転生人造人間と女研究者の親子(?)で行く終末世界旅行 作:POTROT
「ハッピバースデートゥーミー♪」
月明かりが照らす夜半。
無惨にも崩れ去ったビルの瓦礫の上で、俺は俺の生誕一周年を祝う。
「ハッピバースデートゥーミー♪」
他の誰もいなければ、ケーキも無い。プレゼントだって一個も無い。
実に寂しくて、見窄らしい。酷すぎる誕生日パーティーだ。
「ハッピバースデーディア『NEW俺』ー♪」
だが、今の俺にそんなものはどうだって良い。
心が躍る。テンションが上がり続ける。嬉しくて楽しくてしょうがない。
「ハッピバースデートゥーミー♪」
俺は今、この世界に生きている。
俺は今、この世界の頂点に立っている。
そんな自覚が、
「おめでとおおおおおおおおおおおお!!!!」
祝福の歌、その最後を絶叫で締め括る。
遥か地平の彼方まで響かせるように。遠く月に届かせるように。
ああ、なんて最高の気分なんだ。
そう、俺は今、この世界の────
「えぇい、うるッッさい!!」
「……………」
俺が悦に浸っていれば、突然、下の方から怒号が轟く。
その瞬間、先程まであれ程までに昂っていた興奮が、冷や水を浴びせられたように萎えてゆく。
最高から一転して最低。そして最悪だ。
「頼むから静かにしてくれ! 眠れないじゃないか!?」
「…………ハァ」
腹の底から溜息が出る。
ああ、本当に最悪だ。せっかく久々のいい気分だったってのに。
「クソっ、せっかくまともな寝床が見つかって、久々にまともに寝れると思ったってのに、何で今日に限って……聞いているのか!? なぁ!?」
目線を下にやって見れば、ボロボロの白衣を着た女が、長い髪を掻きむしって叫んでいる様が目に映る。
その様はあまりにも悲惨で、どうにも罪悪感が……湧いてこないな。割と通常運転だ。
「あー、はいはい。聞こえてるよ。悪かったな大声出して。……でも許してくれよ今日くらい。俺の誕生日だぞ、誕生日。これで晴れて俺も一歳だ」
「はぁあ? たんじょぉびぃ? 何だってお前はそんな……そうも知ってる知識がそんなチグハグなんだよ……?」
「いや、お前がこう作ったんだろうが」
「うるさいうるさいうるさい!! お前なんてぶっ飛んだ技術特異点、誰が作れるかぁ!?」
女が俺を指差して、そんな無責任な事をヒステリックに叫ぶ。
しかし、それも仕方ないと言うものだろう。
と言うのも俺、実は転生者なのである。
前世では学生をやっていて、歩道に突っ込んで来た乗用車に潰されて死んだ。
んで、気付いたら試験管の中でした。
いやー、デザイナーベイビーってやつ? それとも単なる生体実験かな?
とりあえず、なんか彼女たちは特殊な能力を持った人造人間プロジェクト、みたいな計画の集大成として俺を作ったらしい。
で、何でそんなもん作ったのかって言ったら……まぁ、簡単に言えば謎のモンスターどもが発生して世界がヤバいので、モンスターどもに対抗できる戦力を作る、的な感じだ。
そんなわけで、俺はこの世界に特殊能力を持った人造人間として生まれ落ちたわけである。
で、その後は色々なチェックだったりが行われつつ、俺は人類の戦力となるべく教育と訓練を受ける……はずだったのだが、生まれてすぐの俺が今の体型(15歳前後くらい)にまで成長した上、普通にスラスラ喋り出したモンだからそりゃあもう大騒ぎ。
俺に対してカウンセリングやら精密検査やら何やらと、色々やる事になってしまった。
差し当たって俺は研究所の最奥に拘束監禁。一切の自由を禁じられ、検査結果が出るまでそのまま放置という事になった。
で、そのタイミングで件のモンスター共が研究所のあった基地を強襲。
そこから何やかんやあった結果、俺と食事を運びに来ていた彼女以外、全滅しました。
いやー、凄かったよね。
とんでもなくグロいバケモンが、次々と人も兵器も建築物もバキバキ破壊していくんだから。
俺の方は精神構造も弄られてるのか、そうでもなかった……どころか、美味そうとも感じたが、彼女の方は流れてくる映像にだいぶ取り乱しているようだった。ゲロも吐いてた。
で、最終的にモンスター共は俺たちのところまで迫って来たが、俺が覚醒して拘束をぶち破り、モンスター共をワンパン。そこから俺たちは生きている基地、ないし都市を目指して旅を続けていると言うわけである。
ここで話が戻すが、この旅において、モンスター共をワンパン出来る上に人間としての生理現象を一切必要としない俺と、モンスターにも俺にもワンパンされる上、人間としての生理現象がちゃんと残っている彼女では、のしかかる負担の大きさは比べものにならないわけで。
だからこうしてよくヒステリーを起こすのだ。
「ああクソ、もう嫌だ。何で私がこんな酷い目に……!」
「生体実験とか人体実験とか、非人道的なことやってたからじゃない? 因果応報……自業自得かな?」
「っだあああああああああああ!!」
ああ、あと俺がこうして散々いじってるのもストレスの一因だろう。
だが、普段から俺のことを馬車馬のように働かせているクセに見返りが何一つないのだから、これくらいは許されても良いはずだ。
「うう……うるさいって言ってるのが聞こえないのか!! ……クソっ、私はまた寝る……! もう邪魔はするなよ……!」
「あいよ。おやすみ、マイマザー」
俺が手をひらひらと振り、再び崩れたビルの中へ帰って行こうとする彼女に、寝る前の挨拶を一つ送ってやる。
「違うッ!!」
すると、俺の言葉が届くや否や、彼女はひどく血走った目で勢いよくこちらに振り返った。
そしてその勢いのままに、血を吐くような否定の言葉を俺へと叩きつける。
「…………はぁ」
俺はやれやれと肩をすくめる。
毎度毎度、頑なに認めようとしない彼女であるが、いったい何が違うのだろうか。
俺を作ったのは、間違いなく彼女であるはずなのだが。
「あーはいはい、分かってるって。ふざけてごめんな」
肩で息をした彼女が、俺を睨め付けてから寝床の方へ戻ってゆく。
俺は寝なくていいので、ここで見張りだ。
まぁ、連中の動きが活発な昼間でさえエンカウントしなかったのだから、この辺りにもうあのモンスターどもは居なさそうであるが。
さて、明日も平和に進めますように、っと。