TSホビアニ転生:悪のTCG組織で実験体やってたけど、いつの間にか滅んだらしい 作:WhatSoon
励みになってます!
「私とヒイロ、二人でなら……貴方達に勝てる」
そう、ニーナが言い切った。
僕は少し驚いて、そして……息を呑んだ。
ニーナと、僕で……?
彼女は強い。
僕よりも……遥かに強い。
だけど、僕は……。
僕に何か、出来るのだろうか?
僕なんかが──
「チッ、舐めやがって!『死霊騎士 アモルファス』で『偽神デミゴルド』に攻撃だ!」
>死霊騎士アモルファス(6/4)
>偽神デミゴルド(6/6)
試合に意識を戻す。
『死霊騎士 アモルファス』はキーワード能力『突撃』を持っている。
『突撃』は『速攻』の下位互換能力で、場に出たターンにクリーチャーへ攻撃できる能力だ。
プレイヤーを対象に出来ないのが『速攻』との違いになる。
「『偽神デミゴルド』を戦闘破壊!同時に『死霊騎士 アモルファス』が破壊された事で『死界の亡壁』も破壊される!」
────────────────
⑥死界の亡壁
オーナメント・カード
自分の場に種族「テラー」クリーチャーが存在する場合、自分プレイヤーを攻撃対象にできない。
自分のクリーチャーが破壊された時:このカードを破壊する。
自分の場にコスト8以上の種族「テラー」クリーチャーが蘇生された時:このカードを墓場から場に戻す。
────────────────
瞬間、相手の場にクリーチャー
だが、それは一時的な物でしかないことを僕は知っていた。
「そして、死亡した『死霊騎士 アモルファス』の効果により『死霊騎士 アモルファス』を
────────────────
⑧死霊騎士 アモルファス
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:テラー・ナイト
突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)
死亡時:このクリーチャー以外の種族「テラー」クリーチャーを墓場から1体、場に戻す。
パワー6/タフネス4
────────────────
場に再び、『死霊騎士 アモルファス』が現れ、死霊が壁となって蘇る。
「どうだ!これが『死霊騎士 アモルファス』の蘇生ループだ!」
状況だけ見れば、ニーナが場に出した『偽神デミゴルド』を一方的に戦闘破壊されたようなものだ。
だが、彼女は少しも焦っていなかった。
「オレのターンは終了!こっからジワジワと嬲り殺しにしてやる!」
だから、僕もその焦りを飲み込んだ。
「……僕のターンだ。カードを引いて、1枚をマナへ置く」
>ヒイロ:ターン5
>ヒイロ:手札3→3
>ヒイロ:マナゾーン4→5
さて、僕はどうすべきだ?
あの『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』の突破方法を考えないと──
「ヒイロ」
名前を呼ばれ、視線を横に向ける。
「ヒイロのやりたい事は何?」
「僕の……やりたい事?」
僕は目を細める。
「答えは言わなくていい。だけど、『それだけでいい』。他は余計だから」
「…………」
会話は敵チームに聞かれている。
だから、ハッキリと言えないのだろう。
何を言いたいのか?
何が言いたかったのか?
頭の中で整理する。
僕のやりたいこと……コンボデッキなのだから、ワンショットキルコンボの事だろう。
だが、相手の場に『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』が存在する限り、その攻撃は相手プレイヤーに通らない。
不死身のクリーチャーと
指を口元へ持っていく。
……僕のデッキには『死霊騎士 アモルファス』の死亡時効果を発動させず除去できる
だが、前者は手札に戻した所で、再度プレイされた時に状況は元に戻る。
後者も、『死霊騎士 アモルファス』が死亡した瞬間に場に戻ってくる。
一時しのぎでしかない。
そして、それらの
そこまでマナを伸ばす猶予はない。
『死霊騎士 アモルファス』によるリーダーへの攻撃を凌ぐにも限度があるからだ。
……だけど。
ニーナは言った。
やりたい事をしろ、と。
それ以外は余計な事だ、と。
ワンショットキル以外の余計な事……つまり、相手クリーチャーへの対処。
それを考えなくていい、のか?
