している筈だ。

 

重要なのはタイミングだ。

彼女が動き出したタイミングに合わせて、僕が決めなければならない。

 

言葉は口にしない。

何を狙っているかなんて、相手には聞かせられない。

 

 

「アタシのターン!カードを引いて、1枚マナへ!」

>ヨーコ:ターン6

>ヨーコ:手札4→4

>ヨーコ:マナゾーン5→6

 

 

前ターン、手札を増強できたヨーコは、このターンもマナゾーンにカードを置いた。

 

 

「そして、アタシは手札から置物(オーナメント)『絶死の燭台』を設置!」

>ヨーコ:手札4→3

>ヨーコ:マナ6→0

 

 

彼女の場に新たな置物(オーナメント)、骸で組まれた燭台が現れた。

 

 

「そして、『絶死の燭台』の効果を起動!自分の場のクリーチャーを破壊し、そのクリーチャーのコストに等しいダメージを相手に与える!」

────────────────

⑥絶死の燭台

オーナメント・カード

自分の場のクリーチャーを破壊する。

そのコストに等しいダメージを相手プレイヤーに与える。

────────────────

 

「なっ!?」

 

 

クリーチャーを火力(バーンダメージ)に変換する置物!?

まずい!

 

 

「破壊するのは勿論、『死霊騎士 アモルファス』!そして、その本来のコストは8!アンタ達に8ダメージを与える!」

 

 

燭台から青い炎が吹き出し、『死霊騎士 アモルファス』を焼き……勢いを増した炎が僕達に殺到する!

 

 

「くぅっ……!?」

「……っ」

>ニーナ&ヒイロ:ライフ22→14

 

「そして、『死霊騎士 アモルファス』は復活し、『死界の亡壁』も場に戻る!」

────────────────

⑧死霊騎士 アモルファス

レジェンド・クリーチャー・カード

種族:テラー・ナイト

突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)

死亡時:このクリーチャー以外の種族「テラー」クリーチャーを墓場から1体、場に戻す。

パワー6/タフネス4

────────────────

 

 

相手の場に『死霊騎士 アモルファス』が戻った。

それも、本来のステータスを持った姿だ。

 

 

「『死霊騎士 アモルファス』は『突撃』を持つクリーチャー!場に出たターンからクリーチャーへ攻撃できる!アンタ達の場にいる『足を引く者』へ攻撃する!」

>死霊騎士 アモルファス(6/4)

>足を引く者(0/3)

 

 

『死霊騎士 アモルファス』がニーナが召喚していたクリーチャーへ攻撃を繰り出し、破壊した。

 

そして、ヨーコがニタリと笑った。

 

 

「これで終わりね!ヤマイのターンになったら『死霊騎士 アモルファス』の直接攻撃と、『絶死の燭台』のバーンダメージで残りライフは焼き切れるわ!」

 

「……くっ」

 

 

その言葉に僕は唇を噛んだ。

思ったよりも早い……猶予がない!

 

 

「アンタらにはもう、勝ち目はな──

 

「どうでもいい。ターンの終了を宣言してくれる?」

 

 

言葉を遮り、ニーナがゲームの進行を促した。

そして、それが面白くないのかヨーコが睨んだ。

 

 

「ちょっとは焦らないの?アンタ、自分がどんな状況に置かれてるか分かって──

 

「理解した上で、私は焦っていない」

 

 

無表情のまま、ニーナは視線を返した。

その表情にヨーコは少し引いて、息を小さく吐いた。

 

 

「ふ、フン!これでアタシのターンは終了するわ」

 

 

しかし、ヨーコの言う事は正しい。

僕達にもう、猶予はない。

このまま直接攻撃と置物火力を受けたら……僕達の負けだ。

 

そして、それはヤマイのターンで完成してしまう。

 

それでも──

 

 

「私のターン」

 

 

ニーナは、いつも通りターンの開始を宣言した。

 

正真正銘、この1ターンで試合の全てが決まるのに……それでも、全く怯えた様子はなかった。

 

その姿に、彼女なら……何とかしてくれるんじゃないかと、僕は思った。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」

>ニーナ:ターン7

>ニーナ:手札4→4

>ニーナ:マナゾーン6→7

 

 

場に視線を向ける。

相手の場には、蘇生ループを完成させた『死霊騎士 アモルファス』。

プレイヤーへと攻撃対象を逃れさせる『死界の防壁』。

クリーチャーを生贄にする事でコスト分のダメージを与える『絶死の燭台』。

 

強力な布陣だ。

 

対して、私達の場には……ヒイロが残した置物(オーナメント)ぐらいしかない。

しかし、それで十分。

 

十分過ぎるぐらいだ。

 

 

「私は置物『根源のトーテム』の効果を発動。デッキからコスト1の呪文を発動する」

>ニーナ:マナ7→6

 

 

私のデッキにはコスト1の呪文が、それほど入っている訳ではない。

だからヒイロのように毎ターン使うような事は出来ない。

 

だが、このたった一回で十分なのだ。

 

 

