炎の巨人に青い春を   作:山崎五郎

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Prologue

 

『何故…だ…この、俺が…

 

オフェリア…オフェリア…オフェリアァァッ―――――!!

 

…それが、俺の最期の記憶。

あの竜殺しと戦乙女に貫かれ、砕かれ。

 

何も成せず、何も遂げられず。

炎の巨人(スルト)は消え失せた。

 

 

 

 

ああ、何と、何という愚か。

何という滑稽。

 

定められた運命を覆そうとしながら、事実覆しながら。

その先に待っていたのは、世界からの剪定。

世界を焼く炎としての役割も、俺に驚きを与え、見つけてくれたオフェリア(かのじょ)に何かを返してやることも出来ず。

 

それでも、抗い、それでも、滅びた。

 

 

 

 

 

ああ、ああ。つくづく。どうしようもない。

己でも驚いた。俺に、こんな事を思う感情があったとは。

いや、もしや、これもお前が与えてくれたものなのか、オフェリア。

 

ならば、俺は一体。

何を成せばよかった。何をしてやれば、お前を…

 

オフェリア。俺は、お前を…

 

 

 

 

分からない。分からない。

 

ただの破壊でしか無い俺には。

お前とは違う、人には成れなかった俺には。

 

 

もし、願いが叶うのなら。

あの聖杯のように、願いを叶えられるのなら。

 

誰か、誰か教えてくれ(・・・・・)

 

俺は―――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――――?」

 

瞼を開く。

天上の真上で輝くそれから放たれた光が、瞳に飛び込む。

あれは、太陽か。

空を見上げている。俺は、倒れているのか。

 

…待て。何故俺は…生きている。

確かに、俺は滅びた。魂すらも残らず、消え失せた筈だ。

 

座に帰った?違う。

俺は他の英霊とは理由が違う。仮にサーヴァントとして召喚が成されていたとしても。

俺は異聞帯の英霊。ならば、仮に英霊の座に登録されていたとしても、それは『汎人類史におけるスルト』の筈だ。

俺がそこに居ることは有り得ない。

 

…加えて。

ここが座だというのなら、この肌を撫でる風の感触は。それに乗って頬を軽く撃つ砂は、一体何だというのか。

それは、まるで俺が生きていると錯覚させるような…

 

 

「…フ、クク。俺も、中々どうして、未練がましい――――」

 

 

瞼を閉じる。

最後の夢を終わらせるように、今度こそ命の終わりに向き合う。

 

何者かは知らないが、妙な機会を与えたものだ。

だが、そうだな。もしこの後もこの夢が続くのなら。

 

オフェリア。今度こそ、お前に、俺は―――――…。

 

 

……………。

 

 

…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ひ、人!?こんなところにどうして…あの、大丈夫ですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またしても、瞼は開かれた。

このおかしな夢は続いているのか。

 

だが、次の夢にて瞳に写ったのは青い空ではなく。

 

「………なんだ、コレは…建物、か?」

 

まるでかの女王の城の様な、大地と空を遮るそれが、写った。

だが、それは氷のそれとは違う…

 

 

「…あっ。目を覚ましたんですね。

あの、大丈夫…でしょうか?」

 

…?誰だ?

声の方角に振り向けば、童が一人。

 

だが、俺の知る人間とは少しばかり違う。

耳がやけに尖り、顔にはあの忌々しい竜殺しも身に着けていた…眼鏡、だったか?

そして、頭上にはまるで天輪の様な…

 

「…おま、えは」

 

「?」

 

「…お前は、何だ。人か、それとも天使か」

 

「…う、うーん?

ええっと、少なくとも私は人だと思いますけど…」

 

「…そうか。

俺の知っている人間とはずいぶんかけ離れた様相だな」

 

…眼鏡の女はあいも変わらず不思議そうな顔をしている。

その様な反応を返されようと、俺にとっては事実なのだ。

 

「あ、もしかして…あなたは、キヴォトス(・・・・・)の外からいらしたんですか?

でも、それなら何であんな所で倒れて…」

 

「…キヴォトス?」

 

知らない言葉が出てきた。

聖杯から知識は与えられている筈だが、どうにも聞き覚えのない言葉だ。

それに、外とは何だ?キヴォトスとは国の名称がなにかだというのか?

 

「うーん…キヴォトスの事を知らないなら、ここに居るのもおかしいし…

あの、すみませんが、自分の事は分かりますか?」

 

「………俺の事?」

 

そうだ、よくよく考えれば何故この女は俺に平然と話しかけられる。

肝が座っているにしても、俺に軽々しく話しかけるなど余程の馬鹿ぐらいのものだろう。

 

「だって、あなたみたいな…その。

綺麗な女の人(・・・・・・)が砂漠で一人倒れてるだなんて…」

 

「………女?俺が?」

 

「…?はい。ほら…」

 

女が鏡を取り出し、俺に向けた。

…!?これは…

 

―――――オフェ、リア…?

 

何故、オフェリアがここに。

いや、待て、これは鏡?

 

ならば、正面に写っているものは。

だが、何故。

 

何が、どうなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――これは、誰の導きか、思し召しか。

いずれにせよ、事実は一つ。

 

北欧異聞帯における終末の炎の化身、スルト。

彼の者は、転生を成したのだ。

 

オフェリア・ファムルソローネ。

彼のマスターであった、彼女の姿となって。

 





スルト(オフェリア・ファムルソローネ)

CV:種崎◯美

見た目はオフェリア、中身はスルト。
それ故声や外見こそオフェリアだが、一人称や意識などはスルト基準。

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