彼女にはこの状況を突破する手段がある……のか?
しかし、その手段は分からない。
それでも──
「…………」
それでも、信じる。
信じたい。
僕を信じると言ってくれた、彼女を信じたいんだ。
「よし、僕は『根源のトーテム』の効果を発動!デッキからコスト1の
>ヒイロ:マナ5→4
>ヒイロ:手札3→4
────────────────
①新緑の回廊
呪文カード
カードを1枚引く。
────────────────
手札を確認する。
コンボパーツはまだ揃っていない。
ならば、『死霊騎士アモルファス』の攻撃を受け止めるために、クリーチャーを──
いいや、違う。
僕がすべき事は──
「僕は手札から
>ヒイロ:マナ4→0
>ヒイロ:手札4→3
────────────────
④生命の循環
呪文カード
デッキの上からカードを3枚捲る。
そのうちの1枚を手札に加え、1枚をマナゾーンへ置き、残りの1枚を破棄する。
────────────────
最短、最速で、僕の『やりたい事』へ突き進む事だ!
「デッキを3枚捲り……手札に1枚加え、マナに1枚置く。そして、残りの1枚は
>ヒイロ:マナゾーン5→6
>ヒイロ:手札3→4
『生命の循環』は以前、ニーナに敗北してからデッキに採用したカードだ。
このカードは手札枚数という観点では1:1交換でしかない。
しかし、デッキトップ3枚を確認できている事から、ただの1ドローより質の高いドローになる。
そして、何よりマナ加速出来ている所が重要だ。
僕の『妖精姫エルザ』を使ったコンボの始動には8マナ必要だ。
だから、本来ならば8ターン目以降にしか出来ない。
しかし、それでは間に合わない事もある。
ワンショットキル可能なターンを前倒しにすること……それがコンボデッキにおけるマナ加速カードの強みだ。
だが、手放しで採用できる訳ではない。
このカードは4マナ。
プレイした場合、それだけのテンポロスが発生しているという事だ。
事実、今……相手の場のクリーチャーに干渉できず、場にクリーチャーの召喚も出来ていない。
リスクはある。
だが、今は……ニーナを信じて、僕は準備を優先すべきと判断した。
「僕はこれでターンを終了する」
「フン、それじゃあアタシのターン!カードを引いて、1枚マナへ!」
>ヨーコ:ターン5
>ヨーコ:手札2→2
>ヨーコ:マナゾーン4→5
ヨーコの手札は少ない。
『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』を
「アタシは『死霊騎士 アモルファス』で相手プレイヤーを攻撃!」
>死霊騎士 アモルファス(6/4)
黒い鎧を装備した騎士が、槍を持って突進してきた。
「くっ……!」
「…………」
>ニーナ&ヒイロ:ライフ28→22
6点のダメージ!
