乳首から魔貫光殺砲が出せたらロマンチックビーム 作:ミスターポポティンティン
壁に接着されている金庫。その扉の縁を指で四角くなぞる。パカッとその部分が切断され、たんまり入っている現金やカプセルケースがあらわになった。
もう、パンパンの袋がすでに3つだ。
「殺し屋って納税とか出来ないし、やっぱ貯め込んでいるなぁ……」
あらかた金目の物を詰め込み終わった。更に食料もガッツりと。それらの袋を空のカプセルに収納し、ポケット入れていたケースに仕舞う。
さて、どうしよう? 火を放つのをガチでやってやるかと思っていたのだが、いちいち天津飯を焼け死なないように外に運んで、戻ってからってのが面倒くさい。特にあいつが起きちまったことを考えると忌避してしまう。
「でも、もう今日は家を燃やす口になっちゃってんだよね……」
他のものを受け付けない。
ハガレン気分でキリッと旅立とうと決めていたんだ。どうしようか? どこに行くかも決めてないしな……。
「そうだ! 依頼人のヤクザの事務所を燃やしに行こう!!」
焼き討ちだな。もう事務所っていうか、本部でいいな!
キャンプファイヤーやろうぜ!! お前ん家、焚き木な!!
依頼書をよく読んでみると、ヤクザの聖地とか呼ばれる場所に本部があるらしい。良いじゃん。良いじゃん。周りの被害も気にしなくて良さそうだし。
行き先を決めたならもう旅立ちだ。
外に出て、カプセルケースから反重力スクーターを取り出す。昔ながらの古臭い見た目だが、そこが良い。そして、かなりボアアップしているのでなかなか速い。鶴仙人の物だが爺のくせになかなか良いセンスだ。
でも奴の臭そうなメットは投げ捨てる。自分のがあるがノーヘルでいいや。髪ちょっと伸びてきたし。
上着も1回は着たんだけど、やっぱ脱いで腰に巻こう。そういう気分だ。
内ポケットにカプセルケースが入れられるジップがある以外は中国……というか女らんまっぽい上着で、袖とか広めだから上空で空気が入りまくるだろうしな。
そういや俺って、体つきも、女らんまっぽくなってきてるな。まあ、流石にあそこまではまだ胸はないし、背も少し小さいが……鶴仙流に来てからかなり育った。
「……結構良い飯を食わしてもらってきたからな。天津飯の分も奪いまくったし……」
そう考えるとあいつは原作より弱くなっちゃたりも………いや、ないな。妹弟子に負けているのをよしとせず張り切っていたからな……。あいつは本当に……頑張っていた。
同じ釜の飯を食ってきた師匠や兄弟子達と別れ、次に合う時はおそらくは殺し合いか……。
当たり前だが、少しセンチメンタルになる。
ふと、前世の学校の授業が思い出される。憲法の授業だ。先進国である現代日本は、国民に人間としての自由を保証しているといった内容だった。しかし、その授業を受けさせられることを義務付けられている子供達の一部は、ちょっとイラっとしていた。自由ってなんだよって。
そしてその内の誰かが動画サイトで尾崎豊とか見つけてきて、ちょっとクラスで流行った。俺も含めてみんなイキがってはいても、ヤンキーなんかではなかったし、流行りはすぐに無くなったのだが……俺は密かにずっと聞いていた。
密かに少し……ハズれていっていた。
殺し屋にはならず、職業選択の自由を得るなら、殺し屋からの飯も住居も指導も捨てて、独り立ちしなければならない。
誰かに導かれる時は終わったんだ。キックでエンジンをかけ、盗んだバイクで空を掛け上がる。日が落ちてきた空に向かって、育ててもらった恩に背いて、燃やしたいものを燃やしに行くんだ。
これが俺の14の夏の始まり。自由の始まり。
自分で決めた忘れられない夏を過ごしていくってことが自由だ! 熱くなりたいことに熱くなれるってことが自由だ! 胸熱に過ごす……つまり、乳首から熱光線を撃つみたいなもんだ!
お前が命を狙われる理由は、職業選択じゃなくって、泥棒だろ! っつー事実を蜂の巣にして燃やし尽くしてやるぜってことなんだよ!!
ここは居心地の良い場所だったが、それ以上に、良い踏み台過ぎた。
あばよっ、鶴仙流!! 舞空術を教えてくれてありがとうっ!!
「高く飛ぼう」