乳首から魔貫光殺砲が出せたらロマンチックビーム   作:ミスターポポティンティン

22 / 23
この世で一番馬鹿なヤツ

 

 勝った。死んでいるかはわからないが、確実に致命傷だろう。

 

 俺の放った魔貫光殺砲は、桃白白のチクビビビビン波を飲み込んで、奴の体に風穴を開けた。

 

 既に致命傷をくらっていたにも関わらず無茶をした俺も……もう……死ぬん、だけどさ……。

 

 向こうがまだ生きているのなら、俺の方が早く死ぬな……その場合、俺の負けか……?

 

 まあ、青春の全てを費やした目標を達成したんだ。たとえ白白(パイパイ)さんには負けていたとしても、俺は俺の人生に勝利したんだ……こんな誇らしい死はない……こんな……………あれ?

 

 なんで、俺は、乳首から魔貫光殺砲を出すことに、青春の全てを費やしちゃったんだ……?

 

 前世の俺(バカ)と、天才の劣勢遺伝子(バカ)がものすごい勢いで激突したビッグバンの結果、大馬鹿(ビッグバカ)が産まれやがって……一応、これでも、世界を………………救………………家族…………

 

 

 

 

……

 

 

 

……

 

 

 

……

 

 

 

 

「気づいたか?」

 

「…………つ、鶴仙人様?」

 

「まったくこの馬鹿弟子が……貴重な1粒しかない仙豆を使わせおって」

 

「仙豆!? 1粒って……パ、白白さんは……」

 

「半分ずつだ」

 

「白白さん………、…………パイ毛……ひっどいスね」

 

 そばで、足を投げ出して、ぐったりと座り込んでいる桃白白。そして、その乳輪周りがもう……グロ映像だよ。エッグいわ〜……。夏も近いのにさ……。

 

 俺の場合、ムダ毛処理は、いよいよ本格的に必要になってきた時期に、ちょうど金持ちになったから、だいぶ楽しているのだけれど……お前、この乳首を気にしろとか言ってたの? サイッテーだな。お前が気にしろ! もう、セクハラなのか、ボケなのか、ボケているのかもわからねーよ!

 

「……乳首と乳輪周りは別物だ。それに、お前と違い乳をさらけ出す生活をしておらんのだ」

 

「うわっ。見ないでくださいよ……」

 

 今、気づいたけど、俺の上半身は裸のままだ。なんか上に掛けておいてくれよ。そんなんだから、日頃の処理が必要のない生活なんだよ。いやもう2人共、年だけどさ。

 

 俺も頑張って上半身を起こしつつ、止血に使っていた服の一部を裂いて胸に巻き付ける。まったく布が足りていないが、乳首分だけは、なんとか隠して、鶴仙人に疑問をぶつける。

 

「それにしても、助けてくれたんですね……。えっ? もしかして、生かしてエロいことしようとしてます?」

 

 思わず、遠ざかるように体を抱えてしまう。

 

「アホか‼ お前が勝手に出ていっただけで、儂は……お前を破門にはしておらん。ここで白白(パイパイ)にただ敗れて命を落としたのならそれまでだったが…………お前を正統な後継者だと見なしておる」

 

 その言葉に驚く俺の方にではなく、遠くを眺めるように語りだす。

 

「鶴仙流は、無泰斗(むたいと)様、儂の師匠から引き継いだものだ。師匠は、ピッコロ大魔王という巨悪を、その命を犠牲にして封印したのだ。その精神を受け継いだ鶴仙流こそが正統な後継だ……!」

 

 サングラスに隠されたその目が見ているものを……他の人間が知ることは出来ない。

 

「存在の強さが違う相手に勝利する(すべ)が武術だ。人生(いのち)を削り命を削る術を身につけるのだ。そして、たとえ自分の命を捨ててでも……それでも、繰り出すのが真の奥義。それらを突き詰めてきたのが鶴仙流だ。儂の今まで歩んできた道……儂の武道だ」

 

 そこまで語り、俺と目を合わす。

 

「お前も、そう生きてきたのだろう? エビチリ」

 

「……いや、俺は、よく食べ、よく遊び、みたいな……亀仙流のノリで……」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………いや、それで行き詰まったから、鶴仙流の門を叩いたんです!」

 

「そうだろう! そうだろう! 正解だ! 賢いぞ! 亀仙流は、絶対に行き詰まって、堕落するのだ!」

 

 白白さんが疲れたように口を開く。

 

「そして、こやつは鶴仙流にも見切りをつけ、出ていったんだがな」

 

「……それも正解じゃ。武道とは歴史だ。受け継ぐだけではなく、積み重ねるものだ。そして稽古という形で、エビチリに教えられることはもうなかった。出ていく時期だったのだ」

 

 そう言って鶴仙人は懐から2冊の本を取り出す。

 

「通常の技より、より騙すこと、壊すこと……自分と相手の命を、確実に削ることに特化した技が記してある……鶴仙流の奥義書じゃ。チクビビビビン波も、師匠がピッコロ大魔王を封印した技も記してある。2冊目は書きかけじゃ……続きはお前が記していけ」

 

 俺に2冊の本を渡し、白白(パイパイ)さんに肩を貸して、立ち上がらせる。

 

 白白(パイパイ)さんが、こちらに顔だけ向けて、口を開く。

 

「エビチリ。気の量、身体能力、体力……全てにおいて、お前のほうが遥かに上だ。しかし、結果はこうなった。このことを、そのでかくなった胸に刻んでおけ」

 

 なんかカッコつけた風にセクハラされたぞ? いやセクハラ風にカッコつけたんだろうけど。

 

 鶴仙人様が引き継ぐ。

 

「お前が何に対して戦いを挑もうとしているのかはわからない。ただ敵は強大なのだろう。それでも、突き進むのだ。貫くのだ。滅せぬ敵と……お前の武道を。それが……鶴仙流じゃ」

 

 俺が世界を救う話をした時に、うっすらと笑った白白さんと同じ表情だ。見れば、白白さんの顔にも、再び同じ笑みが浮かんでいる。そうか……そうだったのか。俺は1人じゃ、なかったんだな……。

 

「鶴仙人様。白白さん。今まで、お世話になりました。本当にありがとうございました」

 

 まだ立ち上がれないが都合が良い。ただ感謝を込め、深々と、土下座をするように礼をする。

 

 そんな俺に背を向け、2人は最後に、軽くフッと笑って、空に飛び立った。

 

 しかし、直ぐに戻ってきた。

 

 土下座の体勢のままの俺に、盗んだ分の金を熨斗(のし)をつけて返せと、これぞまさに殺し屋! 暗殺者! という形相で詰め寄ってきた。

 

「わ、わかりました。10倍にして返します………………そういえば、チャオズの性癖って?」

 

 チラっと顔を上げて、気になっていたことを恐る恐る質問する。

 

 そんな俺に背を向け、2人は最後に、軽くフッと笑って、空に飛び立った。

 

 もう戻ってはこなかった。

 

 

 

 

 

 




次回エピローグ!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。