決して安くはない……だが、ニーナは狼狽えていなかった。
その事実に安心しつつ、ヨーコへと視線を戻す。
「そしてぇ、アタシは手札から
>ヨーコ:マナ5→2
>ヨーコ:手札2→4
────────────────
③魂の変換
呪文カード
自分の場のクリーチャーを1体破壊する。
その後、カードを3枚引く。
────────────────
場の『死霊騎士 アモルファス』が砕け散り、『死界の亡壁』も消失した。
だが──
「その瞬間、『死霊騎士 アモルファス』と『死界の亡壁』は場に戻る!実質的に
やはり、厄介だ。
彼等のデッキは2体の『死霊騎士 アモルファス』による蘇生ループ、そのコンボの成立に特化したデッキだ。
だが、蘇生ループの完成後に強力なシナジーを発揮するカードも多く採用されているようだ。
先程の『魂の変換』も、本来ならばボードアドバンテージを捨てる事で大幅な手札増強が出来るカードなのに……何度でも蘇る『死霊騎士 アモルファス』を破壊する事で、ボードアドバンテージの損失を踏み倒しているのだ。
「これでアタシはターンを終了するわ」
そして、ヨーコのターンが終われば、次は──
「私のターン。カードを引いて、1枚をマナへ」
>ニーナ:ターン6
>ニーナ:手札4→4
>ニーナ:マナゾーン5→6
ニーナのターンだ。
……底知れなさ、という意味なら対戦相手であるヨーコよりも分からない。
どんな行動を取るのか、その予測すらできない。
だが、仲間である僕が分からないという事は、彼等にだって分からないという事だ。
……まぁ、これは楽観視してるかも、だけど。
「私は手札から『足を引く者』を召喚」
>ニーナ:手札4→3
>ニーナ:マナ6→3
地面が割れて、ヘドロが現れた。
そして、ヘドロは揺れ動き、手のような形状へ姿を変えた。
「『足を引く者』の召喚時効果。敵クリーチャー1体の
────────────────
③足を引く者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:敵クリーチャー1体を選択する。次の自分ターン開始時まで、
パワー0/タフネス3
────────────────
ヘドロから生えた手が『死霊騎士 アモルファス』に取り憑いて、動きを阻害する。
>死霊騎士 アモルファス(6/4)→(0/4)
「チッ、鬱陶しいカードだ」
なるほど、除去をしても意味がないなら、破壊せずに
しかも、次の自ターン開始時まで……つまり、ヤマイ、僕、ヨーコの合計3ターンの間、効果は適用される。
『タッグマッチ』故に、効果の継続時間が長くなっているんだ。
「私はこれでターンを終了する」
これで確かに『死霊騎士 アモルファス』を次の自ターンまで無効化できた。
しかし、まだ『死界の亡壁』による防御は剥げていない。
苦しい状況は継続している。
「次はオレのターンだ!カードを引くぜ!」
>ヤマイ:ターン6
>ヤマイ:手札2→3
>ヤマイ:マナゾーン5→5
ヤマイの方はまだ、手札を補充できていない。
故にマナゾーンへの設置をしないようだ。
純粋な手札枚数を確保するためだろう。
『死霊騎士 アモルファス』のコンボさえ決まれば、後はマナなんて必要ない……という事かも知れないが。
「オレは手札から『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』を召喚!」
>ヤマイ:手札3→2
>ヤマイ:マナ5→1
場に、青い肌の膨れ上がった肉人形が姿を現した。
今にも、弾けそうな程に肥大化している。
「そして『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』の召喚時効果だ!このクリーチャーは相手の場に移る!」
「むっ……」
コントロールが移るクリーチャー!?
嫌な予感がする。
僕はバトルディスクに情報を表示する。
────────────────
④肥大化したフレッシュ・ゴーレム
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:このクリーチャーを相手の場に移す。
死亡時:自分プレイヤーと自分の場のクリーチャー全てに4ダメージ。
パワー4/タフネス1
────────────────
死亡時のデメリット効果!?
いや、そんな事よりも──
「テメェの場に移った『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』に、『死霊騎士 アモルファス』で攻撃だ!」
>死霊騎士 アモルファス(0/4)
>肥大化したフレッシュ・ゴーレム(4/1)
まずい、自爆特攻される!
