転生人造人間と女研究者の親子(?)で行く終末世界旅行 作:POTROT
「……はぁ、余計な時間を食った」
「いや本当だよ」
ようやく立ち直った彼女と共に穴の中へ侵入できたのは、遠くの空が赤みがかってきて、少しあたりが薄暗く感じられるようになった頃。
こういう時間のことを黄昏時、と言うのだったか。
いやまぁ、使い方が合っているかどうか、確かめる術はもう無いのだが。
しかし、なんかもう突入前だと言うのにすげー疲れた。俺の改造人間ボディは疲れを感じないはずなので、ただの精神的な疲れというのは理解できているが、それでも疲れた。
何だって彼女はこんなに面倒臭いのだろうか。
最近は日中の活動時間の四分の一くらいが泣き喚く彼女をあやすのに費やされている気がする。
……いやまぁ、大体は俺のせいなのだが。
だが、これは仕方がないと言うものだろう。
必要経費……は、表現として少し違うな。そう、必要な犠牲というやつなのだ。
と言うのも、である。
この二人旅において、俺と彼女とでは俺の方が圧倒的に優位に立っている事は誰の目に見ても明らかだろう。
だがしかし。一年が経ってもそんなことを全く理解できていないかのように、彼女は俺に被造物が何だと散々命令したり、その上で駄作だの無能だのとボロクソ言って来る。
俺からすればそれが本当に腹が立つと言うか、凄まじい勢いでストレスが溜まるのだ。
だからこうしてストレスを発散しないと、たまに本気で彼女を殺したくなって来る。
そうなれば、だ。その気になれば本当に一瞬で、それこそその辺の埃を払う感覚で殺せる俺は、ほんの一瞬衝動に負けるだけで、容易く彼女を殺してしまうだろう。
流石の俺もそのような事態は出来る限り避けたい。
なので、彼女を虐める事で見られる可愛い姿を見て、俺はストレスを発散しているのだ。
……まぁ、つまり、彼女が俺に生意気な口を聞かなくなれば、俺は彼女を虐めなくて済むわけである、と言う事も言える、のだが……
「ふぅむ……当然の事だが暗いな……所々天井も崩れている……おい、駄作。私をおぶれ。そして光れ。それで懐中電灯の代わりにはなるだろ」
「無茶言うんじゃねぇ馬鹿。俺がいくら万能だからってなァ……」
……どうにも無理そうだ。
ほんの一瞬で通常運転に戻りやがった。反省するそぶりすら見えん。
何だ? どうしてコイツはこうも何事もなかったかのように振る舞えるんだ? 毎回泣き止む度に記憶のリセットでもしてるんじゃねぇの?
「ふん。無論、そんな事は完璧に理解しているに決まっているだろう。だが、付けていないはずの能力を勝手に生やしまくったのはお前の方だ。どうせ発光機能とかも持ってるんだろう。と言うか生やしたんだろう最悪の技術特異点め。わかったらさっさと光れ」
「だから無茶言うなって……」
まぁ、正直な話、俺の能力に関しては俺も把握していない部分が多い。
その理由は先ほども彼女が言った通り、俺が勝手に能力を生やしまくっているからだ。
例えば、俺が彼女に治療を施しているあの謎パワーも勝手に生えてきた能力の一つである。
しかし、流石に懐中電灯のように光るなんて事は……
「……うん、無理だな。諦めろ」
掌や目に光れと念じてみたが、結果はやはりと言うか無理だった。
NEW俺ボディも出来ない事はある。万能ではあっても全能ではないと言う事だ。
「チッ。これだから駄作は。こう言う時に限って使えない」
「ああ。親の顔が見てみてぇモンだな」
ほら、ちょうど今そこで苦虫を噛み潰したような表情してる奴なんだが。
「……私はお前の親じゃない」
「ケッ」
彼女がなんか言ってるのを一笑に付し、穴の中を覗き込む。
ふむ、確かに暗い。その上に足場不安定、勾配は急、いつ崩れるかわからない、どれくらい深くまで通じているかわからない、と来たか。
暗い事に関しては暗視能力があるので、俺の視界は確実に確保されるわけだが、崩れられたら色々と面倒だな。
何が面倒って、俺が地上に上がるまでも面倒だし、彼女がほぼ確実に死ぬと言うのも面倒だ。
