転生人造人間と女研究者の親子(?)で行く終末世界旅行   作:POTROT

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そしてコイツは不憫系女研究者である。

 新しい朝が来た、希望の朝だ。

 

 なんて懐かしいフレーズを瓦礫の山の向こうから登る朝日に思い出したはいいものの、生憎とこの世界に希望の朝なんてものはない。

 というか朝になればあのモンスターが動き出すので、むしろ絶望の朝と言える。

 ヤツらがこの世界にいる限り、朝日が人類に運ぶのは、凍えるような恐怖と悍ましい死だ。

 

「う、ぐ、うぅ……」

 

 なんて事を考えていると、瓦礫の下から彼女が這い出して来た。

 ふむ、見たところ、普段よりはしっかり寝れたらしい。

 しかし残念な事に、その程度で目の下に深く刻まれた隈は消えなかったようだが。

 

「おはよう、いい朝だなァ。気分はどうだ?」

「これ以上無いくらい最ッッッッッッッ悪だよ駄作め……!」

 

 地獄の底から響くかのような、怨嗟と恨みに塗れた囀りが、俺の耳朶を強かに打つ。

 しっかり寝れたからか、普段よりも声に覇気を感じる。

 

「うむ、絶好調だな」 

「誰が絶好調だ誰が……お前のせいで私はいつも絶不調だ!」

「その割には体がよく動いてるが。いい寝床で寝れたのが良かったんじゃないか?」

「お前の騒音でプラマイゼロだ……この、失敗作めッ!」

 

 彼女は足元に落ちていた手頃なサイズの破片を持ち上げると、俺めがけて投げつけようとする。

 が、研究職として運動とかけ離れた所にいた彼女に、高所数メートルの場所にいた俺へ正確な投擲が出来るはずもなく。

 放り投げられた破片は明後日の方向に飛び、軽い音を立てて地面に落ちた。

 

「うッ!?」

「あーあーあー、さてはやらかしたな馬鹿め」

 

 しかもどうやら慣れない動きに肩を痛めたらしい。

 彼女は短い呻き声を上げ、肩を押さえて瓦礫に上に座り込んでしまう。

 

「……っぐ、う……おい!」

「あー、はいはい。そこで大人しくしてろよ」

 

 彼女が脂汗を流しながら俺を呼ぶ。

 全く、彼女はいつもこうだ。俺の事を散々言っておきながら、結局何かあれば俺頼み。

 彼女に恥とかプライドと言うものは無いのだろうか。

 まぁ、そこが彼女の面白いところでもあるのだが。

 仕方がないので俺は瓦礫の山を蹴って跳び、彼女の側へ。

 

「ほら、手ェどかせ。ほら……よっと」

「ぐっ!」

 

 痛がる彼女の肩を掴んで、ゴキンと治してやる。

 それだけで彼女の肩は元通り。完全回復だ。

 ちなみにこの治療法は完全に適当であるが、俺の特殊能力により最適な治療法に昇華されているので、後遺症が残ったりと言う心配は一切無い。昇華される理屈は知らん。

 

「そら、もう十分遊んだだろ、そろそろ行こうぜ」

「なっ、このっ、誰のせいだと……はぁ……とっとと行くぞ」

 

 ぐるぐると肩を回し、調子を確認する彼女にそう告げれば、彼女は何やら言いたげにしつつも、素直に立ち上がってスタスタと歩き始めた。

 

「うおぁっ!?」

 

 そしてすぐに瓦礫に足を取られてすっ転んだ。

 

「……なぁ、これで何回目だ? 俺もう数えてないぞ。学習しないのか研究者さんよぉ」

「…………うるさい。さっさと治せ」

「はいはい」

 

 瓦礫の山に頭から突っ込んだ彼女を上から引っ張り上げ、所々擦りむいたり打撲したところを治してやる。

 ちなみにこれも俺の特殊能力だ。怪我した場所に手を置いて、力を込めればすぐに治る。

 治してる理屈は知らん。不思議パワーとでもしておいてくれ。

 

「……あー、クソ。最悪だ。本当に最悪だ……」

「おう、そうか。で? 感謝の言葉は?」

「………………………黙れ駄作」

「素直じゃねぇなァ、ツンデレめ」

「……………」

 

 治療が終わると、彼女はさっさとビルの瓦礫から道へと降りてしまう。

 俺の冷やかしにも無反応。流石に朝っぱらから飛ばし過ぎたか。

 

「さて、今日はどうするんだ? もう少しこの街を探索するのか? それとも他の場所に行くのか?」

 

 この状態の彼女は実に面白く無い。仕方ないので少しは真面目にやってやろう。

 俺も道に降りて、本日の方針を彼女に問うてみる。

 

「……研究所の跡を探す」

「あ? 研究所ぉ……?」

 

 すると、返ってきたのは予想の斜め上の回答。

 

「これほどの規模の都市だ、絶対に私達と同じ『機関』の研究所があったはず。ここがどんな研究を行なっていたのかは知らんが、役に立つ情報や物資があるかも知れん」

「『機関』ねぇ……」

 

