ひろがるスカイ!プリキュア with デリシャスパーティ♡プリキュア   作:空色胡椒

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救出作戦

「あまね!あまね!聞こえてる?返事をして!」

 

何度も画面に向かって呼びかけるローズマリー。しかしそこから普段なら帰ってくる声が聞こえてくることは無かった。

 

「なんてこと…急がないと!」

 

大急ぎでクッキングに事件の発生について話したローズマリー。かつてクッキングダムを救ってくれたプリキュア達の危機。すぐさまクッキングより救出に動くための許可がおり、レシピボンの守護を任されていたコメコメ達も必要に応じて動けるように命を受けた。

 

(さっきの通信……こちらからの返答は期待していない、一方的にこちらに情報を届けるためのもの。流石あまねね。咄嗟に動けるなんて)

 

向こうの映像と音声だけが届いた一方的な連絡。敵に動きを察知されないようにとあまねがローズマリーに向けた報告とSOS。その中でローズマリーは確かに見聞きした。スペシャルデリシャストーンを敵が使用して怪物を生み出したこと、そして現れた怪物がかつてのゴーダッツによく似た姿だったこと、さらにはデリシャスフィールドによく似た、でも正反対なフィールドの中に彼女たちが閉じ込められてしまったことを。フィールドが展開され切ったと思われるタイミングであまねからの通信がノイズしか届かなくなったことを考えると、そのフィールドには通信を阻害する機能が付いていると考えられる。

 

そう考えると今まで届いていた分の通信がなければ自分たちはこの異常事態に気づくことが相当遅れていただろうし、もしかしたら手遅れだったかもしれない。本当にあまねの咄嗟の判断力に救われている。それでも今動き出せるのであれば、できることもチャンスもまだある。まだ探せる。

 

「ローズマリー隊長!」

 

ローズマリーに声をかけたのはかつてプリキュア達と交流を持ったクックファイター、セルフィーユ。まだ若く比較的最近選ばれたということもあり、経験を積んでもらうためにローズマリーは直属の部下として彼女を迎え入れていた。

 

「セルフィーユ!いい所に来てくれたわ。一緒に来てちょうだい!」

「は、はい!ブラックペッパー先輩達、大丈夫でしょうか」

 

セルフィーユ、彼女もまた拓海を先輩と呼ぶ1人である。拓海とあまね、この2人はまだ変身能力を個人で保有していることもあり、ブンドル団の件が収まってからのこの1年の間でも、拓海とあまねは時折クックファイター達やローズマリーと訓練してきて腕を磨いてきたのだ。

 

特に拓海に至っては、正規の訓練を受けていなかったにもかかわらず、手にしたデリシャストーンと父親譲りの天性のセンスをもってブラックペッパーとしてプリキュアと共に戦っていたこともあり、クックファイター達からは一目置かれる存在になっていた。まるで若い頃のシナモンのよう、とはクッキングの談である。

 

 

そんな拓海は自分より後にデリシャストーンに選ばれたセルフィーユに、時折戦闘や石の使い方のレクチャーを担当しているのだった。

 

「きっと大丈夫よ。でもだからこそ、今できることをやらないといけないの。一緒に会いに行きましょう!」

「はい!……って誰にですか?」

「……あなたの元上司よ」

 

ええっ〜!!??というセルフィーユの驚きの声を背に受けながら、ローズマリーは一直線にとある人物の元へ駆けていくのだった。

 

 

 

近づいてくる足音に男は心当たりがあった。いや、正確にはこんなところに来る相手など、片手の指の数も居ない。その中でも大人の歩幅と子供の歩幅が混ざっている事実と、その靴が地面を蹴る音。判断材料は十分にある。

 

特に入口に目を向けるでもなく、目を閉じながら独房の壁に向かって座っている男は、足音が止まったタイミングでその口を開いた。

 

「何の用だ、ローズマリー?」

「よく分かったわね。流石にクックファイターのトップをやってただけはあるわね」

「フェンネル様!あなたの知識を借りる必要があるのです。ご協力をお願いします!」

 

目を開き扉に視線を向けるフェンネル。真剣な表情のローズマリーと、切羽詰まったようなセルフィーユが彼の独房を覗き込んでいた。

 

──────────

 

「なるほど。確かに私が作った試作品の中には破棄されているものもある。だか私とてその辺に捨てるほど愚かでは無い。次元の狭間、それこそ元々スペシャルデリシャストーンを持っている者でもなければ辿り着けないような場所を選んでいたつもりだ」

「あまねからの通信で得た情報から察するに今回の相手、スキアヘッドというらしいのだけれども、どうやら次元を移動できる能力をもっているみたいね。今の話が本当なら、きっと彼だから見つけられたのね…」

「じゃあ、やっぱりあれは正真正銘、フェンネルさんが作ったスペシャルデリシャストーンなんですね」

「そうなるな。その怪物がかつての私の姿に似ているというのは、その影響だろう」

「クッキングダム…いえ、どちらかといえばブンドル団とアンダーグ帝国両方の力を持った怪物…恐ろしい相手だわ」

 

改めて敵の危険度を認識し表情がさらに真剣味を増すローズマリー。しかも先程の通信で届いた音声から察するに、ゆい達は特殊な空間に閉じ込められてしまったらしい。プリキュアになる事ができない彼女達の身のことを思うと、早く何とかしなければと焦りすらおぼえる。