「デッキから発動する呪文(スペル)、それは『忌むべき聖歌』。このカードは墓場(トラッシュ)に存在する『テラー』クリーチャーの数だけライフを失い、マナを生成するカード」

────────────────

①忌むべき聖歌

呪文カード

自分プレイヤーにXダメージ。その後、マナをX生成する(Xは墓場の種族『テラー』クリーチャーの数に等しい)。

────────────────

 

 

「私の墓場(トラッシュ)に存在する『テラー』は5体。よって、5ダメージを受けて、5マナ生成する」

>ニーナ&ヒイロ:ライフ14→9

>ニーナ:マナ6→11

 

「マナの大量生成だと……!?」

 

 

ついにライフが2桁を切った。

だが……残りは9点。

この点数には意味がある。

 

『絶死の燭台』によるバーンダメージは8点……この1点が致命傷を回避する。

 

そして、準備は整った。

 

 

「私は全てのマナを支払い、『解き放たれし破滅 エルザイン』を召喚する」

 

 

空間が裂ける。

闇が質量を伴って、こぼれ落ちる。

そして、異形が姿を現した。

────────────────

⑪解き放たれし破滅 エルザイン

レジェンド・クリーチャー・カード

種族:テラー

自分の場/墓場に同名カード(トークンを除く)が存在する場合、このクリーチャーは効果を失う。

召喚時/互いのターン開始時:墓場に存在するクリーチャーを1体選択し、デッキに戻す。

そのクリーチャーが「召喚時」効果を持つなら、その効果を得る。

パワー5/タフネス13

────────────────

 

 

その瞬間、ヤマイが手元のバトルディスクを確認した。

 

 

「へぇ、11コストのレジェンド・クリーチャーか……?」

 

 

そして、嘲笑するような目をニーナへ向けた。

 

 

「だが、その効果はハイランダー構築でしか使えないようだな……そして、即席チームであるソイツのデッキはハイランダーじゃねぇ!」

 

 

ヤマイがヒイロを指差した。

 

 

「11マナ支払って、ただただ、デカい効果なし(バニラ)を出しただけに過ぎねぇじゃねぇか!ビビらせやがって──

 

「私は、既に墓場(トラッシュ)を確認している」

 

「あ?確認……?」

 

 

視線を、味方であるヒイロへ向ける。

彼もまた私の視線に気付き、頷いた。

 

 

「ヒイロはこのカードバトルが始まってから、同じ名称のカードを1枚もプレイしていない」

 

「なに……?」

 

「『解き放たれし破滅 エルザイン』、その効果を使用できる条件は、重複するカードが場と墓場(トラッシュ)に存在しないこと……」

 

「……まさかっ!」

 

 

ヤマイが、ヒイロへ視線を向け……目を見開いた。

 

 

「そう。ヒイロはずっと、私の邪魔にならないようカードをプレイしていた。同名カードを1度も使用していない」

 

 

ヒイロはずっと……私のデッキの邪魔にならないようプレイングを歪めていた。

 

私が言った訳でもないのに。

『エルザイン』を出すと決めていた訳でもないのに。

 

それでも、同名カードが墓地に落ちないように、気を配っていた。

『根源のトーテム』で同名の呪文(スペル)を使用しなかった。

 

私の行動を阻害しないように窮屈な立ち回りをさせてしまったが……それが今、私の道を切り拓いた。

 

 

「それでも!まだ7ターン目だ!墓場(トラッシュ)もロクに肥えてねぇだろ?そのクリーチャーで何を戻すってんだ!」

 

 

ヤマイの言葉は正しい。

『解き放たれし破滅 エルザイン』の弱点……それは墓場(トラッシュ)にクリーチャーが十分に落ちていなければ、効果の質が落ちてしまう事だ。

 

墓場のクリーチャーの効果をコピーする都合上、早期に着地させても墓場(トラッシュ)にコピーしたいクリーチャーがいなければ意味がない。

それが『解き放たれし破滅 エルザイン』の弱点。

 

強力な効果同士でシナジーを得たいなら、それ相応の準備が必要なのだ。

 

それは、この場にいる誰もが理解している……単純で明快な弱点。

 

 

「『解き放たれし破滅 エルザイン』の召喚時効果を発動する。私が対象にするのは──

 

 

だが、それは『解き放たれし破滅 エルザイン』の一面でしかない。

このクリーチャーには、まだあるのだ。

使い道が……言うなれば、『悪用』する方法が。

 

 

「貴方達の墓場(トラッシュ)に存在する『死霊騎士 アモルファス』」

 

「……あ?」

 

「はぁ!?」

 

「えっ?」

 

 

ヤマイだけではない。

ヨーコも、ヒイロでさえも理解できていないようだ。

 

 

「『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果対象、それは『自身の』墓場(トラッシュ)という指定はしていない。誰の墓場(トラッシュ)へも干渉できる」

 

「なっ!?だ、だが!『死霊騎士 アモルファス』は召喚時効果を持たねぇ!」

 

「何か勘違いしてる?『エルザイン』の効果は『墓場のクリーチャーをデッキに戻し』、『それが「召喚時」効果を持つならコピーする』能力。デッキに戻す対象に縛りはない」

 

