ドラゴンクエストXI 〜世界の創造主と勇者が過ぎ去りし時を求める話〜 作:しゃけ21
それからエマの家の屋根に登って、ワンワンワンワンと吠えまくるルキ──どうやら不審者だと思っているらしい。何一つ間違っていないから困る──を「元気だなぁ」とスルーした上で、やくそう片手に喜ぶイレブンをさらに聖竜が死んだ顔で眺めて。(この時点で既に情報過多)
『よし、じゃあそろそろ出発しようか』
『──あ、ハイ』
そう言って屋根からヒョイっと降りたイレブンに聖竜がドン引きしながらも答える。「こいつホントにやりやがったよ……」と溢れる恐怖が尋常じゃなかった。〝幼馴染みの家の屋根に登る〟なんてただでさえ事件性が半端じゃないのに──なんならルキまで吠えているのに──誰も見に来たりしないんだからもはや奇跡としか言いようが無い。エマも例のお守りを作っているのか延々と家に籠っているし、どうやらイレブンがイカれている事を見抜けたのはルキただ一匹だけだったようだ。現状一番マトモであるので彼こそ旅に付いて来るべきである。勇者(変態)と聖竜(ポンコツ)の二人旅とかあまりにも先行きが不安すぎるので。
「おーい、母さん! ダンさんもお待たせ!」
「遅いっ! 一体何やってたんだい!」
「え? えーと、まぁちょっと村を探索してて」
「探索〜!? まったくアンタは旅立ちだってのに何を呑気な……!」
「まぁまぁペルラよ、そう怒るでない。イレブンが村を走り回るなどいつもの事じゃろうて」
いつもの事なんだ……。くつくつと微笑むダンを見ながら、聖竜がまたしても遠くを眺める。あまりに何度も遠くを見過ぎていよいよ悟りとか開きそうだった。幸いイレブンの事情もあって今回の見送りは二人だけだが、もし仮に村の住民がいれば今頃全員が頷いていただろう。
「おお、それはそうとイレブン。お主が言っていた馬というのはこやつで間違いなかったかのう? 村で一番器量の良い馬を見繕ってきて貰ったんじゃが……」
「あ、うん大丈夫! この子で合ってるよ」
ありがとうダンさん。笑みを浮かべて礼を言いながら、イレブンが慣れた手つきで馬の首筋を撫でる。すると向こうは何かを感じ取ったようで、鼻先をイレブンの肩に寄せると、そこから甘えるように目を細めては頭をグリグリと押し付けてきた。それが嬉しくて再度撫でるとその場で脚を折り曲げてくれて、過去でも何度か見たその仕草に堪らずイレブンがひしと抱きつく。もしかして昨日のエマみたいに既視感なるものを感じたんだろうか。詳しいところは不明であるが、きっと思い出してくれたのだろう。
「う、馬くん〜〜!! ありがとう〜〜〜ッ!!」
あまりの感動にわしゃわしゃと撫でまくる。だがこの通りパワーがバケモンの勇者であるので、一瞬にして毛並みが散らかってしまった。わしゃわしゃというより「ぐしゃぐしゃ」だった。それでも彼は嬉しいようで、撫でるイレブンを嫌がるどころかむしろ好きなように弄らせている。初期メンの余裕というヤツらしい。
「ははっ、よしよし。また会えて嬉しいね」
『──……』
ちょっとジェラった聖竜である。「いや自分だってそれなりに毛ありますけど? 竜だし」とどうでもいい所で張り合うぐらいには湧き上がるジェラシーがメラメラだった。加えてイレブンが(自分を無視して)馬を可愛がるからまぁ面白くないこと面白くないこと。相手は仮にも古株であるのに、なんともみみっちい
「ほう……まさかこんなにも初手から懐いておるとは。馬の記憶力は優れていると言うが、もしかするとお前さんの匂いを嗅いで何やら思い出したのかもしれんな。いやはや、流石は村一番の馬じゃわい」
ほっほっほと高らかに笑って、ダンが心底得意げに頷く。それにペルラも「本当だねぇ」とにこやかに笑い、また聖竜はそんな彼らの話を聞いて「いや私の記憶のが優れてますけど」と謎に一人で反論していた。別に伝わる訳でも無いのに諦めの悪い聖竜だった。大体馬にそんなマウントをとって一体なにが楽しいというのか。なかなかに哀れな創造主である。