『死霊騎士 アモルファス』が自壊、そして再生する事で攻撃力が元に戻ってしまう……それだけならいい。
だが、そのまま
「その瞬間、私は
>ニーナ:手札3→2
>ニーナ:マナ3→1
「
その瞬間、『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』が次元の穴に落下し、消失した。
────────────────
②異次元への脱出
高速呪文カード
自分の場のクリーチャー1体をデッキに戻す。
カードを2枚引く。
────────────────
「その効果により、私の場に存在する『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』はデッキに戻る。つまり、本来の持ち主である貴方のデッキへ」
「チッ、面倒なカードを持ってやがるな」
僕達の場に召喚されていた『肥大化したフレッシュ・ゴーレム』は、ヤマイのデッキに戻った。
「そして、私はカードを2枚引く」
>ニーナ:手札2→4
……なるほど、本来は
それが偶々、状況に刺さった……という事か。
ニーナが視線をヤマイへ向けた。
「これで攻撃対象を失った『死霊騎士 アモルファス』は、自壊する事が出来ない」
「それがどうした?所詮は無駄な足掻きでしかねぇ!」
そして、ヤマイのターンが終われば──
「僕のターン。カードを1枚引いて、1枚マナへ」
>ヒイロ:ターン6
>ヒイロ:手札4→4
>ヒイロ:マナゾーン6→7
手札に視線を落とす。
僕の手札には……『光の開花』、そして『剣導のスプライト』がある。
つまり、コンボに必要なカードは残り1枚……『妖精姫 エルザ』だけだ。
「……よし、僕は『エルフの占術師』を召喚する!」
>ヒイロ:手札4→3
>ヒイロ:マナ7→4
フィールドに薄緑色のフードをかぶった、エルフが現れた。
「『エルフの占術師』の召喚時効果!デッキの上からカードを3枚捲り、その内の1枚を手札に加える!」
────────────────
③エルフの占術師
クリーチャー・カード
種族:エルフ
召喚時:デッキの上から3枚確認し、その中から1枚を手札に加える。
その後、残り2枚を任意の順番で戻す。
パワー2/タフネス2
────────────────
僕はデッキからカードを3枚捲り……来た!
『妖精姫 エルザ』だ!
>ヒイロ:手札3→4
僕は目当てのカードを手札に加えて、残りをデッキの上へ戻した。
これでコンボパーツは揃った。
あとは手札の枚数を増やして、『光の開花』でトークンを5体……いや、このルールではライフが20点以上あるから、6体以上出せるようになければならない。
じゃあ、手札の枚数は……『妖精姫エルザ』と『光の開花』、『剣導のスプライト』を含めて7枚必要になる。
しかし、現状、僕の手札の枚数は4枚だけだ。
それなら『根源のトーテム』で補充するしかない。
「僕はマナを1つ支払い、『根源のトーテム』の効果を発動!デッキからコスト1の呪文を発動する!」
>ヒイロ:マナ4→3
使用すべき
ここは──
「僕はデッキから
>ヒイロ:手札3→5
────────────────
①大地の導き
呪文カード
自分の場のクリーチャーを1体、手札に戻す。
その後、カードを1枚引く。
────────────────
使用したのはバウンス+1ドロー呪文。
ドロー枚数は1枚だが、クリーチャーをバウンスする事でもう1枚……つまり、手札を2枚増やせている。
「チッ」
更に、『死霊騎士アモルファス』の攻撃先を失わせる事が出来た。
「さらに僕は
>ヒイロ:マナ3→0
>ヒイロ:手札5→6
────────────────
③記憶の渦潮
呪文カード
カードを2枚引く。
────────────────
手札は潤沢。
ただ、ワンショットキルには……あと、1枚だけ足りない。
「……これで僕はターンを終了する」
僕のデッキ、その切り札……勝ち筋。
ニーナに直接話した事はない。
カードを並べて、二人で話すような事はない。
一度、
だけど、それでも……きっと、彼女なら。
僕がワンショットキルする手順も、必要な手札枚数も理解している筈だ。
重要なのはタイミングだ。
彼女が動き出したタイミングに合わせて、僕が決めなければならない。
言葉は口にしない。
何を狙っているかなんて、相手には聞かせられない。
「アタシのターン!カードを引いて、1枚マナへ!」
>ヨーコ:ターン6
>ヨーコ:手札4→4
>ヨーコ:マナゾーン5→6
前ターン、手札を増強できたヨーコは、このターンもマナゾーンにカードを置いた。
「そして、アタシは手札から
>ヨーコ:手札4→3
>ヨーコ:マナ6→0
彼女の場に新たな
「そして、『絶死の燭台』の効果を起動!自分の場のクリーチャーを破壊し、そのクリーチャーのコストに等しいダメージを相手に与える!」
────────────────
⑥絶死の燭台
オーナメント・カード
自分の場のクリーチャーを破壊する。
そのコストに等しいダメージを相手プレイヤーに与える。
────────────────
「なっ!?」
クリーチャーを
まずい!