それに、地下にも有毒な気体が溜まっている可能性だってある。
折角ここまで殺さずにやってきたのに、こんなところで死なれるのはマジで萎える。
「ふぅむ……」
さて、どうしたものか。
俺一人で偵察に行ったら絶対に面倒臭い事になるよなぁ……
となると彼女も連れて行く事になるわけだが、そうなると崩落と毒がなぁ……
いやまぁたとえ崩れたところで、俺が本気を出せば最深部まで無理矢理到達はできそうではあるのだが、そもそも最深部に地下空間が本当にあるのかどうかすらわからない現状、有毒ガスに突っ込んだだけで終わりになる可能性があると考えれば、それは悪手とも思える。
……いやまぁ、こんな目立つ跡を1年間旅していて一回も見なかったことから察するに、絶対に何かはこの下にあるのだろうが……うーん……なんか悩むのが面倒くさくなってきたな。
「……よし」
こう言う時は当たって砕けろ。
今の俺は某地上最強のお父さんより強いのだ。
全能では無いにしろ、それでも万能。大抵の事はとりあえず突っ込んで行けばどうにかなる。
こうやってウジウジ考えるなど、俺らしくも無い。
「行くか!!」
「はっ!? ちょっ、あまりにも唐突が────」
「お前の都合なぞ知らん!!」
そうと決まればいざ出発だ。彼女を背負って穴に飛び込む。
あ、ちなみにここで横抱き、いわゆる『お姫様抱っこ』をすると彼女が腰をやってしまう。
そうなってしまえば治すのが割と面倒なので、しっかりと安定するように背負って行こう。
「っと……おお、思ったよりは安定してるなァ。この分ならまぁ、転ぶって事はないか。気をつけるべきなのは天井とガスだな」
「……もう何でも良いからとにかく私を無事に下まで送り届けろ」
「あいよ」
所々に積もった土を蹴り飛ばしつつ、下へ下へと降りてゆく。
……しかし、本当に深いな。どれだけ地下深くまで掘ってるんだこれ……?
「……息はどうだ?」
「今の所は問題ない。が、息苦しくは感じる。お前空気出せ」
「だから無茶言うなって……いや、呼吸って点で考えれば出来なくもないのか……?」
例えば、俺の肺から直接空気を吸ってもらうとか。
もしくは胎盤と臍の緒的な感じで俺が彼女の血中に直接酸素を送るとか。
「…………絶対にやるなよ。絶対だからな?」
「フリか?」
「違う!!」
……すごいな。右耳の鼓膜が死んだぞ。
いやまぁ数秒もせずに治ったんだが。
「はぁ〜……何でお前はそんな下らないのばっかり知ってるんだ? 何十年前の本か何かでも読んだのか?」
「これには海よりも深く、山よりも高く、宇宙よりも奥深い理由があってだな……お?」
「ん? 何か見つけたのか?」
NEW俺の暗視能力の上にシャコ並みの視力を持った目が、土の壁に何やら奇妙なものを発見した。
人工物だ。モンスターの通り道にあったのか、端の部分が破壊されているが、そのおかげで見つけることができた。
「ま、地下施設があるとしたら絶対これだろうなぁ……」
さて、そうであれば早速だが侵入させてもらうとしよう。
しかし、当然ながらこんな場所に入口なんてあるわけもなし。
なので、作る。半歩下がり、彼女を置いて、拳を構え……
「よし」
「……こっちに破片を飛ばすなよ」
「当……然ッ!!」
爆砕。
人工物に拳を振えば、NEW俺の圧倒的膂力の前に壁は呆気なく音を立てて吹っ飛び、その内部、いかにも研究所ですと言う内装を曝け出した。
「大当たり、だなァ」
壁を吹っ飛ばした時に研究資料っぽいのも幾つか吹っ飛んだが、まぁ許容範囲という奴だろう。
「おら、さっさと探索に行くぞ」
「……興奮しているところ悪いが、私にはさっぱり見えん。お前やっぱり光れ」
「無理だっつってんだろうが」
……とりあえず、懐中電灯を見つけるか、どこかにあるだろう非常用電源に切り替えるのが目先の目標か……
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