TS少女は魔女に堕ちても、原作主人公を幸せにしたい〜盲目の魔女〜   作:廃棄工場長

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第六十七話 共闘

 ――嫌な予感が当たってしまった。別行動を取っていたクロエとシオンが敵の手に落ちたようだ。

 その可能性も、薄々『ブラックドラゴン』が私に攻撃を仕掛けてきた段階で考慮していた。

 

 

 しかし面と向かって告げられると、考えが纏まらなくなりアリシアの提案に反射的に頷きそうになる。

 だが、それは私の肩に手を置いてきたユージンによって遮られた。

 

 

「おい。アリシアの言葉に耳を貸すな。どういう理由があるかは分からないが、敵の目的は君達の身柄のようだ。アリシアの言葉が本当だとしても、捕まっている君の仲間に危害を加えることはしないはずだ」

「そう……うん。少しは落ち着いた」

「気休めにでもなったら、それで構わない」

 

 

 ユージンの言葉により、幾分冷静を取り戻すことができた。クロエ達の安否は依然として気になるが、それはアリシアを無力化して話を聞くしかないらしい。

 

 

 期待していた返答を得られなかったアリシアは、忌々しげに私達を睨みつけていると、突然片耳に空いた手を添えて、小声で誰かと会話をするような素振りをした後。より一層その表情を歪める。

 先ほどの素振りは、魔法かそれ以外の遠距離の連絡手段を用いたものに見えた。その相手はこの場にはいない――私達と騎士団がぶつかり合うタイミングで暗躍していた人物だろうか。何か彼女にとって面白くないことでも言われたと考えれば、今のアリシアがしている表情も納得ができる。

 

 

 そう私が考えている間に、アリシアは跳躍。『ブラックドラゴン』の背に飛び乗った。

 

 

「……魔女さん。貴女が大切に思っている黒髪の子と紫髪の女性は、私達の手中にありますことを忘れないで下さいよ。返してほしければ、この国の北側にある『賢王の墳墓』に一人で来なさい」

 

 

 そう言葉を言い残し、私達を一瞥すると『ブラックドラゴン』は王城から去っていった。同じタイミングでアリシアが騎乗した『ブラックドラゴン』とは別に、もう一体の黒竜が飛び立つのが遠目で確認できた。

 その黒竜の背には意識を失っているであろうクロエとシオンの姿があった。彼女達の姿が見えたことで、再び私の心中に動揺が走る。

 この場におけるしがらみを全てなかったことにして、駆け出したかったが二つの要因が私の足を止める。

 

 

 一つは敵でありながら、二度も私を助けてくれたユージンに対する恩義。私がこの場から離脱してしまえば、消耗したユージンと騎士団の戦力で王都中を闊歩する魔物を倒さなければならない。

 魔物の殲滅自体は今の彼らでも可能だろう。正確な魔物の質や数を把握できている訳ではないが、疲弊しているとはいえ王国を守ることを目的として集められた集団だ。

 問題なく魔物を掃討するだろうが、消耗している分犠牲は多くなってしまうと予想できる。

 その原因の大部分が私にある為、この場に残って魔物の討伐に協力すべきという考えもある。

 

 

 しかしそんな考えが吹き飛ぶ程に、もう一つの要因――意識のないクロエ達を乗せた『ブラックドラゴン』を駆る人物の正体が、ゲームでも良く知るものだったからだ。

 

 

 整った顔立ちに、赤毛。そして人外であることを象徴する一対の角。魔物でありながら、限りなく人間に近い存在――魔人の少女。

 その名前をドリア。ゲーム本編で、魔王軍四天王の一人として、立ちはだかる強敵の姿であった。

 

 

 

 

「それにしても、どうして退いたんですか? あのまま行けば、あの魔女さんも確保できましたのに」

 

 

 何らかの原因により火災が発生し、闇夜の中でも嫌な意味で輝く王都。それがあっという間に小さく消えて見えなくなる頃。

 風圧を感じさせずに、アリシアは『ブラックドラゴン』の背に立ち、同じく別個体の『ブラックドラゴン』に騎乗するドリアに問いかける。

 

 

「……ちょっと想定外のことがあったのよ」

「想定外のことですか? ドリアさんの方は無事に目標の子供――そこに転がしている黒髪の子を確保したのでしょう。おまけも含めてね」

 

 

 歯切れが悪そうに答えるドリアに、心底意味が分からないといった様子のアリシア。言葉の最後の方は、紫色の髪をした女性に対する恨みが籠もっていたが。

 

 

 ――しかし奇妙な光景である。本来であれば騎士であるアリシア。今はまだ眠りに就いている魔王直属の配下、四天王の一角を務める魔人の少女のドリア。

 決して相容れない立場の者達ではあるが、ドリアが部下の蠅型の魔物に毒を打たせて、自分の都合の良い手駒にしている。

 尚その蠅型の魔物は、王都に陽動目的で放った魔物の指揮を任せていた。捨て駒前提の運用である為、今後もう顔を合わすことはないだろうが。

 ちなみにアリシアに打ち込まれている毒は、蠅型の魔物本体が死亡したとしても、効果は消滅することはない。

 

 

(贅沢を言えば、捕まえた二人にも毒を使って操りたかったけど……二人揃って毒が効かない程に保有魔力が多い。動きを封じるのは、アリシアに作らせた『魔女の枷』で可能だから問題はない。だけど――)

 

 

 ドリアは自分の足元に転がるクロエとシオンの首に付けられた首輪――『魔女の枷』を見つつ、アリシアに対して濁した『想定外』について考えを巡らしていた。

 

 

(――まさか黒髪の子供が悪魔と契約しているなんてね。気絶させる直前に感じた魔力……まあ、杞憂でしょう。人質がいる限り、あっちの方から勝手に来るだろうから、別に悪手ではないし)

 

 

「――聞いていますか! ドリアさん!」

「そんなに大きな声で言わなくても聞こえてるって!」

 

 

 ――こうして複数の魔女と一人の魔人によって、引き起こされた王都の異変はようやく終わりを告げようとしていた。

 

 

 ――とある魔女の『未来の可能性』が、覚醒する条件を満たしつつあることに誰も気づかぬままに。

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