勇者パーティを追放された俺はその通りだと思った。 作:テムテムLvMAX
この世界には勇者がいる、魔王という強い存在を倒すために存在する神に選ばれた戦士だ。
勇者は魔王討伐のために仲間を集め、魔王に支配されている街々を救いながら旅をしていた。その道中、俺は仲間になった。
そう、俺だ。アレクと言う、よろしくな。
俺はその勇者にスカウトされた……訳では無い、こっちから頼み込んで入れてもらったんだ。荷物持ちでも雑用でも何でもすると言って、なんとか入れてもらった。
任された役割はヒーラー兼バッファー、補助と回復の魔法はそれなりに得意だったのが幸いしてお役に立つ事ができたわけだ。
最近、激化しつつある魔王軍との戦いに俺はついていけなくなりつつある。だがまだやれることはある、故郷の村を出て勇者パーティに入ってもう3年だ。今更抜けるなんて考えていなかった……俺は、だが。
「魔法師アレク、パーティから抜けてもらう」
「……っ! な、なぜですか……? フレイ様」
勇者パーティのリーダー、勇者フレイは聡明であり力も強く優しい、正に完璧な人物だ、纏う魔力の清らかさもあって神とすら錯覚してしまう。なによりその美貌も神聖さを引き立てるものだった。
「ハッキリ言おう、不足している。だから君に抜けてもらう」
「そう……ですか……」
俺は言い返す言葉が無かった、自分でも自覚していたことなのだから。だけど……そんなにあっさり切り捨てられると淋しいという心もある、情けないことにこのパーティから離れたくないと泣いて頼み込もうかと思ったが、ここまでスパッと宣告されたからにはもうここに居座って迷惑をかけるわけにはいかない。俺が出来る最後の仕事はここから速やかに出て行くことだ。ショックが大き過ぎてもはやなにも頭に入らない、でも別れの言葉だけは伝えておこう。
「今までありがとうございました、フレイ様。では俺はここでお別れいたします」
「……ん?」
「では、今後のご武運祈っております」
居てはいけない、居てはいけないのだ。
俺は素早く飛行魔法『ウイング』を唱えて目的地もないまま飛んだ。
★
「……えっ?」
私はフレイ、神より勇者の力を授かった者。仲間を集め、魔王を倒すために旅をする者。
……なのだが今さっきその仲間が居なくなってしまった
「フレイっ!? お前こんなときに口下手発動すんなやーっ!」
「ええーっ!? ちょっと買い物行ってほしかったって伝わって無かったのーっ!?」
「あんなんで伝わるかボケーッ!」
兄にして賢者たるディオス兄上に思い切り頭を叩かれた、私はどうやら伝え方を間違えていたらしい。私は自覚してないんだけど。というか兄上も止めなかったではないか。
「フレイ様、どうしますか? ここは魔王軍の前哨基地前、今から追い掛けるにしても彼は速いですよ」
「メスキス殿……」
「それに好いたお方が居ないと誰ぞの士気が低下いたしますので」
「うわーっ!?」
大神官にして人望厚き女性、メスキス殿に至ってはあの物言い……と言うか私の好意を知られていた事実に少し顔が赤くなってしまった。
「で、どうするフレイ? 決めるのはお前に任せる」
「神は貴女の味方です、どちらに進んでも祝福してくれるでしょう」
ディオス兄上、メスキス殿……
そうだ、私は神から力を与えられた勇者、人々を救う為、人々を守る為にここまでやって来た、これからもその為に前へ進むんだ。
力も資格もある私がやるんだ、人々の幸せの為に私は……私は……私は……
なら、私の幸せは誰が……
『フレイ様! どうですかこの大きな魚! 美味しそうでしょう!』
『フレイ様! 怪我がっ! 今すぐ治します!』
『あのーフレイ様、これ良ければ……貴女が好きと仰っていたのを聞きまして……』
『お前らーっ! フレイ様に何しやがるんだーっ! 容赦しねーぞ!』
あっ、そうだ、そうだったんだ。私の幸せは彼が、なら彼の幸せは……私がやるんだ、私が彼の幸せを、そして私の幸せは彼が……その為にはやはり魔王が邪魔だ、ならば私が選び取る選択は一つ!
「ディオス! メスキス! 前哨基地を潰す」
「おやアレクは良いのか?」
「兄上、アレクと私が結ばれるには魔王が邪魔なのです! 早急に基地を破壊してアレクを探しに行きます!」
「欲張りな勇者様ですこと……ですが神はその行いを是としましょう」
うぉぉぉぉぉ! 魔王め! 覚悟せよ! 愛の前に消え果てよ!