「破壊するのは勿論、『死霊騎士 アモルファス』!そして、その本来のコストは8!アンタ達に8ダメージを与える!」
燭台から青い炎が吹き出し、『死霊騎士 アモルファス』を焼き……勢いを増した炎が僕達に殺到する!
「くぅっ……!?」
「……っ」
>ニーナ&ヒイロ:ライフ22→14
「そして、『死霊騎士 アモルファス』は復活し、『死界の亡壁』も場に戻る!」
────────────────
⑧死霊騎士 アモルファス
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:テラー・ナイト
突撃(「突撃」を持つクリーチャーは、場に出たターンからクリーチャーに攻撃できる)
死亡時:このクリーチャー以外の種族「テラー」クリーチャーを墓場から1体、場に戻す。
パワー6/タフネス4
────────────────
相手の場に『死霊騎士 アモルファス』が戻った。
それも、本来のステータスを持った姿だ。
「『死霊騎士 アモルファス』は『突撃』を持つクリーチャー!場に出たターンからクリーチャーへ攻撃できる!アンタ達の場にいる『足を引く者』へ攻撃する!」
>死霊騎士 アモルファス(6/4)
>足を引く者(0/3)
『死霊騎士 アモルファス』がニーナが召喚していたクリーチャーへ攻撃を繰り出し、破壊した。
そして、ヨーコがニタリと笑った。
「これで終わりね!ヤマイのターンになったら『死霊騎士 アモルファス』の直接攻撃と、『絶死の燭台』のバーンダメージで残りライフは焼き切れるわ!」
「……くっ」
その言葉に僕は唇を噛んだ。
思ったよりも早い……猶予がない!
「アンタらにはもう、勝ち目はな──
「どうでもいい。ターンの終了を宣言してくれる?」
言葉を遮り、ニーナがゲームの進行を促した。
そして、それが面白くないのかヨーコが睨んだ。
「ちょっとは焦らないの?アンタ、自分がどんな状況に置かれてるか分かって──
「理解した上で、私は焦っていない」
無表情のまま、ニーナは視線を返した。
その表情にヨーコは少し引いて、息を小さく吐いた。
「ふ、フン!これでアタシのターンは終了するわ」
しかし、ヨーコの言う事は正しい。
僕達にもう、猶予はない。
このまま直接攻撃と置物火力を受けたら……僕達の負けだ。
そして、それはヤマイのターンで完成してしまう。
それでも──
「私のターン」
ニーナは、いつも通りターンの開始を宣言した。
正真正銘、この1ターンで試合の全てが決まるのに……それでも、全く怯えた様子はなかった。
その姿に、彼女なら……何とかしてくれるんじゃないかと、僕は思った。
◇◆◇
「私のターン。カードを引いて、1枚マナへ」
>ニーナ:ターン7
>ニーナ:手札4→4
>ニーナ:マナゾーン6→7
場に視線を向ける。
相手の場には、蘇生ループを完成させた『死霊騎士 アモルファス』。
プレイヤーへと攻撃対象を逃れさせる『死界の防壁』。
クリーチャーを生贄にする事でコスト分のダメージを与える『絶死の燭台』。
強力な布陣だ。
対して、私達の場には……ヒイロが残した
しかし、それで十分。
十分過ぎるぐらいだ。
「私は置物『根源のトーテム』の効果を発動。デッキからコスト1の呪文を発動する」
>ニーナ:マナ7→6
私のデッキにはコスト1の呪文が、それほど入っている訳ではない。
だからヒイロのように毎ターン使うような事は出来ない。
だが、このたった一回で十分なのだ。
「デッキから発動する
────────────────
①忌むべき聖歌
呪文カード
自分プレイヤーにXダメージ。その後、マナをX生成する(Xは墓場の種族『テラー』クリーチャーの数に等しい)。
────────────────
「私の