 

「敵はアンダーグフィールドと言っていました…あれってもしかして」

「話を聞いた限りからの想像だが、デリシャスフィールドに近いものを、そのアンダーグエナジーとやらで再現したようだな。そんなことまでできるとは…」

「フェンネル、あなたならゆい達を助ける方法を何か知ってるんじゃないの?」

「……残念ながら今の私には何もないよ」

「そう……」

 

何かしらの突破口を開けるかもしれない、そう思っての訪問だったが、無理もない。アンダーグエナジーはフェンネルにとっても未知のもの。いくらストーンを作ったのが彼と言っても、そこまでのことを求めるのも無理があるだろう。

 

「情報ありがとう。ごめんなさいね、急に邪魔しちゃって。あとは私の方で「ただ」?」

 

立ち上がりながら締めの言葉を言おうとするローズマリーをフェンネルが遮る。目を閉じ考えをまとめていたらしい彼は、ゆっくりと目を開いた。

 

「少なくとも、そのフィールドがスペシャルデリシャストーンを用いてデリシャスフィールドを模しているのであれば、同じストーンを持っているお前なら干渉は可能かもしれない」

「干渉?」

 

首を傾げるセルフィーユに対し、ローズマリーは先程よりもさらに真剣な表情で聞き入る。

 

「そのフィールドは確かにアンダーグエナジーを使っているかもしれないが、ストーンが源である以上、我々と同種の力が働いているのは間違いないだろう」

「じゃあもしかして、ストーン同士の共鳴で力を封じられる?」

「いや、それはない。私との戦いを思い出せ。同じストーンの力とはいえ、ふたつの石をひとつにした時の私には共鳴は効かなかったはずだ。同じ系統の力でもそうなのだから、未知の力が混ざっていては尚更だろう」

「そうだったわね……じゃあどうしたら?」

「……この特殊なフィールドに干渉するのは、汚染された水を飲水に戻すようなものだ。全てを取り除くことは不可能だろう。だが、僅かなら穴を開けることは可能かもしれない」

「じゃあその穴から脱出を?」

「いや。そこまでの穴を作るのに時間もかかるだろうし、維持も難しい。だが、小さな穴を開けることくらいなら短い時間でも開き、かつ維持することが可能だろう」

「小さな穴?」

「その穴から、エナジー妖精達を送り込め。そうすれば彼女達はプリキュアになれる」

「確かに!プリキュアになれれば、自分たちで脱出する道も見つけられるかもしれない!」

 

確証は持てないものの、希望が見えた。それだけでやる価値がある、そう思える。

 

「ありがとう、フェンネル!」

「だが、未知のフィールドに彼女達が飛ばされたことを考えると、まずは正確に位置情報を特定する必要がある」

「っ、そうね。確かにそうだわ。でもどうしたら…」

「彼女達が持っているハートキュアウォッチ、その位置が分かればいいはずだ」

「あ!それだったら!」

 

ここまで真剣な話に口を挟む余裕もなかったセルフィーユだったが、フェンネルの発言にひとつ閃くのであった。

 

──────────

 

「で、俺様のとこに来たというわけか」

「もちろんタダでとは言わないわ。あなたたちの貢献によっては刑期が短くなるように取り計らうつもりよ」

「なるほど。確かに事態は深刻なようですね。ってゆーか、はつこ様の娘も巻き込まれてるってなら、ほんとに一大事だっつーの」

 

相変わらず妙に偉そうなナルシストルーと、呟きがはっきり聞こえてしまっているセクレトルーを前に、ローズマリーは交渉の席についていた。

 

セルフィーユのアイディアというのは言うまでもなく、ナルシストルーの発明家としての手腕である。レシピッピの反応を探知するレーダーを開発できた彼であれば、ゆい達の居場所を特定する術を持てるかもしれない、と。

 

「確かに俺様は超天才だ。だが、そのアンダーグエナジーとやらについては知らないことが多すぎる。解析してみない限りはなんとも言えん」

「できないって言われないだけありがたいわ。すぐにでも「ローズマリー隊長!」?どうしたの、セルフィーユ?」

 

面会スペースの外に待機していたセルフィーユが慌てた様子で駆け込んでくる。何事かと3人の視線が向く中、彼女から思いもよらぬ話が出る。

 

「先程、クッキングダムへ未知の通信が入ったようです!」

「未知の通信?」

「はい。なんでもスカイランド?という所の関係者である、ヨヨさんというお方だそうです。プリキュア救出のために協力したいと!」

「!それ本当!?」

 

何者かは分からないがプリキュアを知っている、これだけでこの通信は無視できないものになった。

 

加えてスカイランドという場所の名前。先程の通信で飛び出して行ったプリキュアの名前が確かキュアスカイだったはず。もしかしたらゆい達がクッキングダム由来の力を貰ったプリキュアだったように、彼女達はそのスカイランドという場所から力を貰ったのかもしれない。

 

「すぐ行くわ!ナルシストルー、セクレトルー。あなた達も一緒に」

「ちっ。仕方がないな」

「そうボヤくものでもありません。ってゆーか、さっさと終わらせてまたはつこ様の下で働くための勉強を再開したいっつーの」

 

すぐ様4人は駆け出し、通信が繋がっているという端末が設置されている部屋へと向かった。

 

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