ちなみに当のイレブンに至ってはもう話すら聞いちゃいなかったらしい。今も「ユアマイビューティフルベストフレンド〜!!」と浮かんだ単語を適当に並べては馬を一人でナデナデしていた。馬の記憶は優れているのにイレブンの記憶はダメダメだった。特に「ベストフレンド」が良くなかったらしい。おかげで聖竜もそれを聞くなり「は?」と勝手にキレ散らかしているし、やはり彼らだけで旅をするのは自殺行為に等しいだろう。だからルキを連れて来いと言ったのに。
『──まったく、私が居ながらなんと罪深い……!』
『はー、満足した……って、なんか言った? 聖竜』
『──イイエ。ベツニ。ナンデモ。マヒャデドス』
『ああそう──って待って今なんで最後呪文言ったの。しかもめちゃくちゃ上級呪文だし』
『──あぁいえ気にしないで下さい。ただのザキ、ザラキ、ザラキーマ、ニフラムなんで』
『いや会話にちょいちょい混ぜるのもやめて!? 暗号みたいでなんか怖いから!』
『──とりあえず〝右腕〟で手を打ちましょう』
『いやどういうこと!?』
僕の右腕で手を打つってなに!?
聖竜の言葉に顔を青くさせ、バッ! とイレブンが右腕を庇う。聖竜としては「せめて右腕の座は私に下さいね」と予約の意味で伝えたのだが……如何せん〝ザキ〟とか口にしたせいで殺し屋みたいになってしまった。腕をもがれると思われたらしい。
いくらイレブンが器の広い男とはいえ、そりゃ急に仲間から「右腕寄越せ」なんて言われたら流石に「なんで!?」ともなるだろう。
『ちょっ、ま、待った聖竜! 一旦落ち着こう! 紹介したい仲間もいるし!』
『──仲間……? ああ、馬刺しって結構美味しいですよね』
『いや何僕の馬捕食対象に入れちゃってんの!? れっきとした仲間なんですけど!』
『──ちなみに何処の馬の骨ですか? 馬だけに』
『ねぇちょっとホント一旦落ち着いてくれる!?」
別に全然上手いとかないし!! またしても怯えるイレブンである。(ちなみに聖竜は馬刺しを食べたことが無いらしい。言ってる事めちゃくちゃでホント怖すぎる)
『というかそもそも何に怒って──』
「さ、イレブン! 感動の再会はそのくらいにしておきな! 早くしないとデルカダールに着く前に日が暮れて夜になっちまうよ!」
「え!? あ、ああうん、そうだね!」
「ヒヒーン! ブルブル!」
『──あ? なんですかコラ。やりますかコラ』
『いやだからなんの挑発なんだってば! というか絶対聞こえてないし!』
『──じゃああなたから代わりに言ってやって下さいよ。真の右腕はこの私だって』
『ええ? いやなにそれ、どういう──って、あ、右腕ってそういうこと!? 物理的な意味じゃなくて!?』
ようやく気付いたイレブンである。加えて聖竜が怒っている理由も今ので何となく察したらしい。「なんだ、てっきり右腕もぎ取るぞって事かと……」とホッとしたようにイレブンが言えば、「は? そんなわけないでしょう。アホですか? 全く」と何故か反対にブチギレられたのでなんかもう物凄く理不尽を感じた。あんなにザキとか言っていた癖に魔王みたいな聖竜だった。きっと馬だけをチヤホヤしたが故にこんな魔物が生まれてしまったのだろう。そんなホメロスじゃあるまいし。
『はぁ……まぁいいや。とにかく後でちゃんと紹介するよ。聖竜もきっと馬くんのこと気に入ると思うし』
『──いえ、それはどうですかね。彼は私の敵であるので』
『あ、あと馬くんにも紹介しなくちゃ。僕の〝右腕〟の聖竜ですって』
『──仕方ありません、一時休戦といきましょう』
『簡単だなぁ……』
そうしてお互いに茶番劇をしつつ、「でもまぁそういう意味では聖竜は特別だけどね、流石に」としれっと言ってのけるイレブンを見て、秒でコロッと機嫌を治したチョロすぎる聖竜がいたそうな。
次でようやく村を出るそうです。やったネ。
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