ひろがるスカイ!プリキュア with デリシャスパーティ♡プリキュア 作:空色胡椒
「すぅ…すぅ」
「はわわ、眠ってるエルちゃんやっぱりかわいい~」
「プリンセスも、皆さんと過ごせて楽しかったんですよ」
「もちろん、私たちもだよ」
「そんな、私たちの方こそ。沢山お世話になっちゃった」
公園内の木製のテーブルと椅子へと向かったソラ達は、食後の休憩を各々取っていた。昼寝中のエルちゃんを囲む者、芝生が気持ちいいと寝転ぶ者、モールで購入した物やお土産を改めて確認する者。天気にも恵まれたこの時間帯は、わかっていてもついつい気が緩みそうになる。
―そしてそんな時に限って奴は現れるのだ。
「やっと寝たか」
聞こえたその声に全員が周囲を警戒する。ソラ達にとっては聞き覚えのある、ゆい達にとっては昨日聞いたばかりの不吉な声。奇襲を仕掛けるわけでもなく、ソラ達の正面にある空間がゆがみ、ゆっくりとその男が姿を現した。
「スキアヘッド!」
「やっと寝たか……?まさかお前、エルちゃんが眠るのを待ってたのか!?」
「こちらにとってもその方が都合がいいからな」
拓海の問いかけに眉一つ動かすことなく答えるスキアヘッド。前回たまたまエルちゃんが眠って戦いに参加できなかったこと、それが自分たちにとって有利に働くことを踏まえてのこのタイミングということらしい。
「何度来たところで、あなたの好きにはさせないよ!」
「今は私と品田もいる。簡単に勝てるなどと思うな」
エルちゃんを抱えているツバサの前にましろとあまねが立つ。他のメンバーも既に変身アイテムを手に取っている。
「確かに。だが、今回はちょっとした余興を兼ねた実験だ」
そう言いながらスキアヘッドが何かを取り出す。三角形のようなプレートに取り付けられた紫色の石。ソラ達には馴染みのないそれはしかし、ゆい達にとってはひどく見覚えのあるものだった。
「あれって、スペシャルデリシャストーン!?」
「はにゃ~!なんでスキアヘッドがそれを持ってるの!?」
「答える必要もない。言ったはずだ、実験だと」
かつてゆい達が戦った敵、ブンドル団。そのボスだったゴーダッツが独自に作成していたスペシャルデリシャストーンの模造品。自分たちを幾度と苦しめた怪物、強化されたウバウゾーやゴーダッツ自身の巨大な力のことは今でも覚えている。それを可能にしていた石をある意味ゴーダッツ以上に危険な雰囲気を持ったスキアヘッドが手にしている。それだけでゆい達に緊張が走るのも無理のないことだった。左手にスペシャルデリシャストーンを持ち、スキアヘッドが右手を地面につける。
「アンダーグエナジー、召喚」
発生したアンダーグエナジーがいつものキョーボーグのように二つの物に吸い込まれるのではなく、スペシャルデリシャストーンに集中して注ぎ込まれる。紫の石が徐々に黒く染まり、そして強烈な光を放ちながら新たな実体を形成していく。
二本の角に黒い毛皮のようなマント。巨大な上半身のみが大地から生えているかのようになっており、足は見当たらない。頭部からは人間の髪―長髪にも見えるものが伸びている。その顔にあたる部分はランボーグやキョーボーグとは全く異なるもの、上半分は黒に近い濃い紫、下半分は淡い藤色。青い瞳は吊り上がり、口はまるでゆがんだ笑みを浮かべているかのよう。そしてその額にはアンダーグ帝国の幹部たちがはめていた黒い石の代わりに、スペシャルデリシャストーンが設置されている。
得られたエネルギーが大きかったのか、その体躯はこれまでに表れたキョーボーグを遥かに上回る。何よりその姿はまたしてもゆい達に衝撃を与えるものだった。
「あの姿……ゴーダッツそっくり」
「ゴーダッツって?」
「らんらんたちが戦ってたブンドル団のボスだった人だよ!」
「あれは最終決戦の時にやつがとっていた姿だ」
「キョーボーグ以上に強力な力。ゴーダッツとやらの名前。そやつと我々の力の合成。名づけるならばゴーボーグといったところか」
「ゴーボーグ!!」
「さて性能の確認だ。やれ」
スキアヘッドの指示を受けゴーボーグが動き出す。その両の手を地面に向けて振り下ろし大地を突き刺す。途端に周囲にアンダーグエナジーがあふれる。
「なにこれ、ちょっとやばくない?」
「またランボーグを生み出すんでしょうか?」
「いや違う。この感じ……まるで」