>ニーナ&ヒイロ:ライフ14→9
>ニーナ:マナ6→11
「マナの大量生成だと……!?」
ついにライフが2桁を切った。
だが……残りは9点。
この点数には意味がある。
『絶死の燭台』によるバーンダメージは8点……この1点が致命傷を回避する。
そして、準備は整った。
「私は全てのマナを支払い、『解き放たれし破滅 エルザイン』を召喚する」
空間が裂ける。
闇が質量を伴って、こぼれ落ちる。
そして、異形が姿を現した。
────────────────
⑪解き放たれし破滅 エルザイン
レジェンド・クリーチャー・カード
種族:テラー
自分の場/墓場に同名カード(トークンを除く)が存在する場合、このクリーチャーは効果を失う。
召喚時/互いのターン開始時:墓場に存在するクリーチャーを1体選択し、デッキに戻す。
そのクリーチャーが「召喚時」効果を持つなら、その効果を得る。
パワー5/タフネス13
────────────────
その瞬間、ヤマイが手元のバトルディスクを確認した。
「へぇ、11コストのレジェンド・クリーチャーか……?」
そして、嘲笑するような目をニーナへ向けた。
「だが、その効果はハイランダー構築でしか使えないようだな……そして、即席チームであるソイツのデッキはハイランダーじゃねぇ!」
ヤマイがヒイロを指差した。
「11マナ支払って、ただただ、デカい
「私は、既に
「あ?確認……?」
視線を、味方であるヒイロへ向ける。
彼もまた私の視線に気付き、頷いた。
「ヒイロはこのカードバトルが始まってから、同じ名称のカードを1枚もプレイしていない」
「なに……?」
「『解き放たれし破滅 エルザイン』、その効果を使用できる条件は、重複するカードが場と
「……まさかっ!」
ヤマイが、ヒイロへ視線を向け……目を見開いた。
「そう。ヒイロはずっと、私の邪魔にならないようカードをプレイしていた。同名カードを1度も使用していない」
ヒイロはずっと……私のデッキの邪魔にならないようプレイングを歪めていた。
私が言った訳でもないのに。
『エルザイン』を出すと決めていた訳でもないのに。
それでも、同名カードが墓地に落ちないように、気を配っていた。
『根源のトーテム』で同名の
私の行動を阻害しないように窮屈な立ち回りをさせてしまったが……それが今、私の道を切り拓いた。
「それでも!まだ7ターン目だ!
ヤマイの言葉は正しい。
『解き放たれし破滅 エルザイン』の弱点……それは
墓場のクリーチャーの効果をコピーする都合上、早期に着地させても
それが『解き放たれし破滅 エルザイン』の弱点。
強力な効果同士でシナジーを得たいなら、それ相応の準備が必要なのだ。
それは、この場にいる誰もが理解している……単純で明快な弱点。
「『解き放たれし破滅 エルザイン』の召喚時効果を発動する。私が対象にするのは──
だが、それは『解き放たれし破滅 エルザイン』の一面でしかない。
このクリーチャーには、まだあるのだ。
使い道が……言うなれば、『悪用』する方法が。
「貴方達の
「……あ?」
「はぁ!?」
「えっ?」
ヤマイだけではない。
ヨーコも、ヒイロでさえも理解できていないようだ。
「『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果対象、それは『自身の』
「なっ!?だ、だが!『死霊騎士 アモルファス』は召喚時効果を持たねぇ!」
「何か勘違いしてる?『エルザイン』の効果は『墓場のクリーチャーをデッキに戻し』、『それが「召喚時」効果を持つならコピーする』能力。デッキに戻す対象に縛りはない」
「は──
「カードテキストは、ちゃんと読むべき」
そう、エルザインは──
『墓場の「召喚時」効果をコピーする』