『機関』って言うのは、まぁ簡単に言えば世界に突如として現れたモンスター共に対抗するために作られた……っていう事になってる、だいぶ前から存在するらしい組織の事だ。

 まぁ、かなりキナ臭い所ではあるが、人類を守りたいという目的は本当らしい。

 件の人造人間のプロジェクトもその『機関』のお偉いさんの誰かが提唱したもので、俺と彼女の居た研究所は、そんなプロジェクトを任された、『機関』直属の研究所の一つとのこと。

 

 で、彼女の話によれば『機関』はそんな感じの計画を世界の至る所に建てられた研究所で進めていたらしく、そのうちの一つがここにあるかも知れない、とのことだ。

 

「……で? どうやって探すんだ?」

 

 この街、見渡すだけでも普通に滅茶苦茶広いぞ。

 具体的に言えば政令指定都市一歩手前くらいの広さと発展具合だ。

 いやまぁ発展具合とは言っても廃墟と瓦礫しか無いので、推測ではあるのだが。

 

 と、そんな事を聞いた俺に彼女は振り返って、一言。

 

「何のためにお前がいると思ってる? 虱潰しに探せ」

 

 そんな事を、まるでなんて事無いように言ってのける。

 ……成程、成程。そうか、そういうつもりか。

 どうやら、これだけ一緒にいてなお、上下関係が理解できていないように見える。

 

「やだ」

「は?」

「お前の態度が気に食わんから俺はやらん」

「はぁあ!?」

 

 いや、だって嫌だろ、こんなモン。

 どうか探してはくださいませんか? とか、私も一緒に探すので手伝っていただけませんか? とかじゃなくて俺にだけ一方的に探せっていうのは違うだろ。

 

「おっ、お前、お前なぁ!? ガキじゃあ無いんだぞ!?」

「いやガキだろ、一歳だぞ俺」

 

 俺じゃなければまともな会話すらままならない年齢だ。

 むしろここまで会話が成立している奇跡に感謝して欲しいね。

 

「な、う、くっ……いいから! 黙って探せ! お前は私の………わ、私の被造物だろうが!?」

「えぇ……? 被造物に自由が無いと思ったら大間違いなんだよなぁ……」

「〜〜〜〜〜ッ! このッ、駄作がぁッ!! さっさと────」

 

 

 

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ーーーーーッ!!」

 

 

 

 

「ッ!!?」

「うああああああああっ!?」

 

 探せ、と言葉が紡がれようとした瞬間、あまりにも悍ましい咆哮が街に響く。

 声の聞こえた方に首を回して見てみれば、方向の主は、半ばからポッキリと折れてしまったビルの上から、その真っ黒な目でジッとこちらを見下ろしていた。

 

 相変わらずのテラテラとしらドス黒い色の体表に、無駄に長く、そして太い胴体、その先に揺れるのは、まるで鈍器のような尻尾。

 ワニと虫の要素を混ぜ合わせたかのような四本の足に、これまが鈍器のような爪。

 大きく開けられた口の中から覗くサメのような歯は、噛まれたら最後、どのような末路を辿るか想像に難く無い。

 

「うっ、うああっ!?」

 

 その咆哮を受けて腰を抜かしていた彼女は、情けなく地面を這って俺の後ろへと回り込む。

 どうやら軽いパニック状態になっているようだ。

 ……全く。この一年間だけでもう何度もあのモンスターには遭っているだろうに。

 いつになったら彼女はアレに慣れるのかね。

 

「お、おい、おい! は、早く、早くどっ、どうにかしろっ!?」

「もう本当に早く慣れてくれねぇかなぁ……いやまぁ可愛いから良いんだけどさぁ、っとぉ!」

「◾️◾️◾️◾️◾️ッッ!!?」

「あああああああああああっ!?」

 

 大口を開けて突っ込んで来たモンスターの横顔に、蹴りをぶち込んでやる。

 推定20トン近くあるモンスターであるが、転生人造人間ボディによる蹴りはそんな重量をものともしない。

 モンスターは派手に横へとぶっ飛び、着地地点にあったビルの残骸を吹き飛ばした。

 

「そいッ!!」

 

 そこへぶち込むのは追撃のパンチ。

 モンスターが吹っ飛んだのは数十メートルほどであるが、転生人造人間ボディは音速以上の高速移動を可能とする。ソニックブームが危ないので早々やらないが。

 まぁ、とにかく数十メートルなんて距離は一瞬だと言う事である。

 パァン、と景気のいい音を立ててモンスターの体が弾け飛んだ。

 

「……ふぅ、そら、終わったぞ」

「う、うう、うううううううううううう……」

 

 くるりと踵を返し、彼女の方へと戻ると、彼女は地面にへたり込んで、ガタガタと震えながら泣いていた。

 これもよくあることだ。よほどあのモンスターにトラウマがあるのか、あのモンスターと戦うと、かなり高い彼女は確率でこうなる。

 

「……はぁ。そら、落ち着け」

 

 彼女のそばに腰を下ろし、震えるそっと彼女を抱き寄せた。

 そして、ぽんぽんと背中を叩いてやる。

 面倒くさい話だが、こうなった彼女はこうしてやらないと、しばらく役立たずになってしまう。

 だから本当にさっさと慣れてほしいもと俺は思っているのの、今のところは難しそうだ。

 

「はぁ……これじゃあどっちが子供なんだか分からんな……」

 

 まぁ、こう言うのも彼女の可愛いところなのだが。




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