ぐるりと自身とソラ達を囲うようにアンダーグエナジーが展開され、そのまま空に向けて上昇する。まるでドームを形成しようとしているように、徐々に徐々に彼女たちの立っている場所の空が覆われていく。そしてドームが完全に彼女たちを包み込んだ次の瞬間、そのドームが姿を消した。外部からの干渉を遮るように消えたのだった。後に残ったのは静寂のみ。まるでそこには何もいなかったかのような静けさが、その場にあった。
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「な、なんですか、ここ!?」
突然周囲の景色が変わったことに戸惑いの声を上げるソラ。さっきまで自分たちがいたはずの公園とはまるで違う。近くにあった芝生も木々もなく、動物の声や心地よかった風も感じられない。あるのは赤黒く染まってしまった空、岩のようなオブジェ、そして足元の砂。薄気味悪さと居心地の悪さ、身体を震わす寒気すら感じる空間にソラ達は戸惑い、ゆい達は驚愕していた。
「ここはアンダーグエナジーで形成された異空間。お前たちを逃がさないための檻ともいえる。いうなれば、アンダーグフィールド」
「アンダーグフィールドだと……だが、この技は」
「まるでマリちゃんのデリシャスフィールドだな。まさかこんな技が使えるとは」
スキアヘッドの言葉に苦い顔をする拓海とあまね。本来はレシピッピを奪われないため、戦闘による被害を抑えるために展開されていたデリシャスフィールド。しかし敵側がそんな優しい理由でこんなフィールドを展開するはずもない。
ここにつかまってしまった以上、変身できないゆいたちを守りながら戦う必要がある。彼女たちをここから逃がす方法を探すにしても、目の前のゴーボーグがそれを許してくれるはずもない。かつての敵のボスと同じ姿にスペシャルデリシャストーン一つに注ぎ込まれた大量のアンダーグエナジー。昨日の敵とはまたわけが違う。
「これでお前たち全員を取りこぼしなく始末できるな」
「そんなこと!させません!」
「よせ、スカイ!」
即座に変身したスカイが単独で飛び出していく。敵に何かさせる前に一撃を。そう考えての行動だった。が、
「ゴーボーッグッ!」
ぶんっと腕を一振りするだけで昨日のキョーボーグを上回る風圧が発生する。離れた場所にいるゆい達も思わずよろめいてしまうほどの勢い。その一振りがスカイに向かった。
「スカイ!」
咄嗟に変身して飛び出すブラペ。それでも先の風圧で動きを一時制限されてしまったことから先にスカイのもとに辿り着くのはかなわなかった。
「くぁっ」
直撃は避けた。それでも目と鼻の先の地面にたたきつけられた腕の衝撃は、避けるために体勢を崩したスカイの身体と意識を飛ばすのには十分だった。無防備に吹き飛ばされるスカイの身体をブラペが何とかキャッチする。
「まずは2人」
「?っ、何!?」
ゴーボーグの額のストーンが輝く。スカイをキャッチしたブラペの足元が不自然に歪んだかと思うと、2人だけを包むように小型のフィールドが形成され始めた。先ほどのフィールドほどの大きさはなかったため、あっという間に2人が包み込まれ、地面にフィールドごと吸い込まれていった。
「拓海!」
「ソラちゃん!」
ゆいとましろが声を上げた時には既にフィールドは完全に大地に吸い込まれてどこにも痕跡は見当たらなかった。突然の事態に動揺が走る。
「成功か」
「スキアヘッド!2人をどこへやった!」
ぽつりと言葉を漏らしたスキアヘッド。キッと彼をにらみつけ、すぐさまフィナーレへ変身するあまね。ましろ、ツバサ、あげはの3人も変身し、臨戦態勢を取る。
「答える必要はない。お前たちもそれぞれの場所に行くのだからな」
再度ゴーボーグのストーンが輝くと、今度はまた別のドームが3つ形成されゆい達を分断する。
「ゆい!ここね!らん!」
「あまねちゃん!」
「エルちゃん!」
「ツバサ君!」
手を伸ばそうにもドーム状のエネルギーがそれを許さない。一瞬にして彼女たちは抵抗も許されず、敵の能力にとらわれてしまった。徐々に互いの姿が見えなくなり―
「移送完了だ」
そのフィールドにはもうゴーボーグとスキアヘッドしか残されていなかった。ゴーボーグのあげた成果に対して喜びも称賛もなく、スキアヘッドは彼女たちが吸い込まれていった地面を見つめる。
「さて、この余興。どこまでの成果をあげるか」
勝ち誇るでもなくあくまで淡々と。相も変らぬ不気味さと不吉さをまといながら、スキアヘッドはそう呟いてからその場から消えるのだった。
ネーミングについてはもう思いつきです、思いつき。