TS少女は魔女に堕ちても、原作主人公を幸せにしたい〜盲目の魔女〜   作:廃棄工場長

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十八話 出発

 シオンが薬を売る為に最寄りの街――それでも歩いて行こうと思えば、一日以上は絶対にかかる程の距離はある――に行くのに、私達は同行することになった。

 

 

 出発予定日である翌日。久しぶりの外出である為、私達はめいいっぱいにおめかしをした。服はシオンが着ていた外出用の物を貸し出してくれた。

 

 

 二人でお揃いの白色を基調としたワンピースのような服であった。胸元のリボンは、私達それぞれの髪の色に合わせたものになっている。

 私は髪を最低限とくだけだが、クロエは濡羽色のような綺麗な黒髪を、胸元のリボンと同色のもので纏めていた。

 

 

 こういう所を見ていると、歴然たる女子力の差が感じられた。所詮女性歴一年にも満たない私では、初めから勝負の土台に立てていないのかもしれないが。

 

 

「ど、どうかな……?」

 

 

 大きな鏡とにらめっこを終わらせたクロエは、恥ずかしそうに私に新衣装の感想を求めてくる。ゲームでも見れなかった推しの装いに、一ファンとして嬉しくなってしまった。

 

 

 抑えきれない感動でぷるぷる震えている私を、クロエは不安に満ちた目で見つめてくる。大方似合っていないと言われないか、心配しているのだろう。

 彼女の不安を早めに取り払うべく、私は勢いよく返事をする。

 

 

「凄く似合ってるよ、クロエ! とっても可愛い!」

「そ、そうかな……」

 

 

 私の返答に照れるクロエ。眼福眼福と内心思いながらも、同時に自分に語彙力がないことを悔やむ。彼女の可愛いらしさを表現するのに、己の貧弱なボキャブラリーでは不十分であった。

 

 

(はあ……受肉したら珈琲が必需品になりそうね)

 

 

 私達のやり取りを見ていた『前借りの悪魔』は小声でそんなことを呟いていた。気のせいでなければ、ここ最近『前借りの悪魔』は同じような内容の愚痴? を溢しているが、何故だろうか。

 私はクロエを守る――一緒に生きていくことを約束しているが、同性同士であることもあり付き合っている訳ではない。

 『前借りの悪魔』がする、甘々カップルを見るような反応には一言物申したいのだが――。まあ、クロエの姿を脳内フォルダに焼きつける作業に集中したいので、この際は無視するとしよう。

 

 

「二人とも、準備はできたかしら?」

「はい!」

「はい」

「うふふ。よく似合ってるわね。忘れ物もないわね? じゃあ、そろそろ行きましょうか」

 

 

 ゆったりとした黒色のローブに、大きなとんがり帽子といった魔女――正確には魔法使いを連想させる装いのシオンが、私達の様子を見に来る。

 

 

 しかしこの家から一番近くの街でも相当な距離があるのに、シオンはどうやって移動するのだろうか。

 私がクロエが住む村に引っ越してきた時は、両親が頼んだ馬車に家財道具等の荷物を乗せて、ゆっくりとした道中であった。

 暇すぎて母親に膝枕をしてもらい、結構な時間を寝て過ごしていたことを思い出す。正確に言えば、この記憶は前世の『俺』の自我が出てくる前の『私』のものである。

 

 

「あの……シオンさん。街までどうやって移動するんですか? 馬車の類もなさそうですけど……」

「いい着眼点よ、クロエ。座学の成果も出ているみたいね」

 

 

 クロエの発言を褒めるシオン。クロエはシオンに才能を見出されて、私と同様に戦いの手解きを受けたり、魔法を学んだりしている。

 シオンの見立てでは、秘めている魔力はクロエの方が多いらしい。現状の力量差は『前借り』の権能も込みで圧倒的に私の方が上であるが、将来的にはそれは覆るという話だ。

 クロエが原作主人公である事実を考えれば、妥当であろう。

 

 

 今のクロエはレベルは五に満たない程度。しかし類稀なる光属性の魔法の才能を考慮すれば、多少格上であっても魔物相手であれば無双状態になれる。

 クロエがゴブリンやスライムの群れを殲滅している光景を見た時は、ある程度トラウマを払拭できたのだと思い安心したものだ。

 

 

 それでシオンはどうやって移動するのだろうか。私に思い浮かぶのは精々――。

 

 

「――転移魔法『テレポート』。それで移動するのよ」

 

 

 転移魔法『テレポート』。ゲームにおいても、後半に解放されるイベントをクリアしなければ習得できない魔法。

 面倒なイベントのクリアが条件でもある為、その効果は攻略には必須レベル。

 遠く離れた街や村、ダンジョンまでひとっ飛びできるこの魔法には何度もお世話になったものだ。

 なお『パトリシア』は習得できない模様。残念。

 

 

「二人とも。私の手を繋いでくれる? 悪魔さんの方はパトリシアちゃんの傍から離れないようにして」

「……離れると、どうなるんですか?」

「良くて四肢のどれかがなくなったりするかもしれないし、最悪の場合は壁の中にのめり込んじゃうから。絶対に離さないように」

「はい!」

「はい!」

 

 

 シオンの物騒な忠告に私達は勢いよく返事をして、彼女の手を握る力を更に強める。流石に『石の中にいる』状態になり、二度目の生涯を終えたくはない。

 

 

「なら準備はいいわね? ――転移魔法『テレポート』」

 

 

 シオンが『テレポート』を発動させると、私達の周囲の景色が歪んでいく。そして三秒も経たない内に、私の視界に映る風景は様変わりしていた。

 

 

「――ようこそ……は違うけど、ここがグラスタウンよ」

 

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