「は──

 

「カードテキストは、ちゃんと読むべき」

 

 

そう、エルザインは──

『墓場の「召喚時」効果をコピーする』

『墓場のクリーチャーをデッキに戻す』

という、二つの性質を併せ持つ。

 

後者は墓場(トラッシュ)の召喚時コピーを何度も発動させないために、デッキに戻す『デメリット』。

だが、その『デメリット』は『メリット』にもなる。

 

 

「私は対象とした『死霊騎士 アモルファス』をデッキへ戻す」

 

 

墓場(トラッシュ)に存在する強力なクリーチャーをデッキに戻すという、墓場メタ効果となるのだ。

 

 

「ば、バカな!?」

 

 

これで『死霊騎士 アモルファス」の蘇生ループコンボは瓦解した。

 

 

「私はこれでターンを終了する」

 

 

だが再度、何かしらの呪文(スペル)で『死霊騎士 アモルファス』を墓場(トラッシュ)に落とされたら……一度通した手段は通じない、そう考えていいだろう。

その場合、今度こそ対処する手段を失ってしまう。

 

ここからは賭けだ。

彼等が『死霊騎士 アモルファス』を墓場(トラッシュ)に落として、再度コンボを完成させるのが先か、それとも……ヒイロがワンショットキルを決めるのが先か。

 

私は後者に賭けた。

この試合の勝敗を、そして全てを。

 

それに足る信用が、ヒイロにはある。

彼が私を信用し、墓場(トラッシュ)に同名カードを落とさなかったように……。

私も彼を信用し、脅威排除後の決め手(フィニッシャー)を任せたのだ。

 

 

「っ、オレのターン!カードを引く!」

>ヤマイ:ターン7

>ヤマイ:手札2→3

>ヤマイ:マナゾーン5→5

 

 

だが、まだヤマイの場には『死霊騎士 アモルファス』が居る。

その打点は6……そして『絶死の燭台』の効果ダメージは8。

直接攻撃後に『絶死の燭台』で割れば合計で14、対して私達のライフは9。

 

このままでは負ける。

そう、このまま……何も対処しなければ。

 

 

「そのターン開始時、『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を発動。私の墓場(トラッシュ)に存在する『足を引く者』をデッキに戻す」

────────────────

③足を引く者

クリーチャー・カード

種族:テラー

召喚時:敵クリーチャー1体を選択する。次の自分ターン開始時まで、攻撃力(パワー)を0にする。

パワー0/タフネス3

────────────────

 

 

エルザインの腹部が割れて、無数の手が伸びる。

 

 

「そして、再び『死霊騎士 アモルファス』の攻撃力(パワー)を0にする」

 

「く、くそがっ──

 

 

手に絡め取られ、『死霊騎士 アモルファス』が膝をついた。

>死霊騎士 アモルファス(6/4)→(0/4)

 

「オ、オレは……ターンを終了する」

 

 

『死霊騎士 アモルファス』の自壊は諦めたようだ。

墓場に『死霊騎士 アモルファス』が居ない今、自壊に巻き込まれる『死界の亡壁』の復活条件を満たせない。

 

だから、行動できない。

今、行動すれば余計に状況が悪くなるからだ。

 

しかし、ヤマイは思っている筈だ。

ライフはまだ26点もあり、『死霊騎士 アモルファス』が破壊されるまでは『死界の亡壁』がプレイヤーへの攻撃を防いでくれる……まだ、負けていない、と。

 

 

「僕のターンだ!」

 

 

しかし、それは誤った考えだ。

『解き放たれし破滅 エルザイン』を除去できなかった時点で、勝敗は決している。

 

 

「カードを引いて、1枚マナへ」

>ヒイロ:ターン7

>ヒイロ:手札6→6

>ヒイロ:マナゾーン7→8

 

 

確かに、ヒイロの手札枚数はまだワンショットキルをするには足りない。

手札枚数からフェアリー・トークンを生成する『光の開花』、その必要枚数に足りていないからだ。

 

しかし、心配などしていない。

 

 

「僕はターン開始時、『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を発動する!その対象は……『偽神デミゴルド』!」

────────────────

⑦偽神デミゴルド

クリーチャー・カード

種族:テラー・デーモン

自分の場のクリーチャーを1体破壊する事で、このクリーチャーの召喚コストを-2できる。

召喚時:カードを2枚引く。

パワー6/タフネス6

────────────────

 

 

私の切り札(エルザイン)が、ヒイロの切り札(エルザ)をサポートする。

 

私には、相手を削り切る決め手がなかった。

ヒイロには、この状況を打破する柔軟性がなかった。

 

だが──

ヒイロには、相手を削り切る決め手がある。

私には、この状況を打破する柔軟性がある。

 

足りない部分は互いに補えばいい。

一対一ではなく、二対二なのだから。

 

 

「僕は、カードを2枚引く!」

>ヒイロ:手札6→8

 

 

ヒイロがカードを引いた。

そして、これで──

 

 

「そして、僕は手札から『妖精姫 エルザ』を召喚する!」

 

 

私達の、勝ちだ。

 

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