『墓場のクリーチャーをデッキに戻す』
という、二つの性質を併せ持つ。
後者は
だが、その『デメリット』は『メリット』にもなる。
「私は対象とした『死霊騎士 アモルファス』をデッキへ戻す」
「ば、バカな!?」
これで『死霊騎士 アモルファス」の蘇生ループコンボは瓦解した。
「私はこれでターンを終了する」
だが再度、何かしらの
その場合、今度こそ対処する手段を失ってしまう。
ここからは賭けだ。
彼等が『死霊騎士 アモルファス』を
私は後者に賭けた。
この試合の勝敗を、そして全てを。
それに足る信用が、ヒイロにはある。
彼が私を信用し、
私も彼を信用し、脅威排除後の
「っ、オレのターン!カードを引く!」
>ヤマイ:ターン7
>ヤマイ:手札2→3
>ヤマイ:マナゾーン5→5
だが、まだヤマイの場には『死霊騎士 アモルファス』が居る。
その打点は6……そして『絶死の燭台』の効果ダメージは8。
直接攻撃後に『絶死の燭台』で割れば合計で14、対して私達のライフは9。
このままでは負ける。
そう、このまま……何も対処しなければ。
「そのターン開始時、『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を発動。私の
────────────────
③足を引く者
クリーチャー・カード
種族:テラー
召喚時:敵クリーチャー1体を選択する。次の自分ターン開始時まで、
パワー0/タフネス3
────────────────
エルザインの腹部が割れて、無数の手が伸びる。
「そして、再び『死霊騎士 アモルファス』の
「く、くそがっ──
手に絡め取られ、『死霊騎士 アモルファス』が膝をついた。
>死霊騎士 アモルファス(6/4)→(0/4)
「オ、オレは……ターンを終了する」
『死霊騎士 アモルファス』の自壊は諦めたようだ。
墓場に『死霊騎士 アモルファス』が居ない今、自壊に巻き込まれる『死界の亡壁』の復活条件を満たせない。
だから、行動できない。
今、行動すれば余計に状況が悪くなるからだ。
しかし、ヤマイは思っている筈だ。
ライフはまだ26点もあり、『死霊騎士 アモルファス』が破壊されるまでは『死界の亡壁』がプレイヤーへの攻撃を防いでくれる……まだ、負けていない、と。
「僕のターンだ!」
しかし、それは誤った考えだ。
『解き放たれし破滅 エルザイン』を除去できなかった時点で、勝敗は決している。
「カードを引いて、1枚マナへ」
>ヒイロ:ターン7
>ヒイロ:手札6→6
>ヒイロ:マナゾーン7→8
確かに、ヒイロの手札枚数はまだワンショットキルをするには足りない。
手札枚数からフェアリー・トークンを生成する『光の開花』、その必要枚数に足りていないからだ。
しかし、心配などしていない。
「僕はターン開始時、『解き放たれし破滅 エルザイン』の効果を発動する!その対象は……『偽神デミゴルド』!」
────────────────
⑦偽神デミゴルド
クリーチャー・カード
種族:テラー・デーモン
自分の場のクリーチャーを1体破壊する事で、このクリーチャーの召喚コストを-2できる。
召喚時:カードを2枚引く。
パワー6/タフネス6
────────────────
私の
私には、相手を削り切る決め手がなかった。
ヒイロには、この状況を打破する柔軟性がなかった。
だが──
ヒイロには、相手を削り切る決め手がある。
私には、この状況を打破する柔軟性がある。
足りない部分は互いに補えばいい。
一対一ではなく、二対二なのだから。
「僕は、カードを2枚引く!」
>ヒイロ:手札6→8
ヒイロがカードを引いた。
そして、これで──
「そして、僕は手札から『妖精姫 エルザ』を召喚する!」
私達の、